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第四章 新魔王誕生編

小鬼族の鬼国攻め

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 更に鍛錬を積む者、新しい武器を試す者、決戦に備えて休む者。それぞれの時を過ごし、十日が経った。

 ベンケイの屋敷の前に、二千人の村人が武装して並んでいる。

「ここにいる皆は、大鬼族達に煮え湯を飲まされてきた者達じゃ。身体が小さいと言うだけで、親兄弟や友人達からも差別を受けてきた者達じゃ。それも今日で終わりじゃ! あの愚王とその側近共を叩っ斬る! それでも我らを差別するような奴らは皆殺しにしてしまえ!」

『オォ――ッ!!!』

 ベンケイの演説で士気は最高潮だ。 

「ワシらには他種族の仲間がおる。皆で魔力を抑えて鬼国に近づき、彼らがまずイバラキの居城に攻撃を仕掛ける。それを開戦の合図に皆で攻める!」
「派手な花火を上げるわよ! 皆、ついてらっしゃい!」

 皆が練気を使った浮遊術を扱う。
 今は早朝、各自昼食用の軽食を用意し、夕方の到着を目指す。
 夕食時を狙って襲撃だ、酒に酔っている所を叩く。
 


 予定通り日が沈むまでには鬼国付近に到着した。皆が魔力を完全に抑えて待機している。

 日が沈み夕飯時、炊煙を見届ける。酒を嗜んでいる時間だろう。

「ベンケイ爺さんの集落を見ても思ったが、鬼族の文化は龍族と似ているな」
「そうだね、仙族と魔族も少し似ている。パラメオント山脈で隔てられているからだろうか?」
 
「さて、そろそろ行こうかしら? 準備はいい?」

 暴れたくて仕方ないマモン達四人が、鬼王の居城に奇襲する算段だ。

「相手は数万の鬼族よ、とうとうあの自然エネルギーを使う時が来たかしら」
「あぁ、そうだな。キミが使うならボクはまだ温存しておこう」

 頭上に練気のボールを多数作り、ノースラインの火山を噴火させた時に得たマグマの自然エネルギーと、火属性の魔力を一気に圧縮する。

「ボク達は風属性で更に燃え上がらせるとするか」

 頭上の無数のボールはパンパンだ。

『火魔法 溶岩流ラヴァフロー
 
 マグマの自然エネルギーを詰め込んだ全ての圧縮魔法を、鬼王の居城に投げつけた。
 火山の噴火に似た大爆発の後、溶岩の様に火が地を這う。鬼族に魔法は効かないが、マモンの魔法は仙術を取り入れている。

「凄い威力ですわね……」
「もっとマグマが地を這うかと思ったけど、まぁ合格点ね」

『火遁 豪炎龍ごうえんりゅう

『仙術 熱嵐ヒートストーム

 シュエンが更に龍の様に地を這う火術を放ち、アレクサンドとサランの風属性の仙術で、地を這う炎を更に燃え上がらせる。かなりの鬼族が燃え尽くされただろう。
 
 鬼国は大惨事だ。
 城下の者は国外に逃げていく。

 燃えて崩れ落ちた居城からバタバタと大鬼族達が出てきた。その中に鬼王も居るだろう。マモンの魔法を開戦の花火として、伏せていた小鬼族達が一気に攻め入る。
 その内の百人の精鋭がその一団を取り囲んだ。

「ワタシ達も合流しましょ」
 
 火の手が届かない開けた場所。
 ベンケイとテン、サンキチ達が鬼王イバラキとその側近達と対峙している。

「イバラキよ、まさかワシらが攻めてこようとは夢にも思わなんだようじゃな」
「ベンケイ……おめぇらよくもオラの国を……夜襲とはなぁ、卑怯者ぉ」
「小さな集落を軍で攻めてくるのは卑怯では無いのか? お前が傾けた国じゃ、責任を取ってここで果てるがよい。お前の相手はこの男じゃ、見覚えがあろう」

 薙刀を肩に乗せたテンが前に出る。

「おっ……おめぇは……あの時の鬼人かぁ!?」
「あぁ、500年も眠ってたんだ。あんたらに両親を殺された恨みは、オラにとっちゃこないだの事だ」

「誰が封印解きやがったぁ……おめぇらぁ! オラを守れぇ!」

 部下達がイバラキの周りを取り囲んで武器を構えた。

「テン、周りのヤツらはワタシ達に任せて!」
「あの愚王に援軍など来ん。テン、イバラキ一人になるまで後ろで休んでおれ」
「あぁ、分かった」

 一人一人がかなり大きい。
 ベンケイ達より頭二つ分近く大きい。ただ、それだけだ。

「さて、この刀の試し斬りには贅沢な相手ね」
「あぁ、そうだね。鬼族はかなり硬いと聞いたよ」

 マモン達は今日、刀を腰に差している。
 修練の成果を大鬼族にぶつけよう。

 イバラキを護り、取り囲む者は50人程。相手は守りに徹している。精神的にも攻めるにはかなり容易な状況だ。

「さぁて皆、周りを切り刻んで鬼王を一人にしてやりましょ!」

 刀を正眼に構える。

『剣技 剣光の舞ソードダンス

 多人数には連続技だ。
 舞うように刀を振り回す。デュランダルよりリーチが長い、多人数戦には刀が良さそうだ。

 アレクサンドもサランもいい顔で刀を振っている。いい玩具を手に入れた子供の様に。

「良く斬れるわね! 取り巻きなんて相手にならないわ!」
「練気術が無いと斬れなかったかもね、やはり硬いよ鬼族は」

 闘気を纏った鬼族は確かに硬い。しかも大きい分、仕損じる事も多い。
 
 周りからジワジワと鬼族を仕留めていく。
 ベンケイの実戦を初めて見たが、さすがは薙刀術の創始者。今までの鬱憤をぶつけるかの様に凄まじい勢いで斬り進んでいる。

「ハーッハッ! 木偶の坊達は斬り甲斐があるなぁ! 生き返った柳一文字やなぎいちもんじが喜んでるぞ!」

 シュエンが一番いい顔で刀を振り回している。魔力障害者には最高の舞台だろう。


 大鬼族達の断末魔が辺りにこだまし続けている。皆の勢いは止まらない、一心不乱に武器を振り続けている。
 
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