上 下
66 / 82
ススム編、第二章。《Lv255の赤ちゃんギルド》

54《底無し沼》

しおりを挟む

いや……居たよ、本当に居たよこいつら。

俺は現在、自身の目を疑っている。

ここは団長室のある、ギルド奥、大樹の隠し地下部屋。

絶対居るはずない。居たらおかしい。そう思える存在が……何故か今、俺の目の前にいるのだからさ。

黄色いずんぐりむっくりなぼよよーんとした奴ら。
手に持つのは、七福神がもつ打出の小槌って奴だろう。
まぁ詳細は明かされてなかったから、俺もそこまで詳しくは知らないが……こいつらの事は、嫌ってほど見てきたから知っている。

「なんでお前たちがいるんだ?」
つい、こいつらを見てこぼしてしまう言葉、に対し帰ってくるのは聞き覚えのある言葉だった。

「世の中カネカネ、金があればなんとかナルナル~♪」

「生まれも育ちも関係ないない? それはうそうそ関係大あり、金さえあれば、なんでもありあり~♪」

「よこせカネカネ、回せよガチャガチャ、強いも弱いも運次第、運が駄目なら金を出せ~」

……相変わらず……こいつらのセリフ、運営が考えた割には半端ねぇなって思うわ。

そう、このなんか……ちびっこくて、ぷよぷよしてて、最低な言葉を楽しそうに歌うコイツらは、オンラインゲーム等で良くあるガチャって奴だな。

……前世ではくそお世話になったわ……各ギルドにコイツらは居て、名前を団長が決められるんだが……

「もしかして、お前らの名前って……ソーコ、ナーシ、ヌーマ……だったりしないよな……」

こんな可愛い生き物たちに変な名前つけるな!
なーんて言われたこともあった……あったがこれは許して欲しい。なんせ俺……こいつらのガチャに何百万課金したかも覚えてないからな……

だから正直、こいつらを見るだけで血反吐が出そうだよ。

「ソーコ!」「ナーシ!」「ヌーマ!」

「「「3人揃って!! 底無し沼課金ガチャ死隊!!」」」

「………………………」
なんかこいつら、名前どころかよくわからんセリフまで進化してんだけど!?!?

「ガチャ回せ!」「当たるぞ当たるぞー!」
「今を逃せば今後出てこないレア装備!!」

……そうそう、こんな感じに課金欲を煽ってくんだよな。
とはいえ、ユグシルトのガチャって……実は1年周期で同じものを出してくるから、コンプしてしまったら回す必要もないと言う、実はかなり優しいガチャだったりするんだ。
まぁ……1年で内容が12回変わるガチャ、中身をコンプするのに1回50万から200万ぐらいはかかるから……優しくもないか……

だが、俺はもう屈することは無い!!

なんせ……

「残念だったな! 俺はお前たちから手に入る、魔法書も杖もアクセも防具もコンプリート済み!! なので俺はもう回さん!」
正直……この世界に何故ガチャ機能があるのかわからんが、使う事も今後ない、これをわざわざ気にする必要も…………

「なっなんだそれは!!!!」

俺が部屋を去ろうとするなり、背後でガチャガチャ音を鳴らされ、無意識に振り返ったんだけど……

見覚えのある、木をくり抜いて作ったようなガチャ。
中には勿論ガチャガチャのカプセルが入っていて、その上には──

「武器ガチャ回せ」「技ガチャ回せ」
「強くなるのは運次第、運が無ければ金を出せ~」

「……………………………」

どうやらこの世界、リアルはリアルだが……ゲーム要素も少なからず残ってる? いやあるのがおかしいんだけど……だけど……

「じゃっじゃあこれで、とりあえず運試しで……」

転生前、ユグシルトには天井2回分の石はストックしてたからな……というか、新ガチャ待ちで課金したのに、新ガチャ来なくてホコリ被ってただけなんだが……

まぁでも、この世界に来た際、俺はゲームデータを引き継いで転生してるから、収納にはしっかりガチャ石も入ってたりする。

……今後、この石が手に入るかわからんからな、ここは慎重に……とりあえず100連……!!

「うおぉおおおおおおおおお!!!! あたれぇぇ!!!!!」

この後、結局2000回。天井までぶっぱし……全武器を当てた俺だった。

はぁ……やっちまった、ダブったヤツで使わないのはギルドにでも寄付するかな……

ってな感じに、やってきたのはギルド。

「えぇ!? こっこっこれを寄付……ですか!?」

なんでリズはこんな驚いてんだろ?

ズラっとギルドのカウンターに並べたのは、ガチャガチャの中でも超低ランク武器。
1番ハイレアを10としたなら、これはノーマルもノーマル……まぁ課金ガチャから出るからレアではあるが……レア度2~4と言った所かな。

「んー余りまくってるし使わないからなぁ~」

「……余りまくって……一体こんな物をどこから……」

どこからって言われても……なんとなく、言ったらダメな気がするな……なんか、これを言い出したらボロっと転生者だってこと、言ってしまいそうになる気がするしな。

「んーと、鍛治スキルで適当に作った……的な……?」
まぁ一応この程度の装備なら、俺でも作れるしな……これなら作って見せてみろ。なんて言われても大丈夫だ。

「へ? ……こっこれを……ですか?」

「うん」なんだろう、反応がおかしい気がする。

「……上級武器を……作る……はぁ、いえ、もう驚かないです、団長は確かにやってのけそうなので……」

「えと、これってそんなに高価だったりするの?」

「はい、1つが上級の依頼を数十件こなしてようやく手に入る程度には高価なものですよ……」

「……………………」
そういや、ガチャで手に入る低級の杖とかも、そこらのショップで売ってる最高レアの杖より、余裕で強かったっけ?

やっぱゲームって、課金の必要なし!! なんて言いつつも、課金しなきゃしんどいんだなってことだけは分かったわ。

「団長には相変わらず驚きます、ですが……これだけの装備、今居る団員達には行き渡ると思いますし、今までより依頼の失敗や、クエスト中での事故死も無くなるでしょうね」

「装備でそんなに変わるもんなのか?」

「そりゃそうですよ、団長やシルマさんならともかく、団員達は魔法を使えるだけで普通の人間です、まぁ……数人は常人離れもしてますが、大半ですね……装備による攻撃力はもちろんの事、装備することで得られる加護もございます、そうなると防御力の上昇により、本来ならば死ぬ筈の攻撃を耐えられますし、反撃の一撃で相手を絶命させる可能性も高いです、技術は確かに大切ですがやはり……」

……なんかリズのスイッチ入った??

「まっまぁ! とりあえずみんなの役に立つなら配布なりなんなりしててくれ、またいらないのあったら持ってくるからさ」

「あっはい、よろしくお願いします!」

ふむ、結局お化けとやらの招待……リズには報告は出来なかったが、ギルドの強化もできたし良しとしよう。

ちなみにガチャ石なんだけど、ガチャ1回分が……この世界のお金────超大金注ぎ込めば回せるそうだ……

……あと2000回分のガチャ石あるが、こればかりは大切に使うとするかな……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

異世界定食屋 八百万の日替わり定食日記 ー素人料理はじめましたー 幻想食材シリーズ

夜刀神一輝
ファンタジー
異世界定食屋 八百万 -素人料理はじめましたー   八意斗真、田舎から便利な都会に出る人が多い中、都会の生活に疲れ、田舎の定食屋をほぼただ同然で借りて生活する。     田舎の中でも端っこにある、この店、来るのは定期的に食材を注文する配達員が来ること以外人はほとんど来ない、そのはずだった。     でかい厨房で自分のご飯を作っていると、店の外に人影が?こんな田舎に人影?まさか物の怪か?と思い開けてみると、そこには人が、しかもけもみみ、コスプレじゃなく本物っぽい!?     どういう原理か知らないが、異世界の何処かの国?の端っこに俺の店は繋がっているみたいだ。     だからどうしたと、俺は引きこもり、生活をしているのだが、料理を作ると、その匂いに釣られて人が一人二人とちらほら、しょうがないから、そいつらの分も作ってやっていると、いつの間にか、料理の店と勘違いされる事に、料理人でもないので大した料理は作れないのだが・・・。     そんな主人公が時には、異世界の食材を使い、めんどくさい時はインスタント食品までが飛び交う、そんな素人料理屋、八百万、異世界人に急かされ、渋々開店!?

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

隷属の勇者 -俺、魔王城の料理人になりました-

高柳神羅
ファンタジー
「余は異世界の馳走とやらに興味がある。作ってみせよ」 相田真央は魔王討伐のために異世界である日本から召喚された勇者である。歴戦の戦士顔負けの戦闘技能と魔法技術を身に宿した彼は、仲間と共に魔王討伐の旅に出発した……が、返り討ちに遭い魔王城の奥深くに幽閉されてしまう。 彼を捕らえた魔王は、彼に隷属の首輪を填めて「異世界の馳走を作れ」と命令した。本心ではそんなことなどやりたくない真央だったが、首輪の魔力には逆らえず、渋々魔王城の料理人になることに── 勇者の明日はどっちだ? これは、異世界から召喚された勇者が剣ではなくフライパンを片手に厨房という名の戦場を駆け回る戦いの物語である。

いじめられて死のうとしていた俺が大魔導士の力を継承し、異世界と日本を行き来する

タジリユウ
ファンタジー
 学校でのいじめを苦に自殺を図ろうとする高校生の立原正義。だが、偶然に助かり部屋の天井に異世界への扉が開いた。どうせ死んだ命だからと得体の知れない扉へ飛び込むと、そこは異世界で大魔導士が生前使っていた家だった。  大魔導士からの手紙を読むと勝手に継承魔法が発動し、多大な苦痛と引き換えに大魔導士の魔法、スキル、レベルを全て継承した。元の世界と異世界を自由に行き来できるようになり、大魔導士の力を継承した正義は異世界と日本をどちらもその圧倒的な力で無双する。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

作業厨から始まる異世界転生 レベル上げ? それなら三百年程やりました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
第十五回ファンタジー小説大賞で奨励賞に選ばれました! 4月19日、一巻が刊行されました!  俺の名前は中山佑輔(なかやまゆうすけ)。作業ゲーが大好きなアラフォーのおっさんだ。みんなからは世界一の作業厨なんて呼ばれてたりもする。  そんな俺はある日、ゲーム中に心不全を起こして、そのまま死んでしまったんだ。  だけど、女神さまのお陰で、剣と魔法のファンタジーな世界に転生することが出来た。しかも!若くててかっこいい身体と寿命で死なないおまけつき!  俺はそこで、ひたすらレベル上げを頑張った。やっぱり、異世界に来たのなら、俺TUEEEEEとかやってみたいからな。  まあ、三百年程で、世界最強と言えるだけの強さを手に入れたんだ。だが、俺はその強さには満足出来なかった。  そう、俺はレベル上げやスキル取得だけをやっていた結果、戦闘技術を上げることをしなくなっていたんだ。  レベル差の暴力で勝っても、嬉しくない。そう思った俺は、戦闘技術も磨いたんだ。他にも、モノづくりなどの戦闘以外のものにも手を出し始めた。  そしたらもう……とんでもない年月が経過していた。だが、ここまでくると、俺の知識だけでは、出来ないことも増えてきた。   「久しぶりに、人間に会ってみようかな?」  そう思い始めた頃、我が家に客がやってきた。

処理中です...