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レオニダス獣王国編
姫君のお輿入れ 7 獣王様に謁見と厨房征圧!
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いよいよ謁見の刻限になり、千尋はアース様が贈ってくれた桜色のふんわりした可愛いドレスに着替えて謁見の間のドアの前でドアが開かれるのを待っていた。
可愛い姫君を更に可憐にするドレスは型はローブデコルテ!下から上へ桜の花と花びらが刺繍され腰の所で濃い緑色のサッシュで腰の細さを強調し後ろでリボン結びをしている…肩から背中に薄い白のドレープを流し後ろに長く設えていた。
首にはピンク色の真珠のネックレスをし、イヤリングも同じピンクの真珠で揃え今度はシンプルに結い上げた黒髪に同じピンクの真珠のティアラを着けて可愛さ倍増であるのは言うまでも無い!
腕は絹の長手袋をし右手には小さなピンク真珠の腕輪を着けている。
「はぁ~~可愛い…我が国自慢の姫君だ!」
「ママ…本当に変じゃ無い?」
「変な所など一切無い!!…ああ~嫁に出したく無い…こんな可愛い姫は世界中探してもいないぞ!」
「う~ん…なんか複雑…でも、今は可愛い姫君を頑張る!」
謁見の間には王族だけでなく国中の貴族達が集まっており、ドアのこちら側でもザワザワとした空気を感じる。
「獣王様ってどんなお顔なんだろう?公爵閣下は弟になるから似てるのかなぁ?」
こんな会話を小さい声でする姫君を付き従っている執事や侍女達が微笑ましいと目尻を下げて姫君を見ている。
姫君を護衛する近衛騎士達も無表情だが心の中でデレているのだが表情は変わらない。
王宮の筆頭侍従が姫君に間も無くドアが開かれると伝えると千尋は思いっきり深呼吸をした。
そして、大きく息を吐き出したところで大きなドアが内側へ開いた!
一斉に向けられた大勢の視線に千尋は体が固まった!
だが、マリアンヌの温かな手が千尋の背中を支える様に添えられたのを感じて体の力を抜いてからニッコリ微笑んだ!
その微笑みは一瞬で会場にいる大勢の人々を虜にする。
「なんて可愛らしい姫君だ…。」
「黒髪に黒い目!尊いわ…。」
震える足を一歩前へ出そうとした時、ドアのすぐ横に獅子王兄弟が待っていた。
「姫君…陛下の元へエスコート致します!お手をどうぞ!」
「姫君、どうぞ!」
「ありがとうございます、唯殿下、宙殿下!」
二人の腕に掴まり歩き出したのを微笑ましく見ている獣王王国の貴族達…。
中には苦々しい顔をしている獣人もいない訳ではないが一応皆が拍手をして姫君を歓迎している。
千尋は鑑定を使って会場を眺めて…。
『ふむふむ…魔石付きは案外少ないな…。』
二人の王子にエスコートされ辿り着いた先に獣王王国の国王が玉座に座り待っていた。獣王の名は獅子王天昇、獣人達の頂点である獅子の獣人の長である。
公爵閣下と違い痩せた身体に獅子王陛下もまた公爵閣下と同じだけの魔石が着けられていると鑑定結果が出て、公爵と同じ様に魔法陣も体に刻まれているだろう。
端正な顔に豪奢な筈の金色の髪は艶が無く燻んだ色をしていて金色の瞳も濁って病を患っている感じだ。
実際千尋の鑑定では内臓を酷く悪くして悪性腫瘍が肝臓にあるという診断結果が出ている…このまま治療をせずにいたら余命3ヶ月の命だ。
獅子王天昇は無気力な感じで獅子の王様と言うには弱そうな感じ…強いて言うなら覇気が無い!
公爵閣下があれだけの魔石や呪いを受けていても、何処か精神的に抵抗していたを見ているだけに王様にはそれが無かった…。
魔石の影響故に無気力な感じという訳でも無い気がして…千尋は不思議に思ったのだ。
千尋の王様のイメージはグローディアス王国の王様パパだ。
王様パパは晩ごはんだけは我儘を言うけど、毎日毎日朝から晩まで民の為にプライベートを犠牲にして働いている。
ある意味ブラック企業の社畜の様な働き方だ!
それでも王様パパは王様である事に誇りを持ってやっている。
昼間のパパはカッコいい…夜は千尋に癒されたいと膝の上に千尋を抱っこしたまま寝落ちするけど…昼間は本当にカッコいいのだ!
そんな王様パパが持つ王族としての矜持や覇気が獣王様には感じられない…。
そんな獣王様を見つめていた千尋の背中をマリアンヌにツンツンされ千尋は正気に戻った!
ある意味緊張もふっ飛んでしまった千尋は身体に染み込む様に覚えさせられた綺麗なカーテシーを披露し獣王様に挨拶をした。
「獣王陛下にお会いできて光栄でございます!グローディアス王国王女千尋・フォン・グロースディアと申します!」
「おお~なんと愛らしい姫君だ…遠い貴国より、ようこそ参られた…姫君を歓迎する。」
「ありがとうございます、陛下。」
「婚姻の儀まで旅の疲れを取り、ゆっくりされるが良いだろう…唯に宙よ、その間姫君に王国を案内し我が国を十分に理解して貰い我が王室に親しんで貰えるようにせよ。」
「「はい!陛下!」」
「どうぞ姫君、息子達と仲良くな…以上で対面の儀は終わる…我は疲れた…退出する…凱、後は頼む。」
「はい、陛下。」
広間の全ての人が頭を下げるなか獣王様は退出していった。
その後は王子達にエスコートされ千尋達も退出し王子達の案内で千尋達が暫く暮らす王子宮の王子妃専用の部屋に案内された。
部屋と言っても寝室に居間に客室が大中小と3部屋あり専用のバスルームに専用庭まである豪華版である。
マリアンヌ達も千尋の年齢や小さい事を考えられて本来は迎賓館の方に滞在するのが当たり前なのだが、同じ王子妃専用の客間に寝泊まりする事になった。
細やかな心遣いに侍従や侍女達にも、にっこり笑顔で礼を言う千尋は既に王宮の女主人の扱いだ!
筆頭執事の名前はここでもセバスチャン!?
セバスチャンさんは魔石を付けられるのを最後まで抵抗して今に至っている。
ナイスミドルなお爺ちゃんに案内されて着替えた後は美味しい紅茶を淹れてくれたセバスチャンさんと少し話しをした。
「そうか…獣王様の王妃様は亡くなられているんだね…。」
「はい…もう10年になります…体調を崩され原因不明の病でございました…。」
「原因不明?」
「はい…突然高熱を出され倒れられ…3日後に息を引き取られたのです…それまで特に大きな病気をされた事も無かったのに…。」
「そうなんだ…それは凄くショックだったよね…。」
「はい…特に仲の良い夫婦であられた陛下は大変悲しまれ…今も悲しみに囚われておられます。」
「そうなんだ…だから獣王様はあんなに元気が無いんだね…。」
「はい…最近では体調も崩されているので侍医に見て貰う様にお願いしているのですが…食欲もすっかり無くされ…我々も心配で色々お勧めするのですけど…。」
「ご飯食べないのはダメだよね…元気が出ないよ…。」
「はい…。」
早く治療する為にも魔石と呪いを解いてあげたいと思っているが…あの無気力な王様が果たしてそれを望むだろうか?
なんだか早く死にたいと望む様な風情の王様に生きていたいと思って貰うにはどうしたら良いのか…。
無理矢理体を治しても心が元気にならなければ無意味だ…。
「せめて美味しいご飯を食べてくれたら良いのに…。」
「姫様…なんとお優しい…。」
「塩だけじゃダメだ!ちゃんと栄養を考えた食事じゃなきゃ!胃にも負担が掛からない食事が大事だよ!」
「胃にも負担が…?」
「よし!ぼ…私が作る!厨房に案内して!セバスチャンさん!」
「ええ!姫様が作られるのですか??」
「うん!私、料理得意なんだよ!」
「ですが…厨房は料理長の許可が必要ですし…姫君が行かれる場所でも…。」
「良いから!案内して!!」
「はい!分かりました!!」
そこから大騒ぎで案内して貰った厨房には熊さんがいた!
