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第十章 乙女ゲーム最終年
第298話 三年次学園祭、初日
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さて、今年も無事に始まったサンフレア学園祭。入り口では魔法による荷物チェックが行われている。とは言っても、チェリシアとペシエラの魔法で構築された刃物と魔道具の検知器の付いた門をくぐるだけである。チェリシアが空港などにある金属探知機を参考に、ものの数日で作り上げたものだ。ペシエラにもイメージを教えて、二人で数台作っておいた。
この門が持ち込み不可能物を検知すると、門が光って対象者に拘束魔法を掛けるという仕組みになっている。ちなみに門の光を消すと拘束魔法は解ける。
なお、初日の午前中の時点でこの門で何名か引っ掛かっており、警備の兵士に連れて行かれた。一体何を持ち込んだのやら……。
そんな感じで、学園祭の初日は始まった。
学園祭は、過去二年であれだけの騒ぎがあったにも関わらず大盛況である。事が起きたのは武術大会だけだったので、他は安心して巡れると思っているのだろう。
会場を見ていると、外部の人間もちらほら商売をしているのが見える。ドール商会は今年も駆け出し職人たちの装飾品や衣料品を売っているようである。
さて、マゼンダ商会は予定通りの写真撮影と、商会で取り扱いのある食料品の販売だ。ソースや酢といった調味料以外にも、瓶詰めの魚などの保存食が並んでいた。
さて、商会の販売員はチェリシアの侍女キャノル、ロゼリアの侍女シアン、それとアイリスの母アメジスタの三人が来ている。他には補佐の従業員が数名といった感じだ。ロゼリアとペシエラは武術大会に行っているので、この場を取り仕切るのはチェリシアとカーマイルという、実にちょっと気まずい空間となっていた。
「はーい、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。サンフレア学園祭に来た記念に写真はいかがでしょうか。ものの数秒で絵が出来上がりますよ!」
チェリシアが前世気分で客寄せを行っている。気まずいには気まずいので、とにかく気を紛らわしたいようである。
カーマイルは無表情で中に座っている。こういう商売には向かない男なので、奥で座ってお金と商品の管理をしてもらっているのだ。適材適所、これ大事。
そうやっていると、最初のお客が引っ掛かる。写真というものに興味を示した模様。そこでチェリシアは撮影用のボードの前にお客さんに立ってもらい、指で四角を作って魔法を使う。
パシャという音とともに緩い光が放たれた。そして、キャノルに紙を持ってきてもらい、そこに転写魔法を発動。これで写真の完成だ。たくさん頑張って作ったので、紙は大量に積まれている。もちろん風で飛ばないように箱にしまい込んである。
そして、無事に完成した写真をお客に見せると、それはもう大層驚かれた。紙には自分の姿がしっかりと描かれていたからだ。ものの数秒で完成する絵、そこには嘘偽りがなかった。
無事に一人目の客を掴まえた記念写真撮影。その後は徐々に口コミで広がっていき、昼前にはそれなりに人が殺到するようになっていた。価格は金貨一枚であるので、貴族や商人にとってはそれほどでもない価格だった。
だが、写真に使われている紙を見た一人の商人は、価格設定が甘くないかと詰め寄ってきた。高いではなく安いという事だ。
「この紙は私の拠点であるモスグリネでも作れない品質だ。この魔法の特殊性も考えると、紙の大きさが小さいとはいえもっと高くてもいいはずだ」
その商人の言い分はこうだった。
「確かにそうかも知れませんが、今回は広めるという目的があるので価格を抑えてみました。次に行う際には参考にさせて頂きます」
チェリシアも落ち着いてこう切り返すと、その商人は納得したようにおとなしくなった。すると、何か交渉したがるような気配を見せたので、カーマイルに丸投げするチェリシア。
「仕方ないな、任されよう」
文句言いたげな顔をしていたカーマイルだったが、父親を継ぐ予定であるので経験を積むいい機会である。その商人をお供と一緒に連れて奥へと引っ込んでいった。
この商人以外にもこういう指摘は多く行われたのだが、同じような切り返しをすると大体納得してくれた。中には釣書にしたいと言って自分の子どもを連れてくる貴族まで現れたくらいである。初日にして大盛況、嬉しい悲鳴である。商会から人員を呼んで対応する事になったくらいである。
それにつられるようにして、ソースやジャムも売れていった。売り出してから何年も経つのに未だに知らない人が居たのには驚いた。買った人は広めなかったのだろうか。特にジャムはお菓子にも使えるのに、不思議なものである。
というわけで、この日持ってきた食品の販売は、この日の夕方を待たずして完売してしまった。試食してもらったのも功を奏した。
「すみません、魔法の使い過ぎのようなので、ここで終わりにさせて頂きます。明日も行ってますので、またよろしくお願いします」
ほぼ同時に、チェリシアは疲労感を覚えたので、写真撮影も終了となった。待っていた客は残念がってはいたが、数百人もの写真を撮っていたのを知っているので文句が出る事はなかった。魔法で体力を消耗するのは常識だから、みんな理解が早かった。
「お疲れ様、ゆっくり休んでちょうだいね」
来ていたお客の中からは労いの声が聞こえてきた。
忙しかったが、初日をトラブルなく終われたのはいい事だ。椅子に座り込んだチェリシアは、とても満足げな表情を浮かべるのだった。
この門が持ち込み不可能物を検知すると、門が光って対象者に拘束魔法を掛けるという仕組みになっている。ちなみに門の光を消すと拘束魔法は解ける。
なお、初日の午前中の時点でこの門で何名か引っ掛かっており、警備の兵士に連れて行かれた。一体何を持ち込んだのやら……。
そんな感じで、学園祭の初日は始まった。
学園祭は、過去二年であれだけの騒ぎがあったにも関わらず大盛況である。事が起きたのは武術大会だけだったので、他は安心して巡れると思っているのだろう。
会場を見ていると、外部の人間もちらほら商売をしているのが見える。ドール商会は今年も駆け出し職人たちの装飾品や衣料品を売っているようである。
さて、マゼンダ商会は予定通りの写真撮影と、商会で取り扱いのある食料品の販売だ。ソースや酢といった調味料以外にも、瓶詰めの魚などの保存食が並んでいた。
さて、商会の販売員はチェリシアの侍女キャノル、ロゼリアの侍女シアン、それとアイリスの母アメジスタの三人が来ている。他には補佐の従業員が数名といった感じだ。ロゼリアとペシエラは武術大会に行っているので、この場を取り仕切るのはチェリシアとカーマイルという、実にちょっと気まずい空間となっていた。
「はーい、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。サンフレア学園祭に来た記念に写真はいかがでしょうか。ものの数秒で絵が出来上がりますよ!」
チェリシアが前世気分で客寄せを行っている。気まずいには気まずいので、とにかく気を紛らわしたいようである。
カーマイルは無表情で中に座っている。こういう商売には向かない男なので、奥で座ってお金と商品の管理をしてもらっているのだ。適材適所、これ大事。
そうやっていると、最初のお客が引っ掛かる。写真というものに興味を示した模様。そこでチェリシアは撮影用のボードの前にお客さんに立ってもらい、指で四角を作って魔法を使う。
パシャという音とともに緩い光が放たれた。そして、キャノルに紙を持ってきてもらい、そこに転写魔法を発動。これで写真の完成だ。たくさん頑張って作ったので、紙は大量に積まれている。もちろん風で飛ばないように箱にしまい込んである。
そして、無事に完成した写真をお客に見せると、それはもう大層驚かれた。紙には自分の姿がしっかりと描かれていたからだ。ものの数秒で完成する絵、そこには嘘偽りがなかった。
無事に一人目の客を掴まえた記念写真撮影。その後は徐々に口コミで広がっていき、昼前にはそれなりに人が殺到するようになっていた。価格は金貨一枚であるので、貴族や商人にとってはそれほどでもない価格だった。
だが、写真に使われている紙を見た一人の商人は、価格設定が甘くないかと詰め寄ってきた。高いではなく安いという事だ。
「この紙は私の拠点であるモスグリネでも作れない品質だ。この魔法の特殊性も考えると、紙の大きさが小さいとはいえもっと高くてもいいはずだ」
その商人の言い分はこうだった。
「確かにそうかも知れませんが、今回は広めるという目的があるので価格を抑えてみました。次に行う際には参考にさせて頂きます」
チェリシアも落ち着いてこう切り返すと、その商人は納得したようにおとなしくなった。すると、何か交渉したがるような気配を見せたので、カーマイルに丸投げするチェリシア。
「仕方ないな、任されよう」
文句言いたげな顔をしていたカーマイルだったが、父親を継ぐ予定であるので経験を積むいい機会である。その商人をお供と一緒に連れて奥へと引っ込んでいった。
この商人以外にもこういう指摘は多く行われたのだが、同じような切り返しをすると大体納得してくれた。中には釣書にしたいと言って自分の子どもを連れてくる貴族まで現れたくらいである。初日にして大盛況、嬉しい悲鳴である。商会から人員を呼んで対応する事になったくらいである。
それにつられるようにして、ソースやジャムも売れていった。売り出してから何年も経つのに未だに知らない人が居たのには驚いた。買った人は広めなかったのだろうか。特にジャムはお菓子にも使えるのに、不思議なものである。
というわけで、この日持ってきた食品の販売は、この日の夕方を待たずして完売してしまった。試食してもらったのも功を奏した。
「すみません、魔法の使い過ぎのようなので、ここで終わりにさせて頂きます。明日も行ってますので、またよろしくお願いします」
ほぼ同時に、チェリシアは疲労感を覚えたので、写真撮影も終了となった。待っていた客は残念がってはいたが、数百人もの写真を撮っていたのを知っているので文句が出る事はなかった。魔法で体力を消耗するのは常識だから、みんな理解が早かった。
「お疲れ様、ゆっくり休んでちょうだいね」
来ていたお客の中からは労いの声が聞こえてきた。
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