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新章 青色の智姫
第32話 友人大集合
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あっという間に半年が経過し、モスグリネ王国も国中がお祭りムードとなっていた。なにせ、ペイルが王位を継ぐのだ。
王国の取り決めで、王位を継ぐには精霊の森で試験を行い、その試験にクリアしなければならない。その時に出てくる精霊は誰になるかは分からないが、今回のペイルのように知り合いなことだってある。
だが、精霊は誰であれ公平公正に試験を行うために、今回のライもその立場で試験を行った。精霊王の命令は絶対だし、ライも精霊の森の出身なので重々承知なのである。
なにはともあれ、ペイルは試験を突破したのだから、無事に王位継承となった。これによって正式に、シアンは王女、モーフは王子という立場になるのである。
「陛下に続いて、ペイル殿下も王位継承とは、なんともめでたいことが続きますわね」
「まったくそうだな。逆行前では互いに戦ったというように聞いていたが、その時はどちらが強かったかな」
「もう、陛下ったら。今、そういうことをお聞きになりますか?」
「ははは、すまないな。私たちが経験していない時間というのが、つい気になってしまってね」
アイヴォリー王国からは、シルヴァノ国王とペシエラ王妃も参列である。もちろん、チェリシアも同行している。
チェリシアの場合はロゼリアの友人だとか言ってだだをこねたために、やむなく参列者の名前に加えたという経緯がある。二十九歳児ですか、この人は……。
とまぁ、なんだかんだで学生の頃の友人が全員集うという形になりそうなのだった。
ヴィフレアに到着したシルヴァノたちは、早速ペイルたちと会うことができた。アイヴォリーの時とは違って、事前に会うことができたようだ。
「やあ、ペイル。即位おめでとう」
「シルヴァノか。そちらの王位継承式以来だな、ありがとう」
お互いに挨拶を交わすペイルとシルヴァノ。そして、固く握手を交わしている。
「ところで、なんでチェリシアが居るのかしら」
一方のロゼリアは、シルヴァノとペシエラの二人と並ぶチェリシアが気になっていた。
確かに参列者の名簿の中には名前があったものの、事前挨拶にまで顔を出すとは思ってもみなかったのだ。
「一番の友人たる私が来なくて、一体どうするというのですか」
ででんとでかい態度で言い切るチェリシア。これでも一児の母親である。
「呆れたわね。お兄様が可哀想になってくるわ……」
「ちょっと、なんでそこでカーマイル様の話が出てくるのよ。私がモスグリネに行くことはちゃんと了承してくれたんだから」
ロゼリアが頭を抱えると、チェリシアは不機嫌そうに怒り始めた。その様子を見ながらペイルたちは苦笑いを浮かべている。
「やれやれ、相変わらずだな、チェリシアは」
「あれでもマゼンダ商会をちゃんと取り仕切っているんだけどね。カーマイルの胃が大丈夫か心配になるよ」
「まったくですわね」
「ちょっとぉ?」
ペシエラたちの愚痴に、チェリシアはしっかり反応していた。
「怖いおばちゃんがいる……」
挨拶の後、ペイルとロゼリアの後ろで警戒していたモーフがぽつりとこぼす。
「おばちゃんじゃないわよ、お姉さんよ」
にっこりとモーフに笑いかけるチェリシア。まぁ確かにまだ若々しい顔をしているが、年齢的には微妙なところである。
一方のシアンの方はというと、チェリシアをじーっと見つめていた。
「あらあら、私に興味があるの?」
あまりに凝視しているものだから、チェリシアは嬉しそうにシアンに話し掛けている。だが、すぐにロゼリアとペシエラが間に入る。
「お姉様ったら、怖がらせちゃダメですわよ」
「そうそう、今自分がどんな顔をしているのか鏡を見た方がいいわ」
「ちょっとぉ?!」
二度目のツッコミである。
「はあ、こんな相手でも頼らなければならないなんて、本当に困ったものね」
「うん? 何か話があるのかしら」
ため息を吐くロゼリアの反応に、チェリシアが食いついていた。
「ええ、即位後最初の公務として、アイヴォリー王国へ行こうと思いましてね。本格的に忙しくなる前に家族旅行というわけですよ」
「ふむふむ、なるほど」
「ただ、日数が取れませんからね。子どもたちの希望を叶えられるかどうか……」
ロゼリアはそういいながら、シアンとモーフの方へと視線を落とした。
「それだったら、エアリアルボードを使えばいいわ。四人まで乗れるし、移動速度も速いんだから」
あっけらかんとした表情で言い放つチェリシアである。
「あら、その手がありますわね」
ペシエラは忘れていたような反応だった。
「人数は連れていけないけれど、馬車の何倍もの速度で移動できるもの。旅程なんていくらでも短縮できるわ」
両手を腰に当てて自慢げなチェリシアである。
「すっかり忘れていたな。それならシェリアやカイスにも寄れそうな感じだ。どうする、ロゼリア」
「うーん、久しぶりに使う魔法ですし、不安があるといえばありますけれど……。その方法でいってみますか」
「よし決定~」
こうして、半ば強引に話が決められてしまった。
シアンとモーフが旅行を楽しみにわくわくとする中、いよいよペイルの王位継承式が始まったのだった。
王国の取り決めで、王位を継ぐには精霊の森で試験を行い、その試験にクリアしなければならない。その時に出てくる精霊は誰になるかは分からないが、今回のペイルのように知り合いなことだってある。
だが、精霊は誰であれ公平公正に試験を行うために、今回のライもその立場で試験を行った。精霊王の命令は絶対だし、ライも精霊の森の出身なので重々承知なのである。
なにはともあれ、ペイルは試験を突破したのだから、無事に王位継承となった。これによって正式に、シアンは王女、モーフは王子という立場になるのである。
「陛下に続いて、ペイル殿下も王位継承とは、なんともめでたいことが続きますわね」
「まったくそうだな。逆行前では互いに戦ったというように聞いていたが、その時はどちらが強かったかな」
「もう、陛下ったら。今、そういうことをお聞きになりますか?」
「ははは、すまないな。私たちが経験していない時間というのが、つい気になってしまってね」
アイヴォリー王国からは、シルヴァノ国王とペシエラ王妃も参列である。もちろん、チェリシアも同行している。
チェリシアの場合はロゼリアの友人だとか言ってだだをこねたために、やむなく参列者の名前に加えたという経緯がある。二十九歳児ですか、この人は……。
とまぁ、なんだかんだで学生の頃の友人が全員集うという形になりそうなのだった。
ヴィフレアに到着したシルヴァノたちは、早速ペイルたちと会うことができた。アイヴォリーの時とは違って、事前に会うことができたようだ。
「やあ、ペイル。即位おめでとう」
「シルヴァノか。そちらの王位継承式以来だな、ありがとう」
お互いに挨拶を交わすペイルとシルヴァノ。そして、固く握手を交わしている。
「ところで、なんでチェリシアが居るのかしら」
一方のロゼリアは、シルヴァノとペシエラの二人と並ぶチェリシアが気になっていた。
確かに参列者の名簿の中には名前があったものの、事前挨拶にまで顔を出すとは思ってもみなかったのだ。
「一番の友人たる私が来なくて、一体どうするというのですか」
ででんとでかい態度で言い切るチェリシア。これでも一児の母親である。
「呆れたわね。お兄様が可哀想になってくるわ……」
「ちょっと、なんでそこでカーマイル様の話が出てくるのよ。私がモスグリネに行くことはちゃんと了承してくれたんだから」
ロゼリアが頭を抱えると、チェリシアは不機嫌そうに怒り始めた。その様子を見ながらペイルたちは苦笑いを浮かべている。
「やれやれ、相変わらずだな、チェリシアは」
「あれでもマゼンダ商会をちゃんと取り仕切っているんだけどね。カーマイルの胃が大丈夫か心配になるよ」
「まったくですわね」
「ちょっとぉ?」
ペシエラたちの愚痴に、チェリシアはしっかり反応していた。
「怖いおばちゃんがいる……」
挨拶の後、ペイルとロゼリアの後ろで警戒していたモーフがぽつりとこぼす。
「おばちゃんじゃないわよ、お姉さんよ」
にっこりとモーフに笑いかけるチェリシア。まぁ確かにまだ若々しい顔をしているが、年齢的には微妙なところである。
一方のシアンの方はというと、チェリシアをじーっと見つめていた。
「あらあら、私に興味があるの?」
あまりに凝視しているものだから、チェリシアは嬉しそうにシアンに話し掛けている。だが、すぐにロゼリアとペシエラが間に入る。
「お姉様ったら、怖がらせちゃダメですわよ」
「そうそう、今自分がどんな顔をしているのか鏡を見た方がいいわ」
「ちょっとぉ?!」
二度目のツッコミである。
「はあ、こんな相手でも頼らなければならないなんて、本当に困ったものね」
「うん? 何か話があるのかしら」
ため息を吐くロゼリアの反応に、チェリシアが食いついていた。
「ええ、即位後最初の公務として、アイヴォリー王国へ行こうと思いましてね。本格的に忙しくなる前に家族旅行というわけですよ」
「ふむふむ、なるほど」
「ただ、日数が取れませんからね。子どもたちの希望を叶えられるかどうか……」
ロゼリアはそういいながら、シアンとモーフの方へと視線を落とした。
「それだったら、エアリアルボードを使えばいいわ。四人まで乗れるし、移動速度も速いんだから」
あっけらかんとした表情で言い放つチェリシアである。
「あら、その手がありますわね」
ペシエラは忘れていたような反応だった。
「人数は連れていけないけれど、馬車の何倍もの速度で移動できるもの。旅程なんていくらでも短縮できるわ」
両手を腰に当てて自慢げなチェリシアである。
「すっかり忘れていたな。それならシェリアやカイスにも寄れそうな感じだ。どうする、ロゼリア」
「うーん、久しぶりに使う魔法ですし、不安があるといえばありますけれど……。その方法でいってみますか」
「よし決定~」
こうして、半ば強引に話が決められてしまった。
シアンとモーフが旅行を楽しみにわくわくとする中、いよいよペイルの王位継承式が始まったのだった。
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