逆行令嬢と転生ヒロイン

未羊

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第九章 大いなる秘密

第278話 年が明けて

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 年が明け、無事にロゼリアたちは三年次へと進級した。
 後半は学園がほぼ機能していなかったために、特例で全員問答無用で進級となった。
 一応、最上級生の六年次生を含め、希望者のみで王宮の空いた部屋を借りて授業をしていたらしい。武術科に至っては、王宮騎士たちと一緒に鍛錬できたと言って大層喜んだそうな。それを聞いたペシエラが大変羨ましく思ったのは明白である。
 それと、当時の六年次生の卒業式は年末パーティーの際に行われたらしい。
 そういえば、城の地下牢で固まっていたパープリア元男爵とインディがついに動き出したらしい。ちなみにものすごくうるさくて、他の囚人から黙らせろと苦情が出たくらいである。
 謀反の証拠が固まっていたので、裁判は迅速に終わり、処刑があっさりと決定した。これを聞いたアメジスタ、ヴィオレス、アイリスの三人は誰一人として取り乱す事はなかった。もう分かっていた事なのだろう。
 だが、どうして急に動き出したのかは分からなかった。ライの証言で禁法を使っていた事が分かってはいるが、それが今回の状況に繋がるのかは不明だった。結局のところ、あの二人は神の怒りに触れたという噂が出た程度で片付いてしまった。
 年末のパーティーに参加していたケットシーも、年が明けるとモスグリネに帰っていった。普通なら要人なので護衛の騎士など付けるものではあるが、彼は幻獣なので、ガレンから聞かされた話では特殊な方法で単独で帰ったらしい。
 アイヴォリーの王家や商会といろいろ交渉して新たな契約を結んでいたので、結構満足していたそうな。
 その取引内容としては、マゼンダ商会には大豆やその関連商品が入ってくる事になっている。ドール商会は以前の水着に使った生地の取引が増えるらしい。
 あと年明けから二十日位経ってからだが、ペイルの婚約に関してモスグリネ国王から正式に受諾の返事が来た。これでペイルとロゼリアは、両国の認めた正式な婚約者同士となった。
 これを踏まえて、ロゼリアにもペシエラと同じように女王教育が始まった。さすがに逆行前に二人とも受けた経験があるので、普通は最初はつらさに弱音を吐くものだが、それは一切なかった。経験と覚悟が違うのだ。
 何にしても、三年次に進級して学園での生活は更なる充実期を迎える。
 既に乙女ゲームのシナリオは破綻している。強制力が働くかと思ったが、代替ヒロインは現れない。それに代理悪役令嬢も現れない。それどころか、ゲームでは登場しなかった存在がわんさか登場して、これがゲームとリアルの違いだというのをまざまざと見せつけられた。
 アイリスは公式には発表されなかったが、正式にコーラル伯爵家の養女となり、アイリス・コーラル伯爵令嬢と名を改めた。男爵令嬢から平民落ちして、再び貴族令嬢に返り咲くという、ちょっとしたシンデレラストーリーである。
 これに伴い、一時的にロゼリアの侍女の付き人状態だったライがアイリスの侍女に、アイリスが侍女に付く前にペシエラに付いていた侍女が、再びペシエラ付きの侍女に復帰した。
「ペシエラ様、お久しゅうございます」
「ええ、久しぶりですわね、ストロア」
 以前はペシエラ付きだったストロア。アイリスがやって来てからは、母親のサルモアの侍女の補佐をしていた。
「うっうっ、ペシエラ様がシルヴァノ殿下の婚約者だなんて、このストロア、感激で泣いてしまいます」
 久しぶりの挨拶をした早々これだ。王族の婚約者というのは全貴族の憧れだから、侍女をしていたのなら仕方のない反応ではある。
「しかし、あの憎きパープリアの娘であるアイリス様を迎え入れるなんて、旦那様もペシエラ様も懐が深いです」
「まぁ、本当は死ぬはずだったアイリスを助けたかっただけなのですけれどね。その後の事は予想外の事で驚いてしまいましたわ」
「でも、アイリス様もそこらの令嬢に見劣りしないくらいになられましたね」
 ストロアがこう言うのも無理はない。アイリスは積極的に裏社会に関わってきたのだ。しかし、これも幻獣たちのおかげでもあるだろう。ペシエラたちだけでは更生できたかは未知数である。本当に何がどう転ぶか予測不可能である。
 激動の学生生活を二年も送ってきたのだ。せめて三年目からは平穏に過ごせないだろうか。これはペシエラだけではなく、ロゼリアやチェリシアも思っている事である。
 果たして三年目は、平穏無事に過ぎてくれるのだろうか。それは誰にも分からなかった。
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