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11話

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あまり見通しが良いとは言えない、森林のとある場所。

「えぇ? 俺、裏ハンターのターゲットになるようなことしたかな……?」

「ガハハッ! おおかた、大将魔力目当てで人体実験したい奴らなんかが雇ったんでさぁねぇ?」

「あら~、夜空よぞらちゃんモテモテねぇ~」

「こんなモテ期は望んでないよ?!」

裏ハンター、それはいつしか犯罪に手を染めてしまった、ハンター協会から追放された者、または最初から登録していない者たちの総称になっていた。

真っ黒な依頼を、個人依頼として法外な報酬を受け取る代わりに、どんな依頼内容でも問わずに仕事を行う。

そんな裏ハンターが5人、無月とフレイアシエ、ネーベルを囲むように、各々の武器を構えて今にも襲い掛かってきそうな雰囲気だった。

恐らく魔道具を使っているのだろう、無月たちの目には、裏ハンターの顔が上手く認識できず、モザイクがかかっているようにしか見えなかった。

無月の感覚として、裏ハンターから感じる1人1人の魔力量は、ハンターレベルでBレベルあたりだろう。

そして5人パーティーとして考えれば、総合してAレベル相当の戦闘能力は確かにあった。

「──かかれ!」

裏ハンターの1人がそう号令し、そのまま一斉いっせいに動き出した。

「……大将?」

「今回はネーベルがいるし、殺さずに無効化してくれる?」

「お任せあれ~」

無月はネーベルに短く指示を出す。

裏ハンターに襲われた場合、攻防した結果、最悪殺してしまったとしても、基本的に罪には問われないというハンター保護の法律があった。

しかし、流石に相手が犯罪者でも、最初から殺すという選択肢はとりたくない無月。

相手を無力化する方法があるならば、そっちを選ぶのが無難なのかもしれない。

はたして、この裏ハンターたちが実際にはどのような理由で襲撃してきたのかは不明だが、少なくともわかったことが1つ、

「……力量差すら把握できないのか?」

スッと無月が無感情に言う。

所詮は金に目の眩んだ、そして下手に力を持ってしまった者たちだ。

フレイアシエは炎と鋼で形成された槍、『レーヴァテイン』を握りしめ、万が一に備えて無月を守る。

そしてネーベルは、どさくさに紛れて無月をぎゅ~と背後から抱きかかえ、

「『ブルイヤール・シムラクルム』」

瞬時に魔力を練り上げたネーベルは、冷たく魔法を唱えた。

──もやもや、もやもやもや。

突如として深い深い霧が発生した。

当然、自然から生まれた霧ではない。

裏ハンターたちにとっては、ありえない魔力が込められた霧が一瞬にして広がっていく。

その霧は、まるで生きているかのように、裏ハンターの体にまとわり付くように動いていく。

「う、うわぁぁぁぁぁ?!」

「殺される?! 殺されるぅぅぅうう!!」

その霧は、穴という穴に入り込んでいき、そのまま夢に捕らわれ、ネーベルが解かない限り、一生の悪夢を見る魔法だった。

5人の裏ハンターは、恥も外見もかなぐり捨てて、地面にバタバタ暴れながら声にならない悲鳴を上げ続けている。

「フレイ、この状態で気絶させることはできる?」

「ネーベルが魔法の威力を弱めてくれたら、朝飯前でさぁ」

この状態だと、魔法の効果が高すぎてしまい、気絶させる前に体が持たずに殺してしまいかねない。

「それじゃ~弱めるわね~」

のほほんとした口調で、ネーベルが霧属性魔法、ブルイヤール・シムラクルムの威力を落とす。

叫び声からぼそぼそとうめき声に変わったのを確認して、フレイは容赦なく5人の手足をバキバキに骨を折っていく。

痛みの許容範囲を超えた裏ハンターたちは、ネーベルの魔法を完全に解除すると、防衛本能としてすぐに意識を落とした。

「……はぁ。とりあえず、ギルド協会に連絡して後のことは対処してもらおうか」

HMDSヒムダスを取り出した無月は、ギルド協会に通話で連絡して、すぐに特殊部隊ブレイブが来てくれることになった。

ブレイブとは、ダンジョン&ハンターを専門にする警察のような役割を仕事にしている。

今回のように、裏ハンターの引き取りも彼等が行ってくれる。

「しばらくここに待機だな」

小さくため息を吐いた無月は気持ちを切り替えて、フレイアシエやネーベルと談笑しながらブレイブの到着を待った。










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