一歩の重さ

burazu

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高校2年編

A級棋士の強さ

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 小夜達が鎌田のアパートで倉橋八段と天馬の対局を観戦している頃、一輝は兄弟子である西田のアパートを訪れ、既に2人でパソコンで対局を観戦しつつ、現在の倉橋の長考を利用して検討を行っていた。

「この真壁君の3七桂で倉橋さんがもう1時間は長考しているが、ここは勝負所だな」
「はい、やはり予想通り倉橋さんは序盤をかなり飛ばしてこの中盤で読み切り、更にリードを広げて終盤で確実に逃さないように考えているでしょう」
「倉橋さんに序盤から時間を使わせるには佐渡会長のような変幻自在将棋じゃないとダメなのか?」
「それが理由かどうかは分かりませんが、実際に先月のA級順位戦じゃあ佐渡会長が倉橋さんに勝っていましたからね」

 西田の発言を受け、一輝が先月の順位戦で佐渡会長が倉橋に勝利した事を言及すると、西田がA級棋士について話し始める。

「しかし、A級にいる棋士ってのはとんでもねえ人ばかりだな、この倉橋さんや雲竜先生みたいに序盤研究を徹底的にして勝利を収めるタイプや、佐渡会長や丸井さんみたいに独創的な差し回しを得意とするタイプ。そして現名人の赤翼先生のようなあらゆる戦型、あらゆる局面に強い人。すごすぎるぜ」
「西田さん?」
「前に名人戦を観に行った時は軽く流したけど、師匠はそんな化け物だらけのリーグを1度とはいえ制して名人挑戦の権利を得たんだからすごいよな」
「そうですね、そして師匠がA級から陥落してもなお近い世代なのにいまだにA級以上のクラスにいる赤翼先生と佐渡会長は更にとんでもないですよ」

 将棋の強さもスポーツ選手と比較すれば緩やかだが加齢による衰えは避けられない。一輝達の師匠である諸見里九段はA級陥落後、現在B級2組まで降級している。年代の近い赤翼名人や佐渡会長がいまだにA級を保持しているのはいまだに力を維持している事の証明でもあるのだ。

「順位戦ではないけど、A級の棋士と戦えるところまで進んだ真壁君も相当な奴だな」

 西田が天馬の実力を高く評価する発言をしていると遂に倉橋が一手指し、その手に一輝達は着目した。

「2二角?角を引いた、これは一体?」
「見ろ一輝、真壁君の表情を!」
「どうやら天馬にとっても想定外な手のようです」

 1三にあった角を引くという想定外な手を指されてしまった天馬、今度は残り時間のない天馬が長考を余儀なくされた。倉橋の狙いは?そして天馬に勝つ術はあるのか?

 段々と終盤に近付く中、一輝達も固唾をのんで見守っていた。
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