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第十章 乙女ゲーム最終年
第290話 もはや通過イベント
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三年次の夏の合宿の野営二日目が始まった。
この日の朝ご飯も、多くの学生がチェリシアが用意したものを食べていた。まったく甘いものである。
この日からは一日中探索である。夕方には戻って来ないといけないので、行動範囲は知れている。戻って来れなければ、森の中で夜を過ごす事になる。危険な魔物の徘徊する森に滞在するので、死活問題の状態に陥ってしまう。学生たちに緊張が走る。過去には実際に森で夜を過ごす事になって、命を落としかけた例も存在している。これを聞いて脱落する学生が毎回出てくるが、今回はみんな参加する事となった。
ただ、この探索はただ森を歩き回るだけではない。魔物を討伐して食料を確保しなければならないのだ。そうしなければ食事を取る事ができない。夕方までに戻ってくれば、成果なしでも食事にはありつけるようになっている。どのグループにもロゼリアたちに魔法を鍛えられた学生が居るので、どうにかはなるだろうと見られている。
こうして二日目の探索が始まった。魔法科の学生はやる気に満ちていたが、武術科の生徒はちょっと引け気味だった。ロゼリアたちに鍛えられたかどうかの差が、ここに大きく影響しているようである。
その夕方。学生は全員無事に戻ってきた。魔法科の学生は魔法の鍛錬の成果を見せられて満足げであった。ただ、成果があったかというと別の問題。食料が確保できた班はシルヴァノとペイルの班、オフライトの班、シェイディアとアイリスの班、ロゼリアとグレイアの班、チェリシアとペシエラの班であった。五人組が十二班あるので、実に半分にも満たなかった。一番多く集めたのはチェリシアとペシエラの班である。さすがは自分の庭なだけある。
「フォレストバードの肉は美味しいんですよ」
チェリシアはにっこにこである。
「フォレストバードってそんな簡単に倒せるものなのか?」
学生たちはざわついていた。
地面に普通に居るコボルトやウルフだけでも、初心者のうちはそれなりに苦戦する相手だ。宙を舞うフォレストバードなど、とても相手にできたものではない。
「あら、動きは単純ですから、倒すのは結構簡単ですわよ」
驚く学生たちにけろっとした表情でペシエラは言う。そうしたら、また学生たちに驚かれた。そんなに大変なのかなと、チェリシアも不思議そうに首を傾げた。
というわけで、チェリシアとペシエラが狩りまくったフォレストバードが夕食となった。フォレストバードの香草焼きは学生どころか教師陣にも好評だった。
本来、乙女ゲームであれば好感度イベントと戦闘イベントが両方起きるはず合宿なのだが、婚約者も決まってしまって好感度イベントは起こりようがなかった。戦闘イベントも野営地に魔物がなだれ込んでくる四連戦なのだが、そのための魔物も実はもう懐柔済み。実は、去年の段階でアイリスの配下に入った魔物たちが、このイベントでの討伐対象だったのだ。
というわけで、この合宿はだらだらと五日間の野営を過ごすイベントに成り下がっていた。まぁそもそも、魔物との戦い方や野営の行い方を学ぶ場なので、それなりの意味はある場なのであるが、その上で学生同士の親睦が深くなれば御の字である。
翌日からは、優秀な班が後れている班の指導に当たる。特に武術科の学生へのテコ入れが行われる。特に優秀な班には剣術にも優れた学生がそれぞれに居たので、どこか魔物に対してへっぴり腰だった学生たちも、真っ直ぐ剣を構えられるくらいの度胸を手に入れた。気後れしていては、倒せるものも倒せない。生きるか死ぬかの世界では、それは致命的なものなのだから。
しかし、意外だったのはチェリシアだった。風魔法を駆使して舞うように魔物を切り刻んだ。昔を思えば魔物を倒す事に抵抗がなくなっているのは、この世界に完全に適応していると言える。とはいえ、これは普通の学生にとってまったく参考にならなかった。
「お姉様、もう少し普通の戦い方をして下さいまし。みなさんにはとても再現できませんわよ」
ペシエラにしっかりツッコミを入れられるチェリシア。
「えー……。かっこいいと思うのに……」
チェリシアは残念そうな顔をしている。
「まったく、剣術ならこうするのですわよ!」
現れたコボルトに対して、ペシエラは華麗な剣術を繰り出す。その剣術に対して、同行していた学生は感動の声を出していた。剣を収めたペシエラはドヤ顔を決めていた。
それにしても、サーベルを扱うペシエラは相変わらず十二歳とは思えないかっこよさだった。それこそチェリシアも見惚れるレベルである。十二歳となったペシエラは体もだいぶ成長して、体型的にもチェリシアの同時期に比べれば発育が良い。おそらく、体を取り戻した事によって成長が安定したのだろう。そこまでは思ったより小さかったので、その反発があるのだと思われる。そのバランスの良さがあって、より戦闘が映えているというものである。
「さすがペシエラ様。殿下の婚約者に選ばれるだけの事がございます」
同行していた女学生たちは憧れの視線をペシエラに向けていた。チェリシアはどこか寂しい気もしたが、ペシエラが人気なのは姉として嬉しいので複雑な気持ちである。
