上 下
178 / 241
第五章 四種族対立編

Perch

しおりを挟む

 早めに起きて朝食を食べた。
 レトルコメルスまで行くには一泊野営を挟む。龍族の精鋭100人との移動だ。

 南門付近に皆が集まった。

「これより南東のレトルコメルスを目指す! 野営地は儂らが決める、それまでは全力で飛ぶように!」

 昼食は各自軽食を用意している。
 レトルコメルスへ向けて皆が飛び立った。


 ◇◇◇


 野営を一泊挟み、まもなくレトルコメルス。

「もう春も終わりかけてるもんな、約一年ぶりか?」
「そうだね、もう一年近く経つのか。色々あったね」 
「ホテルはシャルロットが連絡して取ってくれてるみたいだ。兵達の検問も免除だって言ってたな」

 さすがは龍王御一行様……。
 門衛は何者か知らされないまま通すんだろうな。

 そして昼前にレトルコメルスに到着した。

 通行手形所持者用の入口から町に入り、宿泊ホテルの前に皆が集まった。

「この宿を三泊抑えてくれているようだ。四日後の朝ここに集まるように! 各自好きに過ごすが良い! 解散!」

 
 高級ホテルにチェックインし、いつもの四人でランチに向かう。エミリーが選んだのはスパイス料理の店だ。

「マシューに教えてもらってからカレーがお気に入りなんだよね!」
「うん、僕もエミリーに教えてもらってから自分で作るくらいハマってるんだ」

 ユーゴも何度か食べた事があるが、確かに美味かった。トーマスが作ったカレーの方が好みではある。
 パンと食べても勿論美味いが、ライスとの相性が抜群だ。確かにランチには最適な料理だ。

 カレーライスを平らげた。
 初めてのチキンカレーだったが、ユーゴはやはりビーフが好みだ。

 食後のコーヒーを注文し、一息つく。

「二人はスレイプニルレースか?」
「そうだな、王都には無かったからな」
「夜はカジノだね!」
 
「……まぁ、お前らが無一文になる事はもう無いだろうしな……オレらはいつも通り飲みに行くか」
「そうだね、ロンは元気かな?」
「明日あたりあいつの成長を見てもいいかなぁ」
「ロンとどっか行くの? 私も行く!」
「じゃあ、アタシも付き合おうかな」
「あいつの予定を聞いてからになるけど、多分大丈夫だろ。明日の昼過ぎにロビーに集合にするか。ロンは仕事だろうから朝は多分起きないしな……」


 ホテルに戻り久々のサウナだ。
 サウナからの水風呂は何物にも変えられない。

 夜はいつもの冒険野郎。
 王都の店舗とはメニューが違うからここも楽しめる。

 ギャンブラー二人を見送り、店を後にした。

「じゃ、エマの店に行くか」

 呼び込みを軽くあしらって目的地に向かう。

「あれ? 店名変わってるぞ?」
「ほんとだね、中で聞いてみるか」

 エマの店の名前は『Perchパーチ』だ。鳥などの止まり木という意味で、冒険者や商人達がひと休み出来る場所になって欲しいという願いを込めてつけたとエマは言っていた。あと、娼館等で飼われていた女性が飛んできて止まる事ができる場所と言う意味もある。

「いらっしゃいませ!」
「すみません、ここの前の店はどこに行ったんですか?」
「あぁ、パーチ? それなら中心地の方に移転したよ! ここを出て左に真っ直ぐ行ってみて!」
「そうですか、ありがとう」

 少しのお金をカウンターに置いて外に出た。店を大きくしないといけない時期だと言っていた。レトルコメルス東の繁華街、ソレムニーアベニューの中心地を目指す。

「あ、これか。随分大きな店になったな……」
「うん、規模が違うね……」

 両開きの大きなドアをくぐる。
 シックな音楽が流れた空間にボックス席が沢山並んでいる。かなり客が入っていて女の子も多い。

「ほぉ……凄いな、大繁盛だ」

 入口付近で立ち止まっていると、若い黒服が近づいてきた。

「いらっしゃいませ。お席にご案内いたしま……え!? ユーゴさん!?」
「ん? おぉ! ロンか! お前、背伸びたな!」
「でしょ? 服がすぐにダメになるんだよ。エマさん呼んできますね」

