一歩の重さ

burazu

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高校2年編

順位戦の翌日

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 一輝にとって初の順位戦は見事勝利で終え、ホテルで翌朝を迎えていた。

 一輝はホテルのモーニングを食べてから、帰り支度をしてホテルをチェックアウトする。

 電車で大阪駅に着き、新幹線のホームまで移動する。ホームに着くと早速スマートフォンを取り出し電話をする。

「もしもし母さん」

 電話の相手は母親であり、一輝に返答をする。

「一輝、どうしたの?」
「今、新幹線のホームにいるから乗って帰るよ」
「そう、あ、昨日勝ったそうじゃない。良かったわね」
「あれ、確かC2の順位戦の結果は新聞に載るのは大分後だし、母さんネット観ないのにどうして知っているんだ?」

 一輝の疑問に、電話越しだが母はほくそ笑みながら答える。

「ふふふ、お父さんがねアプリを見ていて結果を教えてくれたの」
「あれ、父さん、仕事は?」
「一輝、今日は土曜日でお父さん仕事休みなの。だから最後まで観るぞって息巻いていたわ」

 電話の向こうで母の発言を聞いていた父親が母に対して慌てて言葉をかける。

「おい、あんまし余計な事を言うな!俺が親バカみたいじゃないか!」

 父の言葉を聞いて、母が反応をする。

「だって、本当にそうしてたじゃない」
「もういい、ちょっと俺にも代われ」
「はいはい、一輝、お父さんに代わるわね」

 そう言って母は父に代わって、すぐに父が一輝に対し言葉を発する。

「一輝、まあ、あれだお疲れさん。よく棋士の先生方のインタビューを見ると、順位戦の翌日はすごく疲労感に襲われるっていうじゃないか、一輝はまだ若いからそんな心配はないかも知れんが帰ってゆっくり休め。幸い明日は日曜日で学校もないしな」
「あ、ああ」
「じゃあ切るぞ」

 そう言って父は一輝との電話を切り、一輝は呆然とするが到着した新幹線に乗っていく。

 新幹線でも仮眠を取り、一輝の乗る新幹線は東京へと向かう。

 東京駅に着くと、新幹線から降りて電車に乗り換え、自宅の最寄り駅へと向かう。

 自宅の最寄駅に到着すると電車を降り、そのまま徒歩で自宅へ向かう。

 自宅に到着するとドアを開けて帰りの挨拶をする。

「ただいま」
「お帰り、とりあえず洗濯物を出しておいて、あとで洗濯しておくから」

 母に促されて一輝は洗濯する衣類をバッグから出し、自室へと戻っていく。

 しばらく時間が経つと母は思いだしたかのように一輝の部屋を訪れる。

「あ、そうだ一輝、お昼ご飯って……」

 次の瞬間母はある光景に驚愕する。

「って、一輝、……寝てるの」

 どうやら一輝は緊張感から解き放たれてスーツの上着を脱ぐとそのまま自室で寝落ちしてしまったようだ。

 とりあえず、机に座っているため、母はタオルケットを一輝の体にかけその場を後にする。

 激しい将棋の日々が続くが一時の休息だ。
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