154 / 160
高校2年編
記録係に
しおりを挟む
女流棋士総会で女流棋士会長の交代が行われて更に総会の中で前会長である松浦女流六段が総会の進行を続ける。
「それでは山西紗綾女流二段から皆様に報告したい事があるそうなので山西女流二段お願いします」
「はい、すでにSNSとかでは発表しましたが私山西は先日入籍しました」
山西女流二段の入籍発表に会議室内から拍手が起こり、松浦前会長からも祝福の言葉が投げかけられる。
「山西女流二段おめでとうございます」
「ありがとうございます、女流棋士として成績を残しつつ幸せな家庭を作っていけるよう努力します」
「それでは本日の女流棋士総会はこれにて終了します。皆様お疲れ様でした」
『お疲れ様でした』
松浦女流六段の締めの挨拶で女流棋士はそれぞれ帰路につくなか、松浦が小夜に近づき、声をかける。
「牧野さん、ちょっといいかしら?あなたに話したい事があるの」
「私にですか、分かりました」
「ねえ小夜ちゃん、私待っていようか?」
「ううん、先に帰っていていいわ」
小夜に促されて美咲が帰り、松浦と小夜以外に会議室に誰もいなくなると松浦が小夜に用件を話し始める。
「早速だけど牧野さん、次の女流皇座戦の第三局の記録係をあなたにお願いしたいんだけどいいかしら?」
「わ、私に女流皇座戦の記録係ですか?」
「ええ、対局日は月曜日だけど、前日は日曜日で励会と重なって、奨励会員が呼べない以上、女流棋士からが良いと思ってね」
「間近で女流トップの対局が見れるならこれほどの勉強はありません、受けさせていただきたいですが、先に家に連絡しますね」
そう言って、小夜はスマートフォンで家に連絡をいれると、母が電話に出て、小夜に呼びかける。
「もしもし、ああ小夜、女流棋士総会は終わったの?」
「ええ、終わったわ、それでねちょっと話したい事があるの?」
「何?」
「実はね今度のタイトル戦で記録係をお願いされたの、陣屋って言って神奈川の旅館だし、終わればすぐに東京に戻れるし、いいでしょう?」
「ちょ、ちょっと待って!あんたが出るならともかく記録係なんでしょう、タイトル戦って前夜祭とかもあるからそれにも出席するの?」
「検分っていって、駒とか部屋の温度とかの話にも立ち会うから前日から現地にはいくわね」
「ねえ、小夜もう2年生で2学期の途中なのよ、勉強の為にも対局以外の事は断ったら」
「その勉強って学校の話ね、大丈夫よ!ちゃんと参考書とかも持って行くし」
「余計な仕事を引き受けるなって言ってんのよ、あんた浪人した場合でも女流棋士は辞める事を忘れたわけじゃないでしょうね!」
「それは忘れていないわ!それにこれだって余計な事じゃなくて将棋の為よ!まだタイトルだってあきらめたわけじゃないんだから!」
「……それじゃあ好きになさい!いずれにしてももう1年しかないんだから」
1年しかない、その言葉は小夜にも重くのしかかっていた。
「それでは山西紗綾女流二段から皆様に報告したい事があるそうなので山西女流二段お願いします」
「はい、すでにSNSとかでは発表しましたが私山西は先日入籍しました」
山西女流二段の入籍発表に会議室内から拍手が起こり、松浦前会長からも祝福の言葉が投げかけられる。
「山西女流二段おめでとうございます」
「ありがとうございます、女流棋士として成績を残しつつ幸せな家庭を作っていけるよう努力します」
「それでは本日の女流棋士総会はこれにて終了します。皆様お疲れ様でした」
『お疲れ様でした』
松浦女流六段の締めの挨拶で女流棋士はそれぞれ帰路につくなか、松浦が小夜に近づき、声をかける。
「牧野さん、ちょっといいかしら?あなたに話したい事があるの」
「私にですか、分かりました」
「ねえ小夜ちゃん、私待っていようか?」
「ううん、先に帰っていていいわ」
小夜に促されて美咲が帰り、松浦と小夜以外に会議室に誰もいなくなると松浦が小夜に用件を話し始める。
「早速だけど牧野さん、次の女流皇座戦の第三局の記録係をあなたにお願いしたいんだけどいいかしら?」
「わ、私に女流皇座戦の記録係ですか?」
「ええ、対局日は月曜日だけど、前日は日曜日で励会と重なって、奨励会員が呼べない以上、女流棋士からが良いと思ってね」
「間近で女流トップの対局が見れるならこれほどの勉強はありません、受けさせていただきたいですが、先に家に連絡しますね」
そう言って、小夜はスマートフォンで家に連絡をいれると、母が電話に出て、小夜に呼びかける。
「もしもし、ああ小夜、女流棋士総会は終わったの?」
「ええ、終わったわ、それでねちょっと話したい事があるの?」
「何?」
「実はね今度のタイトル戦で記録係をお願いされたの、陣屋って言って神奈川の旅館だし、終わればすぐに東京に戻れるし、いいでしょう?」
「ちょ、ちょっと待って!あんたが出るならともかく記録係なんでしょう、タイトル戦って前夜祭とかもあるからそれにも出席するの?」
「検分っていって、駒とか部屋の温度とかの話にも立ち会うから前日から現地にはいくわね」
「ねえ、小夜もう2年生で2学期の途中なのよ、勉強の為にも対局以外の事は断ったら」
「その勉強って学校の話ね、大丈夫よ!ちゃんと参考書とかも持って行くし」
「余計な仕事を引き受けるなって言ってんのよ、あんた浪人した場合でも女流棋士は辞める事を忘れたわけじゃないでしょうね!」
「それは忘れていないわ!それにこれだって余計な事じゃなくて将棋の為よ!まだタイトルだってあきらめたわけじゃないんだから!」
「……それじゃあ好きになさい!いずれにしてももう1年しかないんだから」
1年しかない、その言葉は小夜にも重くのしかかっていた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
俺達は愛し合ってるんだよ!再婚夫が娘とベッドで抱き合っていたので離婚してやると・・・
白崎アイド
大衆娯楽
20歳の娘を連れて、10歳年下の男性と再婚した。
その娘が、再婚相手とベッドの上で抱き合っている姿を目撃。
そこで、娘に再婚相手を託し、私は離婚してやることにした。
義妹と一緒になり邪魔者扱いしてきた婚約者は…私の家出により、罰を受ける事になりました。
coco
恋愛
可愛い義妹と一緒になり、私を邪魔者扱いする婚約者。
耐えきれなくなった私は、ついに家出を決意するが…?
お父様の相手をしなさいよ・・・亡き夫の姉の指示を受け入れる私が学ぶしきたりとは・・・
マッキーの世界
大衆娯楽
「あなた、この家にいたいなら、お父様の相手をしてみなさいよ」
義姉にそう言われてしまい、困っている。
「義父と寝るだなんて、そんなことは
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる