補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く

目指せSランク

総評を聞いて

ニラダとケンの訓練所での模擬戦はケンに軍配が上がり、ニラダはしばらく横たわっていた。

　意識は失っていなかったのでどうにか身体へのダメージが和らいだタイミングでなんとか起き上がる事に成功する。

「ニラダ君大丈夫⁉」
「起きれたけど立てんのか？」
「辛いなら治癒魔法をかけるわ」
「はあ、はあ、大丈夫だ、それよりケンさん俺への総評をお願いします」

　どうにか立ち上がったニラダはケンに今回の訓練の総評をまず尋ねた。

「ああ、まずはそうだね補助魔法を使っているのもあったけど、攻撃が単調で読みやすかったかな、今までの魔物ならそれでも十分だろうけど、君が、君達が本当に魔王軍の生き残りの魔物を倒そうと思ったらそれだけじゃあ足りないね」
「おいケン、俺達の話し合いを聞いていたのか？」
「まあ途中からだけどね、君達がSランクを目指している事も前々から冒険者達の間でも噂になっているからね」

　ケンはニラダ達が魔王軍の生き残っている魔物の討伐を考えている話、そしてSランクを目指す事を噂で聞いており、その話を踏まえたうえで更にニラダの総評についての話の続きをする。

「正直、僕達はSランクを目指す事は考えてもいなかった、だからこそ言うよ今の君が目指すには無謀だと言わざるを得ない」
「おいケン！ニラダに勝ったとはいえ、これは模擬戦なんだぞ互いに命のやり取りをしているわけじゃないんだ、あまり調子こいた事を……」
「じゃあ言わせてもらうけど僕がもし冒険者に扮した魔物だとしたらニラダ君は今頃どうなっている？」
「そ、それは……」
「間違いなく命を落としているね、そして君達も全員ではないにしても……」

　ケンに抗議するジャンであったが、実戦であれば間違いなくニラダは命を落としていた事、そして残った自分達の命も危機に瀕していた事を告げようとしたのだ。

「確かにケンさんの言うとおりね、前衛のニラダの死は間違いなく私達の壊滅に直結するわ」
「くっ……」
「まあいきなり無謀だと言われても納得できないだろうし具体的な事も言わないとね、まずは動きだ単調なのもあるがやはりぎこちなさはあるかな」
「ぎこちなさですか？」
「うん、元々長年魔法使いとして修行してきたんだ、いくら補助魔法とスキルで肉体を強化できるとはいえ、動きの硬さは数か月ではなかなかほぐれないだろう」
「確かにそうですね、武器の使い方も本で読んで実戦で試しただけですからね」

　ニラダの発言を聞いてケンは何か思いついたようでニラダに告げる。

「そうだったのか、それじゃあ言わせてもらう、その本の内容はもう忘れるんだ」

　本の内容を忘れろ、その言葉の真意とは？