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10話
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──2つ目のIレベルダンジョン、それは通称『ウルフダンジョン』と呼ばれている。
フィールドは山岳地帯で、険しい山々が連なる、その雄大さと神秘さは地球のものより澄んで見えた。
山肌は深い緑の森林に覆われて、ところどころに現れる岩肌にいくつかの鉱脈がある。
またIレベルハンターが愛用する、『Iレベル回復ポーション』、『Iレベル魔力ポーション』の薬草が採取できたりする。
この薬草はゴブリンダンジョンにはなぜか自生していない。
木々の隙間からは、太陽に似たナニカの光が木漏れ日となって差し込み、幻想的な雰囲気を醸し出している。
山間を流れる澄み切った水がせせらぎの音が静寂を破る、そんな山岳フィールドには、息を殺し初心者ハンターを死角から噛み殺すバトルウルフや、魔法を使うウィザードウルフなどが生息していた。
ここでもやはり無月は目立つ。
クリシといる時よりはマジだが、それでも注目される。
その理由としてダンジョンネスト事件のことも大いにあるのだが、それ以外に彼から感じる底なし沼のような魔力。
そしてダンジョンでは場違いな装備だった。
100歩譲って武器を所持していないのはこの際いいとする。
だが防具が上下のジャージ、普通の運動靴だったからだ。
傍から見たら舐め腐っているとしか思えない出で立ちなのだ。
……しかし。
使い魔たちに愛されている無月が、何の変哲もない装備でダンジョンに行くことを許可されているわけがなかった。
高レベルハンターですら感知することができない圧倒的な魔力がジャージや靴に練りこまれていた。
並大抵の攻撃では破れず、常に清潔感あふれるとてもおかしい代物だった。
モンスターの攻撃を避けたり逃げたりするのは、過去のとあるトラウマから生まれた行動であり、正直に言ってわざわざ無月がそんな動作をする必要性は現段階で皆無である。
(まずは人気がない場所まで移動するか……)
移動した先でハンターやモンスターがいないことを確認した無月は、フレイアシエを召喚した。
「大将、今回も俺様の出番かい?」
「あぁ、今日はフレイに戦闘は任せた。まぁ、物足りないかもしれないけど」
「ガハハッ! 合点承知! クリシがいないのは“観てた”から知ってるものの、いやはや新鮮だねぇ」
「今日はもう1人召喚しようかな。『ネーベル』」
そう言って無月は、フレイアシエを召喚した時と同程度の魔力を使って召喚した。
「あらあら~? お久しぶりに夜空ちゃんに呼ばれたわ~」
のほほんとした口調で現れたのは、透き通るような青色の長い髪と青の瞳。
そしてスタイル抜群な体には魔法で生成された青色のドレスを着用している、水と霧の属性を司るAレベルの使い魔だ。
「久しぶり、ネーベル」
「うふふ~、本当にお久しぶりですわ~。毎日欠かさず夜空ちゃんを観てましたが~、実際の生夜空ちゃんはまたまた格別ですわ~」
ぎゅ~と正面から抱き着かれて頭を撫でられている無月の耳に、何やら不穏なワードが聞こえたような気がしたが、顔にむぎゅむぎゅ当たるモノから離れることに思考が割かれてすぐに忘れてしまう。
「っぷは! ネ、ネーベル? 今日は俺の護衛を頼もうと思ってるんだけど、どうかな?」
「もちろん大丈夫ですわ~。むしろ夜空ちゃんを抱っこしながら守るのもありだと思いますよ~?」
「そ、それは大丈夫かな」
「さーて、大将。ネーベルがこれ以上の暴走をする前にさっさと行動するに限りますぜ」
「うん、そうしようか」
「あら~、抱っこがだめなら手をつないで行きましょ~?」
「あーうん。今日だけだからね?」
無月はネーベルの妥協案に頷き、フレイアシエを先頭にウルフ狩りを始めた。
──それから1時間ほどが経ったころ。
無月は、裏ハンターと対峙していた。
フィールドは山岳地帯で、険しい山々が連なる、その雄大さと神秘さは地球のものより澄んで見えた。
山肌は深い緑の森林に覆われて、ところどころに現れる岩肌にいくつかの鉱脈がある。
またIレベルハンターが愛用する、『Iレベル回復ポーション』、『Iレベル魔力ポーション』の薬草が採取できたりする。
この薬草はゴブリンダンジョンにはなぜか自生していない。
木々の隙間からは、太陽に似たナニカの光が木漏れ日となって差し込み、幻想的な雰囲気を醸し出している。
山間を流れる澄み切った水がせせらぎの音が静寂を破る、そんな山岳フィールドには、息を殺し初心者ハンターを死角から噛み殺すバトルウルフや、魔法を使うウィザードウルフなどが生息していた。
ここでもやはり無月は目立つ。
クリシといる時よりはマジだが、それでも注目される。
その理由としてダンジョンネスト事件のことも大いにあるのだが、それ以外に彼から感じる底なし沼のような魔力。
そしてダンジョンでは場違いな装備だった。
100歩譲って武器を所持していないのはこの際いいとする。
だが防具が上下のジャージ、普通の運動靴だったからだ。
傍から見たら舐め腐っているとしか思えない出で立ちなのだ。
……しかし。
使い魔たちに愛されている無月が、何の変哲もない装備でダンジョンに行くことを許可されているわけがなかった。
高レベルハンターですら感知することができない圧倒的な魔力がジャージや靴に練りこまれていた。
並大抵の攻撃では破れず、常に清潔感あふれるとてもおかしい代物だった。
モンスターの攻撃を避けたり逃げたりするのは、過去のとあるトラウマから生まれた行動であり、正直に言ってわざわざ無月がそんな動作をする必要性は現段階で皆無である。
(まずは人気がない場所まで移動するか……)
移動した先でハンターやモンスターがいないことを確認した無月は、フレイアシエを召喚した。
「大将、今回も俺様の出番かい?」
「あぁ、今日はフレイに戦闘は任せた。まぁ、物足りないかもしれないけど」
「ガハハッ! 合点承知! クリシがいないのは“観てた”から知ってるものの、いやはや新鮮だねぇ」
「今日はもう1人召喚しようかな。『ネーベル』」
そう言って無月は、フレイアシエを召喚した時と同程度の魔力を使って召喚した。
「あらあら~? お久しぶりに夜空ちゃんに呼ばれたわ~」
のほほんとした口調で現れたのは、透き通るような青色の長い髪と青の瞳。
そしてスタイル抜群な体には魔法で生成された青色のドレスを着用している、水と霧の属性を司るAレベルの使い魔だ。
「久しぶり、ネーベル」
「うふふ~、本当にお久しぶりですわ~。毎日欠かさず夜空ちゃんを観てましたが~、実際の生夜空ちゃんはまたまた格別ですわ~」
ぎゅ~と正面から抱き着かれて頭を撫でられている無月の耳に、何やら不穏なワードが聞こえたような気がしたが、顔にむぎゅむぎゅ当たるモノから離れることに思考が割かれてすぐに忘れてしまう。
「っぷは! ネ、ネーベル? 今日は俺の護衛を頼もうと思ってるんだけど、どうかな?」
「もちろん大丈夫ですわ~。むしろ夜空ちゃんを抱っこしながら守るのもありだと思いますよ~?」
「そ、それは大丈夫かな」
「さーて、大将。ネーベルがこれ以上の暴走をする前にさっさと行動するに限りますぜ」
「うん、そうしようか」
「あら~、抱っこがだめなら手をつないで行きましょ~?」
「あーうん。今日だけだからね?」
無月はネーベルの妥協案に頷き、フレイアシエを先頭にウルフ狩りを始めた。
──それから1時間ほどが経ったころ。
無月は、裏ハンターと対峙していた。
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