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グローディアス王国編
王妃の最後 始まる戦乱!
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カディルの涙が収まった頃、伯爵の屋敷には全身が隠れるローブを纏った人が屋敷の裏口に到着した。
召使い達も屋敷から出され人気の無い回廊を家令に案内された先に伯爵が待っていた。
「遅い!!早く来いと言っただろうが!!」
「申し訳ありません…伯爵…家から出ておりましたので…」
「今回の呪いこそ成功させて貰うぞ!」
「分かっております…して、王太子の命を奪えばいいのですね…」
「いや、王太子だけでは無い…王と第2王子も亡き者にして欲しいと王妃様からのご依頼だ!」
「王族全てで御座いますか?…第2王子は王妃様の実の子供では?」
「ああ…私も驚いたが…いずれ帝国に呑み込まれるのだ…王族はどの道、斬首される…ある意味母としての恩情であろう…」
「……そうですか…分かりました…」
「全ての王族を今夜のうちに殺してしまうのだ!…出来るな?」
「はい…ジワジワと死なせるより得意で御座います…では、早速用意致しますので例の部屋をお貸しください。」
「ああ…頼んだぞ…我が家が筆頭侯爵家に戻れる最大の好機だ!必ず事を成せ!!」
「御意…」
呪い師が出て行った後、伯爵は家令を呼んでワインを運ばせた。
ゆっくり日が落ちて行くのを眺めながら、これから先の事を考えてはニヤニヤと笑い今夜の惨劇を思い描いていた。
千尋の家では…。
カディルの楽しそうな笑い声が響いていた。
「さあ~焼き上がったよ!!」
「うわぁぁぁ~美味しそう!」
「ああ、本当に美味しそうだね!!」
食卓には焼き餃子と中華風卵スープとご飯に中華風サラダが並んだ。
今回ポン酢とラー油は地球のスーパーからお取り寄せでございます。
「「………」」
「王様パパも兄上もカディルに免じて食べていいよ!今夜は例のアレがあるんでしょ?腹が減っては戦はできぬってね!!」
「「チーちゃん!ありがとう!!」
「さぁ~みんな熱いうちに召し上がれ~!」
『いただきます!』
「いた…だき…ます!」
皮はパリっとした羽根つきで自家製の皮はモチモチしていて噛んだ先からジュワッと肉汁が出て来る!
キャベツの甘みとオーク肉がベストだ!
この世界にニラに似た野菜を見つけてから千尋が前から作ってみたかった餃子はなかなかの出来で千尋は満足した!
大人達にはポン酢にラー油を入れたタレを渡し子供のカディルにはポン酢のみのタレを渡した。
卵スープは優しい塩味なのだが少しトロミがあるから体が温まる。
少しピリ辛なドレッシングのサラダも美味しい!
「はふ、はふ、…熱い…でも美味しいね!兄上!」
「うん!美味しいなぁ~カディル!…やっぱり嫁には出さない方向で…」
「ん?」
「カディルこのスープも美味しいよ…でも熱いから気を付けて飲んでごらん。」
「はい!父上!…熱っつ…」
「カディルふ~ふ~するのだ」
「ふ~ふ~ふ~ふ~…コクっ…美味しい~」
「良かったな!」
「はい!」
いつもは母の香水の香りで食欲も出なかったカディルは今日は初めて食べる温かい食事に瞳をキラキラさせて食べていたが、お腹いっぱいになると今日は色々あった事もあって疲れていたのかコクリコクリと食べている途中から眠くなって来たようだ。
「今夜はここで休ませても良いか?チーちゃん…」