「ああん!素人に入って貰いたく無いんだ!厨房ってのは食材や色々な危険な道具もあるんだぜ!!いくら他国の姫様でも入って貰いたく無いんだ!帰れ帰れ!!」
「熊さんが言う事は何処の国も一緒だけど…素人とかどうかは、ぼ…私の料理を見てから言ってよね!」
「なんだと!」
「なんだったら料理対決する?」
「く~~~!良いだろう!!こういう事は例え姫君だろうと容赦はしねぇ!」
「じゃあ~ここにある食材で王様に出す料理を1品作るで勝負しよう!」
「ふん!良いだろう!!ギャフンって言うなよ!!」
「ふふふ…どっちが言うかな…?じゃあ、料理開始だね!」
流石に王宮だけあって食材にしろ調味料にしろ種類は豊富だ。
なのに何故味は塩味オンリーなのか疑問なんだけど…。
千尋は鶏肉を見つけて、これを包丁で叩いて挽き肉にした。
玉ねぎを微塵切りにしてから一度フライパンで炒めてから挽き肉と合わせて少しの塩、胡椒をし小さく丸くして鶏肉の肉団子を作った。
そして再びフライパンで今度はバターで小麦粉を焦げない様に炒め少しずつミルクを入れて小麦粉が玉にならない様に伸ばして塩、胡椒をしホワイトソースを作った。
ジャガイモと人参の皮を剥き一口大の大きさに切り同じく玉ねぎを5センチ幅で切り深鍋でバターで炒めてから水を入れて中火で沸騰するまでの間、こまめに野菜の灰汁を取り沸騰したところで肉団子をポイポイ入れる。
具材にだいたい火が入ったところでホワイトソースを入れてクリームシチューを作り上げる!
粉チーズを入れ少しだけ甘さを入れる為に砂糖を少し入れて胡椒を追加し味を調え完成させた!
「出来た!鶏肉団子のクリームシチューだよ!」
千尋が後ろを振り向くと厨房には話しを聞き付けた王子達と公爵閣下が匙を持ってスタンばっていた!
「いつのまに…じゃあ判定を殿下達と閣下に任せましょう!」
「「「やった!」」」
「熊とセバスチャンさんも食べてみて!」
千尋くん…既に熊さんは呼び捨てですか…。
そう言って千尋は人数分を深皿によそい、それぞれの前に皿を置いて言った。
「さあ、どうぞ召し上がれ~!」
「「「「「頂戴します!」」」」」
一口シチューを口に入れた瞬間!熊さんとセバスチャンさんは固まった!
王子と閣下は叫んだ!
「「「美味しい!!!」」」
「なんと!凄く美味しいです!」
「………」
そこから5人は一気に食べて、あっという間に皿は空になった。
おかわりを希望する顔に苦笑しながら皿に追加のシチューと横にインベントリからご飯を出して皿によそって出してあげた。
「ご飯にシチューも結構合うよ!シチューをご飯に掛けて食べてみて!」
千尋の言うままにご飯にシチューを掛けて食べると王子達と公爵は再び叫んだ!
「「「美味しい!!!」」」
とにかく肉食獣は腹持ち!!っていうのが千尋の心に刻み込まれている。
そして、全てを綺麗に平らげた熊さんは体を震わせ、その場に土下座をすると定番のセリフを言うのだ。
「御見逸れしました!!師匠!!こんな…こんな美味しい料理…生まれて初めて食べました!!」
「エヘへ…お粗末様でした!」
こうして獣王王国王宮の厨房を征圧した千尋はセバスチャンさんに言って獣王陛下にクリームシチューとサラダ…そして柔らかい白パンを添えて出して貰った。
勿論、温かくして出す事を忘れず指示した。
そして、千尋の部屋に来たセバスチャンが泣きながら報告した。
「姫様!陛下が全部お食べになられました!!シチューもパンもサラダも!ありがとうございます!ありがとうございます!姫様!!」
「うん!良かったね!」
そう言って微笑む姫君に王宮で働く人々は、ますます傾倒していくのだ。
千尋姫の獣王王国征圧はこうして胃袋から始まる!
