一歩の重さ

burazu

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高校2年編

研究会志願

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棋光戦1次予選の1日2局の将棋を勝利で終え、帰宅しようとした所、午前の対局相手であった鎌田美緒女流3冠と会い、話しかけられる。

「実は長谷先生にお願いがあるんですけど、お時間大丈夫ですか?」
「少し待ってもらっていいですか、家に連絡してくるので」
「はい」

 そう言って一輝はその場を離れ自宅に電話をする。

「一輝、どうしたの?」
「母さん、実は奨励会の人から相談を受けて、帰りが遅くなるかもしれない」
「一輝も偉くなったのね、奨励会の人から相談されるような立場になって、お母さん嬉しいわ。先輩らしくしっかりと相談に乗ってあげなさい」

 そう言って母は電話を切り、一輝は鎌田の元に戻っていく。

「すいません、鎌田さんとりあえずお話を聞くことはできます」
「ありがとうございます。話が長くなるので場所を変えましょうか?」
「そうですね、どこかカフェでお話を聞きます」

 そう言って2人は将棋会館の話しやすいカフェまで移動する。

 カフェに着くと、まず一輝が第一声をあげる。

「それで鎌田さん、僕にお願いしたいことというのは?」
「はい、今日長谷先生と対局したのと、午後の対局を検討していて、長谷先生の将棋をもっと参考にしたいと思いまして、もし良かったら私を長谷先生が入っている研究会に入れてもらってもいいですか?すでに偶数の人数がいるなら代理メンバーでも構わないので」

 突如自身の研究会に入りたいと申し出に戸惑い、一輝も言葉を発する。

「僕の将棋を参考にするだけなら、棋譜を見るだけでもできると思うんですが」
「私は長谷先生の読み筋等を参考にしたいんです。もちろんAI等を長谷先生も使っているとは思いますが、その活用法や思考の取捨選択の方法も含めて参考にしていきたいんです」
「そこまで考えて、実は最近メンバーの1人が関西に引っ越してメンバーを探していたので、一度他の人に確認はしますが、それでいいですか?」
「ありがとうございます、実はもう1つお願いがあって……」

 少し間をおいて、もう1つのお願いを一輝に話す。

「女の人でVSができそうな人を紹介してはもらえませんか?奨励会には女の子は少ないうえ、今三段にいるのも私1人なので」

 VSとは1対1の研究会を意味することであり、鎌田は女性のVS相手を探しているようだ。

「待って下さい、伊原さんはどうなんですか?元とはいえ奨励会にいたことがありますよね」
「実はお願いしたんですが断られたので、タイトル戦で頻繁にあたるからと言われて」

 奪取こそないものの伊原もタイトル挑戦までこぎつけることはある。それを理由にVSを断っているというのだ。

 ダメもとで一輝は1つの案を出す。

「あの鎌田さん、牧野さんはどうですか?」
「牧野さん?牧野小夜女流初段ですか?」
「そうです、昔から交流があるので、とりあえず僕から話して見ますね」
「ありがとうございます、それじゃあお返事待ってますね」

 この研究会、そしてVSが自身や小夜にとってもプラスになればと考える一輝であった。
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