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ススム編、第一章。《Lv255の赤ちゃん爆誕》

23《剣聖》

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ふわっふわっと空を飛ぶ俺なんだけどな。

「も……限界……」

感動の対面、死を超えたおじいさんに抱きつくリオンの姿、を前に……魔力の消費量がキャパオーバーしてしまった。

これはかなり不味い、現状俺が居なくなればこのメンバー、ゴブリンの巣を攻略出来るほどの力はない。

「……なぜ儂は蘇ったのじゃ? たしかに死んだはず」
リオンを撫でつつおじいさんは疑問を言葉に零した。

「しっく……しっく……あの、赤ちゃんが……おじいちゃん、生き返らせてくれて……」
泣きつつ説明するリオンであるが……あっもう無理。

ひゅるる~と最後の魔力を振り絞り、地面への落下ダメージを防ぐ俺、まぁこの身体……一応2歳の肉体だからな、ちょっとした高所から落下しても死んで当たり前だしな。

だが「おっと、この赤子が?」おじいさんに受け止められた。

……俺、爺さんに抱っこされる趣味はないんだがな……まぁ、結構ギリギリだったし、今回は良しとしてやろう。

ちなみに俺はもう夢の中、眠りつつ夢の中で現状を見てる感じだな。

にしてもおかしい……そう思うのは俺だけなのか?

「蘇生魔法と言うと、リザレクションの事か? ……じゃがあれは神級の魔法、幼子が空を飛んでおる事は不思議に思っておったが、まさかこの子は噂で聞いた隣町の神童……」
えっ俺って神童とか呼ばれてんの? 初耳だわ……

「神童?」そりゃまぁ普通はその反応だな。

「うぬ、才能に優れし子を一概にそう呼ぶのじゃが……まさか蘇生魔法をも使ってしまうとは……この姿、どう見てもまだ生後間もない子だと言うのに……なんという才能か、きっとこの事が広まったなら、この子に平穏な生活は無くなってしまうじゃろう、りおんよ、この事は内緒にしてはくれ無いかの」
えっと、そんな大袈裟な……俺は勇者になる子供なんだし、これぐらい出来て当然って言われそうなものだけど……

コクっと頷くリオン。

でもさ、考えてみたら神級の魔法を使うって、勇者物語でも最終決戦とかでも見た事があまりないが……俺はそんなことより、ずっと思ってることがあるんだ。

……なんかおじいさん、めっちゃ若返ってね??

「それにしても、リザレクションの噂は本当じゃったんじゃな、神に許しを乞い、魔法を使用された者は蘇生と共に時を戻すと言うが……まさに体感すると信じざる負えんわい」
……えぇと、見た目は変わってないんだけど、やっぱ……そうだよね

「そう言えばおじいちゃん、すごく若返ってる……」
えっ、どこが? 見た目でそれがわかるリオンの目をほじくって確かめてみたいんだけど??

「力が漲るようじゃ……10年、いや、40年は若返っておるの、これならば……ゴブリンぐらい軽くひねり潰れそうじゃな」
へ?? ……えと、もしかして……帰らないの??

「ほんと!」なにがほんと! だよ……お前は確実に足でまといなんだから、動けない俺を抱いてさっさとこの森を出ろっての!!!

「ああ、ちょうど良いとこにゴブリン共がわんさかやってきたの」
ゴブリンが? ……ってことは、偵察のゴブリン、五体じゃなかったのか……にしてもこの状況はやばい、俺はさすがに寝てる間は魔法を使えないただの赤ちゃん、ゴブリンの矢どころか、毒沼の水1滴浴びるだけで死ぬっての!!

俺の叫びも虚しく、こいつらは逃げる気なんてないようだ。

「ふむ、先程は不覚を取ったが……今度はそうはいかんぞい、ほれ、りおんよこの子を預かっておいておくれ」
え……しかも俺、こっちの弱いのに預けられるの!?

「絶対に離すでないぞ、その子はきっと神に世界を救う為に遣わされた神の子」
いや、猫型の美少女に釣られて、なんか異世界で赤ちゃんしてるしがない転生者ですけど??

コクっと頷くリオン。
おじいさんは100はいるであろう、今度は鎧を着た上位ゴブリン、ゴブリン兵士だと言うのにどうして勇ましく立っていられるのだろうか?

ゴブリン兵士の後ろに控えているのはどう見てもゴブリンアーチャー、先程までいた、雑魚ゴブリンと違いそれなりの弓を手に持っている。

射抜かれて終わる、もしくは射抜かれた後、ゴブリン兵士により斬殺される。

答えは二択しかないというのに……

おじいさんは言葉も通じないゴブリン相手へ、怒鳴り声にも似た堂々たる声で宣言する。

「有象無象がいくら集まろうとも、剣聖と謳われし我が剣が蘇った今……小さな恩人の為、

この身がにたび、地に着くことは────無い!!」

えっと……? 剣聖……!????

俺はその言葉に一瞬動揺するものの、どーせ嘘だろ……なんて高を括ってたんだがな。

瞬きなんてする暇がない。

「ゆくぞ……!! 魔物共──」
今朝見たぷるぷるした足取りなんかじゃない。

音もなく地面を蹴り、おじいさんは空を駆けるようにゴブリンの群れへ飛ぶ。
けれどゴブリンも馬鹿ではない、宙を飛び、完全な的となるおじいさんへ向け無数の矢が放たれていた。

今度こそ終わった!! なんて俺が思うとおじいさんは言う。

「先程はよくやってくれたのぅ……これは先程のお返しじゃ、受けてみよ暴風龍の剣を──」
そういって宙に立つおじいさんの握る剣。
……えっと、あれってまじ!? 俺も驚く程の風の魔力が、まるで龍の姿に見える程に濃く、剣に巻き付くように渦巻いている。

剣聖……嘘じゃなかったのね。

矢が目と鼻の先に達した時、捻るように構え再度鞘へ納められた暴風龍を纏う剣は、その魔力を鞘の中で増大させ、抜かれる。

「風神流・抜刀術────天の鱗」

俺の目では捉えきれない、剣が振られたと同時に切られたのだろう。
おじいさんに向かい飛んでいた無数の矢、全てはその場で突然時が止まったように動きを止め、突如真っ二つに斬られ落ちていった。

「ふむ、まだまだじゃのぅ」

俺はあれ? っと思った、それは矢が切られたことに対してでは無く、何故矢が飛んでこないんだ? って事に対してだ。
だがそれはすぐに理解した、風の魔力が濃く俺の視界の先、ゴブリン兵士の後ろに感じられたから……つまり、先程の一撃、全ての矢を切り刻むと共に、矢を撃っていた100は居たであろうゴブリンアーチャーを一網打尽にしたって訳だな。

そしておじいさんがまだまだじゃのう。そう口を滑らせた理由はたぶん、鎧を着た頑丈なゴブリン兵士までは倒せなかったことに対してなんだろう。

空からすちゃっと地面に降り、おじいさんは言う。

「死にたい者からかかってきなさい」

わざわざ目立った理由はどうやら、ゴブリンアーチャーの矢が俺達に飛ぶ危険性があると踏んだからなんだろうな。

……ていうか、何この人……強すぎてキモイわ!!

この後ゴブリン兵士達は、もちろんおじいさんに為す術もなく、軽く全滅させられていた。





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