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第三章 ロゼリア9歳
第39話 万年筆
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結局、新たな商品が完成するまで一ヶ月が掛かった。
開発と同時に、ロゼリアたちはマゼンダ侯爵とコーラル子爵の伝手もあり、ある程度の量産体制も確立できるまでには整えていた。
この日、ロゼリアたちはまた王宮に出向いていた。新商品の献上のためである。ちなみに三人の父親である、マゼンダ侯爵ヴァミリオとコーラル子爵プラウスも同行している。
今回の献上品は、カーマイルが学園に入る事を考慮して開発した物であり、日用品である。しかも、魔石を使用した物とあって、今までとは違った緊張感を持っていた。
「おお、マゼンダ商会はまた新たな品を作ったのだな。して、今回の物は何じゃ?」
国王陛下は食い気味だ。
「国王よ、そう急かすではない。見よ、勢いに押されてしまっているではないか」
女王陛下の指摘に、国王陛下は改めてロゼリアたちを見る。だが、ロゼリアたちは気圧されてしまっているというより、あまりの食いつきようにドン引きしていた。
「すまぬ。少し取り乱してしまった。改めて、今回の品は何じゃ?」
国王陛下が落ち着いたところで、示し合わせたようにロゼリアが一歩前へ歩み出る。
「こちらでございます、両陛下」
ロゼリアは持っていた包みを解き、木箱を取り出す。そして、木箱を開けると、中から円筒状の物体が姿を現した。
「何なのじゃ、それは」
女王陛下が問い掛ける。
「こちらは、“万年筆”と名付けた筆記用具でございます」
問いに対して、ロゼリアは淡々と答えた。
そう、一ヶ月掛けて生み出した商品は、インクとペンを合体させた万年筆だった。
「ほう……。これはどのように使うのじゃな?」
意外にも、国王陛下より女王陛下の方が興味を示している。
そこで、ロゼリアは万年筆の仕組みを説明する。
「通常、文字を書くためにはペンとインクをセットで用います。この万年筆は、その二点を一つにまとめた物になります」
この段階で、既に食いつきが見られる。というのも、あちこちからひそひそ話が聞こえてくるからだ。ロゼリアは、手応えありと話を続ける。
「また、インクは蓋をしていないと乾いてしまいますし、倒せば中身が溢れます。この万年筆は、インクの材料として魔石を使用しています。魔石に宿る魔力をインクに変換する様に、魔法を掛けてあるためです」
「なんと、魔石とな?!」
魔石を使っていると発言した時点で、周りは一気にどよめき立つ。周りに居るのは近衛兵と王族付きの使用人たちだけだが、そんな彼らでさえ騒めくほど、魔石という物は扱いに困っている物なのだ。
「はい。魔石に秘められた魔力に外部から魔法を掛けました。それは、このペン先に物が当たると、魔石の魔力が微量のインクとなってペン先から漏れ出るという魔法です」
周りはにわかに信じ難いと、更にどよめきを増している。
そこで、ロゼリアは実演をしてみせる。取り出したのは、板に貼り付けた紙。まずは周りに見せて、真っ白である事を確認してもらい、そこに万年筆を当ててサラサラと一文を認める。そして、再び周りにそれを見せる。
“インク不要の魔法のペン”
ロゼリアが見せた紙には、そのように書かれていた。
その文字を見た国王陛下と女王陛下は、とても驚いていた。
インクを使わずに文字を書く事ができる。これは、この世界では革命的な事であった。
転生者であるチェリシアにとっては、マジックだのボールペンだので当たり前に存在している物。ただ、その再現となるとかなり苦労した。インクを中に入れても、ペン先から出るインクの量が調節できない。それに加えて、中でインクが固まってしまい、すぐに詰まってしまうなど、悪戦苦闘だった。
そこで、魔石の活用を試す事になった。魔法が使えるのはロゼリアだけなので、魔石に掛ける魔法の調整も難航した。
結局のところ、ペンの形状の完成まで一週間、魔法の調整に一週間、そこから試用を重ねて、開発に合計一ヶ月掛かったのである。
試用に付き合わされた人物こそ、ロゼリアの兄のカーマイルだった。来年から学園に通う事になっており、しかも学園は自ずと人が集まる場所である。そこでカーマイルが使っていれば、自然と宣伝になるというわけだ。
そのカーマイルからの評価は上々。ロゼリアの父であるヴァミリオからも好評だった。そして、満を持してこの献上に至ったのだ。
「このペンは、魔石の秘める魔力がそのままインクとなります。魔石の魔力が切れるまで使用し続けられる事から“万年”筆と名付けました。ぜひお試し下さい」
ロゼリアがそう言うと、国王陛下が合図をし、ロゼリアに一人の近衛兵が近付いた。そして、国王陛下の手に渡るまでの間に、ロゼリアは一つ注意点を述べる。
「先程も申しました通り、ペン先が物に触れるとインクが出ます。お召し物に触れさせませんよう、ご注意下さい」
