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第3話 2人はやっぱり分かってない
2人は分かってない【香凛社会人編】 その7
しおりを挟むといってもいきなり直接的な行動に出る勇気は、やっぱりなかった。
だから私は立てていた膝をじりじりと進める。
ソコに触れるのに、時間はかからなかった。
この触れ合いで、確実に質量を増している征哉さんのソコ。
不自然さを感じさせてはいけない。
最初は偶然、こっちは意識もしてませんよって体で、擦れる程度で。でも徐々に力を込めていく。
「香、凛……」
びっくりするほど悩ましげな声で名前を呼ばれた頃には、たまたまの域を超え、確実に意思を持って膝を擦り付けているというレベルに達していた。
「香凛?」
呼びかける声には戸惑いが存分に含まれている。
それはそうだろう。私は今まで、自分からこんなことをしてみせたことはないのだから。
「っ!」
ここまで来たら、当たって砕けろ、清水の舞台から飛び降りるしかない。
だってもう、自分のしてることを誤魔化しようがない。
恥ずかしさという恥ずかしさを殺しながら、そろりと腕から外した手を忍ばせる。
ソコに、触れてみる。
「~っ」
顔から火が噴き出そうだった。手のひらに感じる、布を押し上げるしっかりとした感触に、そのまま卒倒してしまいそうだった。
自分のやっていることを客観視したら、その瞬間に終わってしまう。
分かっていたから、勢いに任せてそろりと指先を上下に動かした。
「な、にして……」
驚きの声に怯みそうになるけど、手の中のモノはちょっと往復させた僅かな動きでも、分かりやすく質量を増していた。
悪いわけでは、ないはずだ。
そう判断して、包み込むように擦り上げていく。
「っく」
力加減も分からない。どこをどうすれば良いかだって、何もかも、全部手さぐりだ。
でも、そんな要領を得ない拙いはずの動きでも、触れれば触れるほど硬さと質量は増し、そしてやがてこのままではツライのではないかと気付く。
「香凛」
スウェットのウエストに指を引っ掛けずり下ろし始めたら、制止ともつかない声色で名前を呼ばれた。
「い、いやなの?」
「……どうしたんだ」
顔を合わせる勇気はないから、私は俯いたまま。
でも、見なくたってどういう顔をしてるかは、その戸惑いを存分に含んだ声だけで分かる。
「別に、どうも、してないよ」
倦怠期が怖いので、今宵はちょっと趣向を凝らしてみます。お楽しみください。
なんて言える訳がなかった。
「いやだってこんなこと」
「し、しちゃ駄目なの?」
「……無理するな」
駄目とは言わなかった。駄目じゃ、ないのだ。
第一、無理なんてしてない。
いや、してる。してるけど、したくてしてる無理なのだ。強要されてるんじゃない。
頑張りたいの。私がいつもいつも十全に受け取り満たされているように、私だって征哉さんに渡せるものを渡したいし、押し付けじゃないのなら満たされてほしい。私で、満たされてほしい。
制止の声は、本気じゃない。私を慮ってのものだ。
上手いことできてるかはともかく、嫌がられてはいない。
そう思うことにして、半ば強引に履き物をずり下げた。
そうして、半ば首を擡げたソレが姿を現した、その瞬間。
「っ~~!」
私は後悔した。ものすごく後悔した。
こんなところで始めてしまったことを。部屋の電気を付けっぱなしだったことを。
せめて、寝室に移ってからにすれば。
もう少し薄暗い、それらしいムードのある環境を整えてからにしておけば。
正直に言います。
見た瞬間、ものすごく怯みました。羞恥と微かな恐怖と気まずさとその他諸々でもう頭が沸騰しそうでした。
こんなに明るいところで、まじまじと目にするのは初めてのように思う。もちろん、今までのあれやこれやで一つも視界に入ったことがなかった訳じゃないし、何となくは分かってはいたけれど。
でも、こんな距離で、こんな風に。しかも私、これから――――
「香凛、気持ちだけで十分だ。無理してやることじゃない」
私が怯んだのが、手の取るように分かったのだろう。でも、その言葉は逆効果だった。
できないなんて、言ってない。
気持ちだけじゃないんだから。
第一、ここでやめたら後の空気が怖すぎる。絶対に気まずい、居た堪れない空気になる。自分自身へのダメージが計り知れない。
「っ」
覚悟を、決めた。
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