一歩の重さ

burazu

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高校2年編

踏み出した一歩

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 土曜日に小夜と鎌田女流3冠とのVSの話をし、小夜が了承して月曜日に鎌田に連絡することになり、小夜が直接話すという希望を言い、土曜日と同じカフェで一輝は再度小夜と待ち合わせをする。

 今日は月曜日に学校終わりに待ち合わせだ。何故なら2人が通っている高校は違う為、現地集合となったのだ。

 何と今日は別方向から同時に到着した。

「あ」

 同じタイミングで到着して驚きのあまり声まで同じタイミングで発してしまった一輝と小夜だが、そこには触れず店に入ることを一輝から提案する。

「と、とりあえず先に店に入ろうか」
「そ、そうね」

 戸惑って入るがとりあえず2人共カフェ内に入り、席に着くと一輝から話が出る。

「とりあえず、電話してみるから、鎌田さんが出たら小夜ちゃんに代わるよ」
「お願いね」

 小夜の言葉を受け、一輝は鎌田に電話をかける。中々でないがしばらくすると鎌田が電話に出た。

「もしもし、長谷先生ですか?どうしたんですか?」
「もしもし鎌田さん、長谷です。実は今牧野さんと一緒にいて、直接鎌田さんとお話したいと言っているので代わりますね」

 そう言って一輝は小夜に自分のスマホを渡し、小夜が鎌田と電話越しで話す。

「もしもし、牧野です」
「鎌田です、ええっと」
「多分、こうしてお話しするのは2年ぶりくらいだと思います。その時の対局で鎌田さんに負けてから鎌田さんは女流棋士でなくても獲れる女流タイトルを全て取って私はそこまでまだ到達できてないので」

 鎌田に対し、あえて自身はまだ及ばないことを強調しつつも次の瞬間小夜は強い決意を話す。

「でも私は鎌田さんとのVSで強くなって女流タイトルを獲りたいと思ってます。宮里さんや鎌田さんに負けないようになりたいんです」
「牧野さん、意気込みだけではタイトルは獲れないし、意気込みだけではプロ棋士にもなれないのよ」

 鎌田は女流タイトルを獲る難しさを小夜に伝えるとともに、自身も三段リーグまで上がったもののプロ棋士への壁の厚さを感じていることを話す。

「でもまずはそういうところからが大事なのも確かよ。電話越しだけどあなたからは覇気を感じたわ。あなたとならいい練習将棋ができそう」
「それじゃあ……」
「VSよろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」

 お互いの考えが一致し、VSをすることになった2人だが、次の瞬間鎌田からVSの場所の案が出る。

「ええっと、牧野さんは学生で、親御さんと暮らしているのよね」
「はい、そうですが」
「じゃあ、私のアパートでVSはしましょう、1人暮らしだし、大学とかには行ってないから、都合はつきやすいわ」
「はい、よろしくお願いします」

 その言葉を聞いて鎌田は牧野に尋ねる。

「じゃあ牧野さんの携帯番号も教えてくれる?」
「はい、番号は……」

 そう言って小夜は鎌田に携帯の番号とメールアドレスを教える。

「ありがとう楽しみにしているわ」

 そう言って鎌田は電話を切り、小夜から一輝にスマホが返される。

「ありがとう一輝君、私強くなるから」

 小夜にとっては強くなる一歩を踏み出した瞬間であった。
 
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