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8.フラグ回避の決意!
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「あぁ~バスタブに浸かれるなんて贅沢ぅー……」
無事入学式も終え、私は自室の浴室でじっくりと凝り固まった身体をほぐしていた。
教会では辛うじて自室は与えられていたものの、お風呂は当然共同だったし、なんだったらお湯を沸かすのも一苦労だった。こんな風に一人でお風呂に入るだなんて考えられない。
全寮制のこの学園は、身分に関係なく全ての学生に個室が与えられる。
室内の誂えも、教会の私の部屋に比べて、何もかもが上等だ。
そして与えられる制服は、身分に関係なく平等に学べるようにという配慮。
そのため制服の素材も、これまで私が袖を通したことのないような、上質な素材。
濃紺を基調とした上品なデザインでジャケットは白。女生徒は胸元を青のリボンタイで結び、男生徒は同色のアスコットタイで結ぶ。
魔力で発展したこの国は、魔力をもつ人材を何よりも重要視する。この学園にかかる経費を全て、国が負担するのもその表れだ。
全ての部屋に浴槽付のバスルームと簡易キッチンが据え置かれているし、住み込みの寮母さんが、いつでも美味しいごはんを用意してくれる。
上下水道が整備されているのは、元・日本人にとっては本当有難い。でもそれは、王都周辺の大きな都市に限った話で、地方都市の貧困は激しい。
鏡に映る自分の姿をじっと見つめる。
そこには、この学園にはほとんどいない、茶色のくすんだ髪を持つ姿が映っていた。
茶色の髪色の僅かしか魔力を持たない者は、“魔力なし”と蔑まれることがある。
魔力なしでも生活必需品を動かすためには、魔石が必要だ。魔石を買うにもお金が必要だから、郡部の村等は、魔石も満足に購入できない貧しいくすんだ髪色の人ばかり。
農作物が豊富にとれる気候とはいえ、治める領主によっては税も重く、農民の生活は厳しい。
多分な魔力を現す鮮やかな髪をもって産まれた子どもは、貴族の養子として買われていくことも多い。そして貴族は体面の為、己の子どもであっても魔力なしの子どもは疎んで捨てる。
教会の炊き出しで訪れた、地方の村の貧しさはひどいものだった。村全体が暗く淀んでいるかのようだった。
そしてその後、マキアの所用で訪れた王都の鮮やかさ。
--そのあまりの違いに絶望した。
この国では歴然とした身分差以外にも、魔力をもつ選ばれた者と持たない者の差は大きい。
ゲームをしていた時は王都が舞台だったし、王都以外の場所のことはゲームの登場人物から僅かに語られるだけだったから、そのことを私はセレーネになるまで知ることはなかった。
入学式で仲良くなったキャロラインは、その髪色に見合ってやはり魔力量が多かったらしく、アルレーヌ達と一緒のAクラスになった。
あんなにすごい炎の魔法を操っていたのに、ライは何故か私と同じクラス。
疑問に思っていたら、どうやら、あの褐色の肌が関係しているらしい。これもゲームの中ではそういった事情は語られなかったけれど。
……髪の色だけでなく、肌の色でも差別するんだよね……。
辺境も辺境、国境の山脈付近に住む人々が、褐色の肌をもつ。
山脈周辺にはその昔、魔力をもたなかったり、人と違う肌の色を持った迫害をうけた人々が移り住んで、集落を形成していったという。
そしてそのなかでも、更なる住処を求めて、竜を使役することに成功し、自然環境の厳しい山脈に住む人々がいる。
竜使いの一族の、竜の里。そこがライの出身地だ。
だから肌の色が褐色というだけで、ライは差別を受けて、私と同じクラスにいる。
ライはとても魔法の力が強いから、表だってばかにする人はいないけれど、大体の人は遠巻きにしているのを見かけた。
元・日本人の記憶を持つ、現・孤児院育ちとしては、すっごくこういうのやりきれない。
学校は!! 差別しちゃいけないって教えるところでしょ!!
気分悪いなぁ、もう……。
そんな感じで差別的な物言いには遠慮なく声をあげ、それでもいうひととは関わらないようにしていたら、私ってばいつの間にか、前世同様に安定のボッチになっていた。
間違ったことしてないのに、なんでだ。セレーネは髪の色以外、見た目も悪くないはずなのに……。ぐすん。
まぁ、推しの姿を生で拝めるだけで、学園に来た甲斐があったか。
でも不用意に近づいてはいけない……。そう、見ていられるだけでいい。まぁ授業はサボってばかりで、滅多に教室にいることはないのだけれど。
所謂教室で、ライの席は私の左隣の窓際だ。ライはたまに登校して教室にいる時は、ほぼずーっと外を眺めている。
私はというと、ライが教室にいる時は、必死に左隣に意識を集中して、視界の端で盗み見している。
だって、推しが尊い。本当はガン見したいけど、バレると怖いから、こっそりと。
あぁん、欠伸してる……! うぅスクショ撮りたい……鼻血でそう……。
そんな感じで、魔力が少ない上に、授業にも集中できなくて、授業がまるっきり分からない……。
ヤバい。
魔法省とかすごいところではなくていいけど、就職はちゃんとしたいから、勉強はちゃんとしなくちゃ。
ゲームならパラメーター上げ簡単なのになー……、うぅぅ。
アルレーヌとキースは当然Aクラス。
極力接点をもちたくないので、キャロラインとは寮か、もしくは昼食をとる時くらいしか会わなくなった。
今日も暖かな日が降り注ぐ学園内の内庭で、キャロラインと寮で持たされるお弁当を食べている。
聞けばキャロラインは結構有力な貴族の令嬢で(私と親しく話してくれるから最初平民かと思ってた! ごめん!) 卒業後は許嫁との結婚が決まっているという。
そうだよ、キャロラインは幸せな結婚するんだよ! 私のルート如何によっては、他国に売られたり、一緒にお人形になったりするんだけどね!
そうだ、私の肩には、この友人の命運もかかっているんだった……。こんな可愛くて優しい友人をお人形にはできないよぉおおお!
「私、頑張るからね! キャロライン!」
「ん? 次のテスト? ……そうよ、セラ頑張った方がいいわよー?」
キャロラインは私が握りしめた手をそっと撫でてくれた。うぅ、優しい。本当、頑張るよ…。
その後、廊下で誰かの落し物? イベントや、園庭に魔物が! イベントや放課後の図書館で何が……!? イベントを無事やり過ごした。
順調に誰との好感度も上がってなさそう…と私はついつい油断してしまっていたのだ。
そのことを深く後悔することになる……。
無事入学式も終え、私は自室の浴室でじっくりと凝り固まった身体をほぐしていた。
教会では辛うじて自室は与えられていたものの、お風呂は当然共同だったし、なんだったらお湯を沸かすのも一苦労だった。こんな風に一人でお風呂に入るだなんて考えられない。
全寮制のこの学園は、身分に関係なく全ての学生に個室が与えられる。
室内の誂えも、教会の私の部屋に比べて、何もかもが上等だ。
そして与えられる制服は、身分に関係なく平等に学べるようにという配慮。
そのため制服の素材も、これまで私が袖を通したことのないような、上質な素材。
濃紺を基調とした上品なデザインでジャケットは白。女生徒は胸元を青のリボンタイで結び、男生徒は同色のアスコットタイで結ぶ。
魔力で発展したこの国は、魔力をもつ人材を何よりも重要視する。この学園にかかる経費を全て、国が負担するのもその表れだ。
全ての部屋に浴槽付のバスルームと簡易キッチンが据え置かれているし、住み込みの寮母さんが、いつでも美味しいごはんを用意してくれる。
上下水道が整備されているのは、元・日本人にとっては本当有難い。でもそれは、王都周辺の大きな都市に限った話で、地方都市の貧困は激しい。
鏡に映る自分の姿をじっと見つめる。
そこには、この学園にはほとんどいない、茶色のくすんだ髪を持つ姿が映っていた。
茶色の髪色の僅かしか魔力を持たない者は、“魔力なし”と蔑まれることがある。
魔力なしでも生活必需品を動かすためには、魔石が必要だ。魔石を買うにもお金が必要だから、郡部の村等は、魔石も満足に購入できない貧しいくすんだ髪色の人ばかり。
農作物が豊富にとれる気候とはいえ、治める領主によっては税も重く、農民の生活は厳しい。
多分な魔力を現す鮮やかな髪をもって産まれた子どもは、貴族の養子として買われていくことも多い。そして貴族は体面の為、己の子どもであっても魔力なしの子どもは疎んで捨てる。
教会の炊き出しで訪れた、地方の村の貧しさはひどいものだった。村全体が暗く淀んでいるかのようだった。
そしてその後、マキアの所用で訪れた王都の鮮やかさ。
--そのあまりの違いに絶望した。
この国では歴然とした身分差以外にも、魔力をもつ選ばれた者と持たない者の差は大きい。
ゲームをしていた時は王都が舞台だったし、王都以外の場所のことはゲームの登場人物から僅かに語られるだけだったから、そのことを私はセレーネになるまで知ることはなかった。
入学式で仲良くなったキャロラインは、その髪色に見合ってやはり魔力量が多かったらしく、アルレーヌ達と一緒のAクラスになった。
あんなにすごい炎の魔法を操っていたのに、ライは何故か私と同じクラス。
疑問に思っていたら、どうやら、あの褐色の肌が関係しているらしい。これもゲームの中ではそういった事情は語られなかったけれど。
……髪の色だけでなく、肌の色でも差別するんだよね……。
辺境も辺境、国境の山脈付近に住む人々が、褐色の肌をもつ。
山脈周辺にはその昔、魔力をもたなかったり、人と違う肌の色を持った迫害をうけた人々が移り住んで、集落を形成していったという。
そしてそのなかでも、更なる住処を求めて、竜を使役することに成功し、自然環境の厳しい山脈に住む人々がいる。
竜使いの一族の、竜の里。そこがライの出身地だ。
だから肌の色が褐色というだけで、ライは差別を受けて、私と同じクラスにいる。
ライはとても魔法の力が強いから、表だってばかにする人はいないけれど、大体の人は遠巻きにしているのを見かけた。
元・日本人の記憶を持つ、現・孤児院育ちとしては、すっごくこういうのやりきれない。
学校は!! 差別しちゃいけないって教えるところでしょ!!
気分悪いなぁ、もう……。
そんな感じで差別的な物言いには遠慮なく声をあげ、それでもいうひととは関わらないようにしていたら、私ってばいつの間にか、前世同様に安定のボッチになっていた。
間違ったことしてないのに、なんでだ。セレーネは髪の色以外、見た目も悪くないはずなのに……。ぐすん。
まぁ、推しの姿を生で拝めるだけで、学園に来た甲斐があったか。
でも不用意に近づいてはいけない……。そう、見ていられるだけでいい。まぁ授業はサボってばかりで、滅多に教室にいることはないのだけれど。
所謂教室で、ライの席は私の左隣の窓際だ。ライはたまに登校して教室にいる時は、ほぼずーっと外を眺めている。
私はというと、ライが教室にいる時は、必死に左隣に意識を集中して、視界の端で盗み見している。
だって、推しが尊い。本当はガン見したいけど、バレると怖いから、こっそりと。
あぁん、欠伸してる……! うぅスクショ撮りたい……鼻血でそう……。
そんな感じで、魔力が少ない上に、授業にも集中できなくて、授業がまるっきり分からない……。
ヤバい。
魔法省とかすごいところではなくていいけど、就職はちゃんとしたいから、勉強はちゃんとしなくちゃ。
ゲームならパラメーター上げ簡単なのになー……、うぅぅ。
アルレーヌとキースは当然Aクラス。
極力接点をもちたくないので、キャロラインとは寮か、もしくは昼食をとる時くらいしか会わなくなった。
今日も暖かな日が降り注ぐ学園内の内庭で、キャロラインと寮で持たされるお弁当を食べている。
聞けばキャロラインは結構有力な貴族の令嬢で(私と親しく話してくれるから最初平民かと思ってた! ごめん!) 卒業後は許嫁との結婚が決まっているという。
そうだよ、キャロラインは幸せな結婚するんだよ! 私のルート如何によっては、他国に売られたり、一緒にお人形になったりするんだけどね!
そうだ、私の肩には、この友人の命運もかかっているんだった……。こんな可愛くて優しい友人をお人形にはできないよぉおおお!
「私、頑張るからね! キャロライン!」
「ん? 次のテスト? ……そうよ、セラ頑張った方がいいわよー?」
キャロラインは私が握りしめた手をそっと撫でてくれた。うぅ、優しい。本当、頑張るよ…。
その後、廊下で誰かの落し物? イベントや、園庭に魔物が! イベントや放課後の図書館で何が……!? イベントを無事やり過ごした。
順調に誰との好感度も上がってなさそう…と私はついつい油断してしまっていたのだ。
そのことを深く後悔することになる……。
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