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新章 青色の智姫
第13話 疑いの錯綜
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話を終えたロゼリアたち。
そこで、ロゼリアはチェリシアに話を振る。
「シアンに会っていくかしら」
すると、チェリシアは意外な答えを返した。
「今日はやめておくわ。私ってば昔っから余計なことを言うから、あったらきっとさっきの推測をぽろっといっちゃいそうだもの」
「よく分かっているじゃないのよ」
ため息をつきながら言うチェリシアに、ロゼリアはついつい笑ってしまう。大人になって少しは成長したんだなと、安心した笑いである。
「ところでチェリシア。お兄様とはどうなのかしら」
あまりに笑い続けるとチェリシアがへそを曲げそうなので、ロゼリアは話題を切り替えておいた。
「カーマイル様なら、マゼンダ侯爵を継ぐために必死に勉強中よ。おかげでまだ子どももいないわ。私としてはこれ以上は遅くなりたくないんだけど、商会の仕事もあるししょうがないなって感じになってるわ」
チェリシアの話に驚くロゼリアである。
「まあ、ペシエラも子どもがいるというのに、まったく予想がいですわね」
「よくも悪くも、私たちは夫婦そろって仕事人間なようなのよ。ペシエラにも早く跡継ぎを作りなさいって怒鳴られたわ」
しばらく前に顔を合わせた時に大声で驚かれた話をするチェリシアである。
あまりに落胆した表情のチェリシアに、ロゼリアは笑いを堪え切れなかった。
「私としても早く甥か姪の顔が見たいわね」
「こっちの仕事は一段落してるから、時を見てカーマイル様のところに突撃するわ」
チェリシアは盛大なため息をついていた。
精神的なダメージを負ったチェリシアは、早々に話を切り上げる。
「それじゃ、大豆に関してめどが立ちそうだから、私は一度帰るわね。スノールビーに大豆畑を作れる場所があるかどうか確認しなきゃいけないから」
「お互い忙しそうでなによりですわね」
チェリシアが立ち上がると、ロゼリアも立ち上がってチェリシアを見送る。
「それじゃ、私はこれで。シアンちゃんによろしく伝えておいてね」
「分かりましたわ」
こうして、チェリシアは瞬間移動魔法でモスグリネ城から姿を消したのだった。
その後、昼食の席。
ペイルは相変わらず忙しそうで別に食事となってしまう。
「お父様ったら、忙しいのですか?」
ペイルが不在な事に、シアンがロゼリアに問い掛けている。
「ええ、そうみたいね」
子どもの質問だからと、簡単に返しておくロゼリアである。
すると、シアンはちょっと考え込むような仕草を見せていた。
隣では二つ下のモーフががちゃがちゃと食い散らかしているだけに、かなり対比が目立ってしまっている。
ロゼリアにじっと見つめられているにもかかわらず、シアンは思わず考え込んでしまっている。
「シアン」
急にロゼリアに声を掛けられて、シアンは驚いていた。
「何でしょうか、お母様」
「気になるかも知れませんが、ペイル様はこの国のために頑張っていらっしゃるのです。シアンはまだ幼いんですから、そんなに考えなくてもいいのですよ」
子どもだから気にしちゃダメよ。ロゼリアはそう言っているのである。
すると、シアンはどういうわけか頬を膨らませていた。
子どもっぽい仕草なのに、どこか子どもではない反応である。
ついついチェリシアと話した内容が過ってしまうロゼリアだった。
「お母様?」
思わず気になったシアンは、ロゼリアに声を掛ける。
その声に驚いたのか、ロゼリアは体を小さく震わせた。
「なんでもないわ。それよりも今はお昼の食事よ。ゆっくりでもいいから食べてしまいなさい」
「はーい」
ロゼリアの声に、元気よく返事をするシアンだった。
食事を終えたシアンは、スミレと一緒に部屋へと戻る。
そして、部屋に入って扉を閉めたところで大きくため息をついた。
「どうかなさいましたか、シアン様」
淡々と話しかけるスミレ。
「どうかしたもないわ。ロゼ……お母様ったら、間違いなく私に対して疑いを持っていますね」
シアンは顔色を悪くしながらスミレに話している。
「そういえば、午前中にチェリシア様とケットシーが訪ねてこられたみたいですね。おそらくそこで何か話をされたのでしょう」
「チェリシア様か……。何も考えていないようで、妙に感がいいところがありますものね。先日のアイリス様とのお話が耳に入ったのかもしれませんね」
ケットシーの誘いがあったとはいえ、うかつだったと反省するシアンである。
幻獣ケットシーとはそういうやつなのである。時々他人が困るように言葉巧みにいたずらを仕掛けてくるのが厄介なのだ。
「でしょうね。ケットシーってば昔からそういう方ですから」
「はあ、しばらくは城の中でおとなしくしているのがよさそうですね。転生したとはいえ、禁法から逃れられたという事実がない以上、私がシアン・アクアマリンである事は隠し通しませんと……」
がっくりとしてため息をつくシアン。そして、シアンにこう命じる。
「気分転換に勉強をしたいと思いますので、講師を呼んできていただけますか」
「畏まりました。すぐお呼び致します」
スミレが部屋を出ていったのを確認すると、いろいろな心配事に再びため息をつくシアンなのであった。
そこで、ロゼリアはチェリシアに話を振る。
「シアンに会っていくかしら」
すると、チェリシアは意外な答えを返した。
「今日はやめておくわ。私ってば昔っから余計なことを言うから、あったらきっとさっきの推測をぽろっといっちゃいそうだもの」
「よく分かっているじゃないのよ」
ため息をつきながら言うチェリシアに、ロゼリアはついつい笑ってしまう。大人になって少しは成長したんだなと、安心した笑いである。
「ところでチェリシア。お兄様とはどうなのかしら」
あまりに笑い続けるとチェリシアがへそを曲げそうなので、ロゼリアは話題を切り替えておいた。
「カーマイル様なら、マゼンダ侯爵を継ぐために必死に勉強中よ。おかげでまだ子どももいないわ。私としてはこれ以上は遅くなりたくないんだけど、商会の仕事もあるししょうがないなって感じになってるわ」
チェリシアの話に驚くロゼリアである。
「まあ、ペシエラも子どもがいるというのに、まったく予想がいですわね」
「よくも悪くも、私たちは夫婦そろって仕事人間なようなのよ。ペシエラにも早く跡継ぎを作りなさいって怒鳴られたわ」
しばらく前に顔を合わせた時に大声で驚かれた話をするチェリシアである。
あまりに落胆した表情のチェリシアに、ロゼリアは笑いを堪え切れなかった。
「私としても早く甥か姪の顔が見たいわね」
「こっちの仕事は一段落してるから、時を見てカーマイル様のところに突撃するわ」
チェリシアは盛大なため息をついていた。
精神的なダメージを負ったチェリシアは、早々に話を切り上げる。
「それじゃ、大豆に関してめどが立ちそうだから、私は一度帰るわね。スノールビーに大豆畑を作れる場所があるかどうか確認しなきゃいけないから」
「お互い忙しそうでなによりですわね」
チェリシアが立ち上がると、ロゼリアも立ち上がってチェリシアを見送る。
「それじゃ、私はこれで。シアンちゃんによろしく伝えておいてね」
「分かりましたわ」
こうして、チェリシアは瞬間移動魔法でモスグリネ城から姿を消したのだった。
その後、昼食の席。
ペイルは相変わらず忙しそうで別に食事となってしまう。
「お父様ったら、忙しいのですか?」
ペイルが不在な事に、シアンがロゼリアに問い掛けている。
「ええ、そうみたいね」
子どもの質問だからと、簡単に返しておくロゼリアである。
すると、シアンはちょっと考え込むような仕草を見せていた。
隣では二つ下のモーフががちゃがちゃと食い散らかしているだけに、かなり対比が目立ってしまっている。
ロゼリアにじっと見つめられているにもかかわらず、シアンは思わず考え込んでしまっている。
「シアン」
急にロゼリアに声を掛けられて、シアンは驚いていた。
「何でしょうか、お母様」
「気になるかも知れませんが、ペイル様はこの国のために頑張っていらっしゃるのです。シアンはまだ幼いんですから、そんなに考えなくてもいいのですよ」
子どもだから気にしちゃダメよ。ロゼリアはそう言っているのである。
すると、シアンはどういうわけか頬を膨らませていた。
子どもっぽい仕草なのに、どこか子どもではない反応である。
ついついチェリシアと話した内容が過ってしまうロゼリアだった。
「お母様?」
思わず気になったシアンは、ロゼリアに声を掛ける。
その声に驚いたのか、ロゼリアは体を小さく震わせた。
「なんでもないわ。それよりも今はお昼の食事よ。ゆっくりでもいいから食べてしまいなさい」
「はーい」
ロゼリアの声に、元気よく返事をするシアンだった。
食事を終えたシアンは、スミレと一緒に部屋へと戻る。
そして、部屋に入って扉を閉めたところで大きくため息をついた。
「どうかなさいましたか、シアン様」
淡々と話しかけるスミレ。
「どうかしたもないわ。ロゼ……お母様ったら、間違いなく私に対して疑いを持っていますね」
シアンは顔色を悪くしながらスミレに話している。
「そういえば、午前中にチェリシア様とケットシーが訪ねてこられたみたいですね。おそらくそこで何か話をされたのでしょう」
「チェリシア様か……。何も考えていないようで、妙に感がいいところがありますものね。先日のアイリス様とのお話が耳に入ったのかもしれませんね」
ケットシーの誘いがあったとはいえ、うかつだったと反省するシアンである。
幻獣ケットシーとはそういうやつなのである。時々他人が困るように言葉巧みにいたずらを仕掛けてくるのが厄介なのだ。
「でしょうね。ケットシーってば昔からそういう方ですから」
「はあ、しばらくは城の中でおとなしくしているのがよさそうですね。転生したとはいえ、禁法から逃れられたという事実がない以上、私がシアン・アクアマリンである事は隠し通しませんと……」
がっくりとしてため息をつくシアン。そして、シアンにこう命じる。
「気分転換に勉強をしたいと思いますので、講師を呼んできていただけますか」
「畏まりました。すぐお呼び致します」
スミレが部屋を出ていったのを確認すると、いろいろな心配事に再びため息をつくシアンなのであった。
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