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双子の天災児
13『神獣の森ー歴史』
しおりを挟む僕は思う(こんな生い立ち信じてもらえるの?)
はっきり言って信ぴょう性等皆無だろう。
だというのに、ねこのこ様はキノコハウスの方をそっとみているそれは(……へ?なんだろう……怖い感じが無くなった?)
まるで優しさと悲しみに囚われた表情である。
(今がチャーンス!!)
こそこそとほふく前進、このままキノコハウスの中へ!!
という野望は潰えた。
背中にぐにゅっと踏まれた感触。
「はい、ごめんなさい」
「逃がさぬぞ?」
ねこのこ様に死角なし。
(絶対死んだわーこれ死んだわー)
絶対ぼこぼこにされると予想する僕、けれどそんなことは無くねこのこ様は話しを始めた。
「ふむ、まぁ焼いて食おうとは思っとらん、丁度里の子らもお主のあれに驚いて逃げた様じゃし少しばかし身の上話しを聞いてもらおうかの」
「あふっ」(まさかの女王様ですか!?)
僕の背中にとすっと座り、僕を逃がすことなく話しは始まる。
☆☆☆☆☆
かつて世界が魔王という狂気により混沌と化していた時代のお話し。
世界中の人々が来る日も来る日もいつ襲ってくるかわからない魔王に怯える日々の最中、これはそんな事を知る由もないたった1匹のねこのこ族の話しである。
出会いは突然だったらしい。
ねこのこ族は元々、森に住むただの獣で、産まれたての赤ん坊のようにただ無邪気に森の中で暮らしていた。
ねこのこ族がはしゃぐ場所には様々なキノコが生えてくる、いつもの広場、キノコを食べているねこのこ族、そんな所へ人間の赤ん坊が落ちていたそうだ。
ねこのこ族は好奇心も高かった。
神獣の森には邪な者が入る事が出来ない結界が施されているので人間何てものはこの森に入ってきたことは無かった。
だからこそねこのこ族はその赤ん坊に興味を持ち、家へと連れ帰ったのだ。
ねこのこ族からしたらとても不思議なことにその赤ん坊は歩く事が出来ない。
なので毎日餌を与えて死なさないようにはしていた。
毎日毎日、ただ餌を与えるだけ、まぁ当然1匹、また1匹と興味を無くしたねこのこ族は家に来ることはなくなってゆく。
そんな中1匹だけがその赤ん坊にずっと興味、というよりも好意の様な感情を持ち毎日餌を与え続けた。
1ヶ月ほどが経つと赤ん坊は歩き始めた。
2ヶ月ほどで言葉を交わすようになった。
ただ餌を与えるだけの生活は一変し、1匹のねこのこ族と赤ん坊の楽しい生活が始まっていた。
そんなある日のこと、とうとう悪意はその神獣の森にまで手を伸ばす。
理由はその結界、そんな結界が張られる場所には当然護られる物があるからだ。
それは聖剣、神が魔王を討伐するために地上へと降ろした一対の剣、それがあるからこそ森には邪な者が現れることはなく平和は築かれていたというのに……それは起こってしまった。
人間を救う勇者。
清き心を持ち、どんな悪にも屈しない、世界を護る存在。
とは、護って貰う立場の人間だけに当てはまる言葉だろう。
ねこのこ族はその聖剣のありがたみを知っていて、それが無くなると自分達がどうなるかなど当たり前に知っている。
だからその邪な心を持っていない勇者という存在が森に来た際、勇者から聖剣を護ろうと、戦う術などもっていないというのに手を開いて立ちはだかった。
だがそれも虚しく、勇者は剣を持って行ってしまう。
それの意味するところ、勇者は容赦なくねこのこ族達を切り捨て、そして奪い取っていったのだ。
聖剣が失われると当然押し寄せてくる魔物の群れ。
ねこのこ族は殺され食われ犯され、その惨状は見るに耐えないものとなっていた。
そんなある日、とうとう神獣の森の自分の住む辺りにそれが押し寄せてきた際にその者は動く。
名も無き1匹のねこのこ族に名を与え、驚異的な能力を授けた。
神獣の森を襲う魔物はすぐさま逃げ出す、その巨大な魔力が自身の主である魔王に匹敵していたからだ。
そしてその赤子は神獣の森へ聖剣と同じ結界を張る。
自身の使命を全うする、そう言ってその赤ん坊は森を襲った勇者を殺し、聖剣を奪い返したあと、魔王を討伐し相打ちとなってこの世を去った。
けれど、それだけでは終わらなかった。
聖剣には殺された勇者の魂と魔王の魂が宿っていた。
亡くなった赤ん坊に代わり勇者に名を授けられたねこのこ族はその聖剣を与えられた力で破壊した。
けれどそれが失敗であった。
ねこのこ族の娘の身体にはその赤ん坊から授かった2つの生命が宿っており、聖剣に潜んでいた邪悪な魂はそれに取り付いてしまう。
☆☆☆☆☆
「……いつの日か、必ず世界をまた混沌へと陥れるふたつの魂、愛していた赤ん坊を殺した仇の魂を持ってしまった2つの赤ん坊、どうして可愛がることが出来ようものか……」
(……え?これってまさかだよな?)
「神獣の森のねこのこ族の長となったそのねこのこ族は、我が子を作る前に掟を作ったのじゃ、ねこのこ族に双子の子が生まれた際は不吉を呼んでしまうので近寄るべからず、いつの日か我が子を殺す方法を見つけるその日まで……」
はっきりいって他人になんて興味はない。
興味はないんだが……
(なんだこの苦しいのは……胸が、どうしようも無い空虚感、前が見えない……まさか僕は泣いてる?)
冗談すら口に出てこなかった
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