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第九章 大いなる秘密
第232話 次の目的地
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ロゼリアは慌ただしくライの居る場所へと向かう。今日はアイリスについて行って、キャノルと一緒に王宮に居る予定となっている。
「ロゼリア、そんなに強く引っ張らないで」
「落ち着いていられないわよ。私だって八歳で魔法を使っているのだから、他人事じゃないわ」
そう、ロゼリアが慌てる理由はここにもあったのだ。ロゼリアもチェリシアの案で塩を作る際に魔法を使っている。それが八歳の時なのだから、魔法の使用頻度と規模ではペシエラに及ばないものの、何らかの代償を負っている可能性があるのだ。
「あ……、私のせいで……」
「チェリシア、魔法を使ったのは私の意思よ。あなたはそこまで気負う必要はないわ。でも、どうしても気にするのだったら、方法を探すのに付き合いなさい」
「うん。友人と妹のためだものね」
ロゼリアの言い分に同意したチェリシア。そうこうしているうちに、二人は王宮へとやって来た。だが、入るための用事が思いつかなったのか、二人は門の前で立ち往生していた。
「おや、ロゼリア嬢とチェリシア嬢ではないですか。ペシエラ嬢をお迎えに来たのですか?」
そこに通りかかったのはチークウッド。それと、
「ロゼリア、こんな所で何をしているんだ」
「お兄様!」
カーマイルだった。
「あの、私の侍女であるキャノルやライを呼びに来たんですけれど、王宮にその程度の用事で入っていいのか迷ってまして……」
チェリシアが両手の人差し指を突きながら、恥ずかしそうに言うと、
「外に呼んで来てもらうわけにはいかないのか?」
カーマイルがさも当然と言わんばかりにそう言う。まぁ真っ当な意見ではあるが。
「ちょっと内密な話をしたいので、あまり目立つ場所いうわけにはまいりませんの」
それに食い掛ったのはロゼリアだった。
「だったら、私たちについてくればいいよ。ちょうど話がしたくて呼んだとでも言えば大丈夫だから」
二人の態度に何かを察したのか、チークウッドがそう提案してきた。ロゼリアたちはこれに乗っかった。
チークウッドの協力で、無事に王宮の中に入ったロゼリアとチェリシアは、キャノルとライの居る部屋まで案内される。
「この部屋に居るみたいだから、ゆっくり気の済むまで話をするといいよ」
「ありがとうございますわ、チークウッド様」
「相変わらず、可愛いが可愛げのない妹だな」
「お兄様、もう少し素直になってはいかがですか?」
「私はいつも素直だが?」
「おいおい、兄妹げんかを王宮の廊下でするのはやめてくれ。カーマイル、私たちは報告に戻らないと、な」
チークウッドに礼を言うロゼリアに不機嫌になるカーマイル。そのせいか、ロゼリアに愚痴を言ってけんかになりかけるも、チークウッドの仲裁でとりあえず収まった。
「じゃあ、私たちはこれで失礼するよ」
「はい、ありがとうございました」
手を振って歩いていくチークウッドを、ロゼリアとチェリシアは頭を下げて見送った。チークウッドの隣ではカーマイルが不機嫌そうにしていたが、ロゼリアはそれを知らないふりしておいた。
「さて、参りましょう、チェリシア」
「え、ええ」
改めて二人になったところで、ロゼリアが扉を叩いて合図する。
「どちら様ですか?」
中から聞き慣れない壮年女性の声が聞こえてくる。
「マゼンダ侯爵家ロゼリアとコーラル伯爵家チェリシアでございます。私どもの侍女がこちらに居ると伺いまして、尋ねさせて頂きました」
ロゼリアが問い掛けに返答する。
「そうですか、ちょうど一段落したところですのでよいでしょう。お入りなさい」
「失礼致します」
中に入ったロゼリアたちは、ぎょっと驚いた。部屋の中ではキャノルとライが息を上げているのに、アイリスだけが平然と立っていたのだ。
「これはロゼリア様とチェリシア様。このような場所に何の御用ですか?」
教育係と思われる女性は、邪魔と言わんばかりに刺々しい物言いをしてくる。いくらなんでも、王子の婚約者の姉と友人に対する態度ではない。
「あら、お邪魔でしたかしら。ですが、早急にこちらの者たちと話をしなければならない用件がありましてね。ええ、ペシエラの事に関してですけれど、あなたは席を外してもらえないかしら」
カチンときたのか、ロゼリアは言い回しを変えて、「部外者は消えなさい」と伝える。すると、教育係はぐっと言葉を詰まらせながら、
「分かりました。まだ今日の教育は終わっておりませんので手短にお願いします」
と、抵抗してみせた。
「あら、残念ですけれど、重要な案件ですのでそうは参りませんわ。宰相様の許可も得ております」
ロゼリアがさらに切り返せば、教育係は完全に沈黙して部屋を出て行った。
この時点では宰相の許可は噓ではあるが、チークウッドから話は行くはずなので事後承認となるだろう。
落ち着いたところで、ロゼリアはチェリシアに防護と防音の魔法を部屋に掛けさせる。そして、改めてアイリスたちを見た。
「さて、あなたたちに聞きたい事があるの」
そう言って、ロゼリアは話を切り出したのだった。
「ロゼリア、そんなに強く引っ張らないで」
「落ち着いていられないわよ。私だって八歳で魔法を使っているのだから、他人事じゃないわ」
そう、ロゼリアが慌てる理由はここにもあったのだ。ロゼリアもチェリシアの案で塩を作る際に魔法を使っている。それが八歳の時なのだから、魔法の使用頻度と規模ではペシエラに及ばないものの、何らかの代償を負っている可能性があるのだ。
「あ……、私のせいで……」
「チェリシア、魔法を使ったのは私の意思よ。あなたはそこまで気負う必要はないわ。でも、どうしても気にするのだったら、方法を探すのに付き合いなさい」
「うん。友人と妹のためだものね」
ロゼリアの言い分に同意したチェリシア。そうこうしているうちに、二人は王宮へとやって来た。だが、入るための用事が思いつかなったのか、二人は門の前で立ち往生していた。
「おや、ロゼリア嬢とチェリシア嬢ではないですか。ペシエラ嬢をお迎えに来たのですか?」
そこに通りかかったのはチークウッド。それと、
「ロゼリア、こんな所で何をしているんだ」
「お兄様!」
カーマイルだった。
「あの、私の侍女であるキャノルやライを呼びに来たんですけれど、王宮にその程度の用事で入っていいのか迷ってまして……」
チェリシアが両手の人差し指を突きながら、恥ずかしそうに言うと、
「外に呼んで来てもらうわけにはいかないのか?」
カーマイルがさも当然と言わんばかりにそう言う。まぁ真っ当な意見ではあるが。
「ちょっと内密な話をしたいので、あまり目立つ場所いうわけにはまいりませんの」
それに食い掛ったのはロゼリアだった。
「だったら、私たちについてくればいいよ。ちょうど話がしたくて呼んだとでも言えば大丈夫だから」
二人の態度に何かを察したのか、チークウッドがそう提案してきた。ロゼリアたちはこれに乗っかった。
チークウッドの協力で、無事に王宮の中に入ったロゼリアとチェリシアは、キャノルとライの居る部屋まで案内される。
「この部屋に居るみたいだから、ゆっくり気の済むまで話をするといいよ」
「ありがとうございますわ、チークウッド様」
「相変わらず、可愛いが可愛げのない妹だな」
「お兄様、もう少し素直になってはいかがですか?」
「私はいつも素直だが?」
「おいおい、兄妹げんかを王宮の廊下でするのはやめてくれ。カーマイル、私たちは報告に戻らないと、な」
チークウッドに礼を言うロゼリアに不機嫌になるカーマイル。そのせいか、ロゼリアに愚痴を言ってけんかになりかけるも、チークウッドの仲裁でとりあえず収まった。
「じゃあ、私たちはこれで失礼するよ」
「はい、ありがとうございました」
手を振って歩いていくチークウッドを、ロゼリアとチェリシアは頭を下げて見送った。チークウッドの隣ではカーマイルが不機嫌そうにしていたが、ロゼリアはそれを知らないふりしておいた。
「さて、参りましょう、チェリシア」
「え、ええ」
改めて二人になったところで、ロゼリアが扉を叩いて合図する。
「どちら様ですか?」
中から聞き慣れない壮年女性の声が聞こえてくる。
「マゼンダ侯爵家ロゼリアとコーラル伯爵家チェリシアでございます。私どもの侍女がこちらに居ると伺いまして、尋ねさせて頂きました」
ロゼリアが問い掛けに返答する。
「そうですか、ちょうど一段落したところですのでよいでしょう。お入りなさい」
「失礼致します」
中に入ったロゼリアたちは、ぎょっと驚いた。部屋の中ではキャノルとライが息を上げているのに、アイリスだけが平然と立っていたのだ。
「これはロゼリア様とチェリシア様。このような場所に何の御用ですか?」
教育係と思われる女性は、邪魔と言わんばかりに刺々しい物言いをしてくる。いくらなんでも、王子の婚約者の姉と友人に対する態度ではない。
「あら、お邪魔でしたかしら。ですが、早急にこちらの者たちと話をしなければならない用件がありましてね。ええ、ペシエラの事に関してですけれど、あなたは席を外してもらえないかしら」
カチンときたのか、ロゼリアは言い回しを変えて、「部外者は消えなさい」と伝える。すると、教育係はぐっと言葉を詰まらせながら、
「分かりました。まだ今日の教育は終わっておりませんので手短にお願いします」
と、抵抗してみせた。
「あら、残念ですけれど、重要な案件ですのでそうは参りませんわ。宰相様の許可も得ております」
ロゼリアがさらに切り返せば、教育係は完全に沈黙して部屋を出て行った。
この時点では宰相の許可は噓ではあるが、チークウッドから話は行くはずなので事後承認となるだろう。
落ち着いたところで、ロゼリアはチェリシアに防護と防音の魔法を部屋に掛けさせる。そして、改めてアイリスたちを見た。
「さて、あなたたちに聞きたい事があるの」
そう言って、ロゼリアは話を切り出したのだった。
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