236 / 545
第九章 大いなる秘密
第233話 手立てを探して(ライ
しおりを挟む
アイリスたちが落ち着いたところで、ロゼリアが話を切り出した。
「先程も言いました通り、ペシエラの事で話があるの」
「ペシエラ様の事でですか?」
余裕のあるアイリスが反応する。
「ええ。ちょっと以前にライが言った言葉が気になってね」
「私の……ですか?」
ロゼリアが顔を斜め下に向けて考え込む仕草をしながら話すと、当のライが驚いたように反応した。
「ええ。魔法を使うのにも代償がって言っていたでしょう? それが今になって引っかかったのよ」
ロゼリアがそう話せば、ライは驚き、キャノルは分からないという顔をして、アイリスに至っては眉を寄せた。この三者三様の反応を、ロゼリアは見逃さなかった。
「チェリシアから聞いたんだけど、最近、ペシエラは魔法を使う様子が見られないそうよ。あれだけ大規模魔法を頻繁に使っていたのによ? そこで私たちが引っ掛かったのが、ライが話してた”禁法と代償”なのよ」
アイリスたち三人が、頭に『?』を浮かべている。どうやらよく理解できないようだ。
「私から説明するわね」
ここで出てきたのはチェリシアだった。
「この世界では魔法は最低十歳からっていう話でしょ?」
「ええ、そうですね」
チェリシアが確認するように尋ねると、肯定の反応を示したのはなんと魔物であるライだった。
「実は、私たちは十歳よりも前から魔法を使ってたのよ。ロゼリアと私は八歳、ペシエラに至っては七歳からね」
「えぇ?!」
「そんなバカな」
ライとキャノルは大きく驚いた。だが、アイリスだけは黙ったままだった。
「あたいでも使えるようになったのは十一歳だぞ。ありえるのか、そんな事」
「でも、本当なのよね。カイスの村の近くで起きた魔物反乱を鎮めたの、私たちなんだから」
キャノルの叫びを、ロゼリアが一蹴してしまう。ロゼリアが言い放った話に、キャノルは口を開けて黙り込んでしまった。
「チェリシアが防護魔法で結界を張って、ペシエラが光魔法で魔物を倒したのよ。私も手伝ったけど、ほとんど二人でやったようなものだったわ」
「何言ってるの。ロゼリアが泥で暗龍の足元を崩してくれたおかげじゃないの」
目の前で繰り広げられるロゼリアとチェリシアの口喧嘩。アイリスは落ち着いているものの、情報の処理が追い付かない。しかし、アイリスはある単語に気が付いた。さすが落ち着いている。
「ちょっと待って下さい。暗龍って仰いましたよね?」
「そうよ、正確には厄災の暗龍よ。アイリスにはニーズヘッグと言った方が通じるかしら」
「ええええっ!?」
アイリスの絶叫がこだまする。
「ニーズヘッグを倒したって事? 幻獣相手に信じられません」
「いや、あの時は瘴気を吸って魔物化していたし、放っておくと危険だったから」
アイリスが騒ぎ、ロゼリアは宥めようとするがらちが明きそうにない。チェリシアは無視して話を進める。
「とまあ、ペシエラが最初に大規模魔法を使ったのはこの時ね。それまで簡単なのは練習していたけど」
「ふむふむ」
「ロゼリアと私はそれまでは簡単な魔法だけだったし、大規模な魔法は十歳になってからだから、禁法に触れたとしても知れてるはずなの」
ここまでの説明で、まともについてきているのはライだけである。
「で、ここからが本題。こうして考えるに、ペシエラは十歳までに大規模な魔法を使った事で、危険な状態にあると考えてるの。ルゼさんに確認したら、魔法を使うと激痛に襲われてるんじゃないかって言われたわ」
チェリシアがこう説明すると、ライが顎に手を当てて考え始めた。
「……十分考えられますね。一番魔法に詳しいのは私ですけれど、私もルゼと同じに考えます。魔法を使わなければ多分、普通に生きる事はできるでしょう。でも、魔法はたとえ小規模であっても、使えば相当に寿命を縮める事になると思いますよ」
ライの出した答えも、ルゼとほぼ同じであった。つまり、ペシエラにこれ以上の魔法は使わせられないという事になる。
「あ、でも、そういう事に詳しい方なら知ってますよ。解決できなくても軽減は可能かと思います」
