一歩の重さ

burazu

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高校2年編

師匠への義理

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 天馬が交際している女性木本葵は天馬の師匠である元プロ棋士の大川武の娘であった。

 2年前より交際はしていたが、このタイミングで知らせた理由を大川が問うが天馬は先に別の事を話そうとする。

「師匠、その前に聞きたいんですが、俺が棋将戦の本戦に残った事は知ってますよね?」
「もちろんだ、引退したとはいっても常に将棋界の情報は得ている。今も関連する仕事はもらっているからな」
「以前師匠が珍しく娘さんの理想の結婚相手について語っていたのを覚えていますか?」
「そういや言ってたな、棋士はねえ、だがもし娘が棋士と結婚したいと言ったら、俺を超える……」

 大川は自分が言おうとした言葉から天馬の考えを察し、言葉に詰まるが、天馬が自らの考えを伝える。

「はい、師匠は順位戦は最高B級1組、そしてタイトルとは縁がありませんでしたよね」
「つまりお前が言いたい事とは……」
「順位戦でA級まで昇格、もしくはタイトルを獲得したら娘さんにプロポーズをしたいと思っている事を伝えたく来ました!」

 天馬が自身が順位戦でA級まで昇格、または自身のタイトル獲得と共に、恋人で師匠の大川の娘でもある葵にプロポーズをしようと思っている事を告げると、大川は一瞬戸惑うが、すぐに何か思う事があったのか笑い出す。

「ふっ、ハハハハハ!天馬よう、俺は葵の父親ではあるが、当のあいつは俺がどういう奴か知らねえんだぜ。わざわざ俺にしらせなくても結婚したきゃ勝手にすりゃあいいじゃねえか」
「いえ、師匠にはお世話になりましたし、今回の棋将戦本戦の進出はいい機会だと思いましたしね」
「律儀な奴だ、仮定の話だがお前が棋将のタイトルを獲得してプロポーズしたとしても受け入れるとは限らねえぜ」
「あくまで俺としてはプロポーズの権利を得るものだと思っています、当然受け入れるかは彼女次第だし」

 天馬のここまでの発言で違和感を覚えた大川が思わず天馬の発言にツッコミを入れる。

「今度は受け入れた場合の話だがあいつにとっちゃ、いわば学生結婚になるがあいつが卒業するまでタイトルを保持したうえで、順位戦を1度も足踏みしねえ自信はあるのか?」
「え?ああ、そ、それは考えていませんでした……」
「情けねえ奴だな、そこは嘘でも『やります』っていうところだろ」
「俺は師匠みたいに破天荒なわけでもみたいな天才でもありませんからね」

 天馬のいうという言葉を聞いて大川が言葉を発する。

「長谷か、あいつは赤翼以来の天才と言われているが、俺はお前が長谷に劣っているとは思わんが」
「師匠、たとえお世辞でも嬉しいです。ありがとうございます」
「俺が世辞をいうようなタイプじゃねえのはお前が一番分かってんだろう、ま、次の古橋戦は気合れていけ」

 師匠の言葉を受け、天馬は棋将戦本戦トーナメントの古橋八段との対局に闘志を燃やすのであった。
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