「うん!勿論だよ!!ここは白雪が強力な結界石で守ってあるから安全だからね!」
「本当にありがとう…チーちゃん!」
「ふふふ…どう致しまして!兄上、カディルを隣の部屋に運んでくれる?」
「ああ、お安い御用だ!」
千尋はカディルを自分のシャツをパジャマ代わりに着替えさせてベッドに寝かせるとクークーと気持ち良さそうに寝てしまった。
カディルの茶色になった柔らかい髪を撫でてから王太子と千尋はソ~っと部屋を出た。
その間に餃子を全て平らげた白王が立ち上がり言った。
「さて、そろそろ戻るか?…白雪今夜はお前も王宮に行くか?」
「そうであるな…ここは真白も千尋もいるし…今夜は面白い物が見れそうだし…妾も城に参ろう!」
「お願いする!シラユキ殿…出来ればエリアスを守ってやって欲しい…自分の事はいつも後回しにしてしまうから…」
「あい、分かった!」
「待って!今お弁当用意するから持って行って!」
「千尋も甘いのぉ~」
「だって王様パパに食べさせて侯爵パパに食べさせないのはダメでしょ?」
「ふふふ…本当に可愛いのぉ~少女漫画でいうところのツンデレじゃな!」
「…少女漫画まであったの?…まあそれは後で確認するとして…ちょっとだけ待ってね!」
そう言って千尋は肉団子の甘酢あん掛けと揚げ餃子と卵サラダに生姜の甘酢漬けをおかずで白ごまを混ぜたご飯でおにぎりを手早く作ってお弁当にして渡した…念の為、多めに作ったのは言うまでも無い。
そして、4人は転移して行った…。
「どうか…今夜が無事終わりますように…実験がうまくいきますように!!」
「大丈夫だよ千尋!結構強力に掛かっているからね…王太子の反転魔法…」
「うん!さて~お片付けするか~!!」
「僕も手伝うよ!」
「うん、気持ちだけ貰っとく…」
「ええ~手伝うのに~!」
「これ以上皿を割りたく無いの!これお気に入りだから!!」
「ええ~~~」
仲良く戯れながら千尋と真白は厨房に降りて行った。
その日の深夜…伯爵家の地下にある小さな部屋は昔侯爵だった頃に作られた魔力を増幅させる呪文が刻まれている部屋がある…これが侯爵位から伯爵に落とされた原因であるのだが、その昔封印されて以来使われる事が無くなり忘れ去られた場所であった。
呪い師はたまたま昔読んだ文献から伯爵家の地下にある事を知り以前の王太子の緊縛の呪いもここからかけて、より強力な威力を得た。
「さあ、今夜で終わる…その混乱している時に神の愛し子を攫って行こう…あの方が喜ぶなぁ~」
ローブの下の顔は精悍な青年の顔…青白い肌に金色に光る瞳と真っ赤な髪…魔族の顔がそこにあった。
そして、その男こそギリス商会を根城にしていた、もう1人の首魁…。
「さて、この部屋の呪文も写し終えたし…この国でやる事は終わった、後はお土産貰って帰るだけってね~さぁ~王族を殺してしまっちゃおう!料金分は働かないとね~」
魔族の男は強力な呪いの文言を唱え始めると…部屋の呪文がそれに反応して文字が赤くなっていく。
緊縛の呪いより強い破滅の呪いの呪文が唱え終わった時、赤い光が天に昇り3つに分かれた!
「さようなら…グローディアスの王族さん!」
そう呟いた時、男は不審な顔をした!
「な!!2つは弾かれた!!…アイリッシュの教皇の札であっても防げない呪いなのに!!何故弾かれる??……ああああああ~反転されて戻って来るだと!!ああああああああああ~!!!」
その瞬間赤い光は金色に変化して男とそして伯爵と王妃に降りそそいだ!!
