逆行令嬢と転生ヒロイン

未羊

文字の大きさ
上 下
78 / 465
第五章 学園編

第76話 初日

しおりを挟む
 サンフレア学園の入学式はつつがなく終わった。新入生代表の挨拶は、今回もロゼリアが担当したのだが、前回のものを流用した。それを聞いてペシエラがくすくす笑っていたのは内緒だ。
 在校生の代表は、六年生の生徒会長が祝辞を述べた。こちらも当たり障りのない言葉で、前回と同じだった。一言一句変化していない。
 ちなみにゲームでは、どちらもさっさとモノローグで流れて具体的な文言は不明だったので、転生者である今のチェリシアには新鮮だったようだ。その上、新入生代表がロゼリアだったと知って、チェリシアのテンションは爆上がりだった。
「お姉様、はしゃぎ過ぎですわよ」
「あっ、ごめんなさい」
 ペシエラに怒られて、チェリシアは素直に謝った。
 ペシエラの方は、さすがに二度目の入学式とあって冷めてはいた。しかし、冷静になった事でロゼリアの挨拶が新鮮に耳に入ってきた。
(最初からちゃんと聞いておくべきでしたわね)
 子爵とはいえ田舎領主の娘だったペシエラチェリシアは、緊張でよく聞いていなかったのだ。ただ、なんか偉そうな貴族令嬢が何か言ってる程度の認識だったからか、その後は反骨精神というかただのやっかみでロゼリアに噛み付いていた。それが最悪の形で結実した事を、今は後悔している。冷静でいられるのは、そういった経緯もあるからなのだろう。
 入学式が終わると、それぞれクラス分けに従ってクラスに分かれる。一年次は座学中心に行われる。専攻ごとに学科が分かれるのは二年次からだ。
 ロゼリアたちのクラスは、爵位に物を言わせて三人同じクラスに配置された。商会の事もあるので、集合するための時間ももったいないと考えたからだ。
 ちなみに、三人とも女王になるための教育を、学園に入るまでに受けており、一年次で習う座学はほぼマスター済である。王国にとっては必要な人材なので、そういった無茶もまかり通るのだった。
 王子の婚約者候補はロゼリアとチェリシアの二人ではあるものの、ペシエラも見込みありとされており、婚約者の選定が現在行われている。結論が出るまではまだ時間がかかりそうだ。
 さて、一旦クラスごとに分かれた後、さくさくとクラス内の自己紹介が終わる。ロゼリアたちは落ち着いていたのでつつがなくこなしていた。
 最初に自己紹介した教師から、一年次の講義の流れの説明があった。翌日から講義が始まるために、この後すぐに教科書の配布が行われる。なので、忘れずに受け取るようにとのお達しだ。場所は入学式の行われた講堂らしい。
 だが、ロゼリアたちにはそれよりも重要なイベントが待ち構えていた。
 シルヴァノ殿下たち、攻略対象五人を交えたお茶会だ。五人以外の隠し対象のロゼリアの兄カーマイルもやって来る。
 だが、お茶会の場にやって来たロゼリアたちは、面々を見て驚いた。ロゼリアたち以外にも女性が居たのだ。
 貴族の十三歳ともなれば、高確率で婚約者ないし候補者が存在しているものである。
 王子は二人の婚約者候補が居て、カーマイルは十六歳にして候補者すら無しである。隣国の王子は単身の遊学という設定。攻略対象のオフライトの双子の妹のシェイディアがついてくるのは当然なので、女性は四人のはずだったのだが、どういうわけか見慣れない女性が三人居た。侍女ではない同い年くらいの女性だ。
「君たちが最後だよ。もうみんな待ちかねているんだ。早く席に着いてくれ」
 シルヴァノ殿下が淡々と言う。
「そうですわね。お待たせして申し訳ございませんわ」
 状況が分からないが、とにかく待たせてしまったのは事実なので、ロゼリアが代表して謝罪し、それぞれ上座のシルヴァノ殿下の両脇へと座った。
 こうして、学園入学後の最初のイベントである“王子とお茶会”が始まったのである。
 攻略対象が全員と見知らぬ令嬢たちが集ったこのお茶会。その場には何とも言えない雰囲気が立ち込めているのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幻想美男子蒐集鑑~夢幻月華の書~

紗吽猫
ファンタジー
ーー さぁ、世界を繋ぐ旅を綴ろう ーー 自称美男子愛好家の主人公オルメカと共に旅する好青年のソロモン。旅の目的はオルメカコレクションー夢幻月下の書に美男子達との召喚契約をすること。美男子の噂を聞きつけてはどんな街でも、時には異世界だって旅して回っている。でもどうやらこの旅、ただの逆ハーレムな旅とはいかないようでー…? 美男子を見付けることのみに特化した心眼を持つ自称美男子愛好家は出逢う美男子達を取り巻く事件を解決し、無事に魔導書を完成させることは出来るのか…!? 時に出逢い、時に闘い、時に事件を解決し… 旅の中で出逢う様々な美男子と取り巻く仲間達との複数世界を旅する物語。 ※この作品はエブリスタでも連載中です。

けだものだもの~虎になった男の異世界酔夢譚~

ちょろぎ
ファンタジー
神の悪戯か悪魔の慈悲か―― アラフォー×1社畜のサラリーマン、何故か虎男として異世界に転移?する。 何の説明も助けもないまま、手探りで人里へ向かえば、言葉は通じず石を投げられ騎兵にまで追われる有様。 試行錯誤と幾ばくかの幸運の末になんとか人里に迎えられた虎男が、無駄に高い身体能力と、現代日本の無駄知識で、他人を巻き込んだり巻き込まれたりしながら、地盤を作って異世界で生きていく、日常描写多めのそんな物語。 第13章が終了しました。 申し訳ありませんが、第14話を区切りに長期(予定数か月)の休載に入ります。 再開の暁にはまたよろしくお願いいたします。 この作品は小説家になろうさんでも掲載しています。 同名のコミック、HP、曲がありますが、それらとは一切関係はありません。

対人恐怖症は異世界でも下を向きがち

こう7
ファンタジー
円堂 康太(えんどう こうた)は、小学生時代のトラウマから対人恐怖症に陥っていた。学校にほとんど行かず、最大移動距離は200m先のコンビニ。 そんな彼は、とある事故をきっかけに神様と出会う。 そして、過保護な神様は異世界フィルロードで生きてもらうために多くの力を与える。 人と極力関わりたくない彼を、老若男女のフラグさん達がじわじわと近づいてくる。 容赦なく迫ってくるフラグさん。 康太は回避するのか、それとも受け入れて前へと進むのか。 なるべく間隔を空けず更新しようと思います! よかったら、読んでください

彼女は予想の斜め上を行く

ケポリ星人
ファンタジー
仕事人間な女性医師、結城 慶は自宅で患者のカルテを書いている途中、疲れて寝ってしまう。 彼女が次に目を覚ますと、そこは…… 現代医学の申し子がいきなり剣と魔法の世界に! ゲーム?ファンタジー?なにそれ美味しいの?な彼女は、果たして異世界で無事生き抜くことが出来るのか?! 「Oh……マホーデスカナルホドネ……」 〈筆者より、以下若干のネタバレ注意〉 魔法あり、ドラゴンあり、冒険あり、恋愛あり、妖精あり、頭脳戦あり、シリアスあり、コメディーあり、ほのぼのあり。

『ラノベ作家のおっさん…異世界に転生する』

来夢
ファンタジー
『あらすじ』 心臓病を患っている、主人公である鈴也(レイヤ)は、幼少の時から見た夢を脚色しながら物語にして、ライトノベルの作品として投稿しようと書き始めた。 そんなある日…鈴也は小説を書き始めたのが切っ掛けなのか、10年振りに夢の続きを見る。 すると、今まで見た夢の中の男の子と女の子は、青年の姿に成長していて、自分の書いている物語の主人公でもあるヴェルは、理由は分からないが呪いの攻撃を受けて横たわっていた。 ジュリエッタというヒロインの聖女は「ホーリーライト!デスペル!!」と、仲間の静止を聞かず、涙を流しながら呪いを解く魔法を掛け続けるが、ついには力尽きて死んでしまった。 「へっ?そんな馬鹿な!主人公が死んだら物語の続きはどうするんだ!」 そんな後味の悪い夢から覚め、風呂に入ると心臓発作で鈴也は死んでしまう。 その後、直ぐに世界が暗転。神様に会うようなセレモニーも無く、チートスキルを授かる事もなく、ただ日本にいた記憶を残したまま赤ん坊になって、自分の書いた小説の中の世界へと転生をする。 ”自分の書いた小説に抗える事が出来るのか?いや、抗わないと周りの人達が不幸になる。書いた以上責任もあるし、物語が進めば転生をしてしまった自分も青年になると死んでしまう そう思い、自分の書いた物語に抗う事を決意する。

あの子を甘やかして幸せにスローライフする為の、はずれスキル7回の使い方

tea
ファンタジー
はずれスキル持ちなので、十八になったら田舎でスローライフしようと都落ちの日を心待ちにしていた。 しかし、何故かギルマスのゴリ押しで問答無用とばかりに女勇者のパーティーに組み込まれてしまった。 追放(解放)してもらうため、はずれスキルの無駄遣いをしながら過去に心の傷を負っていた女勇者を無責任に甘やかしていたら、女勇者から慕われ懐かれ、かえって放してもらえなくなってしまったのだが? どうなる俺の田舎でのスローライフ???

便利スキル持ちなんちゃってハンクラーが行く! 生きていける範疇でいいんです異世界転生

翁小太
ファンタジー
 無意識に前世の記憶に振り回されていたせいで魔導の森と呼ばれる禍々しい場所にドナドナされたユーラス(8歳)が、前世の記憶をハッキリ取り戻し、それまで役に立たないと思われていた自らのスキルの意味をようやく理解する。 「これって異世界で日本のものを取り寄せられる系便利スキルなのでは?」  そうしてユーラスは前世なんちゃってハンクラ―だった自分の持ち前の微妙な腕で作った加工品を細々売りながら生活しようと決意する。しかし、人里特に好きじゃない野郎のユーラスはなんとか人に会わずに人と取引できないかと画策する。 「夜のうちにお仕事かたずけてくれる系妖精は実在するというていで行こう」 ――――――――――――――――― 更新再開しました(2018.04.01)

【完結】婚約破棄したら『悪役令嬢』から『事故物件令嬢』になりました

Mimi
ファンタジー
私エヴァンジェリンには、幼い頃に決められた婚約者がいる。 男女間の愛はなかったけれど、幼馴染みとしての情はあったのに。 卒業パーティーの2日前。 私を呼び出した婚約者の隣には 彼の『真実の愛のお相手』がいて、 私は彼からパートナーにはならない、と宣言された。 彼は私にサプライズをあげる、なんて言うけれど、それはきっと私を悪役令嬢にした婚約破棄ね。 わかりました! いつまでも夢を見たい貴方に、昨今流行りのざまぁを かまして見せましょう! そして……その結果。 何故、私が事故物件に認定されてしまうの! ※本人の恋愛的心情があまり無いので、恋愛ではなくファンタジーカテにしております。 チートな能力などは出現しません。 他サイトにて公開中 どうぞよろしくお願い致します!

処理中です...