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第五章 四種族対立編

届かぬ想い

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「昨日初めて来たが、里長がはまってな」
「うむ、里では食えぬ故な。今日もここを所望した」

 里長が……意外だ。
 確かにここにはそういう魔力があるもんな。
 醤油と味噌の人、里長までも虜にする。恐るべし冒険野郎。

 中に入ってビールで乾杯だ。
 オーダーは里長達四人に任せる。誰が頼んでもメニューはさほど変わらないな。人気メニューがテーブルに並ぶ。

「皆さん、ケルベロスはどうだったんですか?」

 里長達は昨日冒険者カードを作成し、初めての依頼にSSランクを選んだとんでもない新米冒険者だ。ケルベロスは三つ首の犬の魔物らしい。

「あぁ、俺が犬の攻撃を受けてる間に、三人が一本づつ首を落として終わりだ」

 ――SSの魔物の討伐話をサラッと……すごい新人達だな……見たかったな。
 
「このビールとやらが美味いな。今回の遠征ですっかりはまってしまった」
「里にも大陸から輸入しねーといけやせんね」

 ソーセージ料理、スパイス料理、ピッツァやパスタ等をビールやワインで流し込む。里長がピッツァにかぶりついてる姿は二度と見られないかもしれない。

「里長、明日出発ってぇ話だけど、仙神国に合金を買いに行きてぇと思ってるんですが、構いませんか?」
「あぁ、別に咎めはせぬ。儂らは先に帰っておくとしよう」
「ありがとうございます。トーマス、お前ぇも来てくれねぇか? 売ってる場所の案内と空間魔法があればありがてぇ。大量に欲しいからな」
「へい、もちろん御一緒します」
「じゃあ、アタシも行くよ。里帰りがてらおすすめの店を紹介しよう」
「本当か? ありがてぇ、頼むよ」

 ジュリアとトーマスが共に行動か。

 ――ヤンさんという邪魔も……いや、付き添いが居るけどいい感じになればいいな。

 仙神国の往復となると五日くらいだろうか。

「オレもここでヤンさん達を待って一緒に帰りましょうかね」
「じゃあ、私もそうしようかな」

「左様か、分かった。帰ったら屋敷に顔を出すが良い」
「エミリーとジュリアはうちで面倒を見よう。帰ったらうちに来い」
「分かりました!」
「あぁ、世話になるよ」


 食事を終え、里長達と別れた。
 五日程度の追加滞在だ。

「明日はオリバーさんとこに行ってこようかなぁ」
「私は何しようかなぁ」
「とりあえず四人でエマの店行かないか?」
「あぁ、行ってみたいな」


 クラブPerchパーチに着いた。
 今気付いたが、大きな両開きのドアは内にも外にも開くようになっている。前の店からドア蹴破られまくっていた。どちらにも開くなら壊れる心配もそこまでない。

「あ、ロンだ! カッコイイじゃん!」
「あ、四人で来たの? お席にご案内致します」

 大人なロンの後ろについて席に案内された。

 エマとニナが来た。
 
「いらっしゃい、みんな今日はありがとうね! ジェニーは他のお客様に着いてるから、後で来るように伝えたよ」

 ジュリアはトーマスの横に陣取っている。
 ニナはエミリーの隣だ。

「明日からトーマスとジュリアが師匠と出かけるから、オレとエミリーはあと五日ほどここにいようと思うんだ」
「そうなんだ! うち勝手に使っていいからね」
 
「じゃあエミリーちゃん、うちに泊まらない?」
「え、いいの? じゃあ行く!」

 寝床は決まった、明日は皆と一緒にチェックアウトでいい。


 少ししてジェニーが来た。
 いつも通りの元気なジェニーだ、ジュリアとトーマスを挟んで座っている。三人で楽しく話している。良かった。

「ユーゴ君、明日用事ある? ショッピング付き合って欲しいんだけど」
「あぁ、いいよ。ホテルチェックアウトしたら行くよ」

 皆で楽しく飲んでホテルに戻った。


 ◇◇◇


 ホテルの朝食も今日で最後、里長達も名残惜しそうに食べているように見える。

 皆がホテルの前に集合し、リーベン島への帰路についた。
 里長達、ヤンガスとトーマス達を見送り、エミリーと二人になった。

「さぁ、オレはエマに付き合ってくるわ」
「私もとりあえずニナんとこ行こうかなぁ」



 エマの部屋について呼鈴を鳴らすと、エマはバッチリ準備を終えていた。

「おはよう! 紅茶淹れるね」
 
 いい香りだ、ユーゴの好きな銘柄だ。
 紅茶を飲みながらしばし話す。

「一昨日みんなと別れた後、ジェニー泣いてたんだ」
「え……? トーマスとジュリアの事か」
 
「……うん、ジェニー前からトーマス君の事が好きだったからね。でも、思いっきり泣いてスッキリしたって。相手がジュリアちゃんだもん、勝ち目ないよって。トーマス君、ジェニーと何回か一夜を過ごしてるけど、一度も手を出してきた事ないんだって言ってた」

 ――え……? マジで? 凄い精神力だなトーマス……。 
 
「そうか……トーマスいい男だもんな。タイミングもあったのかもな。付き合いはジェニーの方が長いからな」
「そうかもね、私もジュリアちゃんが相手なら諦めるかな……」
「あいつ雑でだらしないけど、良い奴だし綺麗だもんな……」

 エマはジトーッとした目でユーゴを見ている。

「オレはエマ一筋だぞ!?」
「ハハッ、何焦ってんの。信じてるって」

 恋愛ができるってのは平和な事だ、この平和を守らないといけない。

 今日から五日ほど、ここにお世話になろう。
 皆に術の指導もできる。連日はきついだろうからあと一日くらいか。
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