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第三章 大陸冒険編

冒険野郎たち

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「いたぞ! あいつだ!」

 テンガロンハットがトレードマークのシブいオッサン。
 サンディ・ジョーンズだ。

 ――何なんだよマジで……普通に飲ませてくれよ……。

「また来たぞあいつ……」
「僕が相手しようか?」
「いや、複数いるっぽいぞ?」

 サンディを合わせて三人いる。

「おいテメェ、表ぇ出ろよ」
「おいおい、楽しく飲んでるんだから……勘弁してくれよ……ごめんよエマ。いつもトラブル持ってくるなオレ……とりあえず外出るわ」
「うん、ここ毎日見に来てたよ……気をつけてねユーゴ君」

 ――毎日……暇なのかSランクは。なんでドア蹴って入るんだよ……普通に覗けよ。
 
 考えるうちに腹が立ってきた。

「おい、この間は世話になったな! コイツらが俺のパーティだ」
「なぁサンディ。こんなガキに負けたのかい?」
「うるせぇ! こいつらの口車に乗らず最初から剣を抜いてりゃ負けなかったんだよ!」

 口車とは酷い言われようだ。正論をぶつけただけなのだが。
 回復術師風の女と、盾役風の男の三人パーティだ。完全武装してる。

「なぁ……お前は暇なのか? オレら武器も防具も無いんだよ。それを完全武装して恥ずかしくないのか? Sランクのくせに」
「もうその手にゃ乗らねぇぜ。最初から全力で行くぞ」

 ――はぁ……面倒くさい……。

「トーマス、こういう人種には何言ったって無駄だ。もうボコボコにしてやろうか」
「殺さない程度にね。回復術師もいるみたいだし大丈夫か」

 自然エネルギーの強化術を施す。
 サンディが斬り掛かってきた。

「キィィィン!」

 トーマスの守護術で難なく弾き返す。

「これだ、前回はこれで拳をやられたんだ!」
「よし、防御は任せろ。お前は思いっきり攻撃しろ」

 丸腰の二人に対する言葉ではない。怒りのあまり恥を捨てたらしい。

 二人で浮遊術で空に逃げた。
 Sランクパーティーがどう動くか見ものだ。

「なにっ!? あいつら浮いたぞ!」
「くそっ、卑怯な!」

「……なぁ、お前らは飛行する魔物に対しても、卑怯なっ! て言うのか? 冒険者やめてしまえよ」
「クッ……」

 こんな奴等に遁術を使うのも勿体ない。
 人差し指から風エネルギーを練り込んだ練気を発射した。
 練気銃だ、以前のものとは威力が違う。

 盾役の守護術を突き抜けて、サンディの脚を貫いた。

「ウグッ……!」
「回復するよ!」

 両手人差し指で二丁拳銃だ。
 回復させる間もなく、サンディと盾役の腕と脚を穴だらけにした。

「グァァーッ!」
「早く回復しろっ!」
「間に合わないよ!」

 もう、男二人は動けない。
 地に降りて、人差し指を回復術師に向けた。

「こいつらを回復するなら、あんたを同じ目に合わすけど?」

 女は泣きそうな顔で首を横に振った。
 サンディに指を向け直す。

「なぁ、さっきも言ったけど、オレたちは楽しく飲んでるんだ。そもそもオレらが悪いのか? 勝手にお前が絡んできて負けたんだろ? これ以上オレ達の邪魔するなら、殺すぞ」

 ユーゴは眉間に皺を寄せ、立てないサンディを上から睨み付けた。
 
「分かった……詫びる……勘弁してくれ……」
「勘弁してくれ……? 口の聞き方も知らないのか? 気が変わった、殺してやる」
「まっ……待ってください! 腕も脚も動かねぇんだ! 勘弁してください!」
「だめだ、許さん」

 脚と腕をさらに滅多撃ちにした。

「ギャー!!」

 サンディの頭に指を向ける。

「終わりだ。さようなら」
「待ってください! やめてくれ!」
「バンッ!」
「ギャー!」

 サンディは小便で股間を濡らし、気絶した。

「流石にこの手足は可哀想だな。トーマスはそっちの盾役さんを治療してやってくれ」
「あぁ、分かったよ」

 サンディの手足に、自然の治癒エネルギーでパワーアップした治療術をかける。
 少し傷は残ったが綺麗に治った。効果が段違いだ。
 エミリーの様に、くっつけたりは恐らくできないが。

「流石に濡れた股間はどうにもできない。ごめんよサンディ」
「何者だよあんたら……」
「お二人はどうする? まだやる?」
「とんでもない……連れて帰る。悪かった」
「サンディが目を覚ましたら伝えといてくれよ、次は命の保証は無いって。そして、この街から出ていった方がいいってね。あと、店のドアの修理代置いて行ってくれ」
「分かったよ……お詫びだ、多めに払うよ」

 そう言って、サンディの懐から出した金を受け取った。

 エマの店に戻ると、客達の歓喜の声が店に響いた。

「おい、あんたらすごいな! サンディの野郎いつも威張り散らしてたからスカッとしたぜ!」

 ――嫌われ者なんだサンディ……可哀想に。

「皆さん、楽しく飲んでる所ご迷惑をおかけしました。サンディがお詫びにと金を置いていってくれた。足りない分はオレが払うから、たらふく飲んでくれ!」
「いいのか!?」
「ありがてぇ!」
 
「ユーゴ君……いいのほんとに?」
「あぁ、皆楽しもう! カンパーイ!」
『カンパーイ!』

 冒険者達の大宴会が始まった。皆それぞれ腕のある冒険者だ。いい情報も持っている。
 この町を拠点にする冒険者から、魔人達の噂を聞く事が出来た。数年間滞在していたらしいが、最近は見ないとの事だった。
  
 冒険者はやはりいい。サンディの様な奴は稀だ。
 
 宴会は夜更けまで続いた。
 
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