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ねこのこ編予告、第一章《偽りのねこのこ》

03《終焉と希望》

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世界は終焉を迎えようとしていた。

それは全て……私一人のせいで……

この身体に流れる膨大な魔力が届く範囲。全ての人間は私に洗脳され私の為だけに動く傀儡と成してしまう。

私の魔力に打ち勝ち、洗脳されなかった人もいた。
けど……私を討伐する為に集まった彼らは、結局はこの歴代魔王達の怨念が操る私の身体に呆気なく殺された。

遠くの大陸の人達は私に恐れ、私を殺すことを諦めてしまった。
触らぬ魔王に祟なし。近寄りさえしなければ……そんな淡い期待は私の成長と共に打ち砕かれた。

どこまでも膨れ上がる闇の魔力、たぶん……私の絶望を養分にどこまでも成長しているのだろう。
その為に……私は、この意志の通り動かなくなった肉体の中、精神だけで生かされているのだろう。

膨れ上がる魔力からは無数の魔王が誕生した。

一体一体がかつての魔王の姿を模しており、その強さは歴代の魔王の強さを超えていた。

……私は、どうしてあの時に殺されなかったんだろう?

何度同じことを考えても、答えなんて見当たらない。

何年経ったのだろう……あの光り輝く毎日が懐かしい……

ススムとはるる、2人はきっと私の作りだした魔王に殺されてしまったんだろう。
あれからもう何年も……私は待った、待ったけど……2人が来ることは無い。

もし……生きてたならごめんね、私はもう……2人を待つ自信が無いよ、もうこれ以上……私は私の存在を許せないから──

♢

気は満ちた。
そう言わんばかりに集まったのは精鋭のみが集められた、全身に深い甲冑を着た兵士や冒険者達。

纏う装備は全て、のちに伝説の名工と語られるドワーフ族の鍛冶師達が作り上げた伝説級の装備である。

エルフの里の伝承に語られる、大精霊の泉で清められた武器、それは不死身と思われる魔王を倒す事が出来る。

そんな最強の装備に身を包んだ、数千は集まった戦士達には共通点があった。

ギルド《イノセント・ロアー》
最強の団長と副団長が、たった一つの目標のためだけに作り上げた世界最強のギルド。

副団長はこのギルド唯一の魔法特化の賢者であった。
全魔法を習得したと言われる彼女は、本来苦手とされる近接戦においても無詠唱で唱える魔法により圧倒していた。
絶対に負けられない、強い意志が彼女を人間の領域を軽く凌駕させた。

団長は勇者である。
誰にも抜けないと言われる聖剣、本当は抜けない……ではなく、手に持つものは魔力と生命力を全て吸われてしまい力尽きるので、抜くことが不可能とされていた。
だが彼はそんな聖剣を引き抜いた。魔力を全て失い、生命力も全て吸われ……それでもなお、彼は立っていた。

数十年にも及ぶ、血のにじむ……では生温い、達人すら死ぬ程の訓練を続け……たどり着いた境地。

2人の瞳には真っ直ぐに映る。

凶悪な角、魔物の真っ赤な瞳、妖美な人を惑わす身体。

だが、彼らにはそれは違う姿に見えていた。

「……すまない、長い時を待たせてしまったな……だが、約束は守ってやる!!! 今日……ここに誓う!! 俺はもう……迷わないと!!!」

「ごめんね、ずっと怖かったよね……だからもう、我慢しなくていいんだよ、ボクはもう……弱くないから!!!」

魔王を倒す為だけに作られた聖なる剣。

魔王を救う為だけに世界樹から授かった杖。

2本の武器は彼らの意志を示すように天に掲げられた。

「……………………ハル、行けるか」

「……………うん、もう……待たせない!!」


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