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ススム編、第二章。《Lv255の赤ちゃんギルド》
54《底無し沼》
しおりを挟むいや……居たよ、本当に居たよこいつら。
俺は現在、自身の目を疑っている。
ここは団長室のある、ギルド奥、大樹の隠し地下部屋。
絶対居るはずない。居たらおかしい。そう思える存在が……何故か今、俺の目の前にいるのだからさ。
黄色いずんぐりむっくりなぼよよーんとした奴ら。
手に持つのは、七福神がもつ打出の小槌って奴だろう。
まぁ詳細は明かされてなかったから、俺もそこまで詳しくは知らないが……こいつらの事は、嫌ってほど見てきたから知っている。
「なんでお前たちがいるんだ?」
つい、こいつらを見てこぼしてしまう言葉、に対し帰ってくるのは聞き覚えのある言葉だった。
「世の中カネカネ、金があればなんとかナルナル~♪」
「生まれも育ちも関係ないない? それはうそうそ関係大あり、金さえあれば、なんでもありあり~♪」
「よこせカネカネ、回せよガチャガチャ、強いも弱いも運次第、運が駄目なら金を出せ~」
……相変わらず……こいつらのセリフ、運営が考えた割には半端ねぇなって思うわ。
そう、このなんか……ちびっこくて、ぷよぷよしてて、最低な言葉を楽しそうに歌うコイツらは、オンラインゲーム等で良くあるガチャって奴だな。
……前世ではくそお世話になったわ……各ギルドにコイツらは居て、名前を団長が決められるんだが……
「もしかして、お前らの名前って……ソーコ、ナーシ、ヌーマ……だったりしないよな……」
こんな可愛い生き物たちに変な名前つけるな!
なーんて言われたこともあった……あったがこれは許して欲しい。なんせ俺……こいつらのガチャに何百万課金したかも覚えてないからな……
だから正直、こいつらを見るだけで血反吐が出そうだよ。
「ソーコ!」「ナーシ!」「ヌーマ!」
「「「3人揃って!! 底無し沼課金ガチャ死隊!!」」」
「………………………」
なんかこいつら、名前どころかよくわからんセリフまで進化してんだけど!?!?
「ガチャ回せ!」「当たるぞ当たるぞー!」
「今を逃せば今後出てこないレア装備!!」
……そうそう、こんな感じに課金欲を煽ってくんだよな。
とはいえ、ユグシルトのガチャって……実は1年周期で同じものを出してくるから、コンプしてしまったら回す必要もないと言う、実はかなり優しいガチャだったりするんだ。
まぁ……1年で内容が12回変わるガチャ、中身をコンプするのに1回50万から200万ぐらいはかかるから……優しくもないか……
だが、俺はもう屈することは無い!!
なんせ……
「残念だったな! 俺はお前たちから手に入る、魔法書も杖もアクセも防具もコンプリート済み!! なので俺はもう回さん!」
正直……この世界に何故ガチャ機能があるのかわからんが、使う事も今後ない、これをわざわざ気にする必要も…………
「なっなんだそれは!!!!」
俺が部屋を去ろうとするなり、背後でガチャガチャ音を鳴らされ、無意識に振り返ったんだけど……
見覚えのある、木をくり抜いて作ったようなガチャ。
中には勿論ガチャガチャのカプセルが入っていて、その上には──
「武器ガチャ回せ」「技ガチャ回せ」
「強くなるのは運次第、運が無ければ金を出せ~」
「……………………………」
どうやらこの世界、リアルはリアルだが……ゲーム要素も少なからず残ってる? いやあるのがおかしいんだけど……だけど……
「じゃっじゃあこれで、とりあえず運試しで……」
転生前、ユグシルトには天井2回分の石はストックしてたからな……というか、新ガチャ待ちで課金したのに、新ガチャ来なくてホコリ被ってただけなんだが……
まぁでも、この世界に来た際、俺はゲームデータを引き継いで転生してるから、収納にはしっかりガチャ石も入ってたりする。
……今後、この石が手に入るかわからんからな、ここは慎重に……とりあえず100連……!!
「うおぉおおおおおおおおお!!!! あたれぇぇ!!!!!」
この後、結局2000回。天井までぶっぱし……全武器を当てた俺だった。
はぁ……やっちまった、ダブったヤツで使わないのはギルドにでも寄付するかな……
ってな感じに、やってきたのはギルド。
「えぇ!? こっこっこれを寄付……ですか!?」
なんでリズはこんな驚いてんだろ?
ズラっとギルドのカウンターに並べたのは、ガチャガチャの中でも超低ランク武器。
1番ハイレアを10としたなら、これはノーマルもノーマル……まぁ課金ガチャから出るからレアではあるが……レア度2~4と言った所かな。
「んー余りまくってるし使わないからなぁ~」
「……余りまくって……一体こんな物をどこから……」
どこからって言われても……なんとなく、言ったらダメな気がするな……なんか、これを言い出したらボロっと転生者だってこと、言ってしまいそうになる気がするしな。
「んーと、鍛治スキルで適当に作った……的な……?」
まぁ一応この程度の装備なら、俺でも作れるしな……これなら作って見せてみろ。なんて言われても大丈夫だ。
「へ? ……こっこれを……ですか?」
「うん」なんだろう、反応がおかしい気がする。
「……上級武器を……作る……はぁ、いえ、もう驚かないです、団長は確かにやってのけそうなので……」
「えと、これってそんなに高価だったりするの?」
「はい、1つが上級の依頼を数十件こなしてようやく手に入る程度には高価なものですよ……」
「……………………」
そういや、ガチャで手に入る低級の杖とかも、そこらのショップで売ってる最高レアの杖より、余裕で強かったっけ?
やっぱゲームって、課金の必要なし!! なんて言いつつも、課金しなきゃしんどいんだなってことだけは分かったわ。
「団長には相変わらず驚きます、ですが……これだけの装備、今居る団員達には行き渡ると思いますし、今までより依頼の失敗や、クエスト中での事故死も無くなるでしょうね」
「装備でそんなに変わるもんなのか?」
「そりゃそうですよ、団長やシルマさんならともかく、団員達は魔法を使えるだけで普通の人間です、まぁ……数人は常人離れもしてますが、大半ですね……装備による攻撃力はもちろんの事、装備することで得られる加護もございます、そうなると防御力の上昇により、本来ならば死ぬ筈の攻撃を耐えられますし、反撃の一撃で相手を絶命させる可能性も高いです、技術は確かに大切ですがやはり……」
……なんかリズのスイッチ入った??
「まっまぁ! とりあえずみんなの役に立つなら配布なりなんなりしててくれ、またいらないのあったら持ってくるからさ」
「あっはい、よろしくお願いします!」
ふむ、結局お化けとやらの招待……リズには報告は出来なかったが、ギルドの強化もできたし良しとしよう。
ちなみにガチャ石なんだけど、ガチャ1回分が……この世界のお金────超大金注ぎ込めば回せるそうだ……
……あと2000回分のガチャ石あるが、こればかりは大切に使うとするかな……
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