 席まで二人を案内した後、ロンは奥に下がっていった。

「あの小汚かったロンが、爽やかな少年になったもんだな……」
「分からなかったよ……少年の一年はすごいね……」

 少しすると気品溢れる女性がこっちに向かって歩いてきた。見とれる程に美しくなったエマとジェニーだ。

「ユーゴ君! 会いたかったよ……」

 エマはユーゴの横に座るなり腕に抱きついてきた。ジェニーはトーマスの横に付いて抱きついている。

「一年近く来てないもんな……お店相当大きくなったな。頑張ってるなエマ」
「うん、ロン君も頑張ってくれてる。他の黒服も鍛えてくれてるからね。見違えたでしょ?」
「あぁ、いい男になった。それよりエマ……元々綺麗だけど、見違えるほど綺麗になったな……」
「ホントに? うれしいな」

 ウイスキーの水割りで久々の再会に乾杯した。

「私ね、ジェニーと黒服にホールを任せてこの店のマネジメントに回ってるの。ユーゴ君達みたいに大切なお客様が来られた時は出てくるけどね」
「そうか、こんな大きな店のオーナーだもんな。忙しそうだ……なかなか相手して貰えなくなるな」
「そんな事無いよ、みんな優秀だから私をフォローしてくれるの。だから前の小さい店より楽させてもらってるかな。今が一番楽しいかも」
「そうか、頑張ってるなぁ、オレも見習わないとな……」

 あのこじんまりしたカウンターバーも良かったが、高級店で隣に座るエマもいい。思えば初めて会った夜もボックス席で隣に座っていた。あの時から見れば、お互い良く頑張ったものた。

「ユーゴ君、両目の色が揃ったんだね」
「あぁ、そうなんだよ、バランス良くなっただろ?」
「不思議な色ね、すごく綺麗な色」
 
 楽しく飲んでいると、悲鳴が上がった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

殿下から婚約破棄されたけど痛くも痒くもなかった令嬢の話

ルジェ*
ファンタジー
 婚約者である第二王子レオナルドの卒業記念パーティーで突然婚約破棄を突きつけられたレティシア・デ・シルエラ。同様に婚約破棄を告げられるレオナルドの側近達の婚約者達。皆唖然とする中、レオナルドは彼の隣に立つ平民ながらも稀有な魔法属性を持つセシリア・ビオレータにその場でプロポーズしてしまうが─── 「は?ふざけんなよ。」  これは不運な彼女達が、レオナルド達に逆転勝利するお話。 ********  「冒険がしたいので殿下とは結婚しません!」の元になった物です。メモの中で眠っていたのを見つけたのでこれも投稿します。R15は保険です。プロトタイプなので深掘りとか全くなくゆるゆる設定で雑に進んで行きます。ほぼ書きたいところだけ書いたような状態です。細かいことは気にしない方は宜しければ覗いてみてやってください! *2023/11/22 ファンタジー1位…⁉︎皆様ありがとうございます!!

能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。

暇野無学
ファンタジー
 馬鹿の巻き添えで異世界へ、召喚した神様は予定外だと魔法も授けずにテイマー神に丸投げ。テイマー神もやる気無しで、最低限のことを伝えて地上に降ろされた。  テイマーとしての能力は最低の1だが、頼りは二柱の神の加護だけと思ったら、テイマーの能力にも加護が付いていた。  無責任に放り出された俺は、何時か帰れることを願って生き延びることに専念することに。

異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。

黒ハット
ファンタジー
 前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

婚約破棄られ令嬢がカフェ経営を始めたらなぜか王宮から求婚状が届きました!?

江原里奈
恋愛
【婚約破棄? 慰謝料いただければ喜んで^^ 復縁についてはお断りでございます】 ベルクロン王国の田舎の伯爵令嬢カタリナは突然婚約者フィリップから手紙で婚約破棄されてしまう。ショックのあまり寝込んだのは母親だけで、カタリナはなぜか手紙を踏みつけながらもニヤニヤし始める。なぜなら、婚約破棄されたら相手から慰謝料が入る。それを元手に夢を実現させられるかもしれない……! 実はカタリナには前世の記憶がある。前世、彼女はカフェでバイトをしながら、夜間の製菓学校に通っている苦学生だった。夢のカフェ経営をこの世界で実現するために、カタリナの奮闘がいま始まる! ※カクヨム、ノベルバなど複数サイトに投稿中。  カクヨムコン9最終選考・第4回アイリス異世界ファンタジー大賞最終選考通過! ※ブクマしてくださるとモチベ上がります♪ ※厳格なヒストリカルではなく、縦コミ漫画をイメージしたゆるふわ飯テロ系ロマンスファンタジー。作品内の事象・人間関係はすべてフィクション。法制度等々細かな部分を気にせず、寛大なお気持ちでお楽しみください<(_ _)>

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...