「本当なの?!」
ライが思い出したように言えば、ロゼリアが勢いよくライに掴みかかった。
「あっ、はい。私たち妖精の間では有名な方ですので」
「誰なの、ねえ、教えなさいっ!」
ライを掴んで前後に揺らすロゼリア。それをチェリシアが慌てて止めに入る。
「やめて下さい、ロゼリア。ライさんが話せないじゃないの」
チェリシアの声で、ロゼリアはライを揺らすのをやめる。そして、
「ごめんなさい。友人の事を思うとつい、力が入ってしまったわ」
申し訳なさそうに謝った。
ライが揺れから落ち着くのを待って、ライからの発言を待つロゼリアたち。落ち着いたライは、気を取り直すように一度目を伏せた。
「ふぅ、さすがにびっくりしたわよ、ロゼリア様」
「ごめんなさい」
落ち着いたライが放った言葉に、ロゼリアはもう一度謝る。その様子を見たライは、一度辺りを見回した後、ついにその名を口にした。
「私たち、妖精や精霊の長、すべてを統べる精霊王オリジン様です」
「先程も言いました通り、ペシエラの事で話があるの」
「ペシエラ様の事でですか?」
余裕のあるアイリスが反応する。
「ええ。ちょっと以前にライが言った言葉が気になってね」
「私の……ですか?」
ロゼリアが顔を斜め下に向けて考え込む仕草をしながら話すと、当のライが驚いたように反応した。
「ええ。魔法を使うのにも代償がって言っていたでしょう? それが今になって引っかかったのよ」
ロゼリアがそう話せば、ライは驚き、キャノルは分からないという顔をして、アイリスに至っては眉を寄せた。この三者三様の反応を、ロゼリアは見逃さなかった。
「チェリシアから聞いたんだけど、最近、ペシエラは魔法を使う様子が見られないそうよ。あれだけ大規模魔法を頻繁に使っていたのによ? そこで私たちが引っ掛かったのが、ライが話してた”禁法と代償”なのよ」
アイリスたち三人が、頭に『?』を浮かべている。どうやらよく理解できないようだ。
「私から説明するわね」
ここで出てきたのはチェリシアだった。
「この世界では魔法は最低十歳からっていう話でしょ?」
「ええ、そうですね」
チェリシアが確認するように尋ねると、肯定の反応を示したのはなんと魔物であるライだった。
「実は、私たちは十歳よりも前から魔法を使ってたのよ。ロゼリアと私は八歳、ペシエラに至っては七歳からね」
「えぇ?!」
「そんなバカな」
ライとキャノルは大きく驚いた。だが、アイリスだけは黙ったままだった。
「あたいでも使えるようになったのは十一歳だぞ。ありえるのか、そんな事」
「でも、本当なのよね。カイスの村の近くで起きた魔物反乱を鎮めたの、私たちなんだから」
キャノルの叫びを、ロゼリアが一蹴してしまう。ロゼリアが言い放った話に、キャノルは口を開けて黙り込んでしまった。
「チェリシアが防護魔法で結界を張って、ペシエラが光魔法で魔物を倒したのよ。私も手伝ったけど、ほとんど二人でやったようなものだったわ」
「何言ってるの。ロゼリアが泥で暗龍の足元を崩してくれたおかげじゃないの」
目の前で繰り広げられるロゼリアとチェリシアの口喧嘩。アイリスは落ち着いているものの、情報の処理が追い付かない。しかし、アイリスはある単語に気が付いた。さすが落ち着いている。
「ちょっと待って下さい。暗龍って仰いましたよね?」
「そうよ、正確には厄災の暗龍よ。アイリスにはニーズヘッグと言った方が通じるかしら」
「ええええっ!?」
アイリスの絶叫がこだまする。
「ニーズヘッグを倒したって事? 幻獣相手に信じられません」
「いや、あの時は瘴気を吸って魔物化していたし、放っておくと危険だったから」
アイリスが騒ぎ、ロゼリアは宥めようとするがらちが明きそうにない。チェリシアは無視して話を進める。
「とまあ、ペシエラが最初に大規模魔法を使ったのはこの時ね。それまで簡単なのは練習していたけど」
「ふむふむ」
「ロゼリアと私はそれまでは簡単な魔法だけだったし、大規模な魔法は十歳になってからだから、禁法に触れたとしても知れてるはずなの」
ここまでの説明で、まともについてきているのはライだけである。