もう既に王族は征圧完了してるし…。
続く!
可愛い姫君を更に可憐にするドレスは型はローブデコルテ!下から上へ桜の花と花びらが刺繍され腰の所で濃い緑色のサッシュで腰の細さを強調し後ろでリボン結びをしている…肩から背中に薄い白のドレープを流し後ろに長く設えていた。
首にはピンク色の真珠のネックレスをし、イヤリングも同じピンクの真珠で揃え今度はシンプルに結い上げた黒髪に同じピンクの真珠のティアラを着けて可愛さ倍増であるのは言うまでも無い!
腕は絹の長手袋をし右手には小さなピンク真珠の腕輪を着けている。
「はぁ~~可愛い…我が国自慢の姫君だ!」
「ママ…本当に変じゃ無い?」
「変な所など一切無い!!…ああ~嫁に出したく無い…こんな可愛い姫は世界中探してもいないぞ!」
「う~ん…なんか複雑…でも、今は可愛い姫君を頑張る!」
謁見の間には王族だけでなく国中の貴族達が集まっており、ドアのこちら側でもザワザワとした空気を感じる。
「獣王様ってどんなお顔なんだろう?公爵閣下は弟になるから似てるのかなぁ?」
こんな会話を小さい声でする姫君を付き従っている執事や侍女達が微笑ましいと目尻を下げて姫君を見ている。
姫君を護衛する近衛騎士達も無表情だが心の中でデレているのだが表情は変わらない。
王宮の筆頭侍従が姫君に間も無くドアが開かれると伝えると千尋は思いっきり深呼吸をした。
そして、大きく息を吐き出したところで大きなドアが内側へ開いた!
一斉に向けられた大勢の視線に千尋は体が固まった!
だが、マリアンヌの温かな手が千尋の背中を支える様に添えられたのを感じて体の力を抜いてからニッコリ微笑んだ!
その微笑みは一瞬で会場にいる大勢の人々を虜にする。
「なんて可愛らしい姫君だ…。」
「黒髪に黒い目!尊いわ…。」
震える足を一歩前へ出そうとした時、ドアのすぐ横に獅子王兄弟が待っていた。
「姫君…陛下の元へエスコート致します!お手をどうぞ!」
「姫君、どうぞ!」
「ありがとうございます、唯殿下、宙殿下!」
二人の腕に掴まり歩き出したのを微笑ましく見ている獣王王国の貴族達…。
中には苦々しい顔をしている獣人もいない訳ではないが一応皆が拍手をして姫君を歓迎している。
千尋は鑑定を使って会場を眺めて…。
『ふむふむ…魔石付きは案外少ないな…。』
二人の王子にエスコートされ辿り着いた先に獣王王国の国王が玉座に座り待っていた。獣王の名は獅子王天昇、獣人達の頂点である獅子の獣人の長である。
公爵閣下と違い痩せた身体に獅子王陛下もまた公爵閣下と同じだけの魔石が着けられていると鑑定結果が出て、公爵と同じ様に魔法陣も体に刻まれているだろう。
端正な顔に豪奢な筈の金色の髪は艶が無く燻んだ色をしていて金色の瞳も濁って病を患っている感じだ。
実際千尋の鑑定では内臓を酷く悪くして悪性腫瘍が肝臓にあるという診断結果が出ている…このまま治療をせずにいたら余命3ヶ月の命だ。
獅子王天昇は無気力な感じで獅子の王様と言うには弱そうな感じ…強いて言うなら覇気が無い!
公爵閣下があれだけの魔石や呪いを受けていても、何処か精神的に抵抗していたを見ているだけに王様にはそれが無かった…。
魔石の影響故に無気力な感じという訳でも無い気がして…千尋は不思議に思ったのだ。
千尋の王様のイメージはグローディアス王国の王様パパだ。
王様パパは晩ごはんだけは我儘を言うけど、毎日毎日朝から晩まで民の為にプライベートを犠牲にして働いている。
ある意味ブラック企業の社畜の様な働き方だ!
それでも王様パパは王様である事に誇りを持ってやっている。
昼間のパパはカッコいい…夜は千尋に癒されたいと膝の上に千尋を抱っこしたまま寝落ちするけど…昼間は本当にカッコいいのだ!
そんな王様パパが持つ王族としての矜持や覇気が獣王様には感じられない…。
そんな獣王様を見つめていた千尋の背中をマリアンヌにツンツンされ千尋は正気に戻った!
ある意味緊張もふっ飛んでしまった千尋は身体に染み込む様に覚えさせられた綺麗なカーテシーを披露し獣王様に挨拶をした。
「獣王陛下にお会いできて光栄でございます!グローディアス王国王女千尋・フォン・グロースディアと申します!」
「おお~なんと愛らしい姫君だ…遠い貴国より、ようこそ参られた…姫君を歓迎する。」
「ありがとうございます、陛下。」
「婚姻の儀まで旅の疲れを取り、ゆっくりされるが良いだろう…唯に宙よ、その間姫君に王国を案内し我が国を十分に理解して貰い我が王室に親しんで貰えるようにせよ。」
「「はい!陛下!」」
「どうぞ姫君、息子達と仲良くな…以上で対面の儀は終わる…我は疲れた…退出する…凱、後は頼む。」
「はい、陛下。」
広間の全ての人が頭を下げるなか獣王様は退出していった。
その後は王子達にエスコートされ千尋達も退出し王子達の案内で千尋達が暫く暮らす王子宮の王子妃専用の部屋に案内された。
部屋と言っても寝室に居間に客室が大中小と3部屋あり専用のバスルームに専用庭まである豪華版である。
マリアンヌ達も千尋の年齢や小さい事を考えられて本来は迎賓館の方に滞在するのが当たり前なのだが、同じ王子妃専用の客間に寝泊まりする事になった。
細やかな心遣いに侍従や侍女達にも、にっこり笑顔で礼を言う千尋は既に王宮の女主人の扱いだ!
筆頭執事の名前はここでもセバスチャン!?
セバスチャンさんは魔石を付けられるのを最後まで抵抗して今に至っている。
ナイスミドルなお爺ちゃんに案内されて着替えた後は美味しい紅茶を淹れてくれたセバスチャンさんと少し話しをした。
「そうか…獣王様の王妃様は亡くなられているんだね…。」
「はい…もう10年になります…体調を崩され原因不明の病でございました…。」
「原因不明?」
「はい…突然高熱を出され倒れられ…3日後に息を引き取られたのです…それまで特に大きな病気をされた事も無かったのに…。」
「そうなんだ…それは凄くショックだったよね…。」
「はい…特に仲の良い夫婦であられた陛下は大変悲しまれ…今も悲しみに囚われておられます。」
「そうなんだ…だから獣王様はあんなに元気が無いんだね…。」
「はい…最近では体調も崩されているので侍医に見て貰う様にお願いしているのですが…食欲もすっかり無くされ…我々も心配で色々お勧めするのですけど…。」
「ご飯食べないのはダメだよね…元気が出ないよ…。」
「はい…。」
早く治療する為にも魔石と呪いを解いてあげたいと思っているが…あの無気力な王様が果たしてそれを望むだろうか?
なんだか早く死にたいと望む様な風情の王様に生きていたいと思って貰うにはどうしたら良いのか…。
無理矢理体を治しても心が元気にならなければ無意味だ…。
「せめて美味しいご飯を食べてくれたら良いのに…。」
「姫様…なんとお優しい…。」
「塩だけじゃダメだ!ちゃんと栄養を考えた食事じゃなきゃ!胃にも負担が掛からない食事が大事だよ!」
「胃にも負担が…?」
「よし!ぼ…私が作る!厨房に案内して!セバスチャンさん!」
「ええ!姫様が作られるのですか??」
「うん!私、料理得意なんだよ!」
「ですが…厨房は料理長の許可が必要ですし…姫君が行かれる場所でも…。」
「良いから!案内して!!」
「はい!分かりました!!」
そこから大騒ぎで案内して貰った厨房には熊さんがいた!
「ああん!素人に入って貰いたく無いんだ!厨房ってのは食材や色々な危険な道具もあるんだぜ!!いくら他国の姫様でも入って貰いたく無いんだ!帰れ帰れ!!」
「熊さんが言う事は何処の国も一緒だけど…素人とかどうかは、ぼ…私の料理を見てから言ってよね!」
「なんだと!」
「なんだったら料理対決する?」
「く~~~!良いだろう!!こういう事は例え姫君だろうと容赦はしねぇ!」
「じゃあ~ここにある食材で王様に出す料理を1品作るで勝負しよう!」
「ふん!良いだろう!!ギャフンって言うなよ!!」
「ふふふ…どっちが言うかな…?じゃあ、料理開始だね!」
流石に王宮だけあって食材にしろ調味料にしろ種類は豊富だ。
なのに何故味は塩味オンリーなのか疑問なんだけど…。
千尋は鶏肉を見つけて、これを包丁で叩いて挽き肉にした。
玉ねぎを微塵切りにしてから一度フライパンで炒めてから挽き肉と合わせて少しの塩、胡椒をし小さく丸くして鶏肉の肉団子を作った。
そして再びフライパンで今度はバターで小麦粉を焦げない様に炒め少しずつミルクを入れて小麦粉が玉にならない様に伸ばして塩、胡椒をしホワイトソースを作った。
ジャガイモと人参の皮を剥き一口大の大きさに切り同じく玉ねぎを5センチ幅で切り深鍋でバターで炒めてから水を入れて中火で沸騰するまでの間、こまめに野菜の灰汁を取り沸騰したところで肉団子をポイポイ入れる。
具材にだいたい火が入ったところでホワイトソースを入れてクリームシチューを作り上げる!
粉チーズを入れ少しだけ甘さを入れる為に砂糖を少し入れて胡椒を追加し味を調え完成させた!
「出来た!鶏肉団子のクリームシチューだよ!」
千尋が後ろを振り向くと厨房には話しを聞き付けた王子達と公爵閣下が匙を持ってスタンばっていた!
「いつのまに…じゃあ判定を殿下達と閣下に任せましょう!」
「「「やった!」」」
「熊とセバスチャンさんも食べてみて!」
千尋くん…既に熊さんは呼び捨てですか…。
そう言って千尋は人数分を深皿によそい、それぞれの前に皿を置いて言った。
「さあ、どうぞ召し上がれ~!」
「「「「「頂戴します!」」」」」
一口シチューを口に入れた瞬間!熊さんとセバスチャンさんは固まった!
王子と閣下は叫んだ!
「「「美味しい!!!」」」
「なんと!凄く美味しいです!」
「………」
そこから5人は一気に食べて、あっという間に皿は空になった。
おかわりを希望する顔に苦笑しながら皿に追加のシチューと横にインベントリからご飯を出して皿によそって出してあげた。
「ご飯にシチューも結構合うよ!シチューをご飯に掛けて食べてみて!」
千尋の言うままにご飯にシチューを掛けて食べると王子達と公爵は再び叫んだ!
「「「美味しい!!!」」」
とにかく肉食獣は腹持ち!!っていうのが千尋の心に刻み込まれている。
そして、全てを綺麗に平らげた熊さんは体を震わせ、その場に土下座をすると定番のセリフを言うのだ。
「御見逸れしました!!師匠!!こんな…こんな美味しい料理…生まれて初めて食べました!!」
「エヘへ…お粗末様でした!」
こうして獣王王国王宮の厨房を征圧した千尋はセバスチャンさんに言って獣王陛下にクリームシチューとサラダ…そして柔らかい白パンを添えて出して貰った。
勿論、温かくして出す事を忘れず指示した。
そして、千尋の部屋に来たセバスチャンが泣きながら報告した。
「姫様!陛下が全部お食べになられました!!シチューもパンもサラダも!ありがとうございます!ありがとうございます!姫様!!」
「うん!良かったね!」
そう言って微笑む姫君に王宮で働く人々は、ますます傾倒していくのだ。
千尋姫の獣王王国征圧はこうして胃袋から始まる!
もう既に王族は征圧完了してるし…。
続く!
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