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40.蕩けるほどの

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「あ、あ、あぁ!」
 あまりに深い。自重で更に刺激が強まる。もう羞恥はそっちのけで莉緒は必死にその身体にしがみついた。
「全身でぎゅうぎゅうしがみついてる」
 腕も、足も――――そしてナカも。
 必死になって与えられる快感を受け止めている。芯から蕩けてしまいそうな感覚に怖くなる。
「あ、ふか、深いっ」
「うん、ココ、好き?」
「やぁ、しらなっ、ソコはだめっ」
 小刻みに揺さぶられる度に切っ先がぐりぐりと最奥を抉る。あまりの快感に眦からぽろぽろと涙が落ちた。
 暴かれてはいけないところまで、全部丸裸にされてしまいそうな予感。
「早いね」
「な、なにが」
「リオ、子宮口、もう降りて来てるんじゃない?」
「はっ!?」
「嬉しいなぁ、そんなに気持ちイイ?」
「……っ!」
 何か言い返したいのに、返す言葉が見つからない。そうこうしているうちに、このとんでもない体位のままエリオットが歩き始めた。


「うそっ! やっ、あぁ! んぁ!」


 一歩踏み出すその振動が、体中に響く。必死にその身体にしがみついても、逃せるものなど知れている。
 小刻みに絶頂に押し上げられ息も絶え絶えになったところで、柔らかな反発力と共に歩みが止まる。抱き合った状態のまま、エリオットがベッドに腰を下ろしたのだ。


「ひう!」
 加減されていたとは言え、それでも着地の勢いが甘く身体を突き抜けた。
「も、なんてこと、するの……!」
 目的地ベッドに到着した訳だが、到着してさぁ終わりという訳もない。
 莉緒にだってそれは分かる。むしろここからが本番だろう。
 けれどもう既に莉緒はいっぱいいっぱいだった。
「リオ」
 詫びるように軽い口づけがそこら中に落とされる。けれどそんな軽い触れ合いの最中でも、未だ二人は繋がった状態。莉緒のナカには未だ固く昂ったモノが埋め込まれている。
「エリオット」
「うん?」
「エリオット」
「なに?」
 こんなに存在感のあるもの、意識の外に持っていけるはずがない。
 意識すると下腹が甘く甘く疼く。
「いつまでこのままなの」
「んー?」
 何が? と彼は小首を傾げた。その表情が可愛らしくて、また余計なときめきで莉緒の身体が痺れる。
「だって、その、エリオットはまだ……」
 一度も果てていない。莉緒は散々高みに放り投げられたと言うのに。
 これだけ反応してるのだから気持ち良くない訳ではないのだろうけど、と莉緒がもごもごしていると、エリオットは笑って言った。


「我慢してるんだ」
「が、我慢とか別に」
「少しでも長くリオとこうしてたいから」
「っ……」


 言われて、勝手に身体が反応していた。嬉しいと言わんばかりにきゅっと締め上げてしまって、羞恥に更に顔が赤くなる。けれどその反応を彼は揶揄うことなく、莉緒の右手をふと取った。


「リオ、ほらリオのこんなところに僕がいる」
「ちょっ」
 下腹に手を当てさせられる。肌の下に固い感覚。あからさまにそこにエリオットがいることを感じさせられて狼狽してしまう。
「リオにはやっぱり少し大きすぎるね。挿れる時、いつもちょっと不安になる。――――あぁでも最高の眺めと心地だ」
 そう、確かに手にひらに伝わる感覚はずっしりとしていて、自分のナカによくこんなものを受け入れらているなと莉緒は息を吐いた。
 けれど、苦痛ではないのだ。こうして繋がっていられることが純粋に嬉しい。
「僕以外は入れちゃ駄目だよ」
「ん……入れない」


 まだレオンの言ったことを気にしているのだろうか。
 今こうしている相手が自分じゃなかったかもしれないなんて、そんなことを。


「エリオットも私以外は駄目だよ」
「当たり前だよ」


 エリオットが不安に思うように、莉緒にだって心配事はある。けれどこうして睦み合っている間は、ただただこの愛と欲に溺れていたいと思う。
 甘いキスを交わしながら、お互いの服をはぎ取っていく。身体をベッドの上に横たえられれば、惚れ惚れするような裸体が視界に入った。


「んっ、んぁ」
 重力に流れる乳房を掬い上げられて、やわやわと揉まれる。それだけじゃ足りないと腰を振れば、色づいた先を両方とも摘まれ、その刺激に下腹がきゅうっと締まった。
「リオのナカはいいね、熱くてキツくてでもとろとろで、とってもえっちだ」
 色っぽい吐息がその喉から零れ落ちるのは、きっと彼も快感を得ているからだ。
「恥ずかしいこと言わないで」
「恥ずかしがってるリオはすっごく可愛いよ」


 愉しまれている。
 言うこと全部が甘くて恥ずかしい。身体に与えられる刺激だけでもう十分だから、口の方は手加減してほしいと思うのに、莉緒のその抗議の気持ちは全く本人に届かないのだ。


「でも、恥ずかしいって感情がもう何か分からなくなっちゃってるリオも、すっごく可愛い」
「え? ってきゃっ!」
 そうしてにっこり綺麗な笑みを浮かべたエリオットが、ずるりと己を引き抜いたと思ったら。
「やぁあん!」
 容赦ない激しい抜き差しを開始した。
「あ、あ、エリオット、はげしっ、あぁ!」
 けれどとろとろに蕩けた蜜壺はその激しい動きを柔軟に受け止めて、歓喜する。襞を全部捲り上げられて、それから一番奥の敏感なところをぐりぐりと抉られる。
 何がどう気持ちイイのか、彼は簡単に見抜いてしまう。
「あぁ、やだっ、気持ちイイ……!」
「うん、リオのナカ、すごく吸い付いてくるっ、ココ? ココ、こういう風にされるの好きだよね?」
「ひっ、あぁあ……!」
 太い杭が莉緒の動きを全て縫い留めてしまう。身じろぎしても何にもならない。じゅぷじゅぷと淫靡な水音を盛大に立てながら、莉緒のナカを自分の形を覚え込ますように何度も何度も往復する。
「あっ、あぁ、そこぉ……!」
 ただナカを激しく責め立てられているだけでなく、エリオットの右手は固く凝った頂きを、左手はぷっくり膨れ密に塗れたクリトリスを容赦なく刺激していた。
「んん――――っ!」
 何度目か分からない絶頂を迎え、莉緒の身体がシーツの海の中で跳ねる。
 ゆるゆるとその高みから降りてきた時、莉緒の理性はすっかり溶けて用をなさなくなっていった。


「リオ? おーい、リオ?」


 呼びかけに答える気力はない。頬を擦られる感触が心地好くて、ただその手に頭を預ける。


「そうだね、気持ちイイね? もっと悦くなろうか?」


 達したばかりなのに、まだ身体の中は甘く痺れていた。貪欲に求めていた。深く思考は及ばないが表面的に問いかけの意味は理解できていた莉緒は、自分を見下ろす男に向けてふにゃっと蕩けるように微笑んだ。


「っ、リオ、可愛い。すごい破壊力。もうどこにも出したくないくらい、本当に可愛い」
 余裕のない声。それを示すように打ち付けられる腰の動きは激しい。
「ごめんね、ちょっとコレは優しくとか無理かも」
 莉緒の胎の内で固く長大なモノが遂に限界に近付きつつあった。
「あ――っ、あぁっ! やぁ、んあっ、あう!」
 快楽の波に飲み込まれて、リオの喉はもう嬌声しか上げない。
「イくぅ、イ、あ、あんん――――っ」
「いいよ、リオ、イッて? 何回でもいいよ。ほら、我慢っ、しないで!」
「ひ、ひぃ」
 まるで狩りをするように、的確にエリオットの動きは莉緒を追い立てて行った。
 一番深いところに何度も先端を押し付けられて、華奢な身体が弓形にしなる。
「イっ――――!」
「ぐぅ……!」
 激しい収縮に促され、今度はエリオットも一緒に絶頂を迎えた。
「……リオット……んっ」
 どこか焦点が合わない目のまま、莉緒はその名を呼ぶ。膜越しに吐き出される白濁。自分のナカでびくびくと脈打つその感覚が愛おしかった。
「リオ、リオ」
 熱い身体が覆い被さってくる。お互い汗だくで触れた肌は濡れていたが、不快感よりも安堵感の方がずっと大きい。
 いつまでもこうしていたい、と霞む思考の中で莉緒はそう願う。


「リオ、愛してる」


 耳元で囁かれた言葉が、気怠い身体の中にじんわりと甘く温かに染み込んでいく。


「……わたしも」


 同じだけの熱量を以て、莉緒もその言葉を自分の口から取り出した。


「わたしも、あいしてる」



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