71 / 160
高校2年編
元奨励会員のその後
しおりを挟む
ウイナビ女子のアマチュア枠で出場している佐藤梢子は一輝の高校のクラスメイトであり、またかつてアマチュア大会を総なめにした佐藤春秋氏の娘であることを一輝が梢子から聞いた話から竹田九段は導き出した。
そんな竹田に鎌田女帝が質問をしている。
「名前だけなら私も聞いたことがあるんですが竹田先生はその佐藤さんとなにかつながりや交流があるんですか?」
「ああ、佐藤春秋さんはかつて奨励会にいたことがあり、当時奨励会員だった私も何度か指したことがあります」
なんと春秋氏はかつて奨励会に在籍していたことがあり、竹田が奨励会員だった時期とも重なっていたのだ。
その事に一輝は驚きを隠せないと共に、腑にも落ちたのだ。
「そうなんですか!でも、すぐに気付いたのはそういうことなんですね」
「そういうこと、まさか春秋さんの娘さんの将棋を見ることになるなんて夢にも思わなかったけどね」
竹田の言葉を受け、さらに鎌田が竹田に質問をする。
「当時のお話とか聞かせてもらってもいいですか?」
「いいですよ。僕が彼と初めて会ったのは三段リーグに上がった頃で、春秋さんの将棋は力強かったですね。僕が一番練習将棋をしたのも春秋さんだったよ。私の同世代はすぐにプロ入りしましたからね」
懐かしさのあまり穏やかな表情で語るが次の瞬間少し表情が沈む。
「ところが彼はプロ入りがかかると負けが込み、年齢制限で退会に追い込まれました。皮肉にも彼の退会が決定した日に私はプロ入りを決めました。その日の彼の言葉は今でも忘れられません」
次の瞬間竹田は春秋氏がかけた言葉を一輝達に告げる。
「最後の日に私にこう言いました。『義男、俺は自分の名前のように将棋への熱が中途半端だったかも知れねえ』とね、彼を見たのはそれが最後です」
竹田の話を聞いて、一輝は尋ねた。
「そうだったんですか、でも道場の事を竹田先生が知っていたのは?」
「その後の事は断片的に元奨励会の友人から聞いていました。退会後すぐに大学受験をして26歳の大学生になったこと、就職後は奨励会時代から交際していた囲碁棋士の神田美晴さんと結婚したこと。アマチュア大会に出たのは就職してからでしたね」
「道場を開いたのは?」
「アマチュア大会に優勝してから知り合いにお願いされ指導員を始めたようです。名前こそ夫婦のものですが経営は別の人です。そこに囲碁スペースもねじ込みましたね」
竹田と佐藤春秋の意外なつながり、そして一輝はプロ棋士の夢が破れた者の人生の1つを知ることとなった。
そんな竹田に鎌田女帝が質問をしている。
「名前だけなら私も聞いたことがあるんですが竹田先生はその佐藤さんとなにかつながりや交流があるんですか?」
「ああ、佐藤春秋さんはかつて奨励会にいたことがあり、当時奨励会員だった私も何度か指したことがあります」
なんと春秋氏はかつて奨励会に在籍していたことがあり、竹田が奨励会員だった時期とも重なっていたのだ。
その事に一輝は驚きを隠せないと共に、腑にも落ちたのだ。
「そうなんですか!でも、すぐに気付いたのはそういうことなんですね」
「そういうこと、まさか春秋さんの娘さんの将棋を見ることになるなんて夢にも思わなかったけどね」
竹田の言葉を受け、さらに鎌田が竹田に質問をする。
「当時のお話とか聞かせてもらってもいいですか?」
「いいですよ。僕が彼と初めて会ったのは三段リーグに上がった頃で、春秋さんの将棋は力強かったですね。僕が一番練習将棋をしたのも春秋さんだったよ。私の同世代はすぐにプロ入りしましたからね」
懐かしさのあまり穏やかな表情で語るが次の瞬間少し表情が沈む。
「ところが彼はプロ入りがかかると負けが込み、年齢制限で退会に追い込まれました。皮肉にも彼の退会が決定した日に私はプロ入りを決めました。その日の彼の言葉は今でも忘れられません」
次の瞬間竹田は春秋氏がかけた言葉を一輝達に告げる。
「最後の日に私にこう言いました。『義男、俺は自分の名前のように将棋への熱が中途半端だったかも知れねえ』とね、彼を見たのはそれが最後です」
竹田の話を聞いて、一輝は尋ねた。
「そうだったんですか、でも道場の事を竹田先生が知っていたのは?」
「その後の事は断片的に元奨励会の友人から聞いていました。退会後すぐに大学受験をして26歳の大学生になったこと、就職後は奨励会時代から交際していた囲碁棋士の神田美晴さんと結婚したこと。アマチュア大会に出たのは就職してからでしたね」
「道場を開いたのは?」
「アマチュア大会に優勝してから知り合いにお願いされ指導員を始めたようです。名前こそ夫婦のものですが経営は別の人です。そこに囲碁スペースもねじ込みましたね」
竹田と佐藤春秋の意外なつながり、そして一輝はプロ棋士の夢が破れた者の人生の1つを知ることとなった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?
ルイス
恋愛
「アーチェ、君は明るいのは良いんだけれど、お淑やかさが足りないと思うんだ。貴族令嬢であれば、もっと気品を持ってだね。例えば、ニーナのような……」
「はあ……なるほどね」
伯爵令嬢のアーチェと伯爵令息のウォーレスは幼馴染であり婚約関係でもあった。
彼らにはもう一人、ニーナという幼馴染が居た。
アーチェはウォーレスが性格面でニーナと比べ過ぎることに辟易し、婚約解消を申し出る。
ウォーレスも納得し、婚約解消は無事に成立したはずだったが……。
ウォーレスはニーナのことを大切にしながらも、アーチェのことも忘れられないと言って来る始末だった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる