56 / 160
高校2年編
謎の研究手
しおりを挟む
皇位戦予選で一輝の対局相手は幼馴染でライバルの真壁天馬五段だ。
その天馬相手に一輝は角換わりを選択した。
角換わりは相居飛車の戦型で序盤から互いに角を交換し持ち駒とする。
角の打ち込みに注意しながら陣形を整えなくてはいけない為、神経戦になりやすい将棋だ。
だが近年のAIの発達により研究がしやすい戦型でもあり、プロ間での採用率は増えているのである。
そのことを西田もスタジオで解説していた。
「この角換わりは近年定跡がかなり整ってきましたので、駒組まではお互いそんなに時間を使わないと思いますね」
西田の解説に聞き手である山西女流二段が返答をする。
「はい」
ところが、事態は意外な展開になる。駒組が終わり、互いに時間をかけ、攻めの糸口をつかむための手を進めると思いきや、天馬がほとんど時間を使わずに手を進めてきた。
これには一輝も、戸惑うが時間を使って対応するほかなかった。
そして一輝の手番で休憩時間に入る事となった。
昼食時間になるとスタジオでも出演者の一時交代をしていた。
「ここからの解説は西田五段と聞き手は私伊原聡子でお送りします。西田五段、よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
解説は西田が継続だが、聞き手を山西女流二段から伊原聡子女流三段に交代した。
伊原はかつては奨励会に在籍していたが年齢制限の規定で退会を余儀なくされ、女流棋士に転向したのである。先日は女流皇位戦で宮里春香女流皇位に挑戦したが敗退し、翌年の皇位リーグまで挑戦は持ち越しとなった。
本日は聞き手としての仕事に精を出すのだ。
「それでは先生、初手から解説よろしくお願いします」
西田は初手からの解説をしていき、分岐が起きやすい局面ではその一手の意味も解説していた。
そして一輝が時間を使い、天馬が時間をほとんど使わない局面になり、伊原よりその部分を尋ねられる。
「この60手目を過ぎてから長谷四段は時間を使い、真壁五段はほとんど時間を消費しなくなりましたが、どういった意味なのでしょうか?」
「真壁五段の研究手がここででたと思いますね。彼は長谷四段と幼馴染でライバル意識が強くてとっておきをぶつけてきたかもしれませんね」
「真壁五段と長谷四段は普段研究会もされているとうかがっていますが、西田先生は弟弟子さんとはその、練習将棋などはされますか?」
「この間、僕の部屋に長谷四段を呼んで練習将棋をしたんですが、やっぱり強いですね」
天馬が時間を使わない意味、そこに何が隠されているのか?
その天馬相手に一輝は角換わりを選択した。
角換わりは相居飛車の戦型で序盤から互いに角を交換し持ち駒とする。
角の打ち込みに注意しながら陣形を整えなくてはいけない為、神経戦になりやすい将棋だ。
だが近年のAIの発達により研究がしやすい戦型でもあり、プロ間での採用率は増えているのである。
そのことを西田もスタジオで解説していた。
「この角換わりは近年定跡がかなり整ってきましたので、駒組まではお互いそんなに時間を使わないと思いますね」
西田の解説に聞き手である山西女流二段が返答をする。
「はい」
ところが、事態は意外な展開になる。駒組が終わり、互いに時間をかけ、攻めの糸口をつかむための手を進めると思いきや、天馬がほとんど時間を使わずに手を進めてきた。
これには一輝も、戸惑うが時間を使って対応するほかなかった。
そして一輝の手番で休憩時間に入る事となった。
昼食時間になるとスタジオでも出演者の一時交代をしていた。
「ここからの解説は西田五段と聞き手は私伊原聡子でお送りします。西田五段、よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
解説は西田が継続だが、聞き手を山西女流二段から伊原聡子女流三段に交代した。
伊原はかつては奨励会に在籍していたが年齢制限の規定で退会を余儀なくされ、女流棋士に転向したのである。先日は女流皇位戦で宮里春香女流皇位に挑戦したが敗退し、翌年の皇位リーグまで挑戦は持ち越しとなった。
本日は聞き手としての仕事に精を出すのだ。
「それでは先生、初手から解説よろしくお願いします」
西田は初手からの解説をしていき、分岐が起きやすい局面ではその一手の意味も解説していた。
そして一輝が時間を使い、天馬が時間をほとんど使わない局面になり、伊原よりその部分を尋ねられる。
「この60手目を過ぎてから長谷四段は時間を使い、真壁五段はほとんど時間を消費しなくなりましたが、どういった意味なのでしょうか?」
「真壁五段の研究手がここででたと思いますね。彼は長谷四段と幼馴染でライバル意識が強くてとっておきをぶつけてきたかもしれませんね」
「真壁五段と長谷四段は普段研究会もされているとうかがっていますが、西田先生は弟弟子さんとはその、練習将棋などはされますか?」
「この間、僕の部屋に長谷四段を呼んで練習将棋をしたんですが、やっぱり強いですね」
天馬が時間を使わない意味、そこに何が隠されているのか?
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
悪役夫婦が追放された日
奏白いずも
恋愛
「君との婚約を解消したい」侯爵令嬢リナローズは婚約者である王子ノルツから否定され続けてきた。しかしリナローズは申し出を断り、王位争いに敗れたノルツの追放が決まると、ともに追放地へ向かおうとする。
いずれ乙女ゲームの悪役夫婦となる二人の始まりの日。リナローズが語る想いとは…… 婚約破棄を断って一緒に追放されたけど、二人で幸せになるお話。
夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。
MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。
記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。
旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。
屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。
旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。
記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ?
それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…?
小説家になろう様に掲載済みです。
ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした
渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞!
2024/02/21(水)1巻発売!
2024/07/22(月)2巻発売!
応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!!
刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました!
旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』
=====
車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。
そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。
女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。
それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。
※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!
余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~
藤森フクロウ
ファンタジー
相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。
悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。
そこには土下座する幼女女神がいた。
『ごめんなさあああい!!!』
最初っからギャン泣きクライマックス。
社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。
真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……
そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?
ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!
第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。
♦お知らせ♦
余りモノ異世界人の自由生活、コミックス3巻が発売しました!
漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。
よかったらお手に取っていただければ幸いです。
書籍のイラストは万冬しま先生が担当してくださっています。
7巻は6月17日に発送です。地域によって異なりますが、早ければ当日夕方、遅くても2~3日後に書店にお届けになるかと思います。
今回は夏休み帰郷編、ちょっとバトル入りです。
コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。
漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。
※基本予約投稿が多いです。
たまに失敗してトチ狂ったことになっています。
原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。
現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。
訳あり令息ですが女王の王配になり溺愛されて幸せに暮らしています。
尾道小町
恋愛
母は男爵令嬢ですが貧乏で公爵家に侍女として働いてました。
その母を公爵家の長男父が手を付けて僕を身籠ったのですが身分が
違うと結婚も認知もされず追い出され実家に戻りました。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる