24 / 82
ススム編、第一章。《Lv255の赤ちゃん爆誕》
23《剣聖》
しおりを挟むふわっふわっと空を飛ぶ俺なんだけどな。
「も……限界……」
感動の対面、死を超えたおじいさんに抱きつくリオンの姿、を前に……魔力の消費量がキャパオーバーしてしまった。
これはかなり不味い、現状俺が居なくなればこのメンバー、ゴブリンの巣を攻略出来るほどの力はない。
「……なぜ儂は蘇ったのじゃ? たしかに死んだはず」
リオンを撫でつつおじいさんは疑問を言葉に零した。
「しっく……しっく……あの、赤ちゃんが……おじいちゃん、生き返らせてくれて……」
泣きつつ説明するリオンであるが……あっもう無理。
ひゅるる~と最後の魔力を振り絞り、地面への落下ダメージを防ぐ俺、まぁこの身体……一応2歳の肉体だからな、ちょっとした高所から落下しても死んで当たり前だしな。
だが「おっと、この赤子が?」おじいさんに受け止められた。
……俺、爺さんに抱っこされる趣味はないんだがな……まぁ、結構ギリギリだったし、今回は良しとしてやろう。
ちなみに俺はもう夢の中、眠りつつ夢の中で現状を見てる感じだな。
にしてもおかしい……そう思うのは俺だけなのか?
「蘇生魔法と言うと、リザレクションの事か? ……じゃがあれは神級の魔法、幼子が空を飛んでおる事は不思議に思っておったが、まさかこの子は噂で聞いた隣町の神童……」
えっ俺って神童とか呼ばれてんの? 初耳だわ……
「神童?」そりゃまぁ普通はその反応だな。
「うぬ、才能に優れし子を一概にそう呼ぶのじゃが……まさか蘇生魔法をも使ってしまうとは……この姿、どう見てもまだ生後間もない子だと言うのに……なんという才能か、きっとこの事が広まったなら、この子に平穏な生活は無くなってしまうじゃろう、りおんよ、この事は内緒にしてはくれ無いかの」
えっと、そんな大袈裟な……俺は勇者になる子供なんだし、これぐらい出来て当然って言われそうなものだけど……
コクっと頷くリオン。
でもさ、考えてみたら神級の魔法を使うって、勇者物語でも最終決戦とかでも見た事があまりないが……俺はそんなことより、ずっと思ってることがあるんだ。
……なんかおじいさん、めっちゃ若返ってね??
「それにしても、リザレクションの噂は本当じゃったんじゃな、神に許しを乞い、魔法を使用された者は蘇生と共に時を戻すと言うが……まさに体感すると信じざる負えんわい」
……えぇと、見た目は変わってないんだけど、やっぱ……そうだよね
「そう言えばおじいちゃん、すごく若返ってる……」
えっ、どこが? 見た目でそれがわかるリオンの目をほじくって確かめてみたいんだけど??
「力が漲るようじゃ……10年、いや、40年は若返っておるの、これならば……ゴブリンぐらい軽くひねり潰れそうじゃな」
へ?? ……えと、もしかして……帰らないの??
「ほんと!」なにがほんと! だよ……お前は確実に足でまといなんだから、動けない俺を抱いてさっさとこの森を出ろっての!!!
「ああ、ちょうど良いとこにゴブリン共がわんさかやってきたの」
ゴブリンが? ……ってことは、偵察のゴブリン、五体じゃなかったのか……にしてもこの状況はやばい、俺はさすがに寝てる間は魔法を使えないただの赤ちゃん、ゴブリンの矢どころか、毒沼の水1滴浴びるだけで死ぬっての!!
俺の叫びも虚しく、こいつらは逃げる気なんてないようだ。
「ふむ、先程は不覚を取ったが……今度はそうはいかんぞい、ほれ、りおんよこの子を預かっておいておくれ」
え……しかも俺、こっちの弱いのに預けられるの!?
「絶対に離すでないぞ、その子はきっと神に世界を救う為に遣わされた神の子」
いや、猫型の美少女に釣られて、なんか異世界で赤ちゃんしてるしがない転生者ですけど??
コクっと頷くリオン。
おじいさんは100はいるであろう、今度は鎧を着た上位ゴブリン、ゴブリン兵士だと言うのにどうして勇ましく立っていられるのだろうか?
ゴブリン兵士の後ろに控えているのはどう見てもゴブリンアーチャー、先程までいた、雑魚ゴブリンと違いそれなりの弓を手に持っている。
射抜かれて終わる、もしくは射抜かれた後、ゴブリン兵士により斬殺される。
答えは二択しかないというのに……
おじいさんは言葉も通じないゴブリン相手へ、怒鳴り声にも似た堂々たる声で宣言する。
「有象無象がいくら集まろうとも、剣聖と謳われし我が剣が蘇った今……小さな恩人の為、
この身がにたび、地に着くことは────無い!!」
えっと……? 剣聖……!????
俺はその言葉に一瞬動揺するものの、どーせ嘘だろ……なんて高を括ってたんだがな。
瞬きなんてする暇がない。
「ゆくぞ……!! 魔物共──」
今朝見たぷるぷるした足取りなんかじゃない。
音もなく地面を蹴り、おじいさんは空を駆けるようにゴブリンの群れへ飛ぶ。
けれどゴブリンも馬鹿ではない、宙を飛び、完全な的となるおじいさんへ向け無数の矢が放たれていた。
今度こそ終わった!! なんて俺が思うとおじいさんは言う。
「先程はよくやってくれたのぅ……これは先程のお返しじゃ、受けてみよ暴風龍の剣を──」
そういって宙に立つおじいさんの握る剣。
……えっと、あれってまじ!? 俺も驚く程の風の魔力が、まるで龍の姿に見える程に濃く、剣に巻き付くように渦巻いている。
剣聖……嘘じゃなかったのね。
矢が目と鼻の先に達した時、捻るように構え再度鞘へ納められた暴風龍を纏う剣は、その魔力を鞘の中で増大させ、抜かれる。
「風神流・抜刀術────天の鱗」
俺の目では捉えきれない、剣が振られたと同時に切られたのだろう。
おじいさんに向かい飛んでいた無数の矢、全てはその場で突然時が止まったように動きを止め、突如真っ二つに斬られ落ちていった。
「ふむ、まだまだじゃのぅ」
俺はあれ? っと思った、それは矢が切られたことに対してでは無く、何故矢が飛んでこないんだ? って事に対してだ。
だがそれはすぐに理解した、風の魔力が濃く俺の視界の先、ゴブリン兵士の後ろに感じられたから……つまり、先程の一撃、全ての矢を切り刻むと共に、矢を撃っていた100は居たであろうゴブリンアーチャーを一網打尽にしたって訳だな。
そしておじいさんがまだまだじゃのう。そう口を滑らせた理由はたぶん、鎧を着た頑丈なゴブリン兵士までは倒せなかったことに対してなんだろう。
空からすちゃっと地面に降り、おじいさんは言う。
「死にたい者からかかってきなさい」
わざわざ目立った理由はどうやら、ゴブリンアーチャーの矢が俺達に飛ぶ危険性があると踏んだからなんだろうな。
……ていうか、何この人……強すぎてキモイわ!!
この後ゴブリン兵士達は、もちろんおじいさんに為す術もなく、軽く全滅させられていた。
0
お気に入りに追加
1,159
あなたにおすすめの小説
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
隷属の勇者 -俺、魔王城の料理人になりました-
高柳神羅
ファンタジー
「余は異世界の馳走とやらに興味がある。作ってみせよ」
相田真央は魔王討伐のために異世界である日本から召喚された勇者である。歴戦の戦士顔負けの戦闘技能と魔法技術を身に宿した彼は、仲間と共に魔王討伐の旅に出発した……が、返り討ちに遭い魔王城の奥深くに幽閉されてしまう。
彼を捕らえた魔王は、彼に隷属の首輪を填めて「異世界の馳走を作れ」と命令した。本心ではそんなことなどやりたくない真央だったが、首輪の魔力には逆らえず、渋々魔王城の料理人になることに──
勇者の明日はどっちだ?
これは、異世界から召喚された勇者が剣ではなくフライパンを片手に厨房という名の戦場を駆け回る戦いの物語である。
いじめられて死のうとしていた俺が大魔導士の力を継承し、異世界と日本を行き来する
タジリユウ
ファンタジー
学校でのいじめを苦に自殺を図ろうとする高校生の立原正義。だが、偶然に助かり部屋の天井に異世界への扉が開いた。どうせ死んだ命だからと得体の知れない扉へ飛び込むと、そこは異世界で大魔導士が生前使っていた家だった。
大魔導士からの手紙を読むと勝手に継承魔法が発動し、多大な苦痛と引き換えに大魔導士の魔法、スキル、レベルを全て継承した。元の世界と異世界を自由に行き来できるようになり、大魔導士の力を継承した正義は異世界と日本をどちらもその圧倒的な力で無双する。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
作業厨から始まる異世界転生 レベル上げ? それなら三百年程やりました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
第十五回ファンタジー小説大賞で奨励賞に選ばれました!
4月19日、一巻が刊行されました!
俺の名前は中山佑輔(なかやまゆうすけ)。作業ゲーが大好きなアラフォーのおっさんだ。みんなからは世界一の作業厨なんて呼ばれてたりもする。
そんな俺はある日、ゲーム中に心不全を起こして、そのまま死んでしまったんだ。
だけど、女神さまのお陰で、剣と魔法のファンタジーな世界に転生することが出来た。しかも!若くててかっこいい身体と寿命で死なないおまけつき!
俺はそこで、ひたすらレベル上げを頑張った。やっぱり、異世界に来たのなら、俺TUEEEEEとかやってみたいからな。
まあ、三百年程で、世界最強と言えるだけの強さを手に入れたんだ。だが、俺はその強さには満足出来なかった。
そう、俺はレベル上げやスキル取得だけをやっていた結果、戦闘技術を上げることをしなくなっていたんだ。
レベル差の暴力で勝っても、嬉しくない。そう思った俺は、戦闘技術も磨いたんだ。他にも、モノづくりなどの戦闘以外のものにも手を出し始めた。
そしたらもう……とんでもない年月が経過していた。だが、ここまでくると、俺の知識だけでは、出来ないことも増えてきた。
「久しぶりに、人間に会ってみようかな?」
そう思い始めた頃、我が家に客がやってきた。
嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない
AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。
かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。
俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。
*書籍化に際してタイトルを変更いたしました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる