一歩の重さ

burazu

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高校2年編

節目の勝利

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赤翼名人が名人戦第1局を勝利するとその瞬間に多くのメディア関係者が対局室へと向かっていた。

 その様子が何かを察した諸見里が一同に声をかける。

「これは赤翼さんの通算1400勝目のインタビューだろう、対局室でインタビューをした後、記者会見も行われるだろう」

 諸見里の言葉に西田が尋ねる。

「それってホテルの大広間でやるやつですよね、俺達も見られるんですか?」
「それは……」

 検討室にある大型モニターがあり、記者会見の大広間の映像が映り、音声も流れてくる。

「ただいまより、赤翼良介名人、通算1400勝の記者会見を行います」

 司会の女性がそう言うと、記者会見の場に赤翼が現れ、用意された会見の席に座る。

 会見の席に座ると記者が声をかける。

「○○新聞の□□といいます。まずは通算1400勝おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「節目の勝利数ですが、今のお気持ちは?」
「そうですね、節目といっても、名人戦もまだ始まったばかりでなんといいますかうーーん、嬉しくはありますが、これで気を抜かないようにしたいとは思います」
「ありがとうございます」

 更に別の記者より質問がなされる。

「週刊△△です。名人戦で節目の勝利数に達することは意識されてましたか?」
「そうですね、今私が進行中の棋戦は名人戦だけではないので、どの棋戦で達するかは特に意識はしていませんでしたが、あ、1400勝目だったのかとしか言えませんね」
「ありがとうございます」

 その後もいくつか質問は続き、司会者より締めの言葉が述べられる。

「それではこれで記者会見を終了したいと思います。皆さんありがとうございました」

 記者会見を終えると検討室で諸見里が言葉を思わず漏らす。

「相変わらず堂々としたというか、なんというか……」

 諸見里の様子を見た西田が声をかける。

「何スか師匠、嫉妬ですか?」
「あれくらい突き抜けているともはやそんな感情は湧かんわ。もっともそれはわしが棋士としては終わりかも知れんがな……」
「師匠……」

 突き抜けた存在である赤翼に嫉妬すらしない自分を棋士としては情けなく思う諸見里であったが、一輝がホテルから出ようとして声をかける。

「おい、一輝どこに行くんだ?」
「どこへって帰るんですよ。この対局を検討しないと」
「ふ、お前の若さがうらやましいよ」

 例え、将棋界のレジェンドでも一輝にとっては越えるべき壁である。この対局も一輝にとっては糧になったであろう。

 それがまた一歩一輝を前進させるのだ。
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