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第六章 一年次・夏
第128話 得たものは……
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なんだかんだで、レイニに送られて、ペシエラとアイリスはロゼリアたちと合流する。いろいろありすぎて、二人は既に疲労困憊である。
ちなみに、ニーズヘッグは無理やりアイリスと契約した。宝珠が変化したネックレスが、その契約の証である。無理やりではあったものの、過去の縁が理由か、アイリスには特に問題はなさそうだった。
プラティナとブラッサ、グレイアの三人は、チェリシアの付き添いの元、村人から灌漑設備の説明を受けている。
というわけで、ロゼリアだけがペシエラたちと合流する。
「思ったより時間が掛かってたわね。それで、話は終わったの?」
「ええ、終わったわ」
ロゼリアの質問に答えるペシエラだが、どこか目が泳いでいた。
「何かあったのね?」
ロゼリアがずいっと迫ってくる。その時に見せたペシエラの態度は、とても普段見せないようなしどろもどろなもので、実に一見の価値のあるものだった。
観念したペシエラから、浮島であった事を聞いたロゼリアは、ため息をつきながら頭を抱えた。
「……ごめんなさい、なんて言っていいか分からないわ」
ペシエラに言いながら、ロゼリアは頭を横に振っている。
「とりあえず、厄災の暗龍はニーズヘッグという幻獣の龍だったと、そういう事でいいわね?」
ロゼリアが確認すると、ペシエラとアイリスは黙って頷いた。
そして、再びロゼリアはため息をつく。
「また王宮に行かなければならないわね。どうしてこうも、どこかに出向く度に王国への報告事例が転がり込んでくるのかしら……」
割と本気で頭の痛い事案だった。
王宮に頻繁に出向くのは、それだけ王家に重視されている証拠ではあるのだが、呼ばれてもいないのに出向くというのは、なかなかに憚れられる事である。
だが、ロゼリアたちならば、まだ婚約者候補ではあるが、城に頻繁に行く事はおかしくはないだろう。
問題なのは、ここ最近はすべてアイリス絡みという事であろう。ただでさえ、パープリア男爵の件で死んだ事にした人間である。姿を変えているとはいえ、頻繁に王宮に出向くなどという目立つ事をしては、いずれはばれてしまう危険がある。ロゼリアの懸念はそこなのだ。
チェリシアとペシエラが連れている侍女が、元パープリア男爵令嬢だとバレるのは、現状は避けたいところだった。
「とりあえず、ロゼリア」
「何かしら」
「二種類の宝珠の事を踏まえると、パープリア男爵はベル・フラウアードの事は知っている可能性はありますわ。アイリスが神獣使いだという事は、いずれ知られるとしても、今は秘匿しておく方がいいと思いますわよ」
「そうね。当面はそれでいきましょう」
二人は、当面の混乱を避けるために、今回と前回知り得た話は特定の人物以外には広まらないように、箝口令を発動してもらう方向で話をまとめた。なので、今回同行しているプラティナ公爵令嬢をはじめとした面々にも、適当にごまかす事にしたのだ。
さて、今回の旅行にブラッサとグレイアは満足しているようだった。ドール商会の取引幅が広がったからだろうか。もう販路の話に入っていた。
プラティナも見聞を広げられた事を喜んでいるようだし、得られた知識を父親に話してみるそうだ。
全員共通の一番は、やはりエアリアルボードだろう。魔力の消費は大きいが、揺れないし速いし、なにより浮遊感が気に入ったらしい。特にプラティナにいたっては、自分で再現できないか、やり方をチェリシアとペシエラに聞きまくる始末だ。
「私はスルーですか」
侯爵令嬢のロゼリアは、一人疎外感を感じていたのは内緒だ。
チェリシアとペシエラは丁寧に教えていたが、あまり人数や物を乗せられない事や、使用中は他の事ができなくなるといった欠点もしっかり教えていた。だが、欠点はあるが空を飛べるという点に、プラティナはすっかり目を輝かせていた。お嬢様がぐいぐい来るので、チェリシアたちは少し引いていたのは面白い。
とにもかくにも、二週間に及んだ御令嬢だらけの旅は、特にトラブルもなく無事に終わったのであった。
ちなみに、ニーズヘッグは無理やりアイリスと契約した。宝珠が変化したネックレスが、その契約の証である。無理やりではあったものの、過去の縁が理由か、アイリスには特に問題はなさそうだった。
プラティナとブラッサ、グレイアの三人は、チェリシアの付き添いの元、村人から灌漑設備の説明を受けている。
というわけで、ロゼリアだけがペシエラたちと合流する。
「思ったより時間が掛かってたわね。それで、話は終わったの?」
「ええ、終わったわ」
ロゼリアの質問に答えるペシエラだが、どこか目が泳いでいた。
「何かあったのね?」
ロゼリアがずいっと迫ってくる。その時に見せたペシエラの態度は、とても普段見せないようなしどろもどろなもので、実に一見の価値のあるものだった。
観念したペシエラから、浮島であった事を聞いたロゼリアは、ため息をつきながら頭を抱えた。
「……ごめんなさい、なんて言っていいか分からないわ」
ペシエラに言いながら、ロゼリアは頭を横に振っている。
「とりあえず、厄災の暗龍はニーズヘッグという幻獣の龍だったと、そういう事でいいわね?」
ロゼリアが確認すると、ペシエラとアイリスは黙って頷いた。
そして、再びロゼリアはため息をつく。
「また王宮に行かなければならないわね。どうしてこうも、どこかに出向く度に王国への報告事例が転がり込んでくるのかしら……」
割と本気で頭の痛い事案だった。
王宮に頻繁に出向くのは、それだけ王家に重視されている証拠ではあるのだが、呼ばれてもいないのに出向くというのは、なかなかに憚れられる事である。
だが、ロゼリアたちならば、まだ婚約者候補ではあるが、城に頻繁に行く事はおかしくはないだろう。
問題なのは、ここ最近はすべてアイリス絡みという事であろう。ただでさえ、パープリア男爵の件で死んだ事にした人間である。姿を変えているとはいえ、頻繁に王宮に出向くなどという目立つ事をしては、いずれはばれてしまう危険がある。ロゼリアの懸念はそこなのだ。
チェリシアとペシエラが連れている侍女が、元パープリア男爵令嬢だとバレるのは、現状は避けたいところだった。
「とりあえず、ロゼリア」
「何かしら」
「二種類の宝珠の事を踏まえると、パープリア男爵はベル・フラウアードの事は知っている可能性はありますわ。アイリスが神獣使いだという事は、いずれ知られるとしても、今は秘匿しておく方がいいと思いますわよ」
「そうね。当面はそれでいきましょう」
二人は、当面の混乱を避けるために、今回と前回知り得た話は特定の人物以外には広まらないように、箝口令を発動してもらう方向で話をまとめた。なので、今回同行しているプラティナ公爵令嬢をはじめとした面々にも、適当にごまかす事にしたのだ。
さて、今回の旅行にブラッサとグレイアは満足しているようだった。ドール商会の取引幅が広がったからだろうか。もう販路の話に入っていた。
プラティナも見聞を広げられた事を喜んでいるようだし、得られた知識を父親に話してみるそうだ。
全員共通の一番は、やはりエアリアルボードだろう。魔力の消費は大きいが、揺れないし速いし、なにより浮遊感が気に入ったらしい。特にプラティナにいたっては、自分で再現できないか、やり方をチェリシアとペシエラに聞きまくる始末だ。
「私はスルーですか」
侯爵令嬢のロゼリアは、一人疎外感を感じていたのは内緒だ。
チェリシアとペシエラは丁寧に教えていたが、あまり人数や物を乗せられない事や、使用中は他の事ができなくなるといった欠点もしっかり教えていた。だが、欠点はあるが空を飛べるという点に、プラティナはすっかり目を輝かせていた。お嬢様がぐいぐい来るので、チェリシアたちは少し引いていたのは面白い。
とにもかくにも、二週間に及んだ御令嬢だらけの旅は、特にトラブルもなく無事に終わったのであった。
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