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3話

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こんな大量のモンスター見るのは壮観だな」

「だね~」

モンスターネストのモンスターは、殲滅するしか脱出方法がないのにも関わらず、どの個体も魔石を落とすことはない。

無月がクリシに指示を出そうと口を開こうとしたタイミングで、なんと不幸にも彼らと同じくモンスターネストに巻き込まれてしまった2人の初心者ハンターが現れた。

──低確率がさらなる低確率を呼ぶ。
それは稀にあることなのかもしれないが。

訪れた人物は無月でも知っている有名校、『ハンター育成専門高等学校』の制服を着用した美少女たちだった。

1人は柊琴音ひいらぎことねという名前で、現在16歳の高校一年生。
職業は魔法使いで両手杖を装備した、火と回復魔法の使い手であり、後衛からの魔法攻撃と回復のサポートを担当している。

腰まで伸ばした艶のある黒髪に、切れ長の目が特徴なスレンダーでクールな女の子。
学校指定の学生服は、下手な市販の防具より防御性能が高い。
スカートは膝丈までで、黒のタイツを着用している。

もう1人は、秋澤茉莉あきざわまつり
柊とは同じクラスで、入学式から馬が合った結果、2人でパーティーを組むことになった。
職業は戦士で右手にロングソード、左手に盾を装備した、無属性の身体強化を武器にする、タンクと攻撃を担当している。

肩まで伸ばした内巻きのワンカールで、髪は茶髪に染めており、笑顔が眩しい元気溌剌な、発育も年齢にしては育っている。
柊と同じ学生服で、スカートは健康的な太ももが惜しげもなく晒されているものの、しっかりとスパッツを着用している。

2人は密かに学校内で一年生の二大美少女と呼ばれているが、その話しを本人たちは認知しておらず、無駄に洗礼された隠蔽技術を学校の男子生徒たちは駆使していた。

それこそ普段の彼女たちならば実に絵になるはずなのだが、唐突な死に直面した状況に混乱している様子で、無月とクリシ、そして迫り来るハーピーとオーガに何度か視線を彷徨わせる。

あきらかに焦燥感に駆られたように顔面蒼白になっていた。

「琴音ちゃん?! ど、どうしよう~?!」

「どうするもなにも…」

秋澤は涙目で柊に抱きつく。
抱きつかれた柊もよほど混乱してるのか、絞り出した言葉に覇気がない。
モンスターネストに巻き込まれた冒険者は99.9%生還しない。
過去に一度だけ生還したパーティーがいたが、それも100年以上昔、歴史の一部として久しい。

そんな彼女たちの雰囲気を気にした様子もなく、無月は気さくさに声をかけた。

「なぁ、死にたくないよな?」

当たり前だった。
そんなの誰だって頷くだろう。
秋澤はその言葉に首を上下にブンブン振って頷いている。

「──もし俺がこの状況をひっくり返して、ここから帰れるって言ったら信じる?」

「……私たちは最近ハンターになったばかり。奇跡が起きたとしても自分たちの力だけでここから帰ることはできないでしょうね」

「もしここから帰れるならあたし、なんでもするよ?!」

「ちょっと茉莉さん?!」

無月と柊の会話で少しでも助かる希望があるならと、混乱したままなんでもする発言をかます秋澤をどうにか柊は宥めにかかる。

が、それをスルーした無月は、

「別にそれはいーよ……あ。しいて言えば今後は俺の相棒、クリシの友達になってくれたら嬉しいぜ」

ポンポンとクリシの頭を撫でながら伝える無月の言葉に2人は了承した。

「──さて、俺1人だったらお前だけに任せてたけど、万が一があったら嫌だからな」

そして──無月はさらに魔力を解放する。
先ほどの比じゃない魔力量に、柊と秋澤は思わず後退ってしまう。

クリシの戦闘能力をレベルで表現するならば、規格外なBレベル。
もうそろそろ接敵しそうな距離まで近づいてきたGレベルのモンスター群など、クリシ1人で十分に余裕な相手だった。

しかし今回は守る対象が無月だけじゃない。
この男だけならば仮に撃ち漏らしたモンスターがいたとしても、逃げ回れる自信が大いにあったのだろうが、事情が変わった。

「──『フレイアシエ』」

鋼色のオールバックに赤の瞳、短く整えた黒い髭が男前な容姿をさらに引き出す。
2メートルくらいの身長、炎の衣を纏う、炎と鋼の属性を司るAレベルの使い魔。

「カ~ッ! 久しぶりの空気はうめぇな!」

炎と鋼で形成された槍『レーヴァテイン』を担いで豪快に笑うフレイアシエは、

「よーし大将! 状況は大方わかってっから、ちゃちゃっと命令してくれや!」

ガシガシと無月の頭を撫でながら言うフレイアシエの言葉に苦笑交じり頷いて、

「クリシはハーピー、フレイはオーガの殲滅を頼むな。よし、お嬢さん方は俺の後ろに移動してくれ」

まだ自己紹介もしておらず、名前を把握していない無月は柊と秋澤に言葉をかけ、使い魔の活躍を見逃すまいと前を向いた。




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