人は神を溺愛する

猫屋ネコ吉

文字の大きさ
上 下
66 / 85

【賀正】閑話 悠夜の日常 正月編

しおりを挟む
お正月の朝も悠夜の始まりは桜の塩漬けが入った白湯から始まる。

「悠夜様明けましておめでとうございます!本年もよろしくお願い致します。」
「明けましておめでとう~田中さん、今年もよろしくね!」
「悠夜様早速ではございますが、すでにお客様方が境内広場にてお待ちでございます。」
「今年も早いね~」
「はい…大変申し訳ございませんが、朝食後お清めの入浴と新年の装束にお着替え頂きます。」
「ふ~了解しました…。」

正月元旦の悠夜は生き神様として集まった人々に祈祷を行ない一年の五穀豊穣を祈るのだが…その事を聞いた財界や政治家や有名人そして近所の人々などなどが約1000人程集まる。
その1000人も厳正なる抽選で決まる。
応募者ははっきり言って一万どころではない。
厳正なる抽選は前日に行われるのだが、地方からの応募もあるため神城家近く…と言っても最寄りの駅とか周辺地域なのだが全てのホテルが埋まる。
しかも、年末年始の予約は何年も前から入っている始末で、地域としては経済的に活性してるのでウハウハなのだ。
なので悠夜が近所を歩くとたくさんの商店の店主が出て来て、有難や~と拝んでしまう。

「「「「「悠夜、明けましておめでとう~!」」」」」
「お父さん~お母さん~陸兄~海兄~空兄~明けましておめでとうございます!」

挨拶した後は自分の席に着くと同時に正月の朝食がサーブされる。
精進潔斎のため悠夜の前には塩おにぎりと白菜の漬物と沢庵に豆腐とワカメの味噌汁が置かれた。

「今日も美味しそう~頂きます!」
「毎年とはいえ正月くらい家族だけで、ゆっくりしたいよな…。」
「抽選で1000人とかに厳選してはいるけど、もう少し抑えてもいいんじゃない?100人とかさ~」
「それは無理だろ?1000もかなり抑えた結果だからね。」
「悠夜のご祈祷受けた人はその1年凄いいい事ありまくりだからね…」
「去年だったっけ?落ち目の芸人が抽選に当たってご祈祷後凄いブレイクしちゃったんだよね~」
「北海道から来て抽選当たった大家族のおばちゃんは宝くじ当たって、子供達の学費が大学まで出来たって連絡きたよな~」

家族が話している中モグモグ食べていた悠夜が爆弾発言を落とした。

「まあ~来年は京都だからご祈祷も今年が最後になるけどね!」
「「「「「ええ!!!!!」」」」」
「はぁ~美味しかった~ご馳走様~」
「悠夜…来年はご祈祷無しになるの?」
「京都は神社仏閣多いし~僕がやらなくても、大丈夫そうじゃない?」
「「「「「ええええええぇぇぇぇぇ~」」」」」

来年ご祈祷が無い…それを知られたらどんな抗議やら暴動が起きるか怖い。
それに正月景気に喜ぶ地元景気も落ちる事になるだろう。

「悠夜…正月くらい旦那様連れて帰って来てもいいじゃない?」
「「「「ゴフっ!」」」」

その場にいた神城家の男達は一斉に咽せた。

「「「「だ…旦那……」」」」
「う~ん…でも那智の家は喫茶店だもの…正月も開店するかもしれないし~そしたら僕手伝いたいし…。」
「そう…でも、お店開けるかどうかは那智さん次第よね?」
「うん…そうだけど…。」
「分かったわ、さあ~悠夜はお風呂でしょ?時間も無いから行ってらっしゃい。」
「はーい。」
「かかかか母さん!どうしよう~!?」
「那智さん次第なら話しは早いわ!」

そう言って取り出したスマホを動かした奈津子は那智に連絡した。

「那智さん?明けましておめでとうございます!朝早くからごめんなさいね…今いいかしら?ええ、悠夜は今潔斎の為の禊に行っているわ。ええ悠夜の祈祷の舞はステキよ。あら今から来る?お店は?
正月くらい休みにするって!そうよね~ええ~力を使えばいいじゃない?なんで知ってるって?ふふふ…内緒!ふふふ…ええ、特等席である家族席をご用意するわ~ええ、サプライズね!はい!じゃあ後で~!」
「…母さん…いつの間に連絡先とか交換してるの?」
「ふふふ…内緒!」

