一歩の重さ

burazu

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高校2年編

AIの囲い

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 ウイナビ女子1回戦、与田美咲女流二級と佐藤梢子アマの対局が行われようとしている時、別室で竹田義男九段、鎌田女流の解説が行われていた。

 なにやら鎌田が竹田に質問をしているようだ。

「これから対局をするお2人についての印象はいかがでしょうか?」
「いや、私ね与田さんについてあまり存じてなかったので先程、研修会の幹事をやられてた方に連絡してみたんですよ」
「先生、いつの間にされてたんですか?それでなんとおっしゃていましたか?」
「元気の良い子だと話していましたね。将棋は元気すぎるのでもう少し落ち着いた方が良いとも言ってましたが」

 竹田の一言で会場にわずかながらの笑いが生まれた。続けて鎌田が質問をしてみる。

「それでは、対局相手の佐藤アマについてはいかがでしょうか?」
「いや、私この方初めてなんですよ。私がというより、どうもこの大会が初出場のようですね」
「そうですね、アマチュアの大会に出場された経歴もなさそうですし」
「研修会にも所属してなさそうですし、まあ予備予選を勝ち抜いているので実力は確かでしょう」

 予備予選には研修会員も多くエントリーしているため、その中を勝ち抜いていることから実力は確かだと竹田は言い放つ。そしてその佐藤アマの実力が分かる対局が始まろうとしている。

「それでは時間となりましたので与田女流二級の先手番でお願いします」
「よろしくお願いします」

 対局が開始される。まずは美咲が7六歩と角道を開く。

 それを見た佐藤梢子は3四歩と角道を開け、角を睨み合わせる。

 すぐに美咲は6六歩と角交換を避ける為角道を閉じる。

 それに対し、佐藤梢子は8四歩と飛車先の歩を突く。居飛車で戦うと宣言をする。

 ここで美咲は6八に飛車を振り、四間飛車の形にする。

 そこから互いに応手が続き、佐藤梢子は3二玉とする。

 この様子を見て鎌田が竹田に尋ねている。

「ここは作戦の分岐点になりそうですが、いかがでしょうか?」
「まあ、持久戦にするなら3三角と上がり、急戦なら上手く右銀を繰り出していきたいですよね」

 美咲は囲い優先とし、美濃囲いにするが、次に佐藤梢子は4二銀と上がる。

 更に美咲は応手をするが、佐藤梢子は3一金とする。

 この手に対し、鎌田が言葉を発する。

「先生、これはエルモ囲いですね」
「対振り急戦にはもってこいの囲いですね。将棋AIのelmoがこの囲いにしたことで有名になり、今やアマチュアの方も愛用する方が増えましたからね」

 初出場のアマチュアが出してきたエルモ囲い。それに秘めし作戦とは?
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