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第一章
第14話 スェトーが足りない!
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「スェトーが足りない!」
ミルフィが愕然としていた。
たくさん買い付けたはずのスェトー。開始から3日間でものすごい勢いで減っているのである。
そもそも高級品であるスェトーだ。それをたくさん買い付けたとなると周りからも苦情が出てくる可能性が高い。さすがに焦りを覚えるミルフィである。
(私は食でみんなを幸せにするのよ。こんなの許されるわけがないじゃないの!)
必死に悩むミルフィ。思わず声を上げる。
「ピレシー!」
”お呼びかな、主”
「スェトーの栽培ってできる?」
ピレシーを呼び出したミルフィは、間髪入れずに質問をぶつけた。
”もちろんですぞ。食に関する知識なら、どの世界の誰よりも勝っておると自負しておりますからな!”
ピレシーは自信満々である。すると、次の瞬間、ミルフィがピレシーをがっしりと掴んでいた。
「ねえ、種なしでも栽培できる? 今すぐ欲しいんだけど!」
ミルフィの形相が必死である。それも無理もない。なにせ今の状態なら数日中にスェトーが底をついてしまう。チェチェカの実は魔界に行けばいくらでも手に入るものの、スェトーが有限、しかも数が少なすぎるのだ。在庫のバランスが悪すぎたのである。
以前に買い付けた時に知っていたはずなのに、完全に忘れて見落としていた。ミルフィの落ち度である。それでピレシーに泣きついたのだ。
”主の魔力があれば可能だ。今から明日の朝には実らせる事が可能だ。問題は場所だな”
「ちょうどここは貴族の屋敷で広さはあるわ。裏の庭園の一部を使いましょう。大丈夫よね、プレツェ?」
「はい、十分かと思われます」
プレツェから前向きな返事があると、ミルフィはピレシーをキッと睨み付ける。
「……やるわよ。戦争になんか絶対させないわ」
”心得た、主よ”
ピレシーは魔法を唱える。すると、ミルフィとの間で魔力共鳴が起きる。
「な、なんなの?!」
”主よ、しばしの我慢だ。我の知識からスェトーの種を再現しておるのでな”
ピレシーとミルフィの間で魔力が次々と何かの形へと変化していく。それらをピレシーがコントロールして作業台の上に運んでいく。
”主の侍女よ、布を広げてくれ”
「は、はい!」
ピレシーの呼び掛けに、ティアがすぐに布を取り出して作業台の上に広げる。ピレシーはそこに作り出した何かを置いていく。
”これがスェトーの種だ。促進魔法を使えば、主の魔力なら半日もあれば収穫できるほどにできるぞ”
「これがスェトーの種……。早速植えますか!」
ピレシーが告げると、ミルフィは早速布をくるんで出て行こうとする。
”待たれよ、主。飢え方と世話の仕方を聞かずしていけば、促進魔法があるとはいえ枯らすのが関の山ぞ!”
ピレシーが呼び止めると、ミルフィはぴたりと動きを止めた。
「分かった、とりあえず聞くわ。それとプレツェ、オーソンに会いに行って、明日の朝にここに来てもらえるように伝えておいて」
「畏まりました、行ってきます!」
ミルフィに言われて、プレツェが建物から出て行く。
それを確認したミルフィは、ピレシーに真剣な表情を向ける。その熱意を感じ取ったピレシーは、ミルフィの目の前まで飛んでくる。
”それでは主、早速裏庭へと参ろうか。そこな侍女もついてくるといい”
ピレシーの呼び掛けに商会の世話に呼ばれたメイド二人が困惑していた。
「多分すぐに済むわ。少し休憩がてらに来てちょうだい」
「しょ、承知致しました、ミルフィ様」
そんなわけで、護衛のピアズたち男二人を残して、ミルフィたちは裏庭へと移動したのだった。
屋敷の裏には確かに広い庭があった。貴族の屋敷といえば普通は門から建物までに庭があるものだが、この屋敷は、門からの庭が狭くて屋敷の裏に広い庭を持っていた。
だが、ピレシーにしてみればこの方が好都合だった。
”促進魔法は隠しておくに限る。この配置はかえって好都合だ。ましてや希少なスェトーを育てるのならな”
ピレシーの表情は分からないが、どう考えても悪い笑みを浮かべているような感じだった。
”そんなに引かなくてもよい。我は何も特に変わった事は何も教えぬからな”
ピレシーはそう言うものの、どこか不安を抱えてしまうミルフィである。
しかし、スェトー不足は解消しなければいけない問題だ。背に腹は代えられないと覚悟を決めるミルフィである。
”まずは土魔法で土地を耕すとしようか”
ピレシーが魔法を発動させる。その際にミルフィが軽く体を震わせる。ピレシーの魔法はミルフィの魔力を使って発動させるからだ。
目の前の荒れた庭園の雑草が取り除かれ、大きな一区画が畝を盛られた畑に変わる。
”種を撒くぞ、主。先程作った種を出してくれ”
「分かったわ」
ピレシーの声に、ミルフィは種をくるんだ布を取り出して広げる。すると、ピレシーが魔法を使って種を畑の畝へと埋めていく。種は等間隔に畑に埋められていき、さっと水が振り掛けられた。
”主、大きく魔力を借りるぞ”
次の瞬間、ミルフィは寒気がするほどの震えに襲われる。それに耐え切れず、思わずミルフィは膝をついてしまう。
「ミルフィ様?!」
思わず叫んでしまうティアたち侍女組である。
「ピレシー様!」
”案ずるな。半日で収穫できるほどの環境を整えるとなると、魔力は膨大に必要なのだからな。数時間も休めば回復する、安心めされよ”
この次の瞬間、目の前で信じられない事が起こったのだった。
ミルフィが愕然としていた。
たくさん買い付けたはずのスェトー。開始から3日間でものすごい勢いで減っているのである。
そもそも高級品であるスェトーだ。それをたくさん買い付けたとなると周りからも苦情が出てくる可能性が高い。さすがに焦りを覚えるミルフィである。
(私は食でみんなを幸せにするのよ。こんなの許されるわけがないじゃないの!)