相変わらずの母の行動力に慄く神城家の男達は絶対絶対逆らってはダメな人がいる事を再確認するのだった。

悠夜は正月朝の全てのルーティンを終え真っ白な装束に着替え精神統一するふりして色々考えていた。

『この正月の一連の精進潔斎と舞踊る事で幾分か力を発散出来る事は僕にも利があるんだよなぁ~現世でそう発散する事が出来ないからなぁ~ましてや京都みたいな古い結界ある場所で僕がこんなんやったら大惨事だしな~』

そんな損得勘定で揺れていたんだけど、いかにも精神統一してましたって顔していた悠夜に執事の田中さんが声を掛けた。

「悠夜様お時間でございます。」
「はい。」

立ち上がった悠夜を誘導する様に田中さんがドアを開ける。
開けた先にはいつものメンバーが揃っていた。

「達兄~みんな~明けましておめでとうございます!」
「「「おめでとう~悠ちゃん!」」」
「さあ~行きます!」

これから行く場所は神城家の中にある小さな神社だ。
小さなといっても小学校の体育館くらいの広さがあるのだけど…。
大勢の人の気配がする。
そして、大きな和太鼓が儀式の始まりの音を鳴らす。
ざわめいていた人々が一斉に息を潜め、静かになると玉砂利を踏みしめる小さな音がし、幕間から真っ白な装束と金の冠を着けた悠夜が1人で現れた。

右手に大麻(おおぬさ)という白い紙がふわふわにしていっぱい付いた物、左手に小さな鈴がいっぱい付いた道具を持って
現れた。
祭壇の前に行き、深く低頭して一礼しスッと立ち上がり大麻を左、右と振り始め祝詞を言の葉を乗せると和太鼓が響きだしそれに添うように横笛が鳴り響く中で悠夜は大きく舞い始めた。
清浄な空気が悠夜から円状に回り始め、その場にいた人々は息をするのも忘れた様に魅入っていた。
光が満ちていくなか、その中を舞い踊りそこにいる全ての人に祝福を与え、さらにその地域さらに県、そして国全体に広げて行く。

『払い給え清め給え、幸き給え…』

20分ほどで悠夜の祈祷の舞いが終わり静かだった場が人々の喜びの声が響いた。

「はあ~疲れた~でも、いい大祓いでした!」
「悠夜!」
「那智!ええ~来てたの?店は?」
「お義母さんから連絡あって…店は元々正月はお休みしてるんです。営業は3日からですから…。」
「そうなんだ~」
「本当に綺麗でした!今まで見れなかったのが残念過ぎる程です!」
「えへへ~そう?」
「でも、これからは毎年見れるのですね。本当に嬉しい。」
「毎年…うん!毎年舞ってあげるよ!那智のために!」
「はい、ありがとうございます。」

細い身体を引き寄せて抱き寄せた。
広い胸に身体を預けて今こうして居られる奇跡を喜んだ。

その様子を柱の影から眺めていた奈津子も幸せだった。

「ああ~この姿をビデオに納められて良かったわ~!私もハッピー!我が家もハッピー!地元商店街もハッピー!ああ~今年もいい年になるわ~ほほほほっ!」

幸せな新年を!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
明けましておめでとうございます(〃ω〃)
新年なんで閑話放出しました。
今年もよろしくお願い致します!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

男子学園でエロい運動会!

ミクリ21 (新)
BL
エロい運動会の話。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

転生令息の、のんびりまったりな日々

かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。 ※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。 痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。 ※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

俺が総受けって何かの間違いですよね?

彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。 17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。 ここで俺は青春と愛情を感じてみたい! ひっそりと平和な日常を送ります。 待って!俺ってモブだよね…?? 女神様が言ってた話では… このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!? 俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!! 平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣) 女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね? モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

処理中です...