逆行令嬢と転生ヒロイン

未羊

文字の大きさ
上 下
243 / 465
第九章 大いなる秘密

第240話 つじつま合わせ?

しおりを挟む
「オリジン様にお会いしたい? 本気で言っているの?」
 ピンクの妖精は驚いている。
「もちろんよ。すべての根源たる妖精王であられるオリジン様なら、ペシエラを助けられると思って。お願いできないかしら」
 ロゼリアは目の前の妖精をじっと見ている。その表情の真剣さに、妖精は戸惑っている。
「んー……、私じゃどうする事もできないわ。オリジン様は私たちのような下の者にはあまりお会いして下さらないもの」
 伏し目がちに妖精はそう答える。表情も態度も、どうやら嘘ではないと示していた。せっかく妖精たちに会えたというのに、肝心のオリジンにお目通しが叶いそうにないのでは意味がない。ロゼリアは悩んだ。
 その後ろでは、ライと数人の妖精がわいわいと盛り上がっている。堕妖精がまともに振舞っている理由が気になったからのようだ。ライが経緯を説明しているが、妖精たちは信じられないような反応をしていた。
「それよりも、私の呪いってどういう事なのですの?」
 ロゼリアと話をする妖精に、ペシエラがやって来て話し掛ける。
「呪いは呪いよ。掛けたのは誰か分からないけど、かなり強力なものよ。私たちじゃ解けやしないくらいのね」
 どうやら妖精は、呪いが掛けられている事が分かるだけで、その詳細までは分からないようだ。
「……その呪いのせいで、魔法を使おうとすると激痛が走るのね。まったく、姑息な真似をしてくれるわね」
「やっぱり激痛が走るのね、ペシエラ」
「話してたとおりね。ルゼもライも予想で話してたし、なにより主人の主人であるペシエラを攻撃する理由はないわ」
 険しく鋭い目つきで毒を吐くペシエラ。その様子を見ながら、ロゼリアとチェリシアは予想が合っていた事を確認していた。
「ペシエラにだけそんな呪いを掛けるなんて、一体誰がそんな事を……」
 チェリシアは、ペシエラを見ながらおどおどとしている。
「……心当たりがあると言えば、あるかも知れないわね」
 ロゼリアは顎に手を当ててしばらく考えていたが、思いついた推測があるというような口ぶりを見せる。
「それはどういう?」
「逆行前にはペシエラは居ない存在だったのよ? それに……」
 チェリシアが尋ねるので、ロゼリアはそれに答え始める。
「それに?」
「チェリシアの前世であったゲームにも、ペシエラは居なかったのでしょう?」
「うん、語られてないだけかも知れないけど、居なかったよ」
 確認するようにロゼリアが聞けば、チェリシアは肯定して頷く。
「今更ながらに、そのゲームの強制力みたいなのを発動してきた可能性があるわね。チェリシアはペシエラを溺愛してるような節があるから、ここでペシエラを消せば、シナリオ通りに私と仲違いできるとでも踏んだんでしょう」
「なんだと?!」
 ロゼリアが推測を述べれば、大声で反応したのはチェリシアでもペシエラでもなく、シルヴァノとペイルだった。
「しかし、そのゲームとやらは何なんだ?」
「さぁ? チェリシアの前世の世界には、私たちが登場するゲームなるものがあったらしいわ。そこではヒロインと呼ばれる主人公がチェリシアで、私は敵対する悪役令嬢というものらしいの」
 二人の王子に聞かれてしまったので、埒が明かないと判断したロゼリアは、チェリシアの事も全部打ち明けてしまった。チェリシアも了承したとはいえ、その本人はどこか恥ずかしそうにしていた。
「なるほど、そのゲームとやらではペシエラは居ない存在だから、今更ながらにつじつまを合わせようとして呪いを掛けたと、そういう推理なわけか」
「世の中不思議な事がたくさんありますから、そういう事も考えられなくはないですね」
 ペイルもシルヴァノも、意外とあっさり受け入れたようだ。
「ですが、そんなくだらない理由で私の婚約者を亡き者にされては困ります。その姿があるというのなら、気の済むまでその身に恐怖を叩きこんでやりたいですね」
 何かシルヴァノが怖い事を言っている。シルヴァノはこんなキャラだっただろうかと、ロゼリアもチェリシアも首を傾げている。その横ではペシエラが、口論している妖精を鷲掴みにしたまま頬を赤くしていた。
「はっはっはっ、なかなか心強い事を言ってくれるな」
 突如として、聞いた事のあるような声が響き渡った。
「オリジン様?」
 ペシエラに掴まれていた妖精が叫ぶ。どうやら声の主は、精霊王であるオリジンのようだった。
 次の瞬間、ロゼリアの前に現れたのは、ロゼリアたちのよく知る人物だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あの子を甘やかして幸せにスローライフする為の、はずれスキル7回の使い方

tea
ファンタジー
はずれスキル持ちなので、十八になったら田舎でスローライフしようと都落ちの日を心待ちにしていた。 しかし、何故かギルマスのゴリ押しで問答無用とばかりに女勇者のパーティーに組み込まれてしまった。 追放(解放)してもらうため、はずれスキルの無駄遣いをしながら過去に心の傷を負っていた女勇者を無責任に甘やかしていたら、女勇者から慕われ懐かれ、かえって放してもらえなくなってしまったのだが? どうなる俺の田舎でのスローライフ???

便利スキル持ちなんちゃってハンクラーが行く! 生きていける範疇でいいんです異世界転生

翁小太
ファンタジー
 無意識に前世の記憶に振り回されていたせいで魔導の森と呼ばれる禍々しい場所にドナドナされたユーラス(8歳)が、前世の記憶をハッキリ取り戻し、それまで役に立たないと思われていた自らのスキルの意味をようやく理解する。 「これって異世界で日本のものを取り寄せられる系便利スキルなのでは?」  そうしてユーラスは前世なんちゃってハンクラ―だった自分の持ち前の微妙な腕で作った加工品を細々売りながら生活しようと決意する。しかし、人里特に好きじゃない野郎のユーラスはなんとか人に会わずに人と取引できないかと画策する。 「夜のうちにお仕事かたずけてくれる系妖精は実在するというていで行こう」 ――――――――――――――――― 更新再開しました(2018.04.01)

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

【完結】わたくし、悪役令嬢のはずですわ……よね?〜ヒロインが猫!?本能に負けないで攻略してくださいませ!

碧桜 汐香
恋愛
ある日突然、自分の前世を思い出したナリアンヌ・ハーマート公爵令嬢。 この世界は、自分が悪役令嬢の乙女ゲームの世界!? そう思って、ヒロインの登場に備えて対策を練るナリアンヌ。 しかし、いざ登場したヒロインの挙動がおかしすぎます!? 逆ハールート狙いのはずなのに、まるで子猫のような行動ばかり。 ヒロインに振り回されるナリアンヌの運命は、国外追放?それとも? 他サイト様にも掲載しております

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

転生 上杉謙信の弟 兄に殺されたくないので全力を尽くします!

克全
ファンタジー
上杉謙信の弟に転生したウェブ仮想戦記作家は、四兄の上杉謙信や長兄の長尾晴景に殺されないように動く。特に黒滝城主の黒田秀忠の叛乱によって次兄や三兄と一緒に殺されないように知恵を絞る。一切の自重をせすに前世の知識を使って農業改革に産業改革、軍事改革を行って日本を統一にまい進する。

悪役令嬢ですが最強ですよ??

鈴の音
ファンタジー
乙女ゲームでありながら戦闘ゲームでもあるこの世界の悪役令嬢である私、前世の記憶があります。 で??ヒロインを怖がるかって?ありえないw ここはゲームじゃないですからね!しかも、私ゲームと違って何故か魂がすごく特別らしく、全属性持ちの神と精霊の愛し子なのですよ。 だからなにかあっても死なないから怖くないのでしてよw 主人公最強系の話です。 苦手な方はバックで!

処理中です...