「で、ここからが本題。こうして考えるに、ペシエラは十歳までに大規模な魔法を使った事で、危険な状態にあると考えてるの。ルゼさんに確認したら、魔法を使うと激痛に襲われてるんじゃないかって言われたわ」
チェリシアがこう説明すると、ライが顎に手を当てて考え始めた。
「……十分考えられますね。一番魔法に詳しいのは私ですけれど、私もルゼと同じに考えます。魔法を使わなければ多分、普通に生きる事はできるでしょう。でも、魔法はたとえ小規模であっても、使えば相当に寿命を縮める事になると思いますよ」
ライの出した答えも、ルゼとほぼ同じであった。つまり、ペシエラにこれ以上の魔法は使わせられないという事になる。
「あ、でも、そういう事に詳しい方なら知ってますよ。解決できなくても軽減は可能かと思います」
「本当なの?!」
ライが思い出したように言えば、ロゼリアが勢いよくライに掴みかかった。
「あっ、はい。私たち妖精の間では有名な方ですので」
「誰なの、ねえ、教えなさいっ!」
ライを掴んで前後に揺らすロゼリア。それをチェリシアが慌てて止めに入る。
「やめて下さい、ロゼリア。ライさんが話せないじゃないの」
チェリシアの声で、ロゼリアはライを揺らすのをやめる。そして、
「ごめんなさい。友人の事を思うとつい、力が入ってしまったわ」
申し訳なさそうに謝った。
ライが揺れから落ち着くのを待って、ライからの発言を待つロゼリアたち。落ち着いたライは、気を取り直すように一度目を伏せた。
「ふぅ、さすがにびっくりしたわよ、ロゼリア様」
「ごめんなさい」
落ち着いたライが放った言葉に、ロゼリアはもう一度謝る。その様子を見たライは、一度辺りを見回した後、ついにその名を口にした。
「私たち、妖精や精霊の長、すべてを統べる精霊王オリジン様です」
1
お気に入りに追加
94
あなたにおすすめの小説

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

元英雄 これからは命大事にでいきます
銀塊 メウ
ファンタジー
異世界グリーンプラネットでの
魔王との激しい死闘を
終え元の世界に帰還した英雄 八雲
多くの死闘で疲弊したことで、
これからは『命大事に』を心に決め、
落ち着いた生活をしようと思う。
こちらの世界にも妖魔と言う
化物が現れなんだかんだで
戦う羽目に………寿命を削り闘う八雲、
とうとう寿命が一桁にどうするのよ〜
八雲は寿命を伸ばすために再び
異世界へ戻る。そして、そこでは
新たな闘いが始まっていた。
八雲は運命の時の流れに翻弄され
苦悩しながらも魔王を超えた
存在と対峙する。
この話は心優しき青年が、神からのギフト
『ライフ』を使ってお助けする話です。

転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

可笑しな漫画家が異世界転生した模様。ーただの神様達と神獣や少女で漫画家を困らせるようです。ー
影狼
ファンタジー
これはただの、物語です。
可笑しな漫画家が、異世界転生した模様を冷たい目で見てやってください。
どうぞ、案内人であり『かの劇場のモノ』と共にお楽しみくださいませ。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

隠密スキルでコレクター道まっしぐら
たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。
その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。
しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。
奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。
これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる