上 下
71 / 82
ススム編、第二章。《Lv255の赤ちゃんギルド》

59《中位ランクアップクエスト》

しおりを挟む

中々に屈強そうな厳つい冒険者達が集まるここは……なんかよくわからん場所。うん。

基本的にランクアップクエストとか、依頼とかはギルドにある転移魔法陣から移動するからな。
依頼書と違って詳細を極秘とされるランクアップクエストに関しては、ここどこ? ってなることが多いんだ。

前回のランクアップクエストは闘技場で行われた。
はっきり言おう……あれも場所はわからん。

だからまぁ……今俺が、謎に転移された……この、やたらテレビとかで見覚えのあるジャングル。
ここがどこだかなんてわかるはずは無い。

ジャングルの中に転移された俺、目の前にはテントが数個ある。
冒険者らしい奴らが、ここに転移してくるなり迷いなく入っていくとこから見るに……

「あれが受付って訳か」ふふん、俺は赤ちゃんは赤ちゃんでも賢い赤ちゃんだからな、すぐに分かったさ。

ふよふよふよ~と、テントに入っていく。

「えぇと……」

やはり予想は的中、テントの中には長テーブルが配置されていて、そこにはまぁまぁいい感じに美人なお姉さんが受付をしている。

でだ……問題はやっぱここなんだよなぁ。

「えぇと、ボクちゃん? お父さんかお母さんは居ないのかなぁ」
当然の反応だ。ていうか久々の赤ちゃん扱いがむしろ新鮮に感じるのって……うちのギルドの奴らが、俺を赤ちゃんとして優しくしてくれてないってことだな!! 今度しっかり俺を甘やかすように指示をしなければならないな!! (使命感)

……ちがう、今はそうじゃなかった。

「俺は赤ちゃんだけどイノセント・ロアーって言うギルドの団長です」

「……えぇと……ボクちゃん? ここはお遊びをする場所じゃないのは分かるかな?」

「はい、全然分かります。至って真面目な赤ちゃんですので!!」

「は……はぁ……」なんだろう、今すっごいこの人から……めんどくせぇ!! って聞こえてきた気がする。

「はいこれ! ランクアップクエストの書類です! 俺の年齢も名前も書いてます! ライフリングを確認したらすぐにわかると思います!!」

毎度毎度思うが、俺が赤ちゃんだって事を招待状送る前にしっかり受付達に教えておいて欲しいもんだよ、ぷんぷん!

「……!! ……えぇ!?」
俺と紙を行ったり来たりする受付の目線。
ふむ、この受付はまだまだだな。その反応はもう数十回は見た事ある。もっと新鮮な反応じゃなきゃ俺は満足せんよ!

「……何かの間違い? ……でっでも、この書類は本物だし……ライフリングも確かに、特徴も……」
そうそう、間違いないからな。さっさと控え室やらそういう所の場所をおしえてもらいましょうか?

「…………………でっでは、こちらを……ライフリングに転移先が追加されますので、準備が出来たら今からですと……1時間以内ですね、転移して下さい」
はぁ……ようやく受付が終わりか……

報連相がなってないせいで、俺の後ろにめちゃくちゃ行列出来てるし……まぁ、このあと慌てる事になるのはこのお姉さんだし、俺の知ったことではないな。

「……………………………………ふむ」

「…………………どうされました?」

でも、このお姉さん美人なんだよなぁ。

俺は赤ちゃんなんだよなぁ~

だから緻密な魔法を持続し操るウィンドウェア。
ミスしてしまっても仕方ないよなぁ~

という訳で──

「あっと魔法のコントロールをミスシテシマッタァーーーー」

ぽよんっ。

「……へ? …………だっ大丈夫ですか?」

ふむふむ、やっぱり俺の思った通り……このお姉さん、着痩せするタイプだな。なかなか良い物をもっておる。

「ん~僕は赤ちゃんだから、ちょっと疲れちゃったなぁ~、このまま転移の時間まで抱っこしてくれたら、大丈夫だと思うんだけどなぁ~」

「……? それぐらいでしたら大丈夫ですが、医務室には行かなくて大丈夫ですか?」

「うん! ここに居る!」

「わっわかりました?」

まぁ転移しても……なんかむさくるしそうなおっさんが多かったしな。
始まるまではここでのんびり過ごさせてもらうことにしよう。

ふにふに~ふにふに~……か、い、て、き、♪ やっぱ、俺……一生赤ちゃんでいいかもしれん。

♢

ばたばた忙しそうに動くお姉さんの胸の中、右へ左へぷよんぷよん。
幸せな1時間はあっという間に過ぎると言うものだ。

「はぁ……今回は中位ランクアップクエスト、流石に前回みたいに上手くは行かないだろうなぁ~」

とりあえずイノセント・ロアー専用の控えテントで待機中の俺、3日はかかると言われる今回のランクアップクエストを、どうやってさっさと切り上げようか模索中です!

「とりあえずねこのこにはなんて言い訳するか、ん~多勢に無勢のギルドが相手でさ~……これは駄目だな。たとえ相手が1000人いても……あいつには負ける事を許して貰える気がしないな」

腹が痛くて……容赦なくボディブローされそうだ。

頭が痛くて……頭から地面に叩きつけられる気がする。

可哀想なギルドでさ……俺がもっと可哀想な目に会うだろう……

結局のところ「俺に負けは許されないのか……」

何故かねこのこって、俺が負けることはしっかり許さないんだよなぁ、それが勇者をサポートするって事だとおもってるのだろうか? お門違いも良いとこだぞ……俺だって、俺だって!!

たまには赤ちゃんらしく、お姉さんの胸にだからて……ふにふにゴロゴロして過ごしてぇーー!!! ススム、心の叫び。

なんて、事を考えてたら容赦なくその時はやってくる。

相変わらず、ピンポンパンポーンとテントにあるスピーカーからお知らせの前に音が鳴る。

「はじまりかぁ」
ちなみにランクアップクエストの内容はギリギリまで知らされない。
今からこのスピーカーで、その内容が告知されるって訳だな。

……このジャングルから、お姉さんを見つけ出せ。とかなら、やる気出るんだけどなぁ~

「たーーーーーーいへん!!! おまたせしましたぁーーーーー!!!! 今回の実況は《以下略》」
前回と同じうっさい実況の人みたいだな。
もしかして、ランクアップクエスト全部こいつが受け持ってたりしねぇよな? 出来ればお姉さんの美声ならやる気出るのだが……

「今回の中位ランクアップクエストはとても簡単!! ジャングル内に散りばめられた無数の魔玉を集めるだけ!! どこのギルドよりも多く集め、それを3日間守る!!! 最終的に最も多く魔玉を所持していたギルドから順に順位が決まります!!」

あーこれは結構やった事あるな。

ギルド同士の争奪戦とかすると、色々なクエストがあるんだが……このルールはそれでもあったし、何回もやったからな。

だからまぁ「一旦家帰ろっと」流石に3日もここに居るのはしんどいので、一旦帰ることにする。

「んーライフリング使用不可にされてるけど……まぁ」

俺にはダビングリングで作った、領地に帰れるリングはまだあるからな。
こっち使えば簡単に帰れるって訳だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

いじめられて死のうとしていた俺が大魔導士の力を継承し、異世界と日本を行き来する

タジリユウ
ファンタジー
 学校でのいじめを苦に自殺を図ろうとする高校生の立原正義。だが、偶然に助かり部屋の天井に異世界への扉が開いた。どうせ死んだ命だからと得体の知れない扉へ飛び込むと、そこは異世界で大魔導士が生前使っていた家だった。  大魔導士からの手紙を読むと勝手に継承魔法が発動し、多大な苦痛と引き換えに大魔導士の魔法、スキル、レベルを全て継承した。元の世界と異世界を自由に行き来できるようになり、大魔導士の力を継承した正義は異世界と日本をどちらもその圧倒的な力で無双する。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

作業厨から始まる異世界転生 レベル上げ? それなら三百年程やりました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
第十五回ファンタジー小説大賞で奨励賞に選ばれました! 4月19日、一巻が刊行されました!  俺の名前は中山佑輔(なかやまゆうすけ)。作業ゲーが大好きなアラフォーのおっさんだ。みんなからは世界一の作業厨なんて呼ばれてたりもする。  そんな俺はある日、ゲーム中に心不全を起こして、そのまま死んでしまったんだ。  だけど、女神さまのお陰で、剣と魔法のファンタジーな世界に転生することが出来た。しかも!若くててかっこいい身体と寿命で死なないおまけつき!  俺はそこで、ひたすらレベル上げを頑張った。やっぱり、異世界に来たのなら、俺TUEEEEEとかやってみたいからな。  まあ、三百年程で、世界最強と言えるだけの強さを手に入れたんだ。だが、俺はその強さには満足出来なかった。  そう、俺はレベル上げやスキル取得だけをやっていた結果、戦闘技術を上げることをしなくなっていたんだ。  レベル差の暴力で勝っても、嬉しくない。そう思った俺は、戦闘技術も磨いたんだ。他にも、モノづくりなどの戦闘以外のものにも手を出し始めた。  そしたらもう……とんでもない年月が経過していた。だが、ここまでくると、俺の知識だけでは、出来ないことも増えてきた。   「久しぶりに、人間に会ってみようかな?」  そう思い始めた頃、我が家に客がやってきた。

嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない

AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。 かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。 俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。 *書籍化に際してタイトルを変更いたしました!

【書籍化決定】神様お願い!〜神様のトバッチリを受けた定年おっさんは異世界に転生して心穏やかにスローライフを送りたい〜

きのこのこ
ファンタジー
突然白い発光体の強い光を浴びせられ異世界転移?した俺事、石原那由多(55)は安住の地を求めて異世界を冒険する…? え?謎の子供の体?謎の都市?魔法?剣?魔獣??何それ美味しいの?? 俺は心穏やかに過ごしたいだけなんだ! ____________________________________________ 突然謎の白い発光体の強い光を浴びせられ強制的に魂だけで異世界転移した石原那由多(55)は、よちよち捨て子幼児の身体に入っちゃった! 那由多は左眼に居座っている神様のカケラのツクヨミを頼りに異世界で生きていく。 しかし左眼の相棒、ツクヨミの暴走を阻止できず、チート?な棲家を得て、チート?能力を次々開花させ異世界をイージーモードで過ごす那由多。「こいつ《ツクヨミ》は勝手に俺の記憶を見るプライバシークラッシャーな奴なんだ!」 そんな異世界は優しさで満ち溢れていた(え?本当に?) 呪われてもっふもふになっちゃったママン(産みの親)と御親戚一行様(やっとこ呪いがどうにか出来そう?!)に、異世界のめくるめくグルメ(やっと片鱗が見えて作者も安心)でも突然真夜中に食べたくなっちゃう日本食も完全完備(どこに?!)!異世界日本発福利厚生は完璧(ばっちり)です!(うまい話ほど裏がある!) 謎のアイテム御朱印帳を胸に(え?)今日も平穏?無事に那由多は異世界で日々を暮らします。 ※一つの目的にどんどん事を突っ込むのでスローな展開が大丈夫な方向けです。 ※他サイト先行にて配信してますが、他サイトと気が付かない程度に微妙に変えてます。 ※昭和〜平成の頭ら辺のアレコレ入ってます。わかる方だけアハ体験⭐︎ ⭐︎第16回ファンタジー小説大賞にて奨励賞受賞を頂きました!読んで投票して下さった読者様、並びに選考してくださったスタッフ様に御礼申し上げますm(_ _)m今後とも宜しくお願い致します。

クビになったアイツ、幼女になったらしい

東山統星
ファンタジー
簡単説明→追放されたから飯に困って果物食ったら幼女になった。しかもかなり強くなったっぽい。 ひとりの不運なナイスガイがいた。彼はラークという名前で、つい最近賞金首狩り組織をクビになったのである。そしてなんの因果か、あしたの飯に困ったラークは美味しそうなりんごを口にして、なんと金髪緑目の幼女になってしまった。 しかしラークにとって、これは新たなるチャンスでもあった。幼女になったことで魔術の腕が爆発的に飛躍し、陰謀とチャンスが眠る都市国家にて、成り上がりを果たす機会を与えられたのだ。 これは、『魔術と技術の国』ロスト・エンジェルスにて、ラークとその仲間たち、そしてラークの恋人たちが生き残りと成り上がりを懸けて挑み続ける物語である。 *表紙はAI作成です。 *他サイトにも載ってるよ

処理中です...