金色の光を浴びて気を失ったが、すぐに起き上がった。
「あれ?俺死んでない…反転魔法で呪いが戻ったのに…」
そう不審な顔をしていたが、このままここに居てはマズイと気が付き部屋を出て逃げ出した。
男は自分の顔を見ていないから気が付いていないが男の顔には大きな太線で大きく“X”が刻まれていた。
同時刻、伯爵と王妃も金色の光を浴びて気を失ったが、従者と侍女が2人を起こした時2人の顔にも大きく黒々とした太線で“X”の印が刻まれていた。
「な!これはなんなの!!嫌!!嫌!!嫌ーーーーっ!!!」
泣き叫ぶ王妃の有り様に急いで後宮に来た王と王太子は哀れな王妃の顔を見て言った。
「王妃それは呪いを反転したもの…反省すれば消えるそうだが、反省しなければ一生消えない罪の証しだ!」
「い…一生…そんな…嫌!嫌よ!!ああああああぁぁぁぁ~!!」
泣き崩れる王妃を憐れみの瞳で見ていた王は言った。
「近衛!王妃…いや、帝国の皇女を我が国から追放する!王太子をそして己の子供でもあるカディルをも殺害しようとした者を我が国から追放し帝国に引き渡せ!!」
「「「はっ!!!」」」
王妃は泣き崩れたまま引きずられる様に近衛兵に連れられ、そのまま馬車に乗せられ帝国との国境へと運ばれて行った。
伯爵も、その誤魔化しようのない証しで罪を暴かれ王族殺害未遂の罪で囚われ極刑を受ける事になり伯爵家はその領地財産を没収され伯爵家の一族は国から追放となり一族はバラバラに散り消えて行くことになる。
走り行く馬車を見送りながら白雪が呟いた。
「反省すれば消えると言うているのに…反省する気は無いのかのぉ~憐れな人じゃ…」
「全くだな…まあ、反省するくらいの頭があるなら最初からこんな事はしないだろ?」
「であるな…侯爵…帝国は動くかえ?」
「ああ…早速いい火種って言って動くだろう…シラユキ殿…頼みがあるんだが…」
「侯爵、我等は人と人の争いに介入は出来ぬ!それはこの世界での理であるからのぉ…相手が魔物ならば是非もなしじゃがな…」
「そうか…すまない…」
「だが、妾は冒険者でもある…クエストで王や王子達を守る事は出来る…それは千尋からの願いでもあるし断らぬよ。」
「!!…感謝する…シラユキ殿!…さあ、戦さ支度を始めるか!」
「その前に腹ごしらえじゃな!千尋が侯爵にお弁当を作って持たせたのじゃ!」
「…本当に…優しい子だな…チ~ちゃんは…」
「さあ~参るぞ!侯爵!!父上が我慢出来ずに開けてしまった様であるし!」
「何!?急ごう!!」
転移すれば一瞬なのに、走り出そうとした侯爵を呆れた顔で見た白雪は侯爵の襟首を捕まえ転移した。
帝国に送り返された王妃…いや元王妃は帝国の宮殿に戻ってすぐに皇帝の前に引き出された。
自分の娘である皇女の顔を見て皇帝は笑いながら言った。
「クククっ…元々期待はしていなかったが、この様な面白い顔になって戻るとは予想外であったな…」
「ち…父上様…。」
「しかし、ちゃんと役目は果たしてくれた…戦さの口実になった事は褒めてやろう…こんな恥ずかしい顔では次に嫁ぐ事も出来ないな…其方を生かすのも面倒だが…ちゃんと役目は果たした事に免じて北の修道院で生きて行く事は許してやろう…」
「そんな…父上様!!」
「もうよい…連れて行け!」
「はっ!!」
「嫌!嫌!!父上様!お許し下さい!!父上様!!!」
泣き叫ぶ皇女に興味を無くし皇帝ギデオン・デ・バレンは臣下達に命じた。
「グローディアス王国へ攻め入る用意を致せ!そして、あちらに宣戦布告を出せ!!」
『御意!!』
「あははははは!やっとあの国を我が領土にする事が出来る!!あの国さえ落とせば人間世界は我が物ぞ!!」
高らかに笑う皇帝の顔には自信が漲っていた。
頭を下げたまま密かに暗く微笑んだ帝国の若くして宰相に登りつめた男は皇帝の言葉にただ冷たく笑っていた。
その後、帝国の第1皇女は帝国最北端の極寒の最果ての地に送られ1年後に栄養失調となり肺炎にかかって亡くなったという…最後の亡くなる1週間前に顔からバツ印が消えた…それだけは喜んでいたそうだ。
続く。
召使い達も屋敷から出され人気の無い回廊を家令に案内された先に伯爵が待っていた。
「遅い!!早く来いと言っただろうが!!」
「申し訳ありません…伯爵…家から出ておりましたので…」
「今回の呪いこそ成功させて貰うぞ!」
「分かっております…して、王太子の命を奪えばいいのですね…」
「いや、王太子だけでは無い…王と第2王子も亡き者にして欲しいと王妃様からのご依頼だ!」
「王族全てで御座いますか?…第2王子は王妃様の実の子供では?」
「ああ…私も驚いたが…いずれ帝国に呑み込まれるのだ…王族はどの道、斬首される…ある意味母としての恩情であろう…」
「……そうですか…分かりました…」
「全ての王族を今夜のうちに殺してしまうのだ!…出来るな?」
「はい…ジワジワと死なせるより得意で御座います…では、早速用意致しますので例の部屋をお貸しください。」
「ああ…頼んだぞ…我が家が筆頭侯爵家に戻れる最大の好機だ!必ず事を成せ!!」
「御意…」
呪い師が出て行った後、伯爵は家令を呼んでワインを運ばせた。
ゆっくり日が落ちて行くのを眺めながら、これから先の事を考えてはニヤニヤと笑い今夜の惨劇を思い描いていた。
千尋の家では…。
カディルの楽しそうな笑い声が響いていた。
「さあ~焼き上がったよ!!」
「うわぁぁぁ~美味しそう!」
「ああ、本当に美味しそうだね!!」
食卓には焼き餃子と中華風卵スープとご飯に中華風サラダが並んだ。
今回ポン酢とラー油は地球のスーパーからお取り寄せでございます。
「「………」」
「王様パパも兄上もカディルに免じて食べていいよ!今夜は例のアレがあるんでしょ?腹が減っては戦はできぬってね!!」
「「チーちゃん!ありがとう!!」
「さぁ~みんな熱いうちに召し上がれ~!」
『いただきます!』
「いた…だき…ます!」
皮はパリっとした羽根つきで自家製の皮はモチモチしていて噛んだ先からジュワッと肉汁が出て来る!
キャベツの甘みとオーク肉がベストだ!
この世界にニラに似た野菜を見つけてから千尋が前から作ってみたかった餃子はなかなかの出来で千尋は満足した!
大人達にはポン酢にラー油を入れたタレを渡し子供のカディルにはポン酢のみのタレを渡した。
卵スープは優しい塩味なのだが少しトロミがあるから体が温まる。
少しピリ辛なドレッシングのサラダも美味しい!
「はふ、はふ、…熱い…でも美味しいね!兄上!」
「うん!美味しいなぁ~カディル!…やっぱり嫁には出さない方向で…」
「ん?」
「カディルこのスープも美味しいよ…でも熱いから気を付けて飲んでごらん。」
「はい!父上!…熱っつ…」
「カディルふ~ふ~するのだ」
「ふ~ふ~ふ~ふ~…コクっ…美味しい~」
「良かったな!」
「はい!」
いつもは母の香水の香りで食欲も出なかったカディルは今日は初めて食べる温かい食事に瞳をキラキラさせて食べていたが、お腹いっぱいになると今日は色々あった事もあって疲れていたのかコクリコクリと食べている途中から眠くなって来たようだ。
