上 下
34 / 39

34.夜の終わり?

しおりを挟む
「セラ……?」

 ぺちぺちと頬を叩かれて、遥かかなたにいっていた意識が戻ってくる。

「……は、はぁ……」

 知らず詰めていた息を大きく吐き出した。
 何これなにこれ、セックスってすごい……。文字通りこんなの初めてだった…。セックスがすごいのか、ライがすごいのかわかんないけど、とにかくすごかった……!

 ほんの一か月前まで寝たきりだったのもあるかもしれないけど、たった一回のそれでも、もう腹筋やら脚の付け根やら、あちこちギシギシしてる。
 あられもない声を出し続けていたせいか、喉も口のなかも乾いてカサつく。
 もうだめ、もう無理、もう起き上がれない……。

「大丈夫か……?」

 そういって心配そうに覗き込んだ金色の瞳。唇が合わせられて、そこからライの体温を含んだ水が注がれる。

「んぅ…っ」

 一瞬抵抗があったけど、注がれるそれを夢中で飲み干した。そんな私の様子に、ライが口元でふっと笑みを浮かべた。
 二度三度水を飲みほして、やっとひとごこちついた。
 上掛けを素肌の上に引っ張りあげ、横向きになって顔を見合わせる。
 ライは私の口元の水を指で優しく拭いながら、優しい微笑みをたたえて、愛おしくて仕方ないっていう様子で私を見つめている。

(うぅ…!素敵……)

 これまで何度も一緒に寝てはいたけれど、でもこれまでとは明らかに違う親密な雰囲気に、なんだかふわふわと居たたまれない。

(幸せだけど、は、恥ずかしい……っ!
 ……ん?でもなんだろ、これ…既視感……?)

「あ」

「ん……?どうした、セラ」

 こ…これ、スチルじゃない!?
 瞬間、私の上気していたはずの頬から血の気が失われるのが分かる。

 この後、ライに『…飽きたな』って言われる、あれでしょ!?
 なんなの、やっぱりBADエンドなの!?っていうか、もうやだ……。

 やっと好きな人と一緒になれたっていうのに……!さっきまであんなに幸せで、お嫁さんにしてくれるって言ってくれたのに。

「なんだ?どうした??」

 みるみる視界が涙で滲む。そんな私に、ライはびっくりしたように目を見開いて、抱き寄せて背中を撫でてくれた。
 うぅぅ、優しい……。
 でも、あれでしょ、もう薄々始まってるんじゃないの?私に対する気持ち、冷めてきてるんじゃないの?次に言う言葉は、あれなんでしょ?
 ……うわーーん!!いやだー!!
 突然泣き始めた私に、狼狽しているライを見上げる。
 さっきまで、天にも昇る気持ちだったのに……。

「あの、……あの、ライ……」

 見上げているライの顔が涙でぼやける。

「なんだ?一体どうしたんだ、お前は。どこか痛むのか?」
「……あの、お願いが、あって……うぅ…」
「なんだ?言ってみろ」

 嗚咽を一生懸命堪えて、なんとかなんとか言葉を紡ぐ。

「あの……、私も頑張るから、その……、私に飽きないで…くださいぃ…」
「……――はぁ?」

 ライの特大のはぁ?が室内に響いた。

 大きく見開いた目を見合わせて、一瞬沈黙が訪れる。
 呆気にとられたかのような間のあと、「ぶはっ」とライが噴出した。
 身体を起こし、声を出して笑っている。いつもの悪い微笑みじゃなく、大笑い。初めて見た。
 ツボに入ったようで、なかなかライは笑いを止めない。

 そんなライの様子に、私は「いや、本気なんだけど…」と小さく呟くのが精いっぱいだった。
 肩を震わせるライの様子に、自分の所在なさが募っていく。
 そ、そんなに笑う程だった……?

「くっくっく…、何を言うかと思って聞いてやれば、そんなことを言うとはな…くく」
「……すみません……」

 他に何も言えることはなく、目を伏せしょんぼりとうなだれる。
 うん、今日はこのままおやすみかな!うん、寝て忘れよう!いいのいいの、死んだり監禁したりされなければそれで!
 現実逃避に視線をさまよわせ、寝台の足元に丸まっていた寝間着を取ろうと身体を起こしたその時、

「んっ……!」

 熱く唇を奪われた。すぐに割り入ってきた舌が、性急に絡みつく。ライの手で頭と腰をがっちりと固定されていて、呼吸を求めて唇を離すことも出来ない。
 お互いの唇から溢れた唾液が首元を流れていくのを感じる。突然のキスにライの身体を押し返そうとしたけれど、続くそれに身体の力が抜けていく……。
 散々貪られたあと、やっと離れた唇に、すっかり力の入らないままライを見上げる。

「ら、い…?」

 そこには怒りにも似た灯をともした、金色の瞳があった。

「あの…?」
「俺が、本当に飽きると思うか?」
「…!!……え?」
「お前の身体を気遣っていたが、手加減などいらなかったらしいな。これはすまなかった。飽きさせぬように、次はお前の背中越しに突いてやろう」
「え?ちょ……」

 そういうとライは私をうつ伏せに押し倒した。
 混乱の収まらない私の腰だけをぐいっと、抱き上げられる。

「え、え、もう今日は、無理……!…ッ!」

 ぐちゅり、と先ほどの行為の名残を残し、未だ熱を持って潤うそこに怒張があてがわれる。

「ライ――-…!」
「お前が俺の気も知らないで、くだらないことばかりを言うからだ。
 ――そこまで言うなら、精々、俺を飽きさせないように頑張ってみろよ?セラ」

 その言葉を言うや否や、ライの大きなものはなんの躊躇いもなしに一息に突き上げられた。

「やぁああああ…!」

 さっきまでの絶頂の余韻を残し、敏感になっているそこは、なんの抵抗もなくライのものを受け入れた。さっきとは違う体勢のせいか、あたる場所が変わって始まる律動のもたらす快感に、知らずに腰が揺れてしまう。
 身を震わせる私の背にのしかかるようにして耳元で囁いた。

「お前が死ぬまで離しはしない……。いや、死んでも俺のものだ、諦めろ」
「ラ、いぃ……」

 強くたたきつけるように腰を打ち付けると、ひときわ大きな蜜音が立った。
 いくら私が、泣いてもう無理と訴えても、ライの熱に翻弄されるような押し流されるようなその行為は、明け方近く私が本当に意識失うまで、止まることはなかった……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】ヤンデレ設定の義弟を手塩にかけたら、シスコン大魔法士に育ちました!?

三月よる
恋愛
14歳の誕生日、ピフラは自分が乙女ゲーム「LOVE/HEART(ラブハート)」通称「ラブハ」の悪役である事に気がついた。シナリオ通りなら、ピフラは義弟ガルムの心を病ませ、ヤンデレ化した彼に殺されてしまう運命。生き残りのため、ピフラはガルムのヤンデレ化を防止すべく、彼を手塩にかけて育てる事を決意する。その後、メイドに命を狙われる事件がありながらも、良好な関係を築いてきた2人。 そして10年後。シスコンに育ったガルムに、ピフラは婚活を邪魔されていた。姉離れのためにガルムを結婚させようと、ピフラは相手のヒロインを探すことに。そんなある日、ピフラは謎の美丈夫ウォラクに出会った。彼はガルムと同じ赤い瞳をしていた。そこで「赤目」と「悪魔と黒魔法士」の秘密の相関関係を聞かされる。その秘密が過去のメイド事件と重なり、ピフラはガルムに疑心を抱き始めた。一方、ピフラを監視していたガルムは自分以外の赤目と接触したピフラを監禁して──?

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

転生先が羞恥心的な意味で地獄なんだけどっ!!

高福あさひ
恋愛
とある日、自分が乙女ゲームの世界に転生したことを知ってしまったユーフェミア。そこは前世でハマっていたとはいえ、実際に生きるのにはとんでもなく痛々しい設定がモリモリな世界で羞恥心的な意味で地獄だった!!そんな世界で羞恥心さえ我慢すればモブとして平穏無事に生活できると思っていたのだけれど…?※カクヨム様、ムーンライトノベルズ様でも公開しています。不定期更新です。タイトル回収はだいぶ後半になると思います。前半はただのシリアスです。

18禁の乙女ゲームの悪役令嬢~恋愛フラグより抱かれるフラグが上ってどう言うことなの?

KUMA
恋愛
※最初王子とのHAPPY ENDの予定でしたが義兄弟達との快楽ENDに変更しました。※ ある日前世の記憶があるローズマリアはここが異世界ではない姉の中毒症とも言える2次元乙女ゲームの世界だと気付く。 しかも18禁のかなり高い確率で、エッチなフラグがたつと姉から嫌って程聞かされていた。 でもローズマリアは安心していた、攻略キャラクターは皆ヒロインのマリアンヌと肉体関係になると。 ローズマリアは婚約解消しようと…だが前世のローズマリアは天然タラシ(本人知らない) 攻略キャラは婚約者の王子 宰相の息子(執事に変装) 義兄(再婚)二人の騎士 実の弟(新ルートキャラ) 姉は乙女ゲーム(18禁)そしてローズマリアはBL(18禁)が好き過ぎる腐女子の処女男の子と恋愛よりBLのエッチを見るのが好きだから。 正直あんまり覚えていない、ローズマリアは婚約者意外の攻略キャラは知らずそこまで警戒しずに接した所新ルートを発掘!(婚約の顔はかろうじて) 悪役令嬢淫乱ルートになるとは知らない…

甘すぎ旦那様の溺愛の理由(※ただし旦那様は、冷酷陛下です!?)

夕立悠理
恋愛
 伯爵令嬢ミレシアは、恐れ多すぎる婚約に震えていた。 父が結んできた婚約の相手は、なんと冷酷と謳われている隣国の皇帝陛下だったのだ。  何かやらかして、殺されてしまう未来しか見えない……。  不安に思いながらも、隣国へ嫁ぐミレシア。  そこで待っていたのは、麗しの冷酷皇帝陛下。  ぞっとするほど美しい顔で、彼はミレシアに言った。 「あなたをずっと待っていました」 「……え?」 「だって、下僕が主を待つのは当然でしょう?」  下僕。誰が、誰の。 「過去も未来も。永久に俺の主はあなただけ」 「!?!?!?!?!?!?」  そういって、本当にミレシアの前では冷酷どころか、甘すぎるふるまいをする皇帝ルクシナード。  果たして、ルクシナードがミレシアを溺愛する理由は――。

【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜

茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。 ☆他サイトにも投稿しています

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています

平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。 生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。 絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。 しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?

処理中です...