必死に悩むミルフィ。思わず声を上げる。
「ピレシー!」
”お呼びかな、主”
「スェトーの栽培ってできる?」
ピレシーを呼び出したミルフィは、間髪入れずに質問をぶつけた。
”もちろんですぞ。食に関する知識なら、どの世界の誰よりも勝っておると自負しておりますからな!”
ピレシーは自信満々である。すると、次の瞬間、ミルフィがピレシーをがっしりと掴んでいた。
「ねえ、種なしでも栽培できる? 今すぐ欲しいんだけど!」
ミルフィの形相が必死である。それも無理もない。なにせ今の状態なら数日中にスェトーが底をついてしまう。チェチェカの実は魔界に行けばいくらでも手に入るものの、スェトーが有限、しかも数が少なすぎるのだ。在庫のバランスが悪すぎたのである。
以前に買い付けた時に知っていたはずなのに、完全に忘れて見落としていた。ミルフィの落ち度である。それでピレシーに泣きついたのだ。
”主の魔力があれば可能だ。今から明日の朝には実らせる事が可能だ。問題は場所だな”
「ちょうどここは貴族の屋敷で広さはあるわ。裏の庭園の一部を使いましょう。大丈夫よね、プレツェ?」
「はい、十分かと思われます」
プレツェから前向きな返事があると、ミルフィはピレシーをキッと睨み付ける。
「……やるわよ。戦争になんか絶対させないわ」
”心得た、主よ”
ピレシーは魔法を唱える。すると、ミルフィとの間で魔力共鳴が起きる。
「な、なんなの?!」
”主よ、しばしの我慢だ。我の知識からスェトーの種を再現しておるのでな”
ピレシーとミルフィの間で魔力が次々と何かの形へと変化していく。それらをピレシーがコントロールして作業台の上に運んでいく。
”主の侍女よ、布を広げてくれ”
「は、はい!」
ピレシーの呼び掛けに、ティアがすぐに布を取り出して作業台の上に広げる。ピレシーはそこに作り出した何かを置いていく。
”これがスェトーの種だ。促進魔法を使えば、主の魔力なら半日もあれば収穫できるほどにできるぞ”
「これがスェトーの種……。早速植えますか!」
ピレシーが告げると、ミルフィは早速布をくるんで出て行こうとする。
”待たれよ、主。飢え方と世話の仕方を聞かずしていけば、促進魔法があるとはいえ枯らすのが関の山ぞ!”
ピレシーが呼び止めると、ミルフィはぴたりと動きを止めた。
「分かった、とりあえず聞くわ。それとプレツェ、オーソンに会いに行って、明日の朝にここに来てもらえるように伝えておいて」
「畏まりました、行ってきます!」
ミルフィに言われて、プレツェが建物から出て行く。
それを確認したミルフィは、ピレシーに真剣な表情を向ける。その熱意を感じ取ったピレシーは、ミルフィの目の前まで飛んでくる。
”それでは主、早速裏庭へと参ろうか。そこな侍女もついてくるといい”
ピレシーの呼び掛けに商会の世話に呼ばれたメイド二人が困惑していた。
「多分すぐに済むわ。少し休憩がてらに来てちょうだい」
「しょ、承知致しました、ミルフィ様」
そんなわけで、護衛のピアズたち男二人を残して、ミルフィたちは裏庭へと移動したのだった。
屋敷の裏には確かに広い庭があった。貴族の屋敷といえば普通は門から建物までに庭があるものだが、この屋敷は、門からの庭が狭くて屋敷の裏に広い庭を持っていた。
だが、ピレシーにしてみればこの方が好都合だった。
”促進魔法は隠しておくに限る。この配置はかえって好都合だ。ましてや希少なスェトーを育てるのならな”
ピレシーの表情は分からないが、どう考えても悪い笑みを浮かべているような感じだった。
”そんなに引かなくてもよい。我は何も特に変わった事は何も教えぬからな”
ピレシーはそう言うものの、どこか不安を抱えてしまうミルフィである。
しかし、スェトー不足は解消しなければいけない問題だ。背に腹は代えられないと覚悟を決めるミルフィである。
”まずは土魔法で土地を耕すとしようか”
ピレシーが魔法を発動させる。その際にミルフィが軽く体を震わせる。ピレシーの魔法はミルフィの魔力を使って発動させるからだ。
目の前の荒れた庭園の雑草が取り除かれ、大きな一区画が畝を盛られた畑に変わる。
”種を撒くぞ、主。先程作った種を出してくれ”
「分かったわ」
ピレシーの声に、ミルフィは種をくるんだ布を取り出して広げる。すると、ピレシーが魔法を使って種を畑の畝へと埋めていく。種は等間隔に畑に埋められていき、さっと水が振り掛けられた。
”主、大きく魔力を借りるぞ”
次の瞬間、ミルフィは寒気がするほどの震えに襲われる。それに耐え切れず、思わずミルフィは膝をついてしまう。
「ミルフィ様?!」
思わず叫んでしまうティアたち侍女組である。
「ピレシー様!」
”案ずるな。半日で収穫できるほどの環境を整えるとなると、魔力は膨大に必要なのだからな。数時間も休めば回復する、安心めされよ”
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