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第二章 ロゼリアとチェリシア
第22話 衝撃が走る
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「ねえ、ロゼリア。酸っぱくなったワインってあるかな?」
お茶会から解放されたところで、チェリシアが尋ねてきた。ロゼリアは殿下の予想外な行動に頭真っ白になっていたので、反応が遅れる。
「あ、えっ、ええと。酸っぱくなったワインね。うちの領内にあるけど、それがどうかしたの?」
「うん、酢の事で思い出したの。酸っぱくなったワインって、ワインビネガーっていう酢なのよ」
「えっ、そうなの? 今までは飲めないからって捨ててたわよ」
「もったいない!」
チェリシアはそう叫んで、ロゼリアに酸っぱくなったワインを譲ってもらえないか交渉する。すると、ロゼリアは、
「お父様に相談してみるわ。了承されたとしても、領地から運び出すのに数日かかるわよ?」
一応前向きな返答をする。チェリシアはそれでもいいという返事をしたので、ロゼリアは早速帰りの馬車の中で話をする事にしたのだった。
動きは早かった。
翌日には王都のコーラル子爵邸に、ロゼリアの先触れと共に、酸っぱくなったワインを無償で譲渡する旨の連絡が入る。これにはコーラル子爵たちは首を捻り、チェリシアは喜んでいた。
「酸っぱくなったワインを何に使うんだ?」
プラウスに聞かれたチェリシアは、
「料理に使います」
と簡単に答えた。これにはプラウスはもちろんだが、コーラル子爵邸の料理人たちも訳が分からず顔を見合わせていた。
そして、午後。
先触れの通りに、ロゼリアがシアンとブラウニーを伴って尋ねてきた。コーラル子爵邸に着くなり、
「私はチェリシアと二人で話をしてますので、二人は自由にしていて頂戴」
「畏まりました、お嬢様。何かありましたら、すぐにお呼び下さい」
ロゼリアが命じると、シアンたちは素直にそれに従った。ブラウニーが何か不満そうにしているが、それはシアンに任せる。
ところが、チェリシアの部屋に到着すると、中にはペシエラが居たのだ。
「お姉様! その女とばかり付き合ってないで、私と遊んで!」
いきなり駄々こね全開である。
「ペシエラ、わがままはダメよ。私はロゼリアと話があるのですから、自分の部屋に戻ってなさい」
チェリシアは貴族の姉として、駄々をこねる妹を叱る。だが、ロゼリアは別に気にしていないようで、
「ペシエラちゃんも居ても構わないわ。本当にあなたは私をどこまでも敵視するのね」
すごく落ち着いてペシエラに語りかける。
「本当は、チェリシアの事も恨めしく思っているのでしょう? あなたの本来の立ち位置なんですからね」
ロゼリアがこう言えば、チェリシアは困惑するし、ペシエラはロゼリアを睨む。
「えっ、ロゼリア、何を言っているの?」
チェリシアは訳が分からず、ロゼリアに尋ねる。
「ペシエラちゃん。あなた、気付かれてないと思った?」
睨んでも引かないというか、気にならないという顔でペシエラを見るロゼリア。
「な、何の事?」
あからさまにペシエラは顔と視線を外す。
「チェリシア。このペシエラは、間違いなく私を罠に嵌めた“チェリシア・コーラル”、その人よ」
「えっ?!」
あっさりと衝撃的な事を言うロゼリアに、チェリシアは大いに驚いて口に手を当てる。ペシエラは視線だけをロゼリアに向けて、再び睨みつける。
「初めて会った時から、常に私に対して向けられる視線……。明らかに敵意剥き出しでしたからね。あんな視線を向けられ続ければ、普通は気付くものでしょう」
「……お姉様の隣に常に居るから、気に食わなかっただけよ」
ペシエラはごまかすようにロゼリアに反論する。
「普通、五歳児でそんなしっかりとした反論ができるとお思いで?」
ところが、ロゼリアにはしっかり反撃されてしまった。
「第一、あなたは今までずっとシェリアの街に居たのでしょう? 今回、私とチェリシアが初めて接触したのは、今から約一ヶ月前。その状況で、あなたに情報がいってるとは思えない。となれば、結論はひとつです」
チェリシアは驚いたまま黙っているし、ペシエラも膨れたまま顔を逸らせている。しかし、ロゼリアは構わず結論をぶつけた。
「ペシエラ・コーラルは、私と同じように時を遡ってきたチェリシア・コーラルその人よ」
場に衝撃が走った。
お茶会から解放されたところで、チェリシアが尋ねてきた。ロゼリアは殿下の予想外な行動に頭真っ白になっていたので、反応が遅れる。
「あ、えっ、ええと。酸っぱくなったワインね。うちの領内にあるけど、それがどうかしたの?」
「うん、酢の事で思い出したの。酸っぱくなったワインって、ワインビネガーっていう酢なのよ」
「えっ、そうなの? 今までは飲めないからって捨ててたわよ」
「もったいない!」
チェリシアはそう叫んで、ロゼリアに酸っぱくなったワインを譲ってもらえないか交渉する。すると、ロゼリアは、
「お父様に相談してみるわ。了承されたとしても、領地から運び出すのに数日かかるわよ?」
一応前向きな返答をする。チェリシアはそれでもいいという返事をしたので、ロゼリアは早速帰りの馬車の中で話をする事にしたのだった。
動きは早かった。
翌日には王都のコーラル子爵邸に、ロゼリアの先触れと共に、酸っぱくなったワインを無償で譲渡する旨の連絡が入る。これにはコーラル子爵たちは首を捻り、チェリシアは喜んでいた。
「酸っぱくなったワインを何に使うんだ?」
プラウスに聞かれたチェリシアは、
「料理に使います」
と簡単に答えた。これにはプラウスはもちろんだが、コーラル子爵邸の料理人たちも訳が分からず顔を見合わせていた。
そして、午後。
先触れの通りに、ロゼリアがシアンとブラウニーを伴って尋ねてきた。コーラル子爵邸に着くなり、
「私はチェリシアと二人で話をしてますので、二人は自由にしていて頂戴」
「畏まりました、お嬢様。何かありましたら、すぐにお呼び下さい」
ロゼリアが命じると、シアンたちは素直にそれに従った。ブラウニーが何か不満そうにしているが、それはシアンに任せる。
ところが、チェリシアの部屋に到着すると、中にはペシエラが居たのだ。
「お姉様! その女とばかり付き合ってないで、私と遊んで!」
いきなり駄々こね全開である。
「ペシエラ、わがままはダメよ。私はロゼリアと話があるのですから、自分の部屋に戻ってなさい」
チェリシアは貴族の姉として、駄々をこねる妹を叱る。だが、ロゼリアは別に気にしていないようで、
「ペシエラちゃんも居ても構わないわ。本当にあなたは私をどこまでも敵視するのね」
すごく落ち着いてペシエラに語りかける。
「本当は、チェリシアの事も恨めしく思っているのでしょう? あなたの本来の立ち位置なんですからね」
ロゼリアがこう言えば、チェリシアは困惑するし、ペシエラはロゼリアを睨む。
「えっ、ロゼリア、何を言っているの?」
チェリシアは訳が分からず、ロゼリアに尋ねる。
「ペシエラちゃん。あなた、気付かれてないと思った?」
睨んでも引かないというか、気にならないという顔でペシエラを見るロゼリア。
「な、何の事?」
あからさまにペシエラは顔と視線を外す。
「チェリシア。このペシエラは、間違いなく私を罠に嵌めた“チェリシア・コーラル”、その人よ」
「えっ?!」
あっさりと衝撃的な事を言うロゼリアに、チェリシアは大いに驚いて口に手を当てる。ペシエラは視線だけをロゼリアに向けて、再び睨みつける。
「初めて会った時から、常に私に対して向けられる視線……。明らかに敵意剥き出しでしたからね。あんな視線を向けられ続ければ、普通は気付くものでしょう」
「……お姉様の隣に常に居るから、気に食わなかっただけよ」
ペシエラはごまかすようにロゼリアに反論する。
「普通、五歳児でそんなしっかりとした反論ができるとお思いで?」
ところが、ロゼリアにはしっかり反撃されてしまった。
「第一、あなたは今までずっとシェリアの街に居たのでしょう? 今回、私とチェリシアが初めて接触したのは、今から約一ヶ月前。その状況で、あなたに情報がいってるとは思えない。となれば、結論はひとつです」
チェリシアは驚いたまま黙っているし、ペシエラも膨れたまま顔を逸らせている。しかし、ロゼリアは構わず結論をぶつけた。
「ペシエラ・コーラルは、私と同じように時を遡ってきたチェリシア・コーラルその人よ」
場に衝撃が走った。
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