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第九章 大いなる秘密
第270話 パーティーの始まり
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二日なんてあっという間に過ぎてしまい、いよいよアイヴォリー王国恒例の年末パーティーが始まった。年の最後の日までの三日間行われる交流会である。そして、そのまま年明けパーティーにまで連続するという、ある意味拷問のような催しである。なにせ、国王女王両陛下の主催のパーティーなのだから、国の貴族に拒めるはずもないのだから。
時刻は夕刻。外は夕焼けの空が広がっており、その中を馬車がぞろぞろと王宮の中へと吸い込まれていっている。
ロゼリアたちは昼食の席に呼ばれたとあって、朝から既に王宮の中に居た。その席にはヴァミリオ、カーマイル、プラウスの三人も居たのだが、どうにも静かすぎる。これは明らかに企んでいるなと、ペシエラはすぐに直感した。
それというのも、プラウスの態度だ。逆行前も含めて長らく親子をしているせいで、そういう癖のようなものを完全に把握してしまっている。ちなみにこの癖は、ペシエラにもしっかりと遺伝しているので、なおの更明らかなのだ。
異世界の人間であるチェリシアにはほとんど見られないサイン。それは、とにかく目が泳ぐ。隠し事をしている相手をとにかく見ないのだ。本人は見ているつもりだが、すぐに視線が外れる。モスグリネに行くきっかけになったペシエラの異変も、これによってばれたのだ。
午後になると、支度に手間取っていたマゼンダ侯爵夫人レドリスとコーラル伯爵夫人サルモアも合流する。合流した時にはロゼリアたちもドレスに着替えており、
「お母様、ああ、やはりお母様はお美しいです」
「あらあら、ロゼリア。お世辞でも嬉しいわね。あなたも綺麗よ」
母娘でお世辞の言い合いになっていた。
従者組は微笑ましくそれを見守っていたが、その中にはアイリスの姿はなかった。
なぜならアイリスも侍女服ではなくドレスに着替えていたから。チェリシア、ペシエラと一緒にサルモアとの会話に巻き込まれていた。ちなみに男性陣は別室である。
本来こういう宴の席に従者は同席しないのだが、シアン、キャノル、ライの三人は特別に参加する事になっていた。とはいえ、配膳役である。特にキャノルとライは護衛も兼ねている。なにせ宴の席の中に兵士をうろつかせるわけにもいかないからである。それくらいに二人は腕を買われていた。
厨房の方も、チェリシアが苦労して開発した小型調理窯も使って料理が次々と作られて行っている。
特にモスグリネに行っている間に開発した果汁搾り機は威力を発揮していた。装置の上の部分に果汁を搾りたい果物を入れてスイッチを押すと、風の刃が生まれて果物を粉砕して果汁に変えてしまうのだ。新鮮なジュースが作れると評判になっており、今回の飲み物に加えられていた。ただ、皮ごと種ごとにできてしまうのだから恐ろしいものではあるが、食材以外を入れても動かないように調整されているので安心である。
こうやって作られていった料理は、肉や魚に煮込み料理、パンやケーキにクッキーなどなど、いつもの年より実に多彩である。
さて、こうしている間にもパーティー会場には人が集まり始め、料理もぽつぽつと並べ始められていく。会場にはチェリシアとペシエラの二人の手で防護魔法が掛けられており、毒の類はすぐに無毒化されるようになっている。警備体制も万全なのだ。
会場入りした貴族たちは雑談に興じたり、並び始めた料理を味わったりと、それぞれにパーティーの開始までの時間を過ごしているようだ。
日も暮れて、室内に明かりが灯る。
パーティー会場は多くの貴族であふれかえり、魔道具によって再生されている音楽が流れ続けている。これもチェリシアが作った録音再生魔法によるものだ。楽団員の負担を減らすために作ったらしい。なにせこの年末のパーティーは六時間以上にも及ぶ。その間演奏し続けるのは苦行だから、開始前のこの時間だけでも楽ができるようにとチェリシアが事前収録していたのだ。ちなみにこれは、学園祭より前の話である。
さて、すっかり陽も落ちて、外が完全に暗くなる。
しばらくすると、室内に流れていた音楽が突然止まる。すると、宰相が声高らかに喋り始めた。
「アイヴォリーの貴族たちよ、遠いところ集まってもらいご苦労である。今年もこうして無事に国王陛下並びに女王陛下主催の年末パーティーが開催できた事を嬉しく思う」
宰相がここまで述べたところで、会場から拍手が起きる。サファイア湖や学園祭で起きた事は箝口令も敷かれていた事があって、多くの貴族の知るところではないが、一年を無事に終えられるというのはやはり安心するものなのである。
「では、開催にあたって、国王陛下、女王陛下からお言葉を頂戴したく思います」
宰相がこう宣言すれば、視線は一気に会場最奥のバルコニーへと向けられるのだった。
時刻は夕刻。外は夕焼けの空が広がっており、その中を馬車がぞろぞろと王宮の中へと吸い込まれていっている。
ロゼリアたちは昼食の席に呼ばれたとあって、朝から既に王宮の中に居た。その席にはヴァミリオ、カーマイル、プラウスの三人も居たのだが、どうにも静かすぎる。これは明らかに企んでいるなと、ペシエラはすぐに直感した。
それというのも、プラウスの態度だ。逆行前も含めて長らく親子をしているせいで、そういう癖のようなものを完全に把握してしまっている。ちなみにこの癖は、ペシエラにもしっかりと遺伝しているので、なおの更明らかなのだ。
異世界の人間であるチェリシアにはほとんど見られないサイン。それは、とにかく目が泳ぐ。隠し事をしている相手をとにかく見ないのだ。本人は見ているつもりだが、すぐに視線が外れる。モスグリネに行くきっかけになったペシエラの異変も、これによってばれたのだ。
午後になると、支度に手間取っていたマゼンダ侯爵夫人レドリスとコーラル伯爵夫人サルモアも合流する。合流した時にはロゼリアたちもドレスに着替えており、
「お母様、ああ、やはりお母様はお美しいです」
「あらあら、ロゼリア。お世辞でも嬉しいわね。あなたも綺麗よ」
母娘でお世辞の言い合いになっていた。
従者組は微笑ましくそれを見守っていたが、その中にはアイリスの姿はなかった。
なぜならアイリスも侍女服ではなくドレスに着替えていたから。チェリシア、ペシエラと一緒にサルモアとの会話に巻き込まれていた。ちなみに男性陣は別室である。
本来こういう宴の席に従者は同席しないのだが、シアン、キャノル、ライの三人は特別に参加する事になっていた。とはいえ、配膳役である。特にキャノルとライは護衛も兼ねている。なにせ宴の席の中に兵士をうろつかせるわけにもいかないからである。それくらいに二人は腕を買われていた。
厨房の方も、チェリシアが苦労して開発した小型調理窯も使って料理が次々と作られて行っている。
特にモスグリネに行っている間に開発した果汁搾り機は威力を発揮していた。装置の上の部分に果汁を搾りたい果物を入れてスイッチを押すと、風の刃が生まれて果物を粉砕して果汁に変えてしまうのだ。新鮮なジュースが作れると評判になっており、今回の飲み物に加えられていた。ただ、皮ごと種ごとにできてしまうのだから恐ろしいものではあるが、食材以外を入れても動かないように調整されているので安心である。
こうやって作られていった料理は、肉や魚に煮込み料理、パンやケーキにクッキーなどなど、いつもの年より実に多彩である。
さて、こうしている間にもパーティー会場には人が集まり始め、料理もぽつぽつと並べ始められていく。会場にはチェリシアとペシエラの二人の手で防護魔法が掛けられており、毒の類はすぐに無毒化されるようになっている。警備体制も万全なのだ。
会場入りした貴族たちは雑談に興じたり、並び始めた料理を味わったりと、それぞれにパーティーの開始までの時間を過ごしているようだ。
日も暮れて、室内に明かりが灯る。
パーティー会場は多くの貴族であふれかえり、魔道具によって再生されている音楽が流れ続けている。これもチェリシアが作った録音再生魔法によるものだ。楽団員の負担を減らすために作ったらしい。なにせこの年末のパーティーは六時間以上にも及ぶ。その間演奏し続けるのは苦行だから、開始前のこの時間だけでも楽ができるようにとチェリシアが事前収録していたのだ。ちなみにこれは、学園祭より前の話である。
さて、すっかり陽も落ちて、外が完全に暗くなる。
しばらくすると、室内に流れていた音楽が突然止まる。すると、宰相が声高らかに喋り始めた。
「アイヴォリーの貴族たちよ、遠いところ集まってもらいご苦労である。今年もこうして無事に国王陛下並びに女王陛下主催の年末パーティーが開催できた事を嬉しく思う」
宰相がここまで述べたところで、会場から拍手が起きる。サファイア湖や学園祭で起きた事は箝口令も敷かれていた事があって、多くの貴族の知るところではないが、一年を無事に終えられるというのはやはり安心するものなのである。
「では、開催にあたって、国王陛下、女王陛下からお言葉を頂戴したく思います」
宰相がこう宣言すれば、視線は一気に会場最奥のバルコニーへと向けられるのだった。
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