こういった事もあったが、無事に合宿の日程は消化されていったのだった。
この日の朝ご飯も、多くの学生がチェリシアが用意したものを食べていた。まったく甘いものである。
この日からは一日中探索である。夕方には戻って来ないといけないので、行動範囲は知れている。戻って来れなければ、森の中で夜を過ごす事になる。危険な魔物の徘徊する森に滞在するので、死活問題の状態に陥ってしまう。学生たちに緊張が走る。過去には実際に森で夜を過ごす事になって、命を落としかけた例も存在している。これを聞いて脱落する学生が毎回出てくるが、今回はみんな参加する事となった。
ただ、この探索はただ森を歩き回るだけではない。魔物を討伐して食料を確保しなければならないのだ。そうしなければ食事を取る事ができない。夕方までに戻ってくれば、成果なしでも食事にはありつけるようになっている。どのグループにもロゼリアたちに魔法を鍛えられた学生が居るので、どうにかはなるだろうと見られている。
こうして二日目の探索が始まった。魔法科の学生はやる気に満ちていたが、武術科の生徒はちょっと引け気味だった。ロゼリアたちに鍛えられたかどうかの差が、ここに大きく影響しているようである。
その夕方。学生は全員無事に戻ってきた。魔法科の学生は魔法の鍛錬の成果を見せられて満足げであった。ただ、成果があったかというと別の問題。食料が確保できた班はシルヴァノとペイルの班、オフライトの班、シェイディアとアイリスの班、ロゼリアとグレイアの班、チェリシアとペシエラの班であった。五人組が十二班あるので、実に半分にも満たなかった。一番多く集めたのはチェリシアとペシエラの班である。さすがは自分の庭なだけある。
「フォレストバードの肉は美味しいんですよ」
チェリシアはにっこにこである。
「フォレストバードってそんな簡単に倒せるものなのか?」
学生たちはざわついていた。
地面に普通に居るコボルトやウルフだけでも、初心者のうちはそれなりに苦戦する相手だ。宙を舞うフォレストバードなど、とても相手にできたものではない。
「あら、動きは単純ですから、倒すのは結構簡単ですわよ」
驚く学生たちにけろっとした表情でペシエラは言う。そうしたら、また学生たちに驚かれた。そんなに大変なのかなと、チェリシアも不思議そうに首を傾げた。
というわけで、チェリシアとペシエラが狩りまくったフォレストバードが夕食となった。フォレストバードの香草焼きは学生どころか教師陣にも好評だった。
本来、乙女ゲームであれば好感度イベントと戦闘イベントが両方起きるはず合宿なのだが、婚約者も決まってしまって好感度イベントは起こりようがなかった。戦闘イベントも野営地に魔物がなだれ込んでくる四連戦なのだが、そのための魔物も実はもう懐柔済み。実は、去年の段階でアイリスの配下に入った魔物たちが、このイベントでの討伐対象だったのだ。
というわけで、この合宿はだらだらと五日間の野営を過ごすイベントに成り下がっていた。まぁそもそも、魔物との戦い方や野営の行い方を学ぶ場なので、それなりの意味はある場なのであるが、その上で学生同士の親睦が深くなれば御の字である。
翌日からは、優秀な班が後れている班の指導に当たる。特に武術科の学生へのテコ入れが行われる。特に優秀な班には剣術にも優れた学生がそれぞれに居たので、どこか魔物に対してへっぴり腰だった学生たちも、真っ直ぐ剣を構えられるくらいの度胸を手に入れた。気後れしていては、倒せるものも倒せない。生きるか死ぬかの世界では、それは致命的なものなのだから。
しかし、意外だったのはチェリシアだった。風魔法を駆使して舞うように魔物を切り刻んだ。昔を思えば魔物を倒す事に抵抗がなくなっているのは、この世界に完全に適応していると言える。とはいえ、これは普通の学生にとってまったく参考にならなかった。
「お姉様、もう少し普通の戦い方をして下さいまし。みなさんにはとても再現できませんわよ」
ペシエラにしっかりツッコミを入れられるチェリシア。
「えー……。かっこいいと思うのに……」
チェリシアは残念そうな顔をしている。
「まったく、剣術ならこうするのですわよ!」
現れたコボルトに対して、ペシエラは華麗な剣術を繰り出す。その剣術に対して、同行していた学生は感動の声を出していた。剣を収めたペシエラはドヤ顔を決めていた。
それにしても、サーベルを扱うペシエラは相変わらず十二歳とは思えないかっこよさだった。それこそチェリシアも見惚れるレベルである。十二歳となったペシエラは体もだいぶ成長して、体型的にもチェリシアの同時期に比べれば発育が良い。おそらく、体を取り戻した事によって成長が安定したのだろう。そこまでは思ったより小さかったので、その反発があるのだと思われる。そのバランスの良さがあって、より戦闘が映えているというものである。
「さすがペシエラ様。殿下の婚約者に選ばれるだけの事がございます」
同行していた女学生たちは憧れの視線をペシエラに向けていた。チェリシアはどこか寂しい気もしたが、ペシエラが人気なのは姉として嬉しいので複雑な気持ちである。
こういった事もあったが、無事に合宿の日程は消化されていったのだった。
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