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第九章 大いなる秘密
第256話 二足歩行の大きな猫
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「いいですか、決して失礼のないようにお願いしますよ」
案内していた職員は、念押しのように言う。当然ながらロゼリアたちはそれを了承する。組合長の居る部屋に着くと、職員は扉をノックする。
「組合長、先ほどお話しした者たちを連れてまいりました」
「うむ、ご苦労。入っていいよ」
「はっ、失礼致します」
職員が扉を開けようとするが、ライだけが違った反応を示した。
「ん? この声、聞いた事あるわね」
中に入ると、そこに座っていたのはどういうわけか猫だった。人間並みにでかい猫だった。
「やぁ、よく来てくれたね、時の渡り子と世界の渡り子たち」
「あーっ! やっぱりケットシーじゃないの!」
両肘を机についてかっこよく決めようとした猫の言葉に、間髪入れずに響いたのは、ライの声だった。
「知ってるの?」
「知ってるも何も、元精霊で幻獣になった猫よ。同じ精霊の森の出身なんだから知ってて当然だわ」
驚いて確認するように問うロゼリアに、ライはすぐさま答えた。
「おやおや、誰かと思えば懐かしい顔だね。あの森から気配が消えたと思ったら、こんな所で会うとはね」
ケットシーはにこにこと笑っている。
「まぁね。今の私はアイリス様の従魔で、ライという名前を持っているわ」
ドヤ顔を決めるライ。それを見てケットシーは、
「すまない。ちょっと重要な話になりそうだから、君は席を外してくれたまえ。あと、そこの兵士三人もだ」
めんどくさそうになりそうだと、関係者以外に部屋から出て行ってもらった。席を外すように言われた四人は、訳が分からないよというような顔をしていたが、機密事項だから仕方がない。
「びっくりしたわ。商業組合のトップになってるなんて」
「ははっ、元々人当たりが良かったからね。口八丁なもんだから、気が付いたらこんな地位になっちまってたってわけだ」
懐かしさで盛り上がるケットシーとライ。だが、今は昔話をしている時ではない。
「そういう昔話とかは今はいいので、商会用の建物をご紹介頂けないでしょうか?」
ロゼリアがツッコミを入れると、ケットシーとライは喋るのをやめた。
「いや、すまない。懐かしい知り合いに会うとどうしてもね。で、商会用の建物の紹介だったね」
ケットシーはそう言ってヴィフレアの地図を出した。
「これはあまり出さない地図なんだが、君たちは特別だ。オリジン様から言伝を受けているからね」
どうやらガレンは一度ここに寄ったらしい。というか、ガレンはここを知っていたようだ。
「不思議な事じゃないよ。精霊王にとって、精霊の場所を把握する事は造作もないんだからね」
驚いているロゼリアたちを尻目に、ケットシーは話を進める。
「で、ちょうど良さそうな場所が空いててね。この辺りの建物なんだが、前のオーナーが亡くなられた際に引き払われて空いてるんだ」
ケットシーが指し示した場所は、大通りにある脇道との角地だった。ロゼリアたちが地図に集中している間に、ケットシーは土地の権利書を引っ張り出してきた。ペシエラがそっちに目を移すと、日付的に半年前に引き払われた事が示されていた。
「あら、思ったよりも最近ですのね」
「遺産整理で後回しになっていたようだからね。権利書が今ここにあるわけだから、売り物件である事には間違いないよ」
権利書を凝視するペシエラ。ひと通り目を通すと、視線だけケットシーの方へと向ける。
「見せて頂く事は?」
「もちろん構わないさ。半年放置されていたから、埃とか溜まっているだろうけどね」
ペシエラとケットシーが話をしていると、地図を見終わったロゼリアたちも話に加わる。
「立地もいい場所のようですし、すぐにでも行きましょう」
「うんうん、こういうのは早い方がいいわ」
三人とも腹の内は決めたようである。
「そうか、それじゃ早速行くとしよう。ボクが案内するよ」
「ケットシー自ら?!」
ケットシーがすくりと立ち上がって申し出ると、ライが一番驚いていた。
「当り前じゃないか、ライ。こんな変わった面々を一度に相手にできるなんて、そうそうある事じゃないからね」
「いや、そうじゃなくて。大きな猫が二足歩行でうろついていたら騒ぎになるんじゃ?」
「はっはっはっ! これでもボクはヴィフレアでは有名人だよ。もふりたくて集まってくるのは確かだがね!」
ライの心配をよそに、ケットシーは高笑いをしていた。アイリスとキャノルはどう反応していいのやらと、ずっと黙って立っていた。
「まぁ、そろそろ移動しようか。商談は早い方がいい」
そんなこんなで、ロゼリアたちはケットシーに連れられて、示された物件を見学しに行く事になった。
案内していた職員は、念押しのように言う。当然ながらロゼリアたちはそれを了承する。組合長の居る部屋に着くと、職員は扉をノックする。
「組合長、先ほどお話しした者たちを連れてまいりました」
「うむ、ご苦労。入っていいよ」
「はっ、失礼致します」
職員が扉を開けようとするが、ライだけが違った反応を示した。
「ん? この声、聞いた事あるわね」
中に入ると、そこに座っていたのはどういうわけか猫だった。人間並みにでかい猫だった。
「やぁ、よく来てくれたね、時の渡り子と世界の渡り子たち」
「あーっ! やっぱりケットシーじゃないの!」
両肘を机についてかっこよく決めようとした猫の言葉に、間髪入れずに響いたのは、ライの声だった。
「知ってるの?」
「知ってるも何も、元精霊で幻獣になった猫よ。同じ精霊の森の出身なんだから知ってて当然だわ」
驚いて確認するように問うロゼリアに、ライはすぐさま答えた。
「おやおや、誰かと思えば懐かしい顔だね。あの森から気配が消えたと思ったら、こんな所で会うとはね」
ケットシーはにこにこと笑っている。
「まぁね。今の私はアイリス様の従魔で、ライという名前を持っているわ」
ドヤ顔を決めるライ。それを見てケットシーは、
「すまない。ちょっと重要な話になりそうだから、君は席を外してくれたまえ。あと、そこの兵士三人もだ」
めんどくさそうになりそうだと、関係者以外に部屋から出て行ってもらった。席を外すように言われた四人は、訳が分からないよというような顔をしていたが、機密事項だから仕方がない。
「びっくりしたわ。商業組合のトップになってるなんて」
「ははっ、元々人当たりが良かったからね。口八丁なもんだから、気が付いたらこんな地位になっちまってたってわけだ」
懐かしさで盛り上がるケットシーとライ。だが、今は昔話をしている時ではない。
「そういう昔話とかは今はいいので、商会用の建物をご紹介頂けないでしょうか?」
ロゼリアがツッコミを入れると、ケットシーとライは喋るのをやめた。
「いや、すまない。懐かしい知り合いに会うとどうしてもね。で、商会用の建物の紹介だったね」
ケットシーはそう言ってヴィフレアの地図を出した。
「これはあまり出さない地図なんだが、君たちは特別だ。オリジン様から言伝を受けているからね」
どうやらガレンは一度ここに寄ったらしい。というか、ガレンはここを知っていたようだ。
「不思議な事じゃないよ。精霊王にとって、精霊の場所を把握する事は造作もないんだからね」
驚いているロゼリアたちを尻目に、ケットシーは話を進める。
「で、ちょうど良さそうな場所が空いててね。この辺りの建物なんだが、前のオーナーが亡くなられた際に引き払われて空いてるんだ」
ケットシーが指し示した場所は、大通りにある脇道との角地だった。ロゼリアたちが地図に集中している間に、ケットシーは土地の権利書を引っ張り出してきた。ペシエラがそっちに目を移すと、日付的に半年前に引き払われた事が示されていた。
「あら、思ったよりも最近ですのね」
「遺産整理で後回しになっていたようだからね。権利書が今ここにあるわけだから、売り物件である事には間違いないよ」
権利書を凝視するペシエラ。ひと通り目を通すと、視線だけケットシーの方へと向ける。
「見せて頂く事は?」
「もちろん構わないさ。半年放置されていたから、埃とか溜まっているだろうけどね」
ペシエラとケットシーが話をしていると、地図を見終わったロゼリアたちも話に加わる。
「立地もいい場所のようですし、すぐにでも行きましょう」
「うんうん、こういうのは早い方がいいわ」
三人とも腹の内は決めたようである。
「そうか、それじゃ早速行くとしよう。ボクが案内するよ」
「ケットシー自ら?!」
ケットシーがすくりと立ち上がって申し出ると、ライが一番驚いていた。
「当り前じゃないか、ライ。こんな変わった面々を一度に相手にできるなんて、そうそうある事じゃないからね」
「いや、そうじゃなくて。大きな猫が二足歩行でうろついていたら騒ぎになるんじゃ?」
「はっはっはっ! これでもボクはヴィフレアでは有名人だよ。もふりたくて集まってくるのは確かだがね!」
ライの心配をよそに、ケットシーは高笑いをしていた。アイリスとキャノルはどう反応していいのやらと、ずっと黙って立っていた。
「まぁ、そろそろ移動しようか。商談は早い方がいい」
そんなこんなで、ロゼリアたちはケットシーに連れられて、示された物件を見学しに行く事になった。
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