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第三章 大陸冒険編

戦闘力倍増勉強会

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 朝には武具の整備は終わっていた。

「皆、出来てるよ」

 武器が朝日に反射して眩い。
 革の質まで新品に戻ったようだ。

「えぇ!? アタシのツヴァイハンダー光ってるぞ!」
「うん、あんまり整備されてなかったね。この剣は斬るのに特化した物じゃ無いけど、斬れるように砥いだから気をつけてね。あと、ジュリアの篭手にフェンリルの魔晶石埋め込んどいたよ」
「魔晶石を篭手に? なんで?」
「龍族の戦闘法だよ。魔晶石で魔力の増幅をするんだ」
「なるほどな。確かに効率的だ」

「よし、出発しようか!」

 昨日の復習だ。
 風のエネルギーを取込み、練気を混ぜて浮力を得る。そして、それを推進力にして進む。

「これは快適だね。使う気力も少なくて済む」
「うん、走ってもそこまで疲れないけど、これはもう疲れ無しだな。さすが自然のエネルギー、燃費がいい」
「いや、これは練気術のおかげだよ。普通はここまで速度も出ないし、もっと気力を消費する」

 ジュリアはすでに練気術を使いこなしている。剣にも練気を纏えていた。
 自然エネルギーを気力に混ぜるというのが、練気を武具に練る、練気に魔力を練る行為によく似ているからだ。

 ユーゴ達も昨日の焚き火や湖、日光や月明かりの自然エネルギーを体内に取り込みながら過ごした。それを色んな術に組み込んでみるのが今日の課題だ。
 
「あ、ユニコーンが歩いてるよ」
「よし、アタシのニューツヴァイハンダーの試し斬りだ。練気を纏ってみよう」

 錬気を綺麗に纏えている。さすがは仙族の誇る天才だ。方法が似ているから習得しやすいのもあるが、それだけじゃなくセンスがいい。

 あんなに大きな両手大剣を、小枝でも振り回すように軽々と振り回している。

 そのままユニコーンを綺麗に両断した。

「おいおい、怖いほど斬れるぞ……凄いな練気術。いや、それだけじゃない。トーマスの整備がすごいんだ」
「今まではどういう風に剣を使ってたんだ?」
「これも自然エネルギーだ。風のエネルギーで剣に浮力を持たせて軽くする。斬りつけるタイミングで重さを持たせるんだ。アタシの剣は重いからな。刀には要らないテクニックかもな」

 ジュリアの話では、火や水、風などのエネルギーだけじゃなく、自然界の治癒力、地を動かす力、岩や金属の硬さ、音や光の速さ、引力の重さ、様々な自然エネルギーを使うのが仙術だそうだ。

「なるほど、普段の呼吸で色々なエネルギーを感じないとな。勿体ないな」

 ジュリアが風属性の仙術を実演してくれた。

『仙術 風魔の罠ジントラップ

 ペガサスが無数の風の刃に飲み込まれた。
 跡形もない。

「魔晶石の増幅効果も凄いけど……気力を練気に置き換えたら別物になったぞ……いい事教えてもらったよ」

「凄いね……よし、風遁に取り込んでみよっか! まずは風刃ね!」

 練気に風属性の魔力と、風の自然エネルギーを練り込む。それを魔力に乗せて放出した。

『風遁 風刃ふうじん!!!』

 三人で放った風遁の基本術が、とんでもない風切音と共にユニコーンを切り刻んだ……。

「ちょっと待ってよ……風刃でこの威力って……」
「嵐塵とか使うのが怖いんだけど……」

 後ろに流れた風刃が別のユニコーンの脚を切断した。

「そうだ、自然の治癒エネルギーを治療術に組み込んでみるよ。ユニコーンの脚、くっつくかな?」

 エミリーがユニコーンの脚に治療術を掛けた。

『治療術 四肢再生』

 ユニコーンの脚が元通りになって走り去って行った。

「くっついた!」
「おいエミリー! どんな回復術だよそれ!」
「回復術の上位で、治療術だよ! これ強化術にも組み込んだら別物になるね。ねぇ、ジュリア、相手の足止めをするような術はないの?」
「あるよ。大地の自然エネルギーを気力に混ぜて、地面から相手に干渉させて動きを止める」

『仙術 途絶フリーズ

「あれ! 動けない! 遁術の影縛りより上位だねこれは。飛んでる相手には無理だよね?」
「いや、空気を経て干渉すればいい。ただし、地上より格段に効果は落ちる」
「こんなの食らったらやばいな……」
「いや、相殺させればいい。静のエネルギーには動のエネルギーだ」
「なるほど……凄いね自然エネルギー」
 
 四人の勉強会は続いた。

 結果、遁術、治療術、強化術、守護術、全てにおいて自然エネルギーを組み込むことで、全くの別物に進化した。
 強化術の進化で剣技も恐ろしくパワーアップした。自身のスピードアップからの斬撃が凄まじい斬れ味を生んだ。
 
 ジュリアは自分の仙術に練気術を組み込むことで、三人と同じような効果を得た。

「一日ですごくパワーアップした気分だ」
「アタシの44年間は何だったんだ。練気術早く教えてほしかったよ」
「ほんと、仙族と龍族が手を組んだら凄いことになるよ」
「ということは、あの三人も同じパワーアップをしてるってことだね。歯が立たないはずだよ」

 ――あ、そうか……。

「ホントだな。それプラス魔族の戦闘法だ。強いはずだ……」

 しかし、四人もかなりパワーアップした。対抗出来るはずだ。
 
「ジュリア、仙術を人に教えてもいいのか? 龍王は仙族や人族には適した戦闘法だから、教えてやっても良いって言ってたけど」
「あぁ、龍族は友好関係にあるからな。問題ないよ」
「じゃ、それぞれの国に帰ったら広めたいね。国力が更に上がるよ。僕らの師匠がこれを取り入れたらどうなるんだろ……怖いよ……」

「ジュリアも龍族の移動法をマスターしといた方がいいな。空を駆ける事が出来れば空中戦での急な方向転換ができるからな。あと、錬気術の精度が跳ね上がる」
「なるほどな。移動中に練習するから教えてくれよ!」

 

 夕方前にはレトルコメルスに着いた。
 術を試しながらゆっくり移動したつもりだったが、行きより早く着いた。凄い進歩だ、新しい戦闘法はこうも自身を強くするらしい。

「ギルドに依頼品持っていくか」

 ジュリアは久しぶりの冒険者ギルドだ。
 懐かしそうにキョロキョロしている。

「おう、こりゃ沢山狩ってきたな。ちょっと待ってくれよ」

 かなりの数を報告した。
 勘定が終わるまで依頼書の掲示板を見て過ごした。

「ペガサスとユニコーンが合わせて15体、後はケルピーか。全部で550万ブールだな」

 それでもフェンリル一体分ほどだ。SSランクの魔物の報酬は破格だ。確かにあの強さだ、当然ではある。
 

「行きの分もあるけど、三人は150万で、ジュリアに100万ブールでいいか?」
「いいのか?」
「うん、問題ないよ」
「ジュリア、久々にカジノ行こうね!」
「そうだ、カジノ!」

「では、オレら二人は振込で、彼女らは現金で」
「あいよっ」
「あ、そうだ、ジュリア知ってた? SSランクは無利そ……ムゴッ!」

 急いでエミリーの口を塞いだ。

「いや、何でもないんだジュリア」
(おい、絶対にジュリアには言うなよ。破ったらギャンブル禁止令出すからな)
(ムグッ……ワガッダ……)

 ジュリアは不思議そうな顔をしたが、聞いてこなかった。債務者が二人に増えるなど、考えただけで身震いする。
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