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第六章 一年次・夏
第105話 襲撃の結末
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ガレンが現れると同時に、ドサドサと音が響き渡る。ガレンの足元に転がっているのは、ガレンと同じ学園の教官二人だった。
「さっきの話、どうやらこの二人が召喚陣を作動させた張本人のようですよ」
倒れた二人はうめき声を上げながら、地面にうずくまっている。ガレンによれば、持ち場を離れて休憩ポイント近くで怪しげな行動をしていたらしい。なので、ちょちょっと小突いたらこうなったそうだ。
「しかし、男爵風情が国家転覆を謀ろうとするとは、大胆不敵な事ですね」
ガレンはアイリスを見る。アイリスは青ざめており、その視線に身震いをする。
「で、どうなさるのですかな?」
ガレンはロゼリアたちに視線を向けた。
「アイリス様については、積極的に関わってはいましたが、捨て駒にされていた事はご存知ないようですので、私たちの方で預かろうかと思います」
「ほう……」
ロゼリアが言えば、ガレンは不思議そうに反応する。
「私たちの命を狙ったアイリス嬢を、許すと言うのですか?」
シルヴァノが驚いて言い寄ってくる。
「許すとは申しておりません。ただ、まだ若いですし、親に道具扱いされたのです。ちょっと反省を促せば、考えを改める事もあり得ないとは言えませんよ」
ロゼリアがシルヴァノに弁明する。ペシエラも同じ考えので頷いている。ちなみにチェリシアは思考が追いついていない。
「そこまで言うのでしたら、君たちの考えは変わらないのですね?」
ガレンに問われると、ロゼリアたちは強く頷いた。すると、ここまで黙っていたアイリスが口を開く。
「……馬鹿なの、あなたたち。私は王子たちの命を狙ったというのに、それを許した挙句、仲間にしようだなんて。……お人好しが過ぎるわ!」
慟哭にも似た叫びだった。
「別に死にたいのなら止めませんわよ? でも、アイリス様だって分かっているのでしょう?」
ペシエラが蔑んだ目でアイリスに迫る。
「な、何をよ……」
尻もちをついたまま、ジリジリと下がるアイリス。
「私が居なければ、さっきのケルピーに惨たらしく殺されていたという事ですわ」
ペシエラがアイリスにずいっと顔を近付ける。すると、恐怖に震えるアイリスは、そのまま泣き出してしまう。
「わ、私だって、本当は、し、死にたくはないわよ。でも、お父様が『お前は安全だから』と言うから、き、協力しただけなのよ!」
しばらくの間、アイリスの泣き声だけがその場に響いていた。
アイリスが落ち着いた頃、ロゼリアはシルヴァノとガレンに声を掛ける。
「合宿から戻ったところで、アイリス様とその兄であるヴィオレス様とお話しする機会を設けて頂きませんか? もちろん、パープリア男爵夫妻や使用人に気取られないようにですけれど」
「ふむ。子どもは適当に言いくるめられて使われている可能性がありますからね。いいでしょう、教官の権限で場を設けましょう」
「場の設定は先生にお任せして、私は父上に掛け合って、パープリア男爵の近辺に探りを入れましょう。ペイル殿下にまで危害を加えようとしたのですから、露見しては国際問題に発展しますからね」
ガレンとシルヴァノが、それぞれロゼリアの提案を受け動くと約束する。
「しかし、本来アイリス嬢は処刑でもおかしくない。ロゼリア嬢やペシエラ嬢には、彼女を庇うだけの理由を感じられないのですが?」
チークウッドの言い分はもっともだ。
「ああ、そっか。アイリス様とヴィオレス様の能力を逆に国の役に立てようというわけね」
チェリシアが唐突に叫ぶ。
「まあそういう事ね。力はどう扱うかで善にも悪にもなるわ。国家転覆を狙える力も御せれば、安定の力になるわ」
ロゼリアはそう言って、アイリスに近付く。
「助かった命、無駄にしないようにしなさい。あなたの詳しい処遇は、合宿の後に申し渡す事にするわ」
ロゼリアにそう言われたアイリスは、ぐっと唇を噛み締めて下を向いたまま黙り込んだ。
こうして、夏の合宿における魔物襲撃は、死者を出す事なくその幕を閉じた。
実行犯の処罰は合宿から戻った後に、精査の元に行われる事となった。それまでの間、合宿に使われている別荘内で軟禁される運びとなった。
この一件の後は、王都に戻るまで一切の魔物の襲撃が起こる事なく、実行犯はアイリス含め三名であったと結論付けられたのだった。
「さっきの話、どうやらこの二人が召喚陣を作動させた張本人のようですよ」
倒れた二人はうめき声を上げながら、地面にうずくまっている。ガレンによれば、持ち場を離れて休憩ポイント近くで怪しげな行動をしていたらしい。なので、ちょちょっと小突いたらこうなったそうだ。
「しかし、男爵風情が国家転覆を謀ろうとするとは、大胆不敵な事ですね」
ガレンはアイリスを見る。アイリスは青ざめており、その視線に身震いをする。
「で、どうなさるのですかな?」
ガレンはロゼリアたちに視線を向けた。
「アイリス様については、積極的に関わってはいましたが、捨て駒にされていた事はご存知ないようですので、私たちの方で預かろうかと思います」
「ほう……」
ロゼリアが言えば、ガレンは不思議そうに反応する。
「私たちの命を狙ったアイリス嬢を、許すと言うのですか?」
シルヴァノが驚いて言い寄ってくる。
「許すとは申しておりません。ただ、まだ若いですし、親に道具扱いされたのです。ちょっと反省を促せば、考えを改める事もあり得ないとは言えませんよ」
ロゼリアがシルヴァノに弁明する。ペシエラも同じ考えので頷いている。ちなみにチェリシアは思考が追いついていない。
「そこまで言うのでしたら、君たちの考えは変わらないのですね?」
ガレンに問われると、ロゼリアたちは強く頷いた。すると、ここまで黙っていたアイリスが口を開く。
「……馬鹿なの、あなたたち。私は王子たちの命を狙ったというのに、それを許した挙句、仲間にしようだなんて。……お人好しが過ぎるわ!」
慟哭にも似た叫びだった。
「別に死にたいのなら止めませんわよ? でも、アイリス様だって分かっているのでしょう?」
ペシエラが蔑んだ目でアイリスに迫る。
「な、何をよ……」
尻もちをついたまま、ジリジリと下がるアイリス。
「私が居なければ、さっきのケルピーに惨たらしく殺されていたという事ですわ」
ペシエラがアイリスにずいっと顔を近付ける。すると、恐怖に震えるアイリスは、そのまま泣き出してしまう。
「わ、私だって、本当は、し、死にたくはないわよ。でも、お父様が『お前は安全だから』と言うから、き、協力しただけなのよ!」
しばらくの間、アイリスの泣き声だけがその場に響いていた。
アイリスが落ち着いた頃、ロゼリアはシルヴァノとガレンに声を掛ける。
「合宿から戻ったところで、アイリス様とその兄であるヴィオレス様とお話しする機会を設けて頂きませんか? もちろん、パープリア男爵夫妻や使用人に気取られないようにですけれど」
「ふむ。子どもは適当に言いくるめられて使われている可能性がありますからね。いいでしょう、教官の権限で場を設けましょう」
「場の設定は先生にお任せして、私は父上に掛け合って、パープリア男爵の近辺に探りを入れましょう。ペイル殿下にまで危害を加えようとしたのですから、露見しては国際問題に発展しますからね」
ガレンとシルヴァノが、それぞれロゼリアの提案を受け動くと約束する。
「しかし、本来アイリス嬢は処刑でもおかしくない。ロゼリア嬢やペシエラ嬢には、彼女を庇うだけの理由を感じられないのですが?」
チークウッドの言い分はもっともだ。
「ああ、そっか。アイリス様とヴィオレス様の能力を逆に国の役に立てようというわけね」
チェリシアが唐突に叫ぶ。
「まあそういう事ね。力はどう扱うかで善にも悪にもなるわ。国家転覆を狙える力も御せれば、安定の力になるわ」
ロゼリアはそう言って、アイリスに近付く。
「助かった命、無駄にしないようにしなさい。あなたの詳しい処遇は、合宿の後に申し渡す事にするわ」
ロゼリアにそう言われたアイリスは、ぐっと唇を噛み締めて下を向いたまま黙り込んだ。
こうして、夏の合宿における魔物襲撃は、死者を出す事なくその幕を閉じた。
実行犯の処罰は合宿から戻った後に、精査の元に行われる事となった。それまでの間、合宿に使われている別荘内で軟禁される運びとなった。
この一件の後は、王都に戻るまで一切の魔物の襲撃が起こる事なく、実行犯はアイリス含め三名であったと結論付けられたのだった。
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