国王陛下は、ロゼリアの言葉を聞いて、おそるおそる万年筆を手に取った。
開発と同時に、ロゼリアたちはマゼンダ侯爵とコーラル子爵の伝手もあり、ある程度の量産体制も確立できるまでには整えていた。
この日、ロゼリアたちはまた王宮に出向いていた。新商品の献上のためである。ちなみに三人の父親である、マゼンダ侯爵ヴァミリオとコーラル子爵プラウスも同行している。
今回の献上品は、カーマイルが学園に入る事を考慮して開発した物であり、日用品である。しかも、魔石を使用した物とあって、今までとは違った緊張感を持っていた。
「おお、マゼンダ商会はまた新たな品を作ったのだな。して、今回の物は何じゃ?」
国王陛下は食い気味だ。
「国王よ、そう急かすではない。見よ、勢いに押されてしまっているではないか」
女王陛下の指摘に、国王陛下は改めてロゼリアたちを見る。だが、ロゼリアたちは気圧されてしまっているというより、あまりの食いつきようにドン引きしていた。
「すまぬ。少し取り乱してしまった。改めて、今回の品は何じゃ?」
国王陛下が落ち着いたところで、示し合わせたようにロゼリアが一歩前へ歩み出る。
「こちらでございます、両陛下」
ロゼリアは持っていた包みを解き、木箱を取り出す。そして、木箱を開けると、中から円筒状の物体が姿を現した。
「何なのじゃ、それは」
女王陛下が問い掛ける。
「こちらは、“万年筆”と名付けた筆記用具でございます」
問いに対して、ロゼリアは淡々と答えた。
そう、一ヶ月掛けて生み出した商品は、インクとペンを合体させた万年筆だった。
「ほう……。これはどのように使うのじゃな?」
意外にも、国王陛下より女王陛下の方が興味を示している。
そこで、ロゼリアは万年筆の仕組みを説明する。
「通常、文字を書くためにはペンとインクをセットで用います。この万年筆は、その二点を一つにまとめた物になります」
この段階で、既に食いつきが見られる。というのも、あちこちからひそひそ話が聞こえてくるからだ。ロゼリアは、手応えありと話を続ける。
「また、インクは蓋をしていないと乾いてしまいますし、倒せば中身が溢れます。この万年筆は、インクの材料として魔石を使用しています。魔石に宿る魔力をインクに変換する様に、魔法を掛けてあるためです」
「なんと、魔石とな?!」
魔石を使っていると発言した時点で、周りは一気にどよめき立つ。周りに居るのは近衛兵と王族付きの使用人たちだけだが、そんな彼らでさえ騒めくほど、魔石という物は扱いに困っている物なのだ。
「はい。魔石に秘められた魔力に外部から魔法を掛けました。それは、このペン先に物が当たると、魔石の魔力が微量のインクとなってペン先から漏れ出るという魔法です」
周りはにわかに信じ難いと、更にどよめきを増している。
そこで、ロゼリアは実演をしてみせる。取り出したのは、板に貼り付けた紙。まずは周りに見せて、真っ白である事を確認してもらい、そこに万年筆を当ててサラサラと一文を認める。そして、再び周りにそれを見せる。
“インク不要の魔法のペン”
ロゼリアが見せた紙には、そのように書かれていた。
その文字を見た国王陛下と女王陛下は、とても驚いていた。
インクを使わずに文字を書く事ができる。これは、この世界では革命的な事であった。
転生者であるチェリシアにとっては、マジックだのボールペンだので当たり前に存在している物。ただ、その再現となるとかなり苦労した。インクを中に入れても、ペン先から出るインクの量が調節できない。それに加えて、中でインクが固まってしまい、すぐに詰まってしまうなど、悪戦苦闘だった。
そこで、魔石の活用を試す事になった。魔法が使えるのはロゼリアだけなので、魔石に掛ける魔法の調整も難航した。
結局のところ、ペンの形状の完成まで一週間、魔法の調整に一週間、そこから試用を重ねて、開発に合計一ヶ月掛かったのである。
試用に付き合わされた人物こそ、ロゼリアの兄のカーマイルだった。来年から学園に通う事になっており、しかも学園は自ずと人が集まる場所である。そこでカーマイルが使っていれば、自然と宣伝になるというわけだ。
そのカーマイルからの評価は上々。ロゼリアの父であるヴァミリオからも好評だった。そして、満を持してこの献上に至ったのだ。
「このペンは、魔石の秘める魔力がそのままインクとなります。魔石の魔力が切れるまで使用し続けられる事から“万年”筆と名付けました。ぜひお試し下さい」
ロゼリアがそう言うと、国王陛下が合図をし、ロゼリアに一人の近衛兵が近付いた。そして、国王陛下の手に渡るまでの間に、ロゼリアは一つ注意点を述べる。
「先程も申しました通り、ペン先が物に触れるとインクが出ます。お召し物に触れさせませんよう、ご注意下さい」
国王陛下は、ロゼリアの言葉を聞いて、おそるおそる万年筆を手に取った。
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