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第九章 大いなる秘密
第233話 手立てを探して(ライ
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アイリスたちが落ち着いたところで、ロゼリアが話を切り出した。
「先程も言いました通り、ペシエラの事で話があるの」
「ペシエラ様の事でですか?」
余裕のあるアイリスが反応する。
「ええ。ちょっと以前にライが言った言葉が気になってね」
「私の……ですか?」
ロゼリアが顔を斜め下に向けて考え込む仕草をしながら話すと、当のライが驚いたように反応した。
「ええ。魔法を使うのにも代償がって言っていたでしょう? それが今になって引っかかったのよ」
ロゼリアがそう話せば、ライは驚き、キャノルは分からないという顔をして、アイリスに至っては眉を寄せた。この三者三様の反応を、ロゼリアは見逃さなかった。
「チェリシアから聞いたんだけど、最近、ペシエラは魔法を使う様子が見られないそうよ。あれだけ大規模魔法を頻繁に使っていたのによ? そこで私たちが引っ掛かったのが、ライが話してた”禁法と代償”なのよ」
アイリスたち三人が、頭に『?』を浮かべている。どうやらよく理解できないようだ。
「私から説明するわね」
ここで出てきたのはチェリシアだった。
「この世界では魔法は最低十歳からっていう話でしょ?」
「ええ、そうですね」
チェリシアが確認するように尋ねると、肯定の反応を示したのはなんと魔物であるライだった。
「実は、私たちは十歳よりも前から魔法を使ってたのよ。ロゼリアと私は八歳、ペシエラに至っては七歳からね」
「えぇ?!」
「そんなバカな」
ライとキャノルは大きく驚いた。だが、アイリスだけは黙ったままだった。
「あたいでも使えるようになったのは十一歳だぞ。ありえるのか、そんな事」
「でも、本当なのよね。カイスの村の近くで起きた魔物反乱を鎮めたの、私たちなんだから」
キャノルの叫びを、ロゼリアが一蹴してしまう。ロゼリアが言い放った話に、キャノルは口を開けて黙り込んでしまった。
「チェリシアが防護魔法で結界を張って、ペシエラが光魔法で魔物を倒したのよ。私も手伝ったけど、ほとんど二人でやったようなものだったわ」
「何言ってるの。ロゼリアが泥で暗龍の足元を崩してくれたおかげじゃないの」
目の前で繰り広げられるロゼリアとチェリシアの口喧嘩。アイリスは落ち着いているものの、情報の処理が追い付かない。しかし、アイリスはある単語に気が付いた。さすが落ち着いている。
「ちょっと待って下さい。暗龍って仰いましたよね?」
「そうよ、正確には厄災の暗龍よ。アイリスにはニーズヘッグと言った方が通じるかしら」
「ええええっ!?」
アイリスの絶叫がこだまする。
「ニーズヘッグを倒したって事? 幻獣相手に信じられません」
「いや、あの時は瘴気を吸って魔物化していたし、放っておくと危険だったから」
アイリスが騒ぎ、ロゼリアは宥めようとするがらちが明きそうにない。チェリシアは無視して話を進める。
「とまあ、ペシエラが最初に大規模魔法を使ったのはこの時ね。それまで簡単なのは練習していたけど」
「ふむふむ」
「ロゼリアと私はそれまでは簡単な魔法だけだったし、大規模な魔法は十歳になってからだから、禁法に触れたとしても知れてるはずなの」
ここまでの説明で、まともについてきているのはライだけである。
「で、ここからが本題。こうして考えるに、ペシエラは十歳までに大規模な魔法を使った事で、危険な状態にあると考えてるの。ルゼさんに確認したら、魔法を使うと激痛に襲われてるんじゃないかって言われたわ」
チェリシアがこう説明すると、ライが顎に手を当てて考え始めた。
「……十分考えられますね。一番魔法に詳しいのは私ですけれど、私もルゼと同じに考えます。魔法を使わなければ多分、普通に生きる事はできるでしょう。でも、魔法はたとえ小規模であっても、使えば相当に寿命を縮める事になると思いますよ」
ライの出した答えも、ルゼとほぼ同じであった。つまり、ペシエラにこれ以上の魔法は使わせられないという事になる。
「あ、でも、そういう事に詳しい方なら知ってますよ。解決できなくても軽減は可能かと思います」
「本当なの?!」
ライが思い出したように言えば、ロゼリアが勢いよくライに掴みかかった。
「あっ、はい。私たち妖精の間では有名な方ですので」
「誰なの、ねえ、教えなさいっ!」
ライを掴んで前後に揺らすロゼリア。それをチェリシアが慌てて止めに入る。
「やめて下さい、ロゼリア。ライさんが話せないじゃないの」
チェリシアの声で、ロゼリアはライを揺らすのをやめる。そして、
「ごめんなさい。友人の事を思うとつい、力が入ってしまったわ」
申し訳なさそうに謝った。
ライが揺れから落ち着くのを待って、ライからの発言を待つロゼリアたち。落ち着いたライは、気を取り直すように一度目を伏せた。
「ふぅ、さすがにびっくりしたわよ、ロゼリア様」
「ごめんなさい」
落ち着いたライが放った言葉に、ロゼリアはもう一度謝る。その様子を見たライは、一度辺りを見回した後、ついにその名を口にした。
「私たち、妖精や精霊の長、すべてを統べる精霊王オリジン様です」
「先程も言いました通り、ペシエラの事で話があるの」
「ペシエラ様の事でですか?」
余裕のあるアイリスが反応する。
「ええ。ちょっと以前にライが言った言葉が気になってね」
「私の……ですか?」
ロゼリアが顔を斜め下に向けて考え込む仕草をしながら話すと、当のライが驚いたように反応した。
「ええ。魔法を使うのにも代償がって言っていたでしょう? それが今になって引っかかったのよ」
ロゼリアがそう話せば、ライは驚き、キャノルは分からないという顔をして、アイリスに至っては眉を寄せた。この三者三様の反応を、ロゼリアは見逃さなかった。
「チェリシアから聞いたんだけど、最近、ペシエラは魔法を使う様子が見られないそうよ。あれだけ大規模魔法を頻繁に使っていたのによ? そこで私たちが引っ掛かったのが、ライが話してた”禁法と代償”なのよ」
アイリスたち三人が、頭に『?』を浮かべている。どうやらよく理解できないようだ。
「私から説明するわね」
ここで出てきたのはチェリシアだった。
「この世界では魔法は最低十歳からっていう話でしょ?」
「ええ、そうですね」
チェリシアが確認するように尋ねると、肯定の反応を示したのはなんと魔物であるライだった。
「実は、私たちは十歳よりも前から魔法を使ってたのよ。ロゼリアと私は八歳、ペシエラに至っては七歳からね」
「えぇ?!」
「そんなバカな」
ライとキャノルは大きく驚いた。だが、アイリスだけは黙ったままだった。
「あたいでも使えるようになったのは十一歳だぞ。ありえるのか、そんな事」
「でも、本当なのよね。カイスの村の近くで起きた魔物反乱を鎮めたの、私たちなんだから」
キャノルの叫びを、ロゼリアが一蹴してしまう。ロゼリアが言い放った話に、キャノルは口を開けて黙り込んでしまった。
「チェリシアが防護魔法で結界を張って、ペシエラが光魔法で魔物を倒したのよ。私も手伝ったけど、ほとんど二人でやったようなものだったわ」
「何言ってるの。ロゼリアが泥で暗龍の足元を崩してくれたおかげじゃないの」
目の前で繰り広げられるロゼリアとチェリシアの口喧嘩。アイリスは落ち着いているものの、情報の処理が追い付かない。しかし、アイリスはある単語に気が付いた。さすが落ち着いている。
「ちょっと待って下さい。暗龍って仰いましたよね?」
「そうよ、正確には厄災の暗龍よ。アイリスにはニーズヘッグと言った方が通じるかしら」
「ええええっ!?」
アイリスの絶叫がこだまする。
「ニーズヘッグを倒したって事? 幻獣相手に信じられません」
「いや、あの時は瘴気を吸って魔物化していたし、放っておくと危険だったから」
アイリスが騒ぎ、ロゼリアは宥めようとするがらちが明きそうにない。チェリシアは無視して話を進める。
「とまあ、ペシエラが最初に大規模魔法を使ったのはこの時ね。それまで簡単なのは練習していたけど」
「ふむふむ」
「ロゼリアと私はそれまでは簡単な魔法だけだったし、大規模な魔法は十歳になってからだから、禁法に触れたとしても知れてるはずなの」
ここまでの説明で、まともについてきているのはライだけである。
「で、ここからが本題。こうして考えるに、ペシエラは十歳までに大規模な魔法を使った事で、危険な状態にあると考えてるの。ルゼさんに確認したら、魔法を使うと激痛に襲われてるんじゃないかって言われたわ」
チェリシアがこう説明すると、ライが顎に手を当てて考え始めた。
「……十分考えられますね。一番魔法に詳しいのは私ですけれど、私もルゼと同じに考えます。魔法を使わなければ多分、普通に生きる事はできるでしょう。でも、魔法はたとえ小規模であっても、使えば相当に寿命を縮める事になると思いますよ」
ライの出した答えも、ルゼとほぼ同じであった。つまり、ペシエラにこれ以上の魔法は使わせられないという事になる。
「あ、でも、そういう事に詳しい方なら知ってますよ。解決できなくても軽減は可能かと思います」
「本当なの?!」
ライが思い出したように言えば、ロゼリアが勢いよくライに掴みかかった。
「あっ、はい。私たち妖精の間では有名な方ですので」
「誰なの、ねえ、教えなさいっ!」
ライを掴んで前後に揺らすロゼリア。それをチェリシアが慌てて止めに入る。
「やめて下さい、ロゼリア。ライさんが話せないじゃないの」
チェリシアの声で、ロゼリアはライを揺らすのをやめる。そして、
「ごめんなさい。友人の事を思うとつい、力が入ってしまったわ」
申し訳なさそうに謝った。
ライが揺れから落ち着くのを待って、ライからの発言を待つロゼリアたち。落ち着いたライは、気を取り直すように一度目を伏せた。
「ふぅ、さすがにびっくりしたわよ、ロゼリア様」
「ごめんなさい」
落ち着いたライが放った言葉に、ロゼリアはもう一度謝る。その様子を見たライは、一度辺りを見回した後、ついにその名を口にした。
「私たち、妖精や精霊の長、すべてを統べる精霊王オリジン様です」
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