死神検定

社会不適合者

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質疑応答

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精神病棟サナトリウムの病室を思わせる白を基調とした四畳半の狭き部屋には男が一人、名は雲野うんのという。彼は、これから警察の取り調べでも受けるかのように椅子に腰かけ、机に向かっている。
 スピーカーから機械的音声が流れた。
「では、これから10の質問をします。あなたはそれに対し直感で答えて下さい」
「ナゼだ?」
不服に思ったのか、喧嘩腰にそのワケを彼は訊いた。
「あなたの魂はまだ寿命が残っており、生きる為の『生のエネルギー』も十分に備えていましたが、不慮の事故で死んでしまいました。この霊界でのスケジュールではあなた様はあと10年ほど生きている予定でした。なので、特霊措置としてあなたをこの霊界の魂量を調節する『死神』とし働いてもらい、ある条件を達成されたのち、同じ世界とは限りませんがこれまでの知識・経験を保持して状態で再び生を謳歌していただく。その事が私共の緊急特霊会議にて決定されました」
「ちょっと待て。魂…? 死神…? 事故…? 俺は…死んだのか?」
「はい。この世界は霊界なんで死んだ者の中でしかもあなたのようにまで『生のエネルギー』を持っている者しか来る事が出来ません。それに該当する方は、ます、前提条件として寿命が残っている者です。その中で『自己の意思とは関係なく心中に巻き込まれた者』、『不慮の事故が理由で命を落とされた者』。あなた様は後者が条件として該当したので急遽、こういった措置を取りました」
「俺は…死んだのか…そんなっ…!」男は頭をかかえた。精神的防衛なのか、彼にはその時の記憶が飛んでいた。いや、記憶にプロテクトがかかっているというほうが、正しいだろう。いくら考えても思い出せなかった。
「少し…時間をくれないか」
 雲野は、自身の心と頭の中を整理する為に一人になる時間をもらった。
腰かけたリクライニング機能付の椅子を少し倒して目を閉じる。
 すると、死の経緯を思い出した。

その日は、気楽にながらスマホの状態で街ブラをしていた。
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