「今夜はここで休ませても良いか?チーちゃん…」
「うん!勿論だよ!!ここは白雪が強力な結界石で守ってあるから安全だからね!」
「本当にありがとう…チーちゃん!」
「ふふふ…どう致しまして!兄上、カディルを隣の部屋に運んでくれる?」
「ああ、お安い御用だ!」
千尋はカディルを自分のシャツをパジャマ代わりに着替えさせてベッドに寝かせるとクークーと気持ち良さそうに寝てしまった。
カディルの茶色になった柔らかい髪を撫でてから王太子と千尋はソ~っと部屋を出た。
その間に餃子を全て平らげた白王が立ち上がり言った。
「さて、そろそろ戻るか?…白雪今夜はお前も王宮に行くか?」
「そうであるな…ここは真白も千尋もいるし…今夜は面白い物が見れそうだし…妾も城に参ろう!」
「お願いする!シラユキ殿…出来ればエリアスを守ってやって欲しい…自分の事はいつも後回しにしてしまうから…」
「あい、分かった!」
「待って!今お弁当用意するから持って行って!」
「千尋も甘いのぉ~」
「だって王様パパに食べさせて侯爵パパに食べさせないのはダメでしょ?」
「ふふふ…本当に可愛いのぉ~少女漫画でいうところのツンデレじゃな!」
「…少女漫画まであったの?…まあそれは後で確認するとして…ちょっとだけ待ってね!」
そう言って千尋は肉団子の甘酢あん掛けと揚げ餃子と卵サラダに生姜の甘酢漬けをおかずで白ごまを混ぜたご飯でおにぎりを手早く作ってお弁当にして渡した…念の為、多めに作ったのは言うまでも無い。
そして、4人は転移して行った…。
「どうか…今夜が無事終わりますように…実験がうまくいきますように!!」
「大丈夫だよ千尋!結構強力に掛かっているからね…王太子の反転魔法…」
「うん!さて~お片付けするか~!!」
「僕も手伝うよ!」
「うん、気持ちだけ貰っとく…」
「ええ~手伝うのに~!」
「これ以上皿を割りたく無いの!これお気に入りだから!!」
「ええ~~~」
仲良く戯れながら千尋と真白は厨房に降りて行った。
その日の深夜…伯爵家の地下にある小さな部屋は昔侯爵だった頃に作られた魔力を増幅させる呪文が刻まれている部屋がある…これが侯爵位から伯爵に落とされた原因であるのだが、その昔封印されて以来使われる事が無くなり忘れ去られた場所であった。
呪い師はたまたま昔読んだ文献から伯爵家の地下にある事を知り以前の王太子の緊縛の呪いもここからかけて、より強力な威力を得た。
「さあ、今夜で終わる…その混乱している時に神の愛し子を攫って行こう…あの方が喜ぶなぁ~」
ローブの下の顔は精悍な青年の顔…青白い肌に金色に光る瞳と真っ赤な髪…魔族の顔がそこにあった。
そして、その男こそギリス商会を根城にしていた、もう1人の首魁…。
「さて、この部屋の呪文も写し終えたし…この国でやる事は終わった、後はお土産貰って帰るだけってね~さぁ~王族を殺してしまっちゃおう!料金分は働かないとね~」
魔族の男は強力な呪いの文言を唱え始めると…部屋の呪文がそれに反応して文字が赤くなっていく。
緊縛の呪いより強い破滅の呪いの呪文が唱え終わった時、赤い光が天に昇り3つに分かれた!
「さようなら…グローディアスの王族さん!」
そう呟いた時、男は不審な顔をした!
「な!!2つは弾かれた!!…アイリッシュの教皇の札であっても防げない呪いなのに!!何故弾かれる??……ああああああ~反転されて戻って来るだと!!ああああああああああ~!!!」
その瞬間赤い光は金色に変化して男とそして伯爵と王妃に降りそそいだ!!
金色の光を浴びて気を失ったが、すぐに起き上がった。
「あれ?俺死んでない…反転魔法で呪いが戻ったのに…」
そう不審な顔をしていたが、このままここに居てはマズイと気が付き部屋を出て逃げ出した。
男は自分の顔を見ていないから気が付いていないが男の顔には大きな太線で大きく“X”が刻まれていた。
同時刻、伯爵と王妃も金色の光を浴びて気を失ったが、従者と侍女が2人を起こした時2人の顔にも大きく黒々とした太線で“X”の印が刻まれていた。
「な!これはなんなの!!嫌!!嫌!!嫌ーーーーっ!!!」
泣き叫ぶ王妃の有り様に急いで後宮に来た王と王太子は哀れな王妃の顔を見て言った。
「王妃それは呪いを反転したもの…反省すれば消えるそうだが、反省しなければ一生消えない罪の証しだ!」
「い…一生…そんな…嫌!嫌よ!!ああああああぁぁぁぁ~!!」
泣き崩れる王妃を憐れみの瞳で見ていた王は言った。
「近衛!王妃…いや、帝国の皇女を我が国から追放する!王太子をそして己の子供でもあるカディルをも殺害しようとした者を我が国から追放し帝国に引き渡せ!!」
「「「はっ!!!」」」
王妃は泣き崩れたまま引きずられる様に近衛兵に連れられ、そのまま馬車に乗せられ帝国との国境へと運ばれて行った。
伯爵も、その誤魔化しようのない証しで罪を暴かれ王族殺害未遂の罪で囚われ極刑を受ける事になり伯爵家はその領地財産を没収され伯爵家の一族は国から追放となり一族はバラバラに散り消えて行くことになる。
走り行く馬車を見送りながら白雪が呟いた。
「反省すれば消えると言うているのに…反省する気は無いのかのぉ~憐れな人じゃ…」
「全くだな…まあ、反省するくらいの頭があるなら最初からこんな事はしないだろ?」
「であるな…侯爵…帝国は動くかえ?」
「ああ…早速いい火種って言って動くだろう…シラユキ殿…頼みがあるんだが…」
「侯爵、我等は人と人の争いに介入は出来ぬ!それはこの世界での理であるからのぉ…相手が魔物ならば是非もなしじゃがな…」
「そうか…すまない…」
「だが、妾は冒険者でもある…クエストで王や王子達を守る事は出来る…それは千尋からの願いでもあるし断らぬよ。」
「!!…感謝する…シラユキ殿!…さあ、戦さ支度を始めるか!」
「その前に腹ごしらえじゃな!千尋が侯爵にお弁当を作って持たせたのじゃ!」
「…本当に…優しい子だな…チ~ちゃんは…」
「さあ~参るぞ!侯爵!!父上が我慢出来ずに開けてしまった様であるし!」
「何!?急ごう!!」
転移すれば一瞬なのに、走り出そうとした侯爵を呆れた顔で見た白雪は侯爵の襟首を捕まえ転移した。
帝国に送り返された王妃…いや元王妃は帝国の宮殿に戻ってすぐに皇帝の前に引き出された。
自分の娘である皇女の顔を見て皇帝は笑いながら言った。
「クククっ…元々期待はしていなかったが、この様な面白い顔になって戻るとは予想外であったな…」
「ち…父上様…。」
「しかし、ちゃんと役目は果たしてくれた…戦さの口実になった事は褒めてやろう…こんな恥ずかしい顔では次に嫁ぐ事も出来ないな…其方を生かすのも面倒だが…ちゃんと役目は果たした事に免じて北の修道院で生きて行く事は許してやろう…」
「そんな…父上様!!」
「もうよい…連れて行け!」
「はっ!!」
「嫌!嫌!!父上様!お許し下さい!!父上様!!!」
泣き叫ぶ皇女に興味を無くし皇帝ギデオン・デ・バレンは臣下達に命じた。
「グローディアス王国へ攻め入る用意を致せ!そして、あちらに宣戦布告を出せ!!」
『御意!!』
「あははははは!やっとあの国を我が領土にする事が出来る!!あの国さえ落とせば人間世界は我が物ぞ!!」
高らかに笑う皇帝の顔には自信が漲っていた。
頭を下げたまま密かに暗く微笑んだ帝国の若くして宰相に登りつめた男は皇帝の言葉にただ冷たく笑っていた。
その後、帝国の第1皇女は帝国最北端の極寒の最果ての地に送られ1年後に栄養失調となり肺炎にかかって亡くなったという…最後の亡くなる1週間前に顔からバツ印が消えた…それだけは喜んでいたそうだ。
続く。
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