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1 幼少期、少年期 編

ここの世界は僕にとって

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メイドと話してから数日。今日も実質一人だ。メイドはいるが話しかけてはこない。だた淡々と自分の仕事をこなしている。なので会話は0といっても過言じゃないほどである。
正直陽キャ的な立ち位置にいた俺からすれば話したいのだが。

そう思っていると話しかけられた。

「今日はお父様がいらっしゃります。この部屋ではないのですが、お父様が帰ってくる時には皆様総出でお迎えいたします。暑苦しいでしょうがこれを着てくださいませ。」

「はい。」

業務的な言葉に業務的に返す。というかこれは完全に着ぐるみだな。なかなか趣味が悪い。犬や猫、キャラクターでもないな。多分これは全身真っ黒のもので顔に赤くバッテンが書いてある。
なんかの意味なのだろうか。

「では、準備ができたらお声掛けください。」

「はい。わかりました。」

準備ができた。鏡を見てみる。趣味が悪い。悪すぎている。まあそういうことなのだろう。

「準備完了しました。」

「では、ついてきてください。それとくれぐれも喋らないように。そして前を見て歩いてはなりません。手を取って歩きますので下を向いていてください。」

「はい。」

そうか。喋ってはならないのか。注意を聞いといた方が良さそうだ。

「お連れしました。レセア様です。」

そのメイドの言葉に返事をするものはいない。それどころかみんな楽しそうだ。ああ、いいな。そう思ってしまう。だがそれは許されないのだと心の中で思うばかりである。

誰かとぶつかった。

「…あら、きてたのね。見えなかったわ。それで私とぶつかるなんてどういうおつもりですの!?」

身に覚えがない。そして俺は立っていただけなので相手からぶつかってきたと思うのだがそれは言わせないと言わんばかりの周りの視線、そしてメイドが「言ってはないけない」というかのようにこちらを見ていた。

「無視ですか!?図星なのでしょう?土下座しなさい。土下座よ!あなた、もしかして先週のも忘れたのかしら!?…これだからあの忌み子のは。」

「…」
無言で土下座をする。こういうのは抵抗しない方がいいとわかっているのだ。抵抗したって意味がないに等しいのだ。抵抗したら抵抗しただけ面倒になるというのはどの世界でもあるものだ。
ましてや乙女ゲームの世界線なんて他のものと比べて反抗したってどうせヒロインが勝つというのが決まっているのだ。そういう世界では通用しない。当たり前である。

「…ふん!そうしてればいいのよ!お父様が来るまでね!」

「…」

無言は肯定の意思とも言える。つまりYesと答えたと一緒だ。


「「「お父上様、おかえりなさいませ!」」

僕も立ち上がって無言で礼をする。

その時、お父様に打たれてしまった。
「さっさと出て行け。この無礼者!!」
痛い。体重差や力の差わかってんのかこいつ。と言いたくなる。こればかりはこの着ぐるみに感謝だ。きっと今の俺の顔は睨んでいる。そういう点は分かりずらい。
「…」

無言で会釈し、出ていく。そうすると聞こえるクスクスと嘲笑うかのような声。そういう立ち位置なのか。忌み子になるのは初めてだ。


…なんだか苦しいなぁ。


??なんで僕は苦しいと思ったのだろうか??

…まあいいか。どうでも。
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