上 下
88 / 241
第三章 大陸冒険編

ピーン

しおりを挟む

 定例パーティーも終わり、皆が帰っていく。

「レオナード王、シャルロット女王、お招き頂きましてありがとうございました。十日後にまた参ります」
「あぁ、またパーリー参加してね!」
「毎回来てもらってもいいょ!」

 本当に仲のいい王達だ。
 もっと王家同士でいがみ合っている様なイメージを持っていたユーゴにとっては新鮮に映った。

 
 パーティー会場とオーベルジュの城は隣同士だ。少し歩いて客間に着いた。

「皆様、お帰りなさいませ。お風呂の準備はできておりますよ」
「あぁ、ただいまリナさん。明日からオレたち数日間出かけます」
「左様でございますか、かしこまりました。お召し物のクリーニングはいかが致しましょう?」
「あぁ、お願いしようかな。みんなどうする?」
「うん、お願いしようかな」
「アタシも!」

「かしこまりました。お部屋に置いておいて頂ければ、こちらでしておきますので」

 礼服のクリーニングをお願いし、風呂に入るため各自部屋に戻る途中、エミリーが立ち止まった。

「ねぇ……もしかしてここも混浴?」
「あぁ、そうだよ」
「私それが嫌でこっちに来たのもあるのに……こっちもかよ!」
「いいじゃないか、見られてどーなんだよ」
「いやだよ……二人に裸見られるんでしょ……?」
「二人先に入ってきなよ、僕らは後でいいからさ……」
「いや、今日は来賓が多かったから、いっぱい入ってると思うけどな。嫌ならシャワールーム借りるか?」
「うん、そうする……」

 エミリーは恥ずかしいようだ。
 ユーゴは残念な表情を出さぬよう努めた。
 

 エミリーを除き、三人で風呂に行く。
 確かに多い、裸の男女がこうも入り乱れると普通に思えてくるから不思議だ。

 もうジュリアの裸を見てもなんとも……と思ったが、これだけの大多数の前で勃起を晒す訳にはいかない。視界に入れるのはやめよう。

 シャワーで汗を流し、露天風呂へ。
 王族の奥方や年頃の娘も、隠す事なく湯に足を浸けて座っている。
 すごい文化だ、眼福である。

 やはり、ジュリアの美しすぎる裸体で目が鍛えられた。他の女性を見ても耐えられる。
 いや、耐えるというのがすでに間違いなのだろうが。

 ゆっくり温まり、脱衣所で体を拭く。
 
「お前ら今日は勃起しなかったな」
「あぁ、ジュリアほどの美しい裸体は無かったからな」
「ほんと、今ジュリア見たら勃つ自信があるよ」
「お前ら褒め過ぎだって。アタシのが他と何が違うんだよ。ほれ、トーマス! 見てみろ!」

 ジュリアはトーマスの顔を掴んで、自分の胸に向けた。

「うぁー! やめてって!」

 そして、勢い余ってジュリアの胸の谷間に、トーマスの顔が埋まった。

 ピーン

 急いで下着を履くトーマス。

「キャハハ! 可愛いなトーマス!」
「うん、大サービスありがとう、ジュリア……」


 明日はレトルコメルス行きだ。日が昇る前には出る。
 夜更かしせずに寝よう。

 
 ◇◇◇

 
 夜明け前に目を覚ます。
 冒険者は朝に強い。というよりは職業病だろうか、眠りが浅い。野営でのんびり寝ている訳にはいかないからだ。だから次の日、何もない日は深酒をしてゆっくりと眠る。それでも朝には目が覚める。
 もう、病気だ。

 辺りはまだ暗い。
 準備をして周りに迷惑をかけないようにゆっくりと出て行く。
 皆時間は守る、夜明け前と言えばしっかりと集まる。この当たり前ができない者は冒険者にはなれない。

 メイドのリナが、わざわざ早起きして四人分の弁当を作ってくれた。
 彼女からすれば仕事の一つなのだろうが、ユーゴはその心遣いに感動を覚えた。何かプレゼントを買って帰ろう。

「さて、目標は夕方にレトルコメルスだ。全力で行くぞ」

 始めから全力の浮遊術で街道沿いを飛んでいった。

 
 喋る事なく、真っ直ぐに目的地を目指す。
 太陽が真上に来た、皆に合図をし地上に降りる。

「ふぅ、大分進んだな」
「このペースだと、予定より早く着きそうだね」

 リナの弁当を四人で頂いた。

「ほんと、リナさんにはお世話になりっぱなしだ」
「あぁ、アタシも世話になりっぱなしだ」
「美味しいなこの弁当」
「ホント! この卵焼きすごく美味しい!」

 しばしの休憩をとり、また無言で飛び続けた。


 ◇◇◇

 
 予定より早く、夕方前にはレトルコメルスに着いた。四人のスピードは増している。

「ふぅ、いつものホテルにチェックインするか。明日には出るだろ?」
「皆どうする?」
「そうだな、ユーゴの用事が済んだら出たらいいんじゃないか?」
「なら今日で済ませる。チェックインしたらすぐに行ってくるよ。明日の朝食を食べて出よう」
「じゃあ、明日の朝まで各自自由時間だね!」

 今回は各自に空間魔法がある。
 ユーゴのトラウマはもう解消だ。
 

 ホテルにチェックインしてシャワーで汗を流す。異空間に現金を持っておこう。1000万もあればいいだろう。
 
 まずは娼館の元締めに話を聞きに行く事にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。

暇野無学
ファンタジー
 馬鹿の巻き添えで異世界へ、召喚した神様は予定外だと魔法も授けずにテイマー神に丸投げ。テイマー神もやる気無しで、最低限のことを伝えて地上に降ろされた。  テイマーとしての能力は最低の1だが、頼りは二柱の神の加護だけと思ったら、テイマーの能力にも加護が付いていた。  無責任に放り出された俺は、何時か帰れることを願って生き延びることに専念することに。

異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。

黒ハット
ファンタジー
 前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

婚約破棄られ令嬢がカフェ経営を始めたらなぜか王宮から求婚状が届きました!?

江原里奈
恋愛
【婚約破棄? 慰謝料いただければ喜んで^^ 復縁についてはお断りでございます】 ベルクロン王国の田舎の伯爵令嬢カタリナは突然婚約者フィリップから手紙で婚約破棄されてしまう。ショックのあまり寝込んだのは母親だけで、カタリナはなぜか手紙を踏みつけながらもニヤニヤし始める。なぜなら、婚約破棄されたら相手から慰謝料が入る。それを元手に夢を実現させられるかもしれない……! 実はカタリナには前世の記憶がある。前世、彼女はカフェでバイトをしながら、夜間の製菓学校に通っている苦学生だった。夢のカフェ経営をこの世界で実現するために、カタリナの奮闘がいま始まる! ※カクヨム、ノベルバなど複数サイトに投稿中。  カクヨムコン9最終選考・第4回アイリス異世界ファンタジー大賞最終選考通過! ※ブクマしてくださるとモチベ上がります♪ ※厳格なヒストリカルではなく、縦コミ漫画をイメージしたゆるふわ飯テロ系ロマンスファンタジー。作品内の事象・人間関係はすべてフィクション。法制度等々細かな部分を気にせず、寛大なお気持ちでお楽しみください<